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番外編ー3 黒川の誤算
01
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「六年前の約束覚えてる?
あれ、まだ有効だよな?
俺、頼みたいことがあるんだよ」
◇◇◇◇◇
聡史に変なことを頼まれたのは高校を卒業してしばらく経った、三月も半ばだった。
俺が狙っても…それは聡史をからかうためだった。必死な聡史は初めて見た。
佐々城のセーラー服姿は可愛かった。こんな女子高生がいたら直ぐに告ってるだろう。ちょー俺好みだった。
でも、男だよ?
別に男同士で付き合ってる奴をどうこう言うつもりはないけど、自分がと思うとあり得ない。
それにちょっと暗いんだよ。『地味』って言葉がぴったり。眼鏡もなんか似合ってない。あの写真は眼鏡かけてなかったな。いつも寂しげで、ノリも悪い。考え方も硬くて俺とは合わない。
聡史に頼まれなければ四年間一緒に居なかったと思うよ。
写真は撮って送った。こんなん見て何が楽しいの?と正直思ったけど引き受けたからには仕方ない。
せいぜい恩を売って女でも紹介してもらおう…なんて考えてた。
就職して一年経った頃聡史から連絡があった。
一緒に住むんだって。
上手くいったんだな。あんなに必死だったのに結局一度も佐々城を訪ねて来なかった。
もう良いと言われなかったから写真は送り続けたし、様子も知らせた。けど、もう別れたと思ってた。
あんなにモテてたから女に鞍替えしたか?嫌がらせの意味も込めてそれまで以上に写真撮ったっけ。
そか…上手くいったんだ。
佐々城はそんなに魅力的に見えなかったけど、なんか惜しいことしたのか?…俺。
秋の連休に実家に帰った。
「佐々城、久しぶり。元気?」
『久しぶり、どしたの?』
えっ?これが佐々城の声?暗さは一切なく、弾むような話し方は別人のようだ。
一年半の間に何があった?
「ああ、実家帰ってきたから、どうしてるかなって。家、行って良い?」
聡史にも会えるから一石二鳥。ついでになんか奢らせよう。
女、紹介してもらうつもりだったけど、たちまち遠距離になる。そんなのはごめんだ。好きになった相手なら頑張れるかもしんないけど、さあこれから付き合うぞって相手とは無理。
あんなに必死だった聡史が一度も会いに来なかったんだ。遠距離なんて何が起こるかわからない。
『僕、実家出てて、友だちと一緒に住んでるから無理だよ』
知ってるよ。
それにしてもこの声は本当に佐々城か?佐々城の顔を思い浮かべ、今の声を思い出す。
あれ?可愛いんじゃないか?
「ああ、聡史だろ?」
『えっ?』
「あれ?聞いてない?俺は聡史から頼まれて、佐々城の写真送ってたんだけど」
『聞いてない…』
こんな不機嫌な声も初めて聞いた。
こんなに感情を表に出す奴だったか?いつも淡々としてた。
「あー、悪い。佐々城、怒るなよ」
『うん』
「佐々城のとこは、また今度にするよ。喧嘩するなよ」
びっくりした。
うんって呟く声にどきっとした。
やっぱり、失敗したのか?
聡史がいない間に冗談抜きに狙えば良かったのか?
いやいや、それはない。
可愛いけど、男だぞ?
ないけど、聡史にしてもらう『お礼』を思いついた。奢ってもらうより楽しそう。
それから一ヶ月後。
佐々城に電話して三人で会う約束をする。
聡史に聞いてからでいい?はにかんで返事する声は甘い。この前の不機嫌な声にも驚いたけど、なんだよ。何が違うんだ。
行き先はどこでも良かった。動物園なんかどう?どこでも良いよ?やっぱり弾んだ声は大学の時には聞いたことがなかった。
聡史にも電話する。
「六年前の約束覚えてる?あれ、まだ有効だよな?俺、頼みたいことがあるんだよ」
『なんだよ、今頃か?』
「良いだろ?四年間俺、頑張ったんだけどな」
『わかったよ。何が良いんだよ?』
「佐々城とデート」
『お前!それはダメだ!』
「なんだよ、良いだろ?」
『でも…』
「ほんと、佐々城には弱いんだな。大学の時もぐちゃぐちゃ悩んでたけど、結局佐々城はずっと聡史の事が好きだったみたいなのにさ。お前案外押しが弱いんだな?」
『悪いか』
「大丈夫だよ。佐々城はお前の事が好きなんだろ」
『当たり前だ』
「じゃあ、良いだろ?信用してないのか?」
あれ、まだ有効だよな?
