ナイショな家庭訪問

石月煤子

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後編

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床に落ちて割れたグラス。
手作りのアイスティーがラグに染み込んでいく。

「まるで躾がなっていない駄犬みたいですね」

自分が担任をしている男子児童の保護者、知永雅典(ともながまさのり)に侮蔑の込もった眼差しで睨まれて。

スマートな黒ジャージ姿の三ツ矢大貴(みつやだいき)は思わず息を呑んだ。



今日は家庭訪問の日だった。
持ち前の能天気ぶりで特に緊張もせずにスムーズにこなしていた三ツ矢だが最後の一軒だけは違った。



こんな粗相に及ぶのは初めてのことだった。
保護者をテーブルに押し倒すなんて。



これまでの人生において恋人に手荒な真似などしたことがない、いつだってきちんとマナーとエチケットを守って健全にベッド行為に至っていた三ツ矢らしからぬオイタだった。

「発情期の発散相手にされても困ります」

本能まっしぐらなオイタに駆り立てた張本人は不愉快そうに眉を顰めていた。

クラス一の優等生、知永五月の父親。
妻に先立たれた地方公務員の彼は仕事、育児の両立を黙々とこなしてきた、現在は三十三歳、今日は午後休をとって早めに帰宅して家庭訪問に抜かりなく備えていた。


二十六歳の三ツ矢は知永のことを最初はただ純粋に尊敬していた。


『先生、さようなら、です』


ただ頭がイイだけじゃない、心根が優しくて気配りができる、それにセンスもいい五月君。
彼をあんなに立派に育て上げた知永さんって、すごいと、憧憬していた。


『パパ、かけっこ、四位でした』
『四位か。おめでとう。よく頑張ったね、五月』
『今日、ごはん、いっしょですか?』
『うん。五月が好きなもの、食べて帰ろうね』
『パパが作ったの、一番、食べたいです』
『……じゃあ、一緒に買い物して帰ろうね』


それに、何というか、ストイックっていうんだろうか。
どことなく色気があって。
男やもめというより、未亡人という言葉が何故だかしっくりくるような。
ないはずの泣きぼくろが浮かび上がって見えてくるような。

伏し目がちな会釈が脳裏に尾を引くような……。


「……三ツ矢先生、君」


テーブルに押し倒されて否応なしに重なり合っていた下半身から伝わる違和感に、知永は、眉間の皺を増やした。


「呆れますね、本当に」
「はは……そうですね、自分でも呆れ返ってます、知永さん」


知永を押し倒しただけで三ツ矢は勃起していた。

明るくて親しみやすい好青年先生、女子生徒人気ナンバーワン及び多くの母親にも好感を持たれている彼のこれみよがしな発熱に知永の眼差しはより険しくなった。


「前のお宅でもこんな粗相を?」
「まさか。そんなわけありませんって」


三ツ矢は情けなく笑う。


「知永さんだから……です」

大学時代に参加した合コンではこぞってイケメンだと評された、申し分なく整った顔立ちを惜し気もなく崩して素直に本音を吐露した。

「年下だからって子ども扱いしないでください、知永さん」

打ち明けられた知永は閉ざされたレースカーテンに視線を逸らした。

「どうせ興味本位でしかないくせに。君は白々しいな、三ツ矢先生」

自分の上からなかなか退こうとしない、大事な息子を受け持つ年下担任に吐き捨てるように提案した。


「今日だけ」
「え?」
「この煩わしい状況から一刻も早く抜け出したいので」


本能任せに押し倒したものの、やはり保護者相手に先を進めるのも憚られて、そもそも男相手に催したのも生まれて初めてで。
どうしたものかと迷って発熱を持て余していた三ツ矢は知永の次の言葉にゾクリと武者震いした。


「今日、一度だけ。君の発散相手になってあげましょうか」







まだ明るい日の光が差し込むアパートの一室。

「あ……知永さん……」

空中に反り返った若々しいペニスに伸ばされた舌がねっとり這い回る。

カリ首も括れも、亀頭先端の割れ目も、裏筋も、満遍なく。
込み上げてくる唾液を塗りつけては甲斐甲斐しく舐め上げてやる。
潮気に富んだ卑猥な味を唇で何度も確かめる。

「すごい、です……」

テーブルに腰付近を寄りかからせて立っていた三ツ矢は、床にしゃがみ込んで口淫に耽る知永に釘付けになっていた。
勃起しきった自分のペニスを何度も舐め上げる瑞々しい舌先。
素っ気ない会釈時と同じく伏し目がちな双眸。
濡れていく唇の温度に下半身どころか胸も大いにざわつく。

