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それでも素直になれなくて…
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「あいつ、合鍵持ってるんだ」
「そうなんだ…。じゃあ、俺ん家来るしかないな」
のぼせてしまいそうなので、風呂から上がった。何に着替えようと思い、直輝に相談した。ここで寝るのは怖かった。だから、パジャマには着替えることはできない。でも、外で過ごすのも、もう限界だった。
「今までどうしてたの?」
「んっ、いろいろ…」
「ごめんな。俺が意地になってなかったら、もっと早く助けてやれたのに。あいつに触られることもなかった。こんなに痩せて」
「そんなに痩せてないよ?」
「どんな睦己でも好きだけど、もう少し肉付きが良い方が触り心地が良いかな」
抱き寄せ確かめるように、腰やお腹、背中を触る。腰にタオルを巻いただけの裸の身体は、大好きな直輝の手を喜んで受け入れる。
「はぅ…んっ…」
火照った肌が更に真っ赤に染まる。
「このまま抱きたい……でも、腹減った!睦己の身体も心配だし。俺ん家行こ?睦己は逃げないだろ?これからはいつも一緒だ。こんなとこ、一秒でも一人で置いとけない。合鍵が無くても母親があいつの側なら、尚更だ」
制服を着て、出掛ける準備をした。制服は嵩張るのだ。シワにもなる。直輝も来た時と同じ制服を着ている。いつもの荷物より少し多めに服を鞄に詰めた。勉強道具が殆ど無いことに、直輝が辛そうな顔をする。鞄に入ってた服や歯ブラシにも泣きそうな顔をした。
「俺が守るから。残りの荷物は、また一緒に取りに来よう」
戸締りをして、愛着があるような、ないようなアパートを後にする。
住み慣れた場所ではあるけれど、暖かな場所ではなかった。母親の愛情を感じたこともなければ、その愛情を欲しいと願った小さな頃の記憶は彼方に追いやられた。今となっては嫌な記憶が鮮明で、直輝じゃないけど一人では入れそうもない。
もう少し落ち着いたら、母親とも話さなければならないだろう。
探すかな?
いや、探すわけないか。どうだろ?
樽本とどんな約束したんだろう?
僕を売って、金でも貰ってたら、探すかな?
「睦己?」
「んっ?」
「何か、難しい顔してる」
「うん…」
「俺も一緒に考えるから、今は飯だよ!早く帰ろ。腹減った」
「ははっ、そうだね」
◇◇◇◇◇
「しばらく…いや、ずっとになるかもしれないけど、睦己をここに住まわせて欲しいんだ」
晩御飯を食べた後、直輝とご両親の前で頭を下げた。
突然来たのに嫌な顔も見せずに晩御飯の準備をしてくれた。今までも数々の恩があるのに、更にお願いをしなければならない。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
現状を包み隠さず話した。
母親と樽本の事。ここ一週間ほどの僕の生活。直輝にもちゃんと言っていなかったから、凄く辛そうな顔をした。アパートには帰りたくないが、お金もなく、頼る親戚もない。
「これからアルバイトするので、お金は入れさせてもらいます。お願いします」
頭を下げる僕の横で、直輝も一緒に頼んでくれた。ご両親は顔を見合わせ、頷きあった。
「安村くん、大変だったね。このバカは恋人がこんな目にあってるのに一週間も放ったらかしだったんだね。ごめんね。最近来てなかったから心配してたんだよ。直輝に聞いても、ふて腐れるだけで安村くんの事教えてくれないから」
「そんな…僕が悪いんです」
「良いよ。部屋は眞里子と恵一郎の部屋があるから、好きな方使ったら良い。但し、直輝と同じ部屋はダメ」
「えー!俺は一緒が良いのに」
直輝にはお姉さんとお兄さんがいる。お姉さんの眞里子さんは社会人で、ここから電車で一時間くらいの街で一人暮らしをしている。お兄さんの恵一郎さんは大学生で、こちらも電車で二時間くらいの大学の近くでアパートを借りて一人暮らしだ。
「まだ高校生だろ?色ボケするのはまだ早い。何もずっと別々に過ごせなんて言ってないだろ?一緒にご飯を食べて、一緒に勉強をしたらいい。でも、お互いに一人になりたい時だってあるだろう?初めから一緒じゃ、一人になりたい時に困るだろう?寝る時に別々なら喧嘩しても朝になったらリセットされるだろうしな」
「喧嘩なんかしないし」
「どの口が言うんだ?今の今まで安村くんを放ったらかしにしてたのは喧嘩が原因なんじゃないのか?」
「ゔっ……でも、もし喧嘩しても、一緒に寝たらっ、痛っ!痛い、叩くなよ」
「何バカなこと言ってるんだ。ホントに…」
「あの、ありがとうございます。直ぐにバイト見つけます」
「そのことだけど、アルバイトはうちの店でしたらいいんじゃない?通う手間もないし。ねえ、お父さん」
