ナイショな家庭訪問

石月煤子

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前編

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「そちらの良太君はとても芯が強く、クラスメートみんなに慕われています」



時間休を取得し、できる限りの業務を慌ただしげに済ませて退社した進藤真(しんどうまこと)、二十七歳。


今日は家庭訪問の日だった。
着替えもせずにワイシャツを腕捲りしてこぢんまりしたアパートのリビングを掃除し、お茶の準備をし、ちょっと一息つくかとソファにぐで~~と横になる。

「あ~……疲れたぁ……」

整髪料で適当にセットしていた髪は乱れ、デスクワークによる疲れ目はしょぼしょぼ、節約のためにタバコとお酒をやめ、昼は会社備品のインスタントコーヒーと調理パン一つで済ませて薄っぺらなお腹。

何か摘まもうか、でもまだ横になっていたい、真がどうしようか迷っていた矢先にチャイムが鳴った。


「おとーさん、せんせー、連れてきた」


現在八歳、小学校二年生の息子が担任を連れて帰ってきた。


「じゃあ、おれ、象さん公園で五月くんと遊んでくる」
「えっ? あの、良太一緒じゃなくてもよかったでしょうかっ?」


今にも玄関から通路へ飛び出そうとしている息子の良太(りょうた)にあわあわしている真、そんな落ち着きのない保護者に彼はゆっくり微笑みかけた。


「ええ。問題ありません。良太君、車に気をつけて。行ってらっしゃい」


やたら見目麗しい外見をした小学校教諭の御船(みふね)、三十四歳。

ほんのり下がり気味の目尻に伴うは大人の色香。
すっと通った鼻梁にスキンケアの行き届いたような肌艶。
パーフェクトな容姿端麗ぶりと同様に、何かと口うるさいPTA及びモンペ保護者をも惚れ惚れとさせる論に長けた優秀な唇。
身だしなみに至ってはワイシャツから靴下まで高級ブランドでさり気なく統一していて洗練されていた。


御船先生って恋愛ドラマに出てくる俳優さんみたいだ。
毎回思うけど、美形力、半端ない。


「良太君は素晴らしい美点を秘めています」


そんな完成された美形先生に我が子を褒められて真は目を見張らせた。


「ウチの良太が? ですか?」
「機微を感じ取ることのできる感性の持ち主です」


きびって? 沖縄とかでとれるサトウキビのこと? 良太ってサトウキビを感じ取ることができるの!? 良太すげーー!!!!


「先ほども。進藤さんにどこに誰と行くのかちゃんと伝えて遊びに出かけました」
「? 普通のことじゃないですか?」


床に正座していた真はキョトンした。
リビングのソファに優雅に腰かけた御船は首を左右に振る。

「最近では家の前にランドセルを放置して遊びに出かける子どもも珍しくありません」
「へー! 元気いっぱいですね!」
「行き先も誰と一緒にいるのかもわからず、肝を冷やす親御さんもいらっしゃいます」


平日だと良太が帰る時間帯、俺はウチにいないし、でも良太はちゃんと戸締りしてくれるしメールくれるし、心配することはあんまないなー。


「先程の良太君の行動は素晴らしい」

しなやかなそうな長い指を湯呑みに絡め、今日のために真が奮発していた日本茶を静々と飲み、御船はにこやかに言う。

「あれだけ燦々と眩しい子に成長したのはきっと進藤さんの純粋な愛情のおかげでしょう」

真は何度もパチパチ瞬きした。
早くに家庭を持ち、私には早過ぎたと同じ年齢だった妻に別れを切り出され、それから親子二人で生きてきた。

「あ、ありがとうございます、自分、そんなこと言われたの……初めて……です」

真の双眸に瞬く間にぶわぁぁっと満ちた涙。
息子の担任前で恥ずかしいったらありゃあしないが、止められない、仕舞いにはぼろぼろ溢れて号泣状態になった。


去年の一年のときは注意されまくったし、何ならちょっと怒ってたし、厳しい先生だったんだぁ……。
それがまさか、御船先生にこんな、こんな……!!


「う~~~っ」
「大丈夫ですか、進藤さん」


俯いていた真が顔を上げればすぐ隣に御船が寄り添っていた。


「っ、すみませんっ、先生の前でこんなっ……ほんとすみません……面目ないです、ハイ……」
「謝らないでください。構いませんから」
「っ……ずっと、こんな父親でいいのかなって、自分……ずっと不安で……」

年甲斐もなくメソメソしている真の頭を御船はそっと撫でた。
まるで愚図る幼いこどもをイイコイイコするような手つきで。


「貴方だからこそ。今の良太君が存在しているのだと思います。その不安も教育の糧になったに違いありません」


かて、って、なーに?

それにしても、御船先生、イイにおい、最初はわからなかったけど近くに来たらわかる、ふんわり、優しいお花のにおいがする。

うん、今、かなり近い。
これって、俺さ、御船先生に抱きしめられてない?


