【R18】蝶々と甘い蜜。

かのん

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歯車が狂うとき⑤

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「そんな状態で……映画なんて観に行けないよ。」


分かってる。涙が止まっていないこと。
福田さんに肩をつかまれて、福田さんの顔を見たら、涙はどんどん溢れてきて止まらなかった。


「福田さん、ごめん……ごめんね。」


やっぱりそんな簡単にあの人のことを忘れることはできない。
すぐ忘れることができるぐらいだったら、きっと、今頃別の人と私は結婚しているはずだ。


「んっ……」


福田さんが唇を重ねてきた。歯が当たって痛いほどの乱暴なキス。


「やめてっ…福田さん……」


福田さんの唇には、さっき三島が塗ってくれたルージュがべっとりとついていた。自分の唇についているルージュを福田さんは右の掌でゴシゴシとぬぐっている。


「似合わないよ。こんな色……」


「福田さん……」


「こっち来て……」


「え……?」


「福田さん、どこに行くの?ねぇ……」


福田さんに手首をがっしりと摑まれて払うこともできず、ヒールで痛い足で必死に後をついていった。その間も福田さんはずっと無言でいったいどこに連れて行かれるか見当もつかない。


「はぁ……はぁっ…ここ……」


やっと福田さんの足がとまり、手首も解放され、上を見上げると三島グループのマークがあるホテルだった。ただ、このホテルは三島グループのホテルの中でも最高級のランクのホテルで三ツ星も獲得している。


「あ……」


黒の高そうな車から三島が降りてきて、ホテルの従業員が大勢出迎えている。その横に立っている綺麗な女性がいた。


「あの人……あのお店の。」


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甲斐さんが三島の隣にいる女性にそう呼んでいるのがはっきりと聞こえた。はっきりと聞こえたのに…聞こえていないことにしたかった。


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さっきまで私のこと愛おしそうに見つめてくれた瞳はもう、隣に立っている奥様と呼ばれる人を見つめている。すごく、嬉しそうに…。


「嘘……っ……」


私は最初から三島に愛されていないのはわかっていたけど、こんな姿を見せられたら…奥様が帰ってきたら…もう、私には望みは何もない。


「宮園さん……」


そのまま下に座り込んで、身体は動けなくて、夏なのに肌寒い風が吹いていた。いつか、こんな日が来る。そんなことわかっていたはずなのに、現実をつきつけられると、ショックは思った以上に大きかったようだ。私から、三島を突き放したというのに。


「もう、行こう。」


福田さんが手首をさっきとは違って優しく引っ張ろうとしてくれた。こんなところにいてもしょうがないから、起き上がろうとしたが、よくよく考えてみると、どうしてこの人はここに私を連れてきたのだろうか。


「福田さん……どうして私をここに連れてきたの?」


「それは……」


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どうして……私をここに連れてきたの……?
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