見ぃつけた。

茉莉花 香乃

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番外編

09

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美都瑠と二人で碧空くんの部屋にいる。碧空くんと横田くんは寮父の勘解由小路さんの所にいる。その他に誰がいるかわからないけれど、八城さんや先生が来ていると美都瑠が教えてくれた。

横田くんの部屋から出る時は横田くんは居なかった。押し込められた中谷くんの寝室から出る時、顔を見たくなくて目を瞑っていたけれど促すような優しい声で、怖くないよと言われ目を開けた。

廊下には野次馬がいたけれど、騒がしくはなく遠巻きに見ているだけだった。横抱きにされたまま美都瑠を伴って碧空くんの部屋に着く。碧空くんは出て行くことを何度も謝った。美都瑠に頼むと言うと幾度も振り向きながら部屋を出て行った。

「碧、何か飲む?」
「コ、…えっと、紅茶を」
「……?どうしたの?」
「なん、でもないよ」
「そう?なら、良いけど」

美都瑠に淹れてもらった紅茶を飲んで、一つ息を吐く。

「…手首…痛くない?」

遠慮がちに赤みの残る腕を見て心配そうな顔が聞いてくれる。

「うん。ここはね、そんなに痛くない」
「ここはって…っ…えっ?他に痛いとこあるの?」
「大丈夫!大丈夫だから。腕がね、ずっと括られてて同じ姿勢だったからかな…、少し痛いんだ」
「それだけ?殴られたりしてない?」

この部屋に来て碧空くんにも散々聞かれて、寝室でチェックされた。裸にされて隅々まで痣など、乱暴された痕がないかを丁寧に確認する。恥ずかしかったけど、真剣な碧空くんにこれ以上心配かけたくなくておとなしくされるがままに服を脱いだ。

「よかった…、ホントによかった」

碧空くんは小さな震える涙声で呟いた。

そこでようやく心底安心したと息を吐き僕の服を着せてくれた。着替えくらい自分でできるけれど、今は碧空くんのしたいようにさせてあげたかった。どのくらい探してくれていたのかは知らないけれど、窓の外は暗くなり始めていた。数時間は心配してくれていたんだと思うと申し訳なさと嬉しさが押し寄せる。

美都瑠は碧空くんから聞いて何もされていないのは知ってるからか、直ぐに落ち着いてくれた。

「取り乱してごめん」
「ううん。ありがとう。心配かけてごめんね」
「碧が謝らなくて良いよ。…何か食べる?」

美都瑠が冷蔵庫を覗きながら聞いてくれる。お腹は空いてないけれど、お願いすることにした。具たっぷりのクリームパスタは美味しかった。お腹が空いていないと思っていたけれど鼻腔をくすぐる良い匂いにぐるっと腹の虫が泣く。ゆっくりと時間をかけて全て食べることができた。

「美都瑠、ありがと。美味しかった」
「そう?良かった…。いつも、ご馳走になってるからお返し」
「ねえ…横田くんはどうなるのかな?」
「さあ、わからない」

不機嫌な顔で突き放したような声に相当怒っているんだなと思った。僕の事を心配してくれていたのはわかっていたけれど…。そう言えば、横田くんの事を最後まで信用していなかったのは美都瑠だけだった。何かあったら許さないから…そんなセリフを思い出す。

「そうだよね…」
「…心配?」
「うん」
「嘘ついて、碧にあんなことしたんだよ?」
「でも…」
「例えば…碧が怪我してたらどうなったかはわからないけど……。でも、同じ学校でこれから何度も顔を見るのは嫌じゃない?」
「それは…」

正直怖い。
謹慎を解かれ学校に戻ってきた自習室事件の三人を食堂で見ると、未だに身体がすくむ。

でも、横田くんには何もされていない。薬を飲まされたけれど、括られていたけれど、言ってみればそれだけ。どれだけの罪になるのかな?横田くんも自宅謹慎なのかな…。

「ちょっと、待ってて」

この部屋のカードキーとスマホを持って僕の目を見ながら立ち上がる。

「ど、どこに行くの?」
「大丈夫、直ぐに戻るから、ね?」

自分で思ってるよりも、だいぶ心にダメージがあったようで、一人になるのは怖かった。言葉通り一分も経たずに戻っきた。僕の顔を見てなんて顔してるのと慌てて隣に座り、背中をゆっくり撫でてくれた。
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