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番外編ー4 岸井の満願成就
03
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次の日の昼休み、安達先輩と慎二先輩と三人でまた第二体育館の裏。
「お前、またここかよ?」
安達先輩は不機嫌だ。
でも、俺は知ってる。朝一で謝りに行った。教室はまずいと思ったから、下駄箱で待った。
すると、ちょーご機嫌。口笛吹いてスキップしそう…いや、それはなかったけど、鼻歌歌ってた。歌が何かはわからなかったけど、これは今しかないと謝った。
「申し訳ございませんでした」
90度腰を折り丁寧に謝ると「おう、昼な」とスタスタと足早に靴を履き替え遠ざかる。
俺を見る目はそりゃ笑顔じゃなかったけど、ブチ切れ…でもなかった。
良いことあったんだ…。
そかそか…。
その方が俺にも都合が良いよな?
「グラウンドでも良かったけど、校舎からけっこう見えんぞ?何してるって佐々城が見たら気にするだろ?」
「ああ、まあな」
「あの…佐々城さんは?怒っておられますか?」
「篤紀はそんなことで怒ったりしないよ」
ありゃりゃ…呼び方まで変わってる。
「大体のことは松本に聞いた。お前本気?」
「はい!本気も本気」
「だってさ、松本。モテモテだな」
「俺は受けてない!」
「そうなのか?」
「あ、当たり前だろ?岸井だぞ?」
「あっ?なんすか、それ?俺以外なら男もOKみたいな…?」
そりゃないよ…気持ちが沈んでしまう。
安達先輩は俺が佐々城さんに近づかないと約束したら許してくれた。佐々城さんの希望だそうだ。
佐々城さんは怒ってないらしいです。
良い人です。
そんな良い人を…俺はバカだった。
謝りたいと言ったら、それは安達先輩から却下された。怒ってはないけど佐々城さんが俺に会って嫌なこと思い出したらかわいそう…安達先輩はあくまで佐々城さんLOVEなのだ。
俺は慎二先輩LOVE。
もし直接会って謝らせてもらって、また会っても良いよって言ってもらえたらさ、四人でダブルデートなんて良いと思わない?
ぐふふっ…。
ジュルっと唾を飲み込んでたら慎二先輩が睨んでくる。
安達先輩は先に教室に戻り今は二人きり。慎二先輩も一緒に帰ろうとしたのを腕を掴んで残ってもらった。
「先輩…ダメですか?大切にします」
「俺は勉強、岸井はサッカー、それぞれすることがあるだろう?」
「そんな…じゃあ、先輩が大学入って、俺が来年の夏の大会頑張ったら…」
ダメだ。
程良い緩さの我が部は、俺が一人息巻いてもどうにかなるものでもない。全国出場なんて夢のまた夢。いや、地区大会さえどれだけ行けるかわからねぇのに…。
うな垂れて深く、地底深く埋もれてしまいそうになってるのに慎二先輩は笑ってる。
「な、何笑ってくれちゃってんですか?」
涙が出てきて慎二先輩の顔が見られない。
「お前、必死なのな」
ククッと笑い俺の頭を小突く。
「正直さ、岸井と付き合うとか全然考えてなかったからさ。昨日聞いてからも、まあちょっとは考えてみたけどよ…。やっぱ、ないな…」
「えっ!」
「最後まで聞けよ」
「…はい」
「まあ、今はな…俺も今のままじゃヤバイからさ…大学。余計なこと考えたくないんだわ。また、練習にも行くからさ」
「じゃあ…保留ってこと?」
考えてくれるってこと?
「期待するなよ?」
いや、期待するよ!でもここでごねても先輩の返事が変わるわけないし、もしかしたらじゃあ、ってすっぱりと『ごめんなさい』って断られたら嫌だ。
「わかりました。もう教室行けないから…先輩、また練習来てくださいね」
失敗したな…あんなことしなければ、会いに行けたのに…。
携帯の連絡先は知ってる。
「先輩、携帯に連絡入れて良いっすか?」
「おう、ラインな。お前、間違って部のグループに俺宛の入れるんじゃないぞ?なんか怖そう…」
あ~…居たなそんな失敗した奴。
なぜ間違えるか不明だが、愛の告白を部のグループに乗っけやがった。一斉に攻撃されてたな…。相手の名前がわからなかったから噂は広がらなかったけど、しばらくからかわれてた。
「わかりました。先輩だけに愛のあるやつを送ります」
「いや、愛はなくていい。ほら、戻るぞ」
「はい!」
まあ、完全拒絶じゃなかったことを喜ばなきゃだな。
まだチャンスはあるんだ。
「お前、またここかよ?」
安達先輩は不機嫌だ。
でも、俺は知ってる。朝一で謝りに行った。教室はまずいと思ったから、下駄箱で待った。
すると、ちょーご機嫌。口笛吹いてスキップしそう…いや、それはなかったけど、鼻歌歌ってた。歌が何かはわからなかったけど、これは今しかないと謝った。
「申し訳ございませんでした」
90度腰を折り丁寧に謝ると「おう、昼な」とスタスタと足早に靴を履き替え遠ざかる。
俺を見る目はそりゃ笑顔じゃなかったけど、ブチ切れ…でもなかった。
良いことあったんだ…。
そかそか…。
その方が俺にも都合が良いよな?
