35 / 105
第九章 失いたくない 二
しおりを挟む
二
翌日の朝早く、使節団一行はテッラ・ロッサ王宮を発った。ロッソ三世と王妹二人は玄関での見送りだったが、多くの近衛兵達と衛兵達、それに数人の女官達が宮門まで来て一行の馬車を見送ってくれた。見知った顔があったのか、王の宝は嬉しげに手を振り、別れを惜しんでいた。
御者台には、ノッテが座っている。その手綱捌きで、馬車は快調に王都の街路を走り、やがて貧民街が見える辺りへ差し掛かった。
「あ! ごめん、停めて」
急に、窓の外を眺めていたナーヴェが声を上げたので、ジョールノは小窓から御者台のノッテに声を掛けた。
「ちょっと停められるかな?」
「はい」
ノッテは落ち着いた手綱捌きで、馬車を街路の端に寄せ、停めた。
「ありがとう!」
軽やかに礼を述べ、ナーヴェは急いで馬車を降りていく。ジョールノの目配せに頷いたルーチェが、その後に素早く続いた。
「ソニャーレ! 会えると思っていなかったから、嬉しいよ。シンティラーレ、ありがとう。見送りのみんなの中にいなかったから、気にしていたんだ。ソニャーレを呼んでくれていたんだね。お祖父さんも元気そうで何よりだよ」
窓から、明るいナーヴェの声が聞こえてくる。応じる声も聞こえてきた。
「あなた様も、生きていらして、お元気そうで、本当に嬉しいです……。その節は、大変お世話になりました。感謝の言葉もありません」
(工作員ソニャーレか)
ジョールノは、窓に顔を近づけ、外に立つ、胡桃色の髪を布で覆った少女を見た。その傍らには、高齢の男性と、王妹で薬師のシンティラーレの姿もある。
(工作員ソニャーレとフェッロは、一応わが国では指名手配犯に指定されているんだが、まあ、今回は目を瞑るか……)
バーゼとペルソーネに目を向けると、同じことを考えていたのか、二人とも阿吽の呼吸で頷いた。御者台のノッテも、動こうとはしていない。皆、王の宝の心情第一で一致したらしい。
(いい連携だ)
ジョールノは満足して微笑んだ。
外で五分間ほど話していたナーヴェは、名残惜しそうに馬車の中へ戻ってきた。
「待たせてごめん。ありがとう」
「いえいえ、あなた様が嬉しそうで何よりです」
ジョールノは答えて、御者台に合図した。ノッテが手綱を操り、馬車が、ゆっくりと走り出す。ナーヴェは、窓際で暫く手を振ってから、口元に寂しげな笑みを残して座席に座り直した。
ジョールノは、笑顔で告げた。
「あの方々は、あなた様のことを恐れず、人として接しておられましたね」
ナーヴェは顔を上げ、ジョールノを見つめてから、微笑んで頷いた。
「うん。とても、嬉しかったよ」
翌日、何事もなく国境を越えた馬車は、王都エテルニタに入った後、王城へは直行せず、郊外にあるプラート・ブル大公城へ寄った。ナーヴェが、予めそうするよう頼んでいたからだ。
「では、また待たせるけれど、半時ほどで戻るから」
ナーヴェはすまなそうに断って、馬車を降りた。
「同行しては駄目なんですね?」
その背中へジョールノが確認すると、ナーヴェは振り向いて頷いた。
「ごめん。二人だけで話したいことがあるんだ」
「いいですよ。ゆっくり待たせて貰います。まだ日暮れまでには、間がありますしね」
「ありがとう」
ナーヴェは微笑んで、従僕に先導され、大公城の玄関を入っていった。
「何の話をなさるのでしょうね……?」
呟いたルーチェに、ジョールノもノッテも、ペルソーネですら沈黙を以て答えた。御者台のバーゼも、耳はいいはずだが、何も言わない。
(こればかりは仕方ない)
ジョールノは微苦笑して、馬車の窓から大公城を見上げる。
(大公チェーロ殿下とアッズーロ陛下との関係は、未だに微妙だからな……)
新王アッズーロが、先王チェーロに毒を盛り、退位を早めさせて即位したという噂は、根強くある。それでも新王アッズーロの治世がそれなりに安定し、人望もあるのは、王の宝ナーヴェという存在が目立っているからだ。王妃にまでなったナーヴェの人気は、絶大である。
(庶民にとっては、血筋の不明さなどより、王の宝という神秘性や、実際の美しさ、優しさ、賢さが重要だろうからな。それに)
アッズーロ自身も変わった。
(王太子時代は、もっと険しい表情をした、近寄り難い雰囲気の方だったが、最近は随分と笑顔が増え、気安い雰囲気を纏うようになられた)
何より、王の宝を気遣い労わる様子は、傍目にも微笑ましい。
(きっとナーヴェ様は、アッズーロ陛下とチェーロ殿下の間も、取り持つおつもりなんだろう)
ロッソ三世とアッズーロの間も、レ・ゾーネ・ウーミデ侯とアッズーロの間も、ナーヴェが取り持ってきたようなものだ。
(ナーヴェ様が、アッズーロ陛下と周囲を繋いでいく……)
そこまで考えて、ふとジョールノは眉をひそめた。
(しかし、今までナーヴェ様自身、チェーロ殿下とは距離を保っておられたのに、ここに来て急に……)
ナーヴェが、帰りにプラート・ブル大公城に寄りたいと言い出したのは、五日前、テッラ・ロッサへ出立する前日だった。
(あの時から、何故、とは思っていたが……)
ついでがなければ、なかなか訪れにくい場所だからだろう、と推測していたのだが。
(ナーヴェ様は、何か急がれているのか……?)
ジョールノは、唐突に不安に駆られた。
(まさか――)
ナーヴェは、ロッソ三世に対しても、降ってくる星を自ら「迎え撃つ」と言っていた。
(復活までしたあの方は、何でもできる方だと、わたしも含めて、誰もが思っているが……)
星を「迎え撃つ」とは、相当な危険を伴うことなのではないだろうか――。
(万が一、あの方を失うようなことになったら、アッズーロ陛下は、この国は、テッラ・ロッサとの関係は、どうなる……?)
空恐ろしいような気持ちになったジョールノの視界に、さらりと、青い髪が現れた。従僕に先導されて、ナーヴェが玄関から出てくる。従僕にも親しげに会釈して別れた王の宝は、ルーチェが開けた馬車の扉から、足早に乗ってきた。
「待たせてごめん」
重ねて詫びて、席に着く。かなり急いで戻ってきたのか、微かに息が上がっている。ジョールノは、御者台のバーゼに合図してから、ナーヴェに向き直った。
「わたくしどものことは、お気になさらず。あなた様は、王の宝なのですから。わたくしどもは、ただあなた様に尽くすのみです」
真摯に告げると、ナーヴェは僅かに目を瞠ってから、複雑そうに微笑んだ。
「――ありがとう。でも、本当の王の宝は、ぼくではないんだよ……。直接きみ達と触れ合うようになって、ぼくも漸くそのことに気づいたんだ。建造されてから三千年も経って、漸くね……。ぼくはただ、きみ達を守るために在るんだよ」
青い双眸に強く見つめられ、ジョールノは言葉を返すことができなかった。代わりにペルソーネが、いつもの生真面目な口調で言った。
「けれど、御無理はなさらないで下さい。陛下の御ためにも」
「――努力するよ……」
王の宝は、優しい表情で小さく頷いた。
夕焼けの中、王城の玄関前で馬車から降りた使節団一行は、その足で、王の間へ入った。
王