「あ」

華麗に剥けた亀頭を頬張られた。
柔らかく生温い口内にすっぽり閉じ込められてより増していく硬度。

知永の唇奥で、どくん、どくん、脈打つ。
音を立ててしゃぶりつかれると、背筋が粟立つほどの快感に貫かれて危うく腰が抜けそうになった。

「こういうこと……慣れてるんですか……?」

肉竿を小刻みに舐っていた知永は乱れた前髪越しにふやけた表情でいる三ツ矢をねめ上げた。


「……人を好色扱いしないでほしいですね、慣れているわけないでしょう」
「あれ……じゃあ……俺にだけ……?」
「……」
「ッ……あ、あっ……噛まないでください……それ、痛いです……」


甘噛みされた三ツ矢はつい知永に触れた。
頭に片手を添えられて股間に顔を埋めていた知永は俄かに眉根を寄せる。


掌の熱がこめかみにしみた。
じわりと肌に伝染して自分まで火照らされるような。


いや、実際、舌の上でみるみる膨張していくペニスにつられて我が身もすでに興奮していた。


口腔でじっくり温めつつ上下の唇で丹念にしごく。
水音を奏で、根元をしごき、強めに吸い上げた。


「ああ……っ」


堪えきれない声を迸らせて腰をガクガクさせる年下の男。

ただ添えられていた手が髪をまさぐり始めた。
居ても立ってもいられず拠り所を求めるように。


「でも、やっぱり……初めてじゃ……ないですよね……?」
「……」
「あれ、俺、うるさいですか……? ねぇ、知永さん……何か言って……?」


知永はバイセクシャルだった。
妻のことを愛していた。
先立たれてからは、逝った妻と五月のことしか考えられず、二人のためにひたすら生きてきた。


それなのにこの青年が物欲しそうに見つめてくるものだから。
いや、違うな。
私の方こそ、意味深な視線で、彼を誘って……。

「ン」

知永はとうとう根元まで三ツ矢のペニスを招き入れた。
喉壁にコツンとぶつかった、行き止まりの感触に、三ツ矢は堪らず仰け反った。

「そんな、いっぱい……知永さんに食べられちゃったら、俺、もう……やばいです」

咄嗟に両手を知永の頭にあてがって腰を引こうとした。
すると。
思いきり、激しく、吸いつかれて。
根こそぎ奪われるような猛烈な口淫に三ツ矢の我慢は限界を超えた。

「あ……ッもぉ、でます……ッッ!!」

離すつもりが、むしろ引き寄せて、吐精した。
床に跪いた知永の喉奥に向けて濃厚な白濁飛沫を勢いよく注ぎ込んだ。


「ン……ッ」
「あ……っはぁ……!!」


頭を掴まれた知永は日頃の三ツ矢からは想像できない強引な仕草に腹底を滾らせた。
男らしいため息にどうしようもなく胸を疼かせた。


「ン……ぅ……ん……」
「ッ……すみません、俺……っ」


三ツ矢は我に返った。
悩ましげな唇から慌てて我が身を引き摺り抜く。
落ち着くどころか熱を保って飛び跳ねたペニス。
温んだ糸が伝って落ちた。

ごく……ん……っ

「あ」

白い喉を波打たせて飲み干した知永に三ツ矢は固まった。
自分の体液で口元をだらしなく濡らした保護者の彼に改めて目を奪われた。


「君は……こんな味をしているんですね……」


睨まれるのではなく、伏し目がちに誘われるのではなく、ゆっくりと笑いかけられて。
もうどこにも後戻りできないことを痛感した……。






滑らかな手触りをした尻たぶの狭間を行き来する芯まで熱せられたペニス。


「はあ……ッはあ……ッ」


テーブルにしがみついた知永の腰を掴んで固定し、三ツ矢は腰を振っていた。
尻たぶの中心に挟み込ませた熱源。
擦れて生じる刺激は病みつきになりそうだ。


……俺の先走りで、知永さんのお尻、ぬるぬる。
……汚してるみたいで、いけないことなのに、めちゃくちゃ興奮する。


「すぐ……っ終わらせますから、知永さん……っだから、後ちょっとだけ……」
「……いや、です」


三ツ矢は目を見張らせた。
