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ずっと、ずっと…②
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「…」
――二週間前
『お母さんは呼吸が長い間止まってしまったので、障害がでてくると思います。』
『障害…?』
『言語障害や記憶障害など色々あります。』
『記憶障害って…忘れるってことですか?それじゃ恭ちゃんのことも…』
『実際に目を覚ましてからじゃないと何ともいえませんが…癌もだいぶ進行していますし…』
『せっかく二人は会えるのに…どうしてッ…』
「桜 恭平って言います。覚えていますか?」
「…」
ハナは首を静かに横に振った。
その姿を見て敦子の瞳から涙が溢れ出した。
二人は間に合わなかったの――?
あと少しだったのに…
二人のことを考えたら涙が止まらなかった。
「あっちゃん…ありがとう。」
敦子は声を出すこともできず首を横に振った。
何もできなかった――
「もう一生会えない、そう思ってきたんだ。だから、あっちゃんのおかげでこうやって会えて、感謝の気持ちでいっぱいだよ。」
恭平にそういわれると少しだけ救われた気がした。
「ちょっとだけ…外に連れ出してもいい?」
「え…?」
「院内の桜が綺麗に咲いているからそれを見せたいんだ。」
「うん…わかった。」
車椅子の準備をして母親を恭平と二人で乗せてひざ掛けをかけてあげた。
「お母さん、本は置いていこう。」
そう声掛けをしたが母親は小説を離させなかった。
「じゃあ、落とさないようにしてね?」
敦子に言われ、母親は本を落とさないようにぎゅっと握り締めた。
「じゃあ、行ってくるね。」
「うん…」
桜は毎年咲いて、毎年散る
だけどハナさんと
次の年の桜を見ることはできない――
だから今、桜を二人でみたいんだ
“ザァァッ…”
桜はもう散りかけて風とともに落ちていた桜が舞い上がった。
「ハナさん…綺麗だね。」
「ゆ…き…みた…い」
「そうだね…雪みたいだね。春だけど雪みたいで綺麗だ…」
ハナさんの前にしゃがみ、髪の毛についている桜の花びらを取ってあげた。
「花びらついていた…ッ…」
封印していた思い出が走馬灯のように駆け巡った。
いつか会いたい、だけどこんな風に再会するなんて思ってもいなかった――
泣かないようにって決めていたのに…
あふれる涙は止められない――
「さ…くら…」
「…」
「さく…ら…くん…」
「…え?」
顔をあげてハナを見ると、ハナも目に涙がうっすらとたまっていた。
震える手で恭平の頭についていた花びらをとって、恭平に見せてきた。
「しおり…つ…く…ろう…」
「ハナさん…思い出してくれたの?」
ハナがにっこりと微笑んでくれた。
その笑顔が、俺はいつも好きだった――
「立派…な…医者…た…ね…」
「うん…うん…医者になったよ。医者になったけど…ハナさんを助けれあげれなくてごめんッ…」
愛している人を助けてあげれなかった
昨日もたくさんの人の命を助けることができた
なのに、たった一人の命を助けてあげれないんだろう…
医者でも俺は無力だよ、ハナさん――
“スルッ…”
ハナが持っていた小説の間からしおりが落ちた。
「これ…桜の花びらのしおり…」
それは恭平にもあげた桜の花びらのしおりだった。
「ハナさん、落ちたよ…」
「…」
「ハナさん…?」
恭平はハナの手首や首筋、呼吸を確認する。
「ハナさん――」
“ザァァァッ…”
桜の花びらが舞い上がってハナや恭平の頭にたくさんの花びらがついた。
「しおり、100枚できるかもね…ハナさん…」
あなたがいなくなっても
また今年も桜が咲き、桜が散る――
お母さん
また今年もお母さんと恭ちゃんの思い出の桜の季節がきたよ――
「すごぉい!綺麗!!」
「本当だ、綺麗だね…」
「ねぇ、ママ…」
「どうしたの?」
「パパは桜が嫌いなの?」
「え?どうして?」
「だってパパ、泣きそうな顔して桜を見ているんだもん。」
「違うよ…桜が好きだから…だから泣きそうになるんだよ。」
「えぇ~」
「ふふ、まだ難しいね。愛おしくて泣くこともあるんだよ。」
「ふ~ん。あ、パパ~!行こうよ!」
「あぁ…行こうか。」
「恭ちゃん、花びらついてる…はい。」
「あっちゃんもたくさんついているよ。」
「え!?本当!?」
「私も一緒にとってあげる!」
「とってとって!」
“ザァァァッ…”
「見て!雪みたい!!」
「本当だ…春なのに…」
こんな綺麗な桜吹雪をみるとお母さんがいなくなった日を思い出す――
「!?」
恭平がニッコリと微笑みながら、指を絡めて手を繋いできた。
あの時はまだ、こうやって恭平が隣にいて手を繋いで微笑んでくれるなんて思ってもいなかった。
一年に一回
桜の季節の時だけ
お母さん…ハナさんの話を笑顔で話している
お母さん――
私、恋してるよ。
公園で彼を見つけたあの日からずっと――
10年前に戻れたとしても
私はまたハナさんを好きな彼に恋をする――
――二週間前
『お母さんは呼吸が長い間止まってしまったので、障害がでてくると思います。』
『障害…?』
『言語障害や記憶障害など色々あります。』
『記憶障害って…忘れるってことですか?それじゃ恭ちゃんのことも…』
『実際に目を覚ましてからじゃないと何ともいえませんが…癌もだいぶ進行していますし…』
『せっかく二人は会えるのに…どうしてッ…』
「桜 恭平って言います。覚えていますか?」
「…」
ハナは首を静かに横に振った。
その姿を見て敦子の瞳から涙が溢れ出した。
二人は間に合わなかったの――?