「ああ、俺もそれ考えてた」
「良いんですか?」
「あっ、それ良い。俺も安心だよ。ありがとう。父さん、母さん」
「そうなんだ…。じゃあ、俺ん家来るしかないな」
のぼせてしまいそうなので、風呂から上がった。何に着替えようと思い、直輝に相談した。ここで寝るのは怖かった。だから、パジャマには着替えることはできない。でも、外で過ごすのも、もう限界だった。
「今までどうしてたの?」
「んっ、いろいろ…」
「ごめんな。俺が意地になってなかったら、もっと早く助けてやれたのに。あいつに触られることもなかった。こんなに痩せて」
「そんなに痩せてないよ?」
「どんな睦己でも好きだけど、もう少し肉付きが良い方が触り心地が良いかな」
抱き寄せ確かめるように、腰やお腹、背中を触る。腰にタオルを巻いただけの裸の身体は、大好きな直輝の手を喜んで受け入れる。
「はぅ…んっ…」
火照った肌が更に真っ赤に染まる。
「このまま抱きたい……でも、腹減った!睦己の身体も心配だし。俺ん家行こ?睦己は逃げないだろ?これからはいつも一緒だ。こんなとこ、一秒でも一人で置いとけない。合鍵が無くても母親があいつの側なら、尚更だ」
制服を着て、出掛ける準備をした。制服は嵩張るのだ。シワにもなる。直輝も来た時と同じ制服を着ている。いつもの荷物より少し多めに服を鞄に詰めた。勉強道具が殆ど無いことに、直輝が辛そうな顔をする。鞄に入ってた服や歯ブラシにも泣きそうな顔をした。
「俺が守るから。残りの荷物は、また一緒に取りに来よう」
戸締りをして、愛着があるような、ないようなアパートを後にする。
住み慣れた場所ではあるけれど、暖かな場所ではなかった。母親の愛情を感じたこともなければ、その愛情を欲しいと願った小さな頃の記憶は彼方に追いやられた。今となっては嫌な記憶が鮮明で、直輝じゃないけど一人では入れそうもない。
もう少し落ち着いたら、母親とも話さなければならないだろう。
探すかな?
いや、探すわけないか。どうだろ?
樽本とどんな約束したんだろう?
僕を売って、金でも貰ってたら、探すかな?
「睦己?」
「んっ?」
「何か、難しい顔してる」
「うん…」
「俺も一緒に考えるから、今は飯だよ!早く帰ろ。腹減った」
「ははっ、そうだね」
◇◇◇◇◇
「しばらく…いや、ずっとになるかもしれないけど、睦己をここに住まわせて欲しいんだ」
晩御飯を食べた後、直輝とご両親の前で頭を下げた。
突然来たのに嫌な顔も見せずに晩御飯の準備をしてくれた。今までも数々の恩があるのに、更にお願いをしなければならない。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
現状を包み隠さず話した。
母親と樽本の事。ここ一週間ほどの僕の生活。直輝にもちゃんと言っていなかったから、凄く辛そうな顔をした。アパートには帰りたくないが、お金もなく、頼る親戚もない。
「これからアルバイトするので、お金は入れさせてもらいます。お願いします」
頭を下げる僕の横で、直輝も一緒に頼んでくれた。ご両親は顔を見合わせ、頷きあった。
「安村くん、大変だったね。このバカは恋人がこんな目にあってるのに一週間も放ったらかしだったんだね。ごめんね。最近来てなかったから心配してたんだよ。直輝に聞いても、ふて腐れるだけで安村くんの事教えてくれないから」
「そんな…僕が悪いんです」
「良いよ。部屋は眞里子と恵一郎の部屋があるから、好きな方使ったら良い。但し、直輝と同じ部屋はダメ」
「えー!俺は一緒が良いのに」
直輝にはお姉さんとお兄さんがいる。お姉さんの眞里子さんは社会人で、ここから電車で一時間くらいの街で一人暮らしをしている。お兄さんの恵一郎さんは大学生で、こちらも電車で二時間くらいの大学の近くでアパートを借りて一人暮らしだ。
「まだ高校生だろ?色ボケするのはまだ早い。何もずっと別々に過ごせなんて言ってないだろ?一緒にご飯を食べて、一緒に勉強をしたらいい。でも、お互いに一人になりたい時だってあるだろう?初めから一緒じゃ、一人になりたい時に困るだろう?寝る時に別々なら喧嘩しても朝になったらリセットされるだろうしな」
「喧嘩なんかしないし」
「どの口が言うんだ?今の今まで安村くんを放ったらかしにしてたのは喧嘩が原因なんじゃないのか?」
「ゔっ……でも、もし喧嘩しても、一緒に寝たらっ、痛っ!痛い、叩くなよ」
「何バカなこと言ってるんだ。ホントに…」
「あの、ありがとうございます。直ぐにバイト見つけます」
「そのことだけど、アルバイトはうちの店でしたらいいんじゃない?通う手間もないし。ねえ、お父さん」
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