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番外編ー4 岸井の満願成就
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先輩が卒業した。
勉強の甲斐あって第一志望の大学に受かって、完全に会えなくなった。
安達先輩も一緒の大学。でも、佐々城さんは違う大学で、離れ離れになったらしい。今日の安達先輩は元気がなかった。そうか…会えないのは辛いだろうな…俺も辛い。
慎二先輩は俺が最後までサッカー頑張るのを応援してくれたから、まあ、全力で行きますよ~。
最後の大会は見に来てくれた。他の先輩たちと一緒だったけど、嬉しかった。俺たちの学年はみんな同じくらいのレベルで、エースと呼べる奴がいない。だから、一回戦負け…悔しい。
俺、色ボケせずに頑張ったんだぜ。
泣きたくなんかなかったけど、試合終わって、最後のミーティング終わって、外に出れば慎二先輩がいてくれた。
「頑張ったな。かっこ良かったぞ?」
って笑ってくれたから、抱きついて泣いてしまった。
慎二先輩が悪いんだ。
それまで我慢してたのに。先輩が優しいから。俺は、俺は、うぇ~ん…。
先輩の事狙ってるって知ってるのに…そんなに優しくしないでよ…。まだ受け入れてくれてないのにさ…期待しちゃうよ?もしかしてって…。
この頭を撫でてくれる手もさ…。
ここが外じゃなくって、二人っきりで…そしたらさ、キスなんかしちゃうよ?
でも、サッカー終わったら先輩との繋がりが切れちゃう。サッカーしてなかったら、先輩との接点ないじゃん…。そんなこと考えたら、涙が止まらない。
「そんなに悔しかったのか?頑張ったんだから…」
「ちが、…違くて…」
「何が違うんだ?」
俺の目線に合わせて顔を覗き込んでくれる先輩は、優しい。
「…サッカー、してなかったら、先輩に会えない」
「ああ、お前、まだ諦めてないの?」
「なっ!そうですよ?全然諦めてなんかないですよ。この頃、ますます恋しくて…」
「…じゃあ、まあ…そ、だな…俺と同じ大学来いよ。そしたら、考えてやる」
「俺、俺!密かに頑張ってました!サッカーも頑張ったけど、勉強も同じ大学行きたかったから!」
「そうなのか?」
「はい!」
「岸井って一途なのな」
「あの…、そろそろ名前で呼んでもらっても良いですか?」
「晃穂だろ?」
「知っててくれたんすか?嬉しい」
「知ってるさ。でもな…彰がいるんだよ」
「へっ?彰?先輩、俺はダメで、違う男のとこ行くんすか?や、やめて下さいよ!」
「人の話はちゃんと聞きなさい」
コツンとデコピンを喰らい撃沈しました…はい。
「安達の事、聡史って名前で呼ばないのもそう。悟って奴がいて、伸吾って奴がいたんだよ。中学のサッカー部の時な。ややこしいだろ?他にも似た名前の奴がいてさ、俺たちの学年はみんな名字で呼ぶって決めて。そして彰がいる。彰はサッカー部じゃなかったけどな」
「じゃあ、じゃあ、晃で良いです!呼んで下さい!」
「一緒じゃないか?かぶってるとこ呼ぶんなら」
「お願いしますよ。安達先輩が佐々城さんの事、篤紀って呼ぶの聞くたび俺も呼んで欲しいなって…」
「わかったよ。でも、二人の時だけな」
「はい!」
最初の頃は二人でいる時は『狙われてる』って意識してかぎこちない態度だったけど、卒業の頃には一緒に帰ってくれる時もあった。
気分転換に練習に参加した時とか、図書館で勉強してたと俺が終わる頃に連絡してくれたりした。けど、大学生の先輩とはなかなか会えない。
俺は受験生だから勉強しなくちゃ。同じ大学行くって目標もある。でもさ、会いたいよね?顔を見ると勉強もやる気が出る。