俺、頼みたいことがあるんだよ」
◇◇◇◇◇
聡史に変なことを頼まれたのは高校を卒業してしばらく経った、三月も半ばだった。
俺が狙っても…それは聡史をからかうためだった。必死な聡史は初めて見た。
佐々城のセーラー服姿は可愛かった。こんな女子高生がいたら直ぐに告ってるだろう。ちょー俺好みだった。
でも、男だよ?
別に男同士で付き合ってる奴をどうこう言うつもりはないけど、自分がと思うとあり得ない。
それにちょっと暗いんだよ。『地味』って言葉がぴったり。眼鏡もなんか似合ってない。あの写真は眼鏡かけてなかったな。いつも寂しげで、ノリも悪い。考え方も硬くて俺とは合わない。
聡史に頼まれなければ四年間一緒に居なかったと思うよ。
写真は撮って送った。こんなん見て何が楽しいの?と正直思ったけど引き受けたからには仕方ない。
せいぜい恩を売って女でも紹介してもらおう…なんて考えてた。
就職して一年経った頃聡史から連絡があった。
一緒に住むんだって。
上手くいったんだな。あんなに必死だったのに結局一度も佐々城を訪ねて来なかった。
もう良いと言われなかったから写真は送り続けたし、様子も知らせた。けど、もう別れたと思ってた。
あんなにモテてたから女に鞍替えしたか?嫌がらせの意味も込めてそれまで以上に写真撮ったっけ。
そか…上手くいったんだ。
佐々城はそんなに魅力的に見えなかったけど、なんか惜しいことしたのか?…俺。
秋の連休に実家に帰った。
「佐々城、久しぶり。元気?」
『久しぶり、どしたの?』
えっ?これが佐々城の声?暗さは一切なく、弾むような話し方は別人のようだ。
一年半の間に何があった?
「ああ、実家帰ってきたから、どうしてるかなって。家、行って良い?」
聡史にも会えるから一石二鳥。ついでになんか奢らせよう。
女、紹介してもらうつもりだったけど、たちまち遠距離になる。そんなのはごめんだ。好きになった相手なら頑張れるかもしんないけど、さあこれから付き合うぞって相手とは無理。
あんなに必死だった聡史が一度も会いに来なかったんだ。遠距離なんて何が起こるかわからない。
『僕、実家出てて、友だちと一緒に住んでるから無理だよ』
知ってるよ。
それにしてもこの声は本当に佐々城か?佐々城の顔を思い浮かべ、今の声を思い出す。
あれ?可愛いんじゃないか?
「ああ、聡史だろ?」
『えっ?』
「あれ?聞いてない?俺は聡史から頼まれて、佐々城の写真送ってたんだけど」
『聞いてない…』
こんな不機嫌な声も初めて聞いた。
こんなに感情を表に出す奴だったか?いつも淡々としてた。
「あー、悪い。佐々城、怒るなよ」
『うん』
「佐々城のとこは、また今度にするよ。喧嘩するなよ」
びっくりした。
うんって呟く声にどきっとした。
やっぱり、失敗したのか?
聡史がいない間に冗談抜きに狙えば良かったのか?
いやいや、それはない。
可愛いけど、男だぞ?
ないけど、聡史にしてもらう『お礼』を思いついた。奢ってもらうより楽しそう。
それから一ヶ月後。
佐々城に電話して三人で会う約束をする。
聡史に聞いてからでいい?はにかんで返事する声は甘い。この前の不機嫌な声にも驚いたけど、なんだよ。何が違うんだ。
行き先はどこでも良かった。動物園なんかどう?どこでも良いよ?やっぱり弾んだ声は大学の時には聞いたことがなかった。
聡史にも電話する。
「六年前の約束覚えてる?あれ、まだ有効だよな?俺、頼みたいことがあるんだよ」
『なんだよ、今頃か?』
「良いだろ?四年間俺、頑張ったんだけどな」
『わかったよ。何が良いんだよ?』
「佐々城とデート」
『お前!それはダメだ!』
「なんだよ、良いだろ?」
『でも…』
「ほんと、佐々城には弱いんだな。大学の時もぐちゃぐちゃ悩んでたけど、結局佐々城はずっと聡史の事が好きだったみたいなのにさ。お前案外押しが弱いんだな?」
『悪いか』
「大丈夫だよ。佐々城はお前の事が好きなんだろ」
『当たり前だ』
「じゃあ、良いだろ?信用してないのか?」
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