「グラウンドでも良かったけど、校舎からけっこう見えんぞ?何してるって佐々城が見たら気にするだろ?」
「ああ、まあな」
「あの…佐々城さんは?怒っておられますか?」
「篤紀はそんなことで怒ったりしないよ」
ありゃりゃ…呼び方まで変わってる。
「大体のことは松本に聞いた。お前本気?」
「はい!本気も本気」
「だってさ、松本。モテモテだな」
「俺は受けてない!」
「そうなのか?」
「あ、当たり前だろ?岸井だぞ?」
「あっ?なんすか、それ?俺以外なら男もOKみたいな…?」
そりゃないよ…気持ちが沈んでしまう。
安達先輩は俺が佐々城さんに近づかないと約束したら許してくれた。佐々城さんの希望だそうだ。
佐々城さんは怒ってないらしいです。
良い人です。
そんな良い人を…俺はバカだった。
謝りたいと言ったら、それは安達先輩から却下された。怒ってはないけど佐々城さんが俺に会って嫌なこと思い出したらかわいそう…安達先輩はあくまで佐々城さんLOVEなのだ。
俺は慎二先輩LOVE。
もし直接会って謝らせてもらって、また会っても良いよって言ってもらえたらさ、四人でダブルデートなんて良いと思わない?
ぐふふっ…。
ジュルっと唾を飲み込んでたら慎二先輩が睨んでくる。
安達先輩は先に教室に戻り今は二人きり。慎二先輩も一緒に帰ろうとしたのを腕を掴んで残ってもらった。
「先輩…ダメですか?大切にします」
「俺は勉強、岸井はサッカー、それぞれすることがあるだろう?」
「そんな…じゃあ、先輩が大学入って、俺が来年の夏の大会頑張ったら…」
ダメだ。
程良い緩さの我が部は、俺が一人息巻いてもどうにかなるものでもない。全国出場なんて夢のまた夢。いや、地区大会さえどれだけ行けるかわからねぇのに…。
うな垂れて深く、地底深く埋もれてしまいそうになってるのに慎二先輩は笑ってる。
「な、何笑ってくれちゃってんですか?」
涙が出てきて慎二先輩の顔が見られない。
「お前、必死なのな」
ククッと笑い俺の頭を小突く。
「正直さ、岸井と付き合うとか全然考えてなかったからさ。昨日聞いてからも、まあちょっとは考えてみたけどよ…。やっぱ、ないな…」
「えっ!」
「最後まで聞けよ」
「…はい」
「まあ、今はな…俺も今のままじゃヤバイからさ…大学。余計なこと考えたくないんだわ。また、練習にも行くからさ」
「じゃあ…保留ってこと?」
考えてくれるってこと?
「期待するなよ?」
いや、期待するよ!でもここでごねても先輩の返事が変わるわけないし、もしかしたらじゃあ、ってすっぱりと『ごめんなさい』って断られたら嫌だ。
「わかりました。もう教室行けないから…先輩、また練習来てくださいね」
失敗したな…あんなことしなければ、会いに行けたのに…。
携帯の連絡先は知ってる。
「先輩、携帯に連絡入れて良いっすか?」
「おう、ラインな。お前、間違って部のグループに俺宛の入れるんじゃないぞ?なんか怖そう…」
あ~…居たなそんな失敗した奴。
なぜ間違えるか不明だが、愛の告白を部のグループに乗っけやがった。一斉に攻撃されてたな…。相手の名前がわからなかったから噂は広がらなかったけど、しばらくからかわれてた。
「わかりました。先輩だけに愛のあるやつを送ります」
「いや、愛はなくていい。ほら、戻るぞ」
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まあ、完全拒絶じゃなかったことを喜ばなきゃだな。
まだチャンスはあるんだ。
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