「先輩…あのぉ、お願いが、あるん、です…」
勉強の甲斐あって第一志望の大学に受かって、完全に会えなくなった。
安達先輩も一緒の大学。でも、佐々城さんは違う大学で、離れ離れになったらしい。今日の安達先輩は元気がなかった。そうか…会えないのは辛いだろうな…俺も辛い。
慎二先輩は俺が最後までサッカー頑張るのを応援してくれたから、まあ、全力で行きますよ~。
最後の大会は見に来てくれた。他の先輩たちと一緒だったけど、嬉しかった。俺たちの学年はみんな同じくらいのレベルで、エースと呼べる奴がいない。だから、一回戦負け…悔しい。
俺、色ボケせずに頑張ったんだぜ。
泣きたくなんかなかったけど、試合終わって、最後のミーティング終わって、外に出れば慎二先輩がいてくれた。
「頑張ったな。かっこ良かったぞ?」
って笑ってくれたから、抱きついて泣いてしまった。
慎二先輩が悪いんだ。
それまで我慢してたのに。先輩が優しいから。俺は、俺は、うぇ~ん…。
先輩の事狙ってるって知ってるのに…そんなに優しくしないでよ…。まだ受け入れてくれてないのにさ…期待しちゃうよ?もしかしてって…。
この頭を撫でてくれる手もさ…。
ここが外じゃなくって、二人っきりで…そしたらさ、キスなんかしちゃうよ?
でも、サッカー終わったら先輩との繋がりが切れちゃう。サッカーしてなかったら、先輩との接点ないじゃん…。そんなこと考えたら、涙が止まらない。
「そんなに悔しかったのか?頑張ったんだから…」
「ちが、…違くて…」
「何が違うんだ?」
俺の目線に合わせて顔を覗き込んでくれる先輩は、優しい。
「…サッカー、してなかったら、先輩に会えない」
「ああ、お前、まだ諦めてないの?」
「なっ!そうですよ?全然諦めてなんかないですよ。この頃、ますます恋しくて…」
「…じゃあ、まあ…そ、だな…俺と同じ大学来いよ。そしたら、考えてやる」
「俺、俺!密かに頑張ってました!サッカーも頑張ったけど、勉強も同じ大学行きたかったから!」
「そうなのか?」
「はい!」
「岸井って一途なのな」
「あの…、そろそろ名前で呼んでもらっても良いですか?」
「晃穂だろ?」
「知っててくれたんすか?嬉しい」
「知ってるさ。でもな…彰がいるんだよ」
「へっ?彰?先輩、俺はダメで、違う男のとこ行くんすか?や、やめて下さいよ!」
「人の話はちゃんと聞きなさい」
コツンとデコピンを喰らい撃沈しました…はい。
「安達の事、聡史って名前で呼ばないのもそう。悟って奴がいて、伸吾って奴がいたんだよ。中学のサッカー部の時な。ややこしいだろ?他にも似た名前の奴がいてさ、俺たちの学年はみんな名字で呼ぶって決めて。そして彰がいる。彰はサッカー部じゃなかったけどな」
「じゃあ、じゃあ、晃で良いです!呼んで下さい!」
「一緒じゃないか?かぶってるとこ呼ぶんなら」
「お願いしますよ。安達先輩が佐々城さんの事、篤紀って呼ぶの聞くたび俺も呼んで欲しいなって…」
「わかったよ。でも、二人の時だけな」
「はい!」
最初の頃は二人でいる時は『狙われてる』って意識してかぎこちない態度だったけど、卒業の頃には一緒に帰ってくれる時もあった。
気分転換に練習に参加した時とか、図書館で勉強してたと俺が終わる頃に連絡してくれたりした。けど、大学生の先輩とはなかなか会えない。
俺は受験生だから勉強しなくちゃ。同じ大学行くって目標もある。でもさ、会いたいよね?顔を見ると勉強もやる気が出る。
「先輩…あのぉ、お願いが、あるん、です…」
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