美形先生に抱擁されていることに真はやっと気づいた。
小さなこどものように扱われていると、カァァァッと耳まで赤くして、途端に恥ずかしがった。


「すす、すみません、こんなみっともない真似、こんなんじゃあ良太よりこどもだ、俺」
「とても可愛らしいですよ」
「いやいやいやいや、ほんともう……お恥ずかしい限りで……滅相もございませんです……」


御船は恥ずかしがって照れる真により微笑を深めた。
自分のことを「自分」と呼んでいたはずが、感情が揺らめいて普段通りの「俺」が出ている保護者に釘づけになった。


「あの、お茶、淹れ直してきます、ていうか、そろそろ次のお家に行かなきゃなんじゃ、」
「こちらで最後なので」

耳たぶまで優しくくすぐられて、どうしようと赤面困惑して縮こまる真に端整な唇はおもむろに囁きかける。



「もう少し長居させていただいても宜しいでしょうか、進藤さん……?」







長居どころか、これって、これって。

「み、御船先生……」

御船の膝上で横抱きにされた真はどうしよう、どうしようと困惑しっぱなしだった。

「どうぞ遠慮なさらずに、進藤さん」

しなやかな指によって緩められたベルト、蔑ろにされたファスナー。
色気抜群な艶やかボイスに心臓どころか鼓膜まで動悸するような。


「このままだされても構いませんよ……?」


なんでこんなことに。
良太の担任の御船先生に、なんで俺、チンコしごかれてるの……?


凄まじく久し振りに触れた人肌にあっという間に催してムクムクと育ってしまった真の昂ぶりは。
ハンドモデル並みに整った御船の手によってそれはそれは念入りに慰められていた。


「す、すみません、俺……っこんなことっ……ほんと、すみません……申し訳ないです……」


息子の担任、しかも美形な先生を足蹴にできずに真はついつい流されてしまっている。


はぁはぁと掠れた呼吸を紡ぐ唇、じっとり汗をかいてきた首筋、素直に硬くなって先走りを垂らす性器、靴下の内側できゅっと丸まった爪先。

自身の膝上で申し訳なさそうに大人しくしている、美形パワーに平伏して為す術もなく感じている真の全てに御船は満足そうに笑った。

「っ……すみません、ごめんなさい……っあの、無理しないでください、先生、俺、」
「進藤さんこそご無理はよくありません」


先っぽを強めにしごかれて真の双眸は先程とは違う涙に濡れそぼった。
無性に疼いてしまう。
堪らなく切なくなってしまう。


「あ、あ、あ、だめ、です、これ、強、ぃ」
「強くしてあげないと。射精できないでしょう……?」
「そ、んな、ぁ、だって、こんなっ、おれ、あっ、あっ」
「本当に可愛いですね……もうこんなに蕩けて……」


うわあああ、耳が、鼓膜がくすぐったい、先に鼓膜がいっちゃううう。


「ここ、気持ちいいでしょう? ちゃんと私に教えてください……?」

御船に優しく問い質されて、ぎゅーーーっと目を閉じた真はコクコク頷いた。

「っ……きもち……ぃぃ、です……先っぽ……きもちぃぃ……」


良太ぁ、ごめん、ごめんな。
俺、良太の先生の手で……もう……いっちゃう……。


「ひぃんっ……だめっ、も……っあーーー……っっ」

真は御船にしがみついて全身ブルブルさせながら達した。
溜まるに溜まっていた精をたんまり解放した。

「はあ……っっっ」

痺れるような絶頂感で頭がまっしろになる。
無意識にさらにぎゅーーーーっとしがみつき、熱いため息を繰り返し、香木のごとく香り高い御船に……甘えた。

「はぁっ……はぁっ……んっ……ぁ……はぁ……っ」

汗をかいたこめかみや額に髪をはりつかせ、無防備極まりない様子で喘ぐ真に、御船は存分に見惚れる。


「進藤さん」


……あ。
……そうだった、相手、御船先生、男、良太の担任、こんなこと絶対しちゃあいけない人。
……ここんとこ溜まってて、ちょっとそーいうお店に行っちゃおうかな~なんて思ったけど、やっぱ節約のため、良太の教育上のため、我慢してスルーしてたのがマズかった。


