視線の先

茉莉花 香乃

文字の大きさ
36 / 47
番外編ー2 篤紀の後悔

03

しおりを挟む
ドキドキしながら帰りを待つ。

「ただいま」

玄関扉を開けて聡史が帰ってきた。抱きついて、胸に顔を埋める。

聡史だ。
やっぱり、大好き。

「お帰り…聡史。ただいま」
「うん、お帰り。ありがとう」
「どうして?お礼なんて言わないで…僕が、僕が全部悪いんだから」
「俺が黒川にあんなこと頼んだから怒ったんだろ?」
「違うんだよ。そりゃ最初は僕に内緒でって思ったけど、違うんだ。怒ってなんかない。
嬉しかった。ごめん、素直じゃなくって、ごめんね。ありがとう
今日も迎えに行ってくれたんだよね?嬉しい」
「もっと早く行けばよかったな。俺は篤紀がここに、俺の腕の中にいるだけで良いんだ」

優しい手で頭を撫でてくれる。

「僕で良いの?こんなに素直じゃない僕で良いの?」
「当たり前だろ」

二人でソファーに座りキスをする。

五日ぶりのキス。
一緒に住み始めてこんなに長く離れたのは始めてだった。

涙が頬を伝う。
これは嬉し涙。

「お仕置き、だな」

えっ?どう言うこと?
キスの合間にそんなことを言われたら、表情もわからないから戸惑う。

「な、何?」

合わさる唇の隙間からは怒った様子は感じられない。

「俺を、こんなに、寂しく、させた、お仕置き、だよ」

ふふっと笑う聡史の首に腕を回して少しだけ距離を取り顔を見る。

「なんか、エロっ…篤紀の泣き顔かわいい。エロかわ」

ペロって目尻に舌を這わせ涙を拭ってくれる。

そして、次に唇が合わさる時には深いキスに変わる。しばらくその甘いキスに酔いしれる。口内を刺激する舌の動きを感じ僕も舌を絡ませる。

「好き…」
「俺も…。素直になったじゃん」
「うん。ありがとう」
「でも、お仕置きはするからな」

それから僕は聡史から愛のあるお仕置きをされた。

「さ、さ、とし…ダメ…ひゃ…あぁっ…」
「まだ、だよ。俺がどれだけ篤紀の事、愛してるかちゃんとわかってる?」
「あっ…んっ…わか、ってる」
「もう、俺の側から離れないで」
「んっ…もう、離れない」
「ほんとだよ?」
「うん…あっ、んっ」
「じゃあ、篤紀が動いて?」

突然動きを止めて、僕を自分の上に乗せて向かい合う。聡史の言う通り動き、聡史の言う通り感じた。






「おはよ…身体、だいじょぶ?」
「おはよう…たぶん、大丈夫」

恥ずかしい。
朝の挨拶に身体の心配をしなくてはいけないくらい激しかったと言うことだ……。

「黒川に今度こっち帰ってきたら遊びに来いって言って良い?」

心配してると思うって…僕がマンション出たこと言っちゃったんだね。

「松本も心配してるよ?」

そうでした。
心配かけました。
ごめんなさい。


END
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

エスポワールで会いましょう

茉莉花 香乃
BL
迷子癖がある主人公が、入学式の日に早速迷子になってしまった。それを助けてくれたのは背が高いイケメンさんだった。一目惚れしてしまったけれど、噂ではその人には好きな人がいるらしい。 じれじれ ハッピーエンド 1ページの文字数少ないです 初投稿作品になります 2015年に他サイトにて公開しています

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)

先輩のことが好きなのに、

未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。 何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?   切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。 《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。 要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。 陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。 夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。 5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

処理中です...