あと少しだったのに…
二人のことを考えたら涙が止まらなかった。
「あっちゃん…ありがとう。」
敦子は声を出すこともできず首を横に振った。
何もできなかった――
「もう一生会えない、そう思ってきたんだ。だから、あっちゃんのおかげでこうやって会えて、感謝の気持ちでいっぱいだよ。」
恭平にそういわれると少しだけ救われた気がした。
「ちょっとだけ…外に連れ出してもいい?」
「え…?」
「院内の桜が綺麗に咲いているからそれを見せたいんだ。」
「うん…わかった。」
車椅子の準備をして母親を恭平と二人で乗せてひざ掛けをかけてあげた。
「お母さん、本は置いていこう。」
そう声掛けをしたが母親は小説を離させなかった。
「じゃあ、落とさないようにしてね?」
敦子に言われ、母親は本を落とさないようにぎゅっと握り締めた。
「じゃあ、行ってくるね。」
「うん…」
桜は毎年咲いて、毎年散る
だけどハナさんと
次の年の桜を見ることはできない――
だから今、桜を二人でみたいんだ
“ザァァッ…”
桜はもう散りかけて風とともに落ちていた桜が舞い上がった。
「ハナさん…綺麗だね。」
「ゆ…き…みた…い」
「そうだね…雪みたいだね。春だけど雪みたいで綺麗だ…」
ハナさんの前にしゃがみ、髪の毛についている桜の花びらを取ってあげた。
「花びらついていた…ッ…」
封印していた思い出が走馬灯のように駆け巡った。
いつか会いたい、だけどこんな風に再会するなんて思ってもいなかった――
泣かないようにって決めていたのに…
あふれる涙は止められない――
「さ…くら…」
「…」
「さく…ら…くん…」
「…え?」
顔をあげてハナを見ると、ハナも目に涙がうっすらとたまっていた。
震える手で恭平の頭についていた花びらをとって、恭平に見せてきた。
「しおり…つ…く…ろう…」
「ハナさん…思い出してくれたの?」
ハナがにっこりと微笑んでくれた。
その笑顔が、俺はいつも好きだった――
「立派…な…医者…た…ね…」
「うん…うん…医者になったよ。医者になったけど…ハナさんを助けれあげれなくてごめんッ…」
愛している人を助けてあげれなかった
昨日もたくさんの人の命を助けることができた
なのに、たった一人の命を助けてあげれないんだろう…
医者でも俺は無力だよ、ハナさん――
“スルッ…”
ハナが持っていた小説の間からしおりが落ちた。
「これ…桜の花びらのしおり…」
それは恭平にもあげた桜の花びらのしおりだった。
「ハナさん、落ちたよ…」
「…」
「ハナさん…?」
恭平はハナの手首や首筋、呼吸を確認する。
「ハナさん――」
“ザァァァッ…”
桜の花びらが舞い上がってハナや恭平の頭にたくさんの花びらがついた。
「しおり、100枚できるかもね…ハナさん…」
あなたがいなくなっても
また今年も桜が咲き、桜が散る――
お母さん
また今年もお母さんと恭ちゃんの思い出の桜の季節がきたよ――
「すごぉい!綺麗!!」
「本当だ、綺麗だね…」
「ねぇ、ママ…」
「どうしたの?」
「パパは桜が嫌いなの?」
「え?どうして?」
「だってパパ、泣きそうな顔して桜を見ているんだもん。」
「違うよ…桜が好きだから…だから泣きそうになるんだよ。」
「えぇ~」
「ふふ、まだ難しいね。愛おしくて泣くこともあるんだよ。」
「ふ~ん。あ、パパ~!行こうよ!」
「あぁ…行こうか。」
「恭ちゃん、花びらついてる…はい。」
「あっちゃんもたくさんついているよ。」
「え!?本当!?」
「私も一緒にとってあげる!」
「とってとって!」
“ザァァァッ…”
「見て!雪みたい!!」
「本当だ…春なのに…」
こんな綺麗な桜吹雪をみるとお母さんがいなくなった日を思い出す――
「!?」
恭平がニッコリと微笑みながら、指を絡めて手を繋いできた。
あの時はまだ、こうやって恭平が隣にいて手を繋いで微笑んでくれるなんて思ってもいなかった。
一年に一回
桜の季節の時だけ
お母さん…ハナさんの話を笑顔で話している
お母さん――
私、恋してるよ。
公園で彼を見つけたあの日からずっと――
10年前に戻れたとしても
私はまたハナさんを好きな彼に恋をする――
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