テーブルにしがみついて顔が見えない知永に拒まれ、奈落の底に落っこちそうな錯覚に捕らわれて一時停止に陥った。


「もっと、ちゃんと……してくれないと……」
「……え」
「ちゃんと……きて……」


ずっと顔を伏せていた知永はビクつく肩越しにチラリと三ツ矢を仰ぎ見た。

若いペニスが垂れ流した先走りの汁に塗れた尻丘に手を添え、自ら尻たぶを左右に抉じ開け……後孔を曝してみせた。

「ちゃんと……いれなさい……」

返事もできずにいる三ツ矢をさらに強請る。

「私の奥までしっかり……捻じ込んで……?」

潤んだ双眸で、しとどに濡れそぼった唇で誘われて過敏にビクリと打ち震えたペニス。


一気に喉が干乾びかけた三ツ矢は一旦唾を飲み、どろどろした眩暈で溶けそうになる思考をギリギリ保って、自身の根元を支えて。


長年閉ざされてきた後孔に欲望漲る先端を押しつけた。


ぎっと歯を食い縛り、腰を掴み直し、肉圧に逆らって突き入れていく。
猛烈に締まる尻膣の中心に痛いくらい脈打つ熱塊を言われた通り捻じ込んでいく。


「っ、っ……うわ……キツ、い……っ俺……溶けそう……」
「ッ、もっと……奥……」
「奥……? もっと奥……? 知永さん、そんなに俺の……欲しいんですか……?」
「っ……早く、三ツ矢先生……」


我が身を咥え込んでヒクつく肉孔のあられもない様に三ツ矢の理性はどんどん解れていく。


「……雅典さん……」


名前を呼ばれて知永は目を見開かせた。
すでに屹立していたペニスが股間でピクンと切なげに揺れる。


「雅典さん……俺……先生じゃなくなってもいい……?」


汗ばむ肌身に指先を喰い込ませて全て沈めた。
狂おしくうねり蠢く粘膜にぎゅっと包み込まれて、ヨダレまで垂らして、三ツ矢は最早溶ける寸前だった。


「熱い………」


深いピストンで締めつけを堪能する。
容赦なく迫りくる肉壁を擦り上げ、拡げ、奥を小突く。
搾り上げられるような強烈な感覚に熱もつため息が止まらなくなった。


「俺と雅典さん……溶け合ってるみたい……」
「っ……っ……、……っ」
「ッ……え……?」


かろうじて聞き取ることができた知永の呟きに三ツ矢は耳を疑った。


「……大貴君……もっと強く……強いのがいい……」





「んっんっんっ……!」
「あっ……いい……もっと……大貴くん……」
「だ、めだ……っ俺、すぐ……これ、ガマンできなっ……」
「……我慢しないで、このまま……して……?」
「ッ……雅典さん……ッッッ」


スタミナ溢れる腰遣いに知永は呻吟した。
後ろからしばし突き上げられて火照るに火照った胎底。
連続する甘い恍惚感に理性を投げ捨て、限界を予感し、汁気に富んだ自身を恥ずかしげもなくグチュグチュと弄り始めた。


「あっ、あっ、締まってる……っまたっ……ずっと……よすぎて……今日だけじゃ……おさまらないよ、もっとこれからも……雅典さん、お願い……」
「っ……大貴く……」
「……貴方の犬になりたい……」


背後から三ツ矢にがむしゃらにキスされて知永は絶頂に堕ちた。






「おれとずっといっしょいてくれる?」
「うん。いる、です」
「約束?」
「約束する、です」


絡まり合ったちっちゃな小指。
暮れゆく公園に伸びた二つの長い影。


「おーい、良太ぁ」
「五月。おいで」


ベンチに並んで座っていた良太と五月は足早に迎えにきた父親にそれぞれ飛びついた。


「おとーさん」
「うわ、冷たかったろ、ごめんな、今日はあったかいモンお腹いっぱい食べような」

「五月は。何が食べたい?」
「パパが作るものなら、何でもいい、です」


絵になる仲睦まじい父子を少し遠目に見守る二人の教師。
長かった家庭訪問は夕暮れと共に終わりを告げて。
ナイショの関係がこっそり始まる。




end

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