見ぃつけた。

茉莉花 香乃

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第二章

04

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元の部屋に戻ると碧空くんが待ってた。怒ったようなほっとしたような複雑な顔だった。

「帰るぞ」

ぶっきらぼうにそう言って部屋を出て行く。八城さんにお辞儀をして急いであとを追った。

「変なことされなかった?」
「えっ?変なことってどんなこと?」
「……キスとか…」

ちょっと赤くなってそんなことを言う碧空くんをマジマジ見た。なんか照れてます?可愛い…。イケメンさんに可愛いって変かもだけど、照れてる顔可愛い!

「キスなんて、されてないよ」

ほっと息を吐き咳払いをして、じっと僕を見た。本当のことを言ってるとわかったのか話題を変えた。

「話って何だったんだ?」
「えっと…」

えっと…なんて言おう?
恋人の振りをしましょうと申し込まれました。
……言えない。

「これから、この学校での楽しい過ごし方?」
「何だよ、それ?」

ほんとに、何でしょう?

「これから、新入生の歓迎行事があって、俺たち忙しいからさ…。何かあっても近くにいてやれないから…。人気のないとこに絶対行かないで」

これ紺野先生にも言われた。何故みんなそんなに心配するんだろう?僕ってそんなに頼りなく見えるのかな。迷子になんてならないよ!幼稚園児じゃないんだから!そりゃこの学校は広いし、まだ行ったことない場所もある。でも大丈夫だよ!

この一週間碧空くんが僕と一緒にいたことはなかった。でも、何度も目が合ったような気がする。直ぐに逸らされるから気のせいかと思ったけど…違ったのかな?
昼の食堂で見た時、碧空くんの隣にはいつも副会長の桜庭さんがいた。そうすると煩いハイエナのように纏わり付いてた子たちは近寄れないらしく、二人の仲は凄く親密に見えた。
そこに会長がいたり他の生徒会メンバーがいる時もあったけど副会長と碧空くんはいつも隣に座り誰にも間に入れない雰囲気があった。







今日は新入生の歓迎会がある。三年生の修学旅行が直ぐ後にあるから準備が大変なんだって、と教えてくれるのは同じクラスの筑紫ちくしくん。

筑紫くんの席が僕の席の隣で何かと構ってくれる。お昼ご飯も一緒にって誘ってくれるから紺野先生に一人で大丈夫ですと宣言していたけれど、今のところ一人で食べたことはない。牧野くんとも毎日じゃないけど一緒に食べる。
相変わらず、朝と夜は寮の自室で食べてるけど、朝は牧野くんが必ず一緒に食べてくれる。今までも、朝食は食べたり食べなかったりだったんだって。僕と一緒の朝食はいつもがっつり食べてるけどね。夜は数回一緒に食べた。噂されると僕に悪い影響があったら困るからなと心配してくれる。無理して付き合ってくれなくてもいいんだけど、そんなに可哀想に見えたのかな?

会長に散々幼稚園児扱いされたけど、牧野くんにも筑紫くんにも僕は頼りないと思われているのかもしれない。



昼食の後、体育館に全校生が集まる。
今日のメインは一年生。鬼ごっこ、するんだって。鬼ごっこなんて小学生の時にしたのが最後だ。
碧空くんが鬼の時はいつも直ぐに見つかってしまい、悔しかった。

一年生が逃げて、二、三年生が捕まえる。一年生は最後まで残った人に、二、三年生は十人捕まえた人に秘密の賞品があるらしい。何年か前までは一年生の勝者には『何でも一つ願いを叶えられる』っていう賞品・・だったんだけど、『会長の恋人にして下さい』ってお願いをした人がいたそうだ。困るよね…。会長の恋人は泣くは、その一年生は虐められるは散々な結末だったから、何でも一つのお願いはなくなったんだそうだ。賞品は知らされていないけどすっごくいい物だと思う。十人捕まえたら貰えるけど、僕には無理…。

「ルールはわかった?」

壇上で説明をしていた副会長の桜庭さんがみんなに聞いている。一年生から「はーい」と素直な声が聞こえ、二、三年生からは「桜ちゃんもう一回言って~」とふざけた声が聞こえた。
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