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彼女がどう思うかは知らないけど、僕が納得していたら良いんだろ?
「か、彼女に悪いだろ?」
「彼女!?」
「うん…」
「彼女って誰だよ?」
「良いんだ…本当は嫌だけど、良いんだ、セフレでも…。僕は太一の事好きだから。お願い、別れるなんて言わないで……
!…ゴメン、負担になるよね…もう、こんなことも言わない。だから…」
「良くない!彼女なんていない!司だけだよ!どこで勘違いする?こんなに愛してるのに!」
「だって…」
「だって?」
「見たんだ。この部屋から出て行く綺麗な人。いつも水曜日に来てただろ?掃除して、料理作って」
「あ!あ~それな…彼女じゃないから」
「へ?」
でも、誰かがこの部屋に来ていたことは認めるんだ。じゃあ、便利に使ってるってこと?
「顔見た?」
「ううん…ちゃんと見てない。ショックでそれどころじゃなかったから」
「見ればわかったのに。あれは明菜さん」
明菜さんは太一のお母さん。一、二度しか会ったことないけど、綺麗な人だ。二十歳で結婚して直ぐに太一が生まれた。若い明菜さんはママやお母さんと呼ばれるのを嫌がり、息子にも名前で呼ばせる。勿論、僕も。
「もしかして…今まで一度も泊まったことなかったのってそれが原因?」
「うん。悪いなって思って…」
「でも、それでも俺の側にいたいって思ってたってこと?」
「うん。好きだから」
「!…何だよ。凄い告白」
だって、それは本心だから。
「どうして、明菜さんが来てるって言ってくれなかったの?」
「かっこ悪いだろ?それに、聞かなかった」
「かっこ悪くないよ?聞かなかったのは彼女って言われて、この関係が終わるのが嫌だったから」
「この歳で、母親に掃除してもらってるってさ…恥ずかしくって言えなかった。もしかして、気付いててもスルーしてくれてるのかなって思ってたくらいだよ。まさか、彼女と勘違いしてるなんて夢にも思わなかった」
「でも、凄いね。週一で掃除に来るなんて」
「そりゃ、俺のダメダメぶりに放っておくと大変なことになるのはわかってるから。でも、司が手伝ってくれるから、最近はそんなに散らかってなくて、明菜さん喜んでた。その分デパート寄ったり、お茶したり結構楽しんでるみたいだよ?司が嫌なら、もう来なくても良いって言うから。明菜さんも、あとは料理を練習しなさいって。そうすれば来なくて良いよねって言ってたからさ」
そうなんだ…。僕が毎日通えるんだから、週に一度来るくらい何てことないのかもしれないけど。当て付けのように掃除手伝ったり、洗濯したりした。彼女には敵わないと思いながらも、少しばかりの抵抗だった。
「じゃあ、疑いも晴れたことだし、今日からは泊まれるよな?おばさんには俺が電話するから」
キスの雨が降る。
僕の目からは涙が溢れた。
「この涙は、泣くほど嬉しいってことだろう?」
END
「か、彼女に悪いだろ?」
「彼女!?」
「うん…」
「彼女って誰だよ?」
「良いんだ…本当は嫌だけど、良いんだ、セフレでも…。僕は太一の事好きだから。お願い、別れるなんて言わないで……
!…ゴメン、負担になるよね…もう、こんなことも言わない。だから…」
「良くない!彼女なんていない!司だけだよ!どこで勘違いする?こんなに愛してるのに!」
「だって…」
「だって?」
「見たんだ。この部屋から出て行く綺麗な人。いつも水曜日に来てただろ?掃除して、料理作って」
「あ!あ~それな…彼女じゃないから」
「へ?」
でも、誰かがこの部屋に来ていたことは認めるんだ。じゃあ、便利に使ってるってこと?
「顔見た?」
「ううん…ちゃんと見てない。ショックでそれどころじゃなかったから」
「見ればわかったのに。あれは明菜さん」
明菜さんは太一のお母さん。一、二度しか会ったことないけど、綺麗な人だ。二十歳で結婚して直ぐに太一が生まれた。若い明菜さんはママやお母さんと呼ばれるのを嫌がり、息子にも名前で呼ばせる。勿論、僕も。
「もしかして…今まで一度も泊まったことなかったのってそれが原因?」
「うん。悪いなって思って…」
「でも、それでも俺の側にいたいって思ってたってこと?」
「うん。好きだから」
「!…何だよ。凄い告白」
だって、それは本心だから。
「どうして、明菜さんが来てるって言ってくれなかったの?」
「かっこ悪いだろ?それに、聞かなかった」
「かっこ悪くないよ?聞かなかったのは彼女って言われて、この関係が終わるのが嫌だったから」
「この歳で、母親に掃除してもらってるってさ…恥ずかしくって言えなかった。もしかして、気付いててもスルーしてくれてるのかなって思ってたくらいだよ。まさか、彼女と勘違いしてるなんて夢にも思わなかった」
「でも、凄いね。週一で掃除に来るなんて」
「そりゃ、俺のダメダメぶりに放っておくと大変なことになるのはわかってるから。でも、司が手伝ってくれるから、最近はそんなに散らかってなくて、明菜さん喜んでた。その分デパート寄ったり、お茶したり結構楽しんでるみたいだよ?司が嫌なら、もう来なくても良いって言うから。明菜さんも、あとは料理を練習しなさいって。そうすれば来なくて良いよねって言ってたからさ」
そうなんだ…。僕が毎日通えるんだから、週に一度来るくらい何てことないのかもしれないけど。当て付けのように掃除手伝ったり、洗濯したりした。彼女には敵わないと思いながらも、少しばかりの抵抗だった。
「じゃあ、疑いも晴れたことだし、今日からは泊まれるよな?おばさんには俺が電話するから」
キスの雨が降る。
僕の目からは涙が溢れた。
「この涙は、泣くほど嬉しいってことだろう?」
END
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