「す……すみませ……」

またもや謝ろうとした真の台詞は端整な唇に塞き止められた。


キスされた。
リップクリームでも塗り込まれたかのような柔らかで瑞々しい唇に唇を啄まれた。


もはや頭がついていかずに真はただただ為されるがままに。
緩やかに抉じ開けられて、口内に侵入されて。
おもむろに、じっくり、器用な舌先に掻き回された。


……なんだこれ。
……こんなすけべなキス、されたことも、したこともない。


「ふ、ぅ、ぅ……っ」

乱暴ではない紳士的な振舞ながらも余念のない舌遣いにみるみる多感になっていく。
口元どころか体中、ぞくぞくぞくぞく、卑猥なときめきに蝕まれる。

「んっっ……んっっ……んっっ……んっっっ?」

達したばかりでぬるぬるになった性器を再び愛撫された。
怖いくらいの快感にさすがに真は怯える。
思いっきり顔を逸らして初めて御船を拒んだ。

「も、もう……やめましょう、すみません、ご迷惑おかけしました……っ」

御船は膝上であわあわし出した保護者に「迷惑なんて」と首を左右に振ってみせた。


「いい加減、おわかりになりませんか、進藤さん」
「お……俺、中卒なんで。キビとかカテとか、わかんないです」
「貴方が好きです」


美形先生からの突然の告白に真は……正直、ぞーーーーっとした。


あまりにも自分とかけ離れ過ぎていて受け入れられない、ありえない、とんでもない、恐れ多い、恐縮千万極まりない。

それなのに。

「んーーーっ……も、そんな……触られたらっ……また……」

甘やかな掌に執拗にペニスを擦られてきもちよくなってしまう。
隙のない愛撫にどんどん蕩けてしまう。


「別に構いませんよ、快楽の追及のみ、性欲処理係として扱っていただいても」
「そ、んな、こと……っ」
「保護者と教師、それ以上の繋がりで進藤さんと結ばれることが可能であるならば。私は何だってして差し上げますから……ね?」



要は快楽堕ちを狙っているのだ、この腹黒美形。








良太、どうしよう、俺、お前の担任の先生と。



「想像していた以上にキツくて熱いですね、進藤さん……?」


セックス、しちゃってるよ。
こんなの、父親失格だよなぁ、良太ぁ……。


「ぅぅ……っごめ……良太ぁ……」

ソファの上で。
両足の膝を掴んで固定されてお股全開となっている真。

未経験の初心者にまで快感を呼び起こす、プロ顔負けの巧みな指姦によって十分に解された後孔。
根元までは沈めずに途中で進行を止め、緩々とナカを突く造形豊かな熱源。

「ひぃぃん……っ」

真のワイシャツのボタンは全て外されて左右に肌蹴け、下半身に身につけるは靴下のみ。
必死になって横を向き、然して服装を乱すでもなく真上に迫る御船から視線を逸らし、ずっとフルフル震えていた。


そんな姿に御船は身も心も囚われる。


「父親失格だと。そう思われてます……?」


真はおっかなびっくり御船を見上げた。


「それならば。私は教師失格ですね」


甘味成分でも秘めているのか、第一印象で誰をも魅了してきた必殺悩殺双眸と目が合い、その熱く張り詰めた昂ぶりを我が身に招いていることもあって、真は。

「あーーーー……ッッッッ」

軽くいってしまった。


「……進藤さん」
「ぅっ、ぅっ、み、見ないでくださぃ……へ、変になっちゃう、です」
「……構いませんよ? 次はちゃんとウェットで、ね……?」
「へっ、っ、う、わ、ぁ」


ベージュ色にうっすら染まる乳首をちゅっと吸われて真は恥ずかしさの余り御船をぎゅぅぎゅぅ締めつけた。


「や、です、よぉ……っ御船先生……っ」
「授業参観で、運動会で。良太君を熱心に見つめる、今にも泣き出しそうな貴方の眼差しから目が離せませんでした」
「ッ、ッ、ッ、ッ、ッ」
「……どんどん締まりますね、進藤さんのココ……まるで私のこと欲しがるように」


二人の狭間でピクピク悶えていた性器を握り込まれる。
裏筋をくすぐられ、満遍なく濡れ渡る鈴口を小刻みに刺激されて、限界寸前の真はもどかしそうに胸を反らした。


「や、だ……もぉ、いきたく、なぃ……っ」
「そんなこと言わないで……? 君のこと、こんなに好きなのに」
「わ、ぁ……っお、おっきくなって……ッ? こ、怖ぃぃ……っ」
「可愛いにも程があるね、困ったコだな、僕をこんなにも興奮させて……ねぇ、進藤さん……?」

御船も御船で「私」から「僕」に、本当の自分を曝して真に夢中になるのだった……。







象をモチーフにした滑り台が中央にどーんとある公園にて。


「くしゅんっ」
「良太くん、寒いですか、おうち帰りますか」
「うん、でも、もうちょっと二人っきりにしてあげたほうがいいのかなぁ」
「?」


明かりが灯ったばかりの外灯下にあるベンチに並んで座った良太と、そのお友達の知永五月(ともながごがつ)。


「ボクのとこも家庭訪問で三ツ矢(みつや)先生、来てるです」




「年下だからって子ども扱いしないでください、知永さん」
「どうせ興味本位でしかないくせに。君は白々しいな、三ツ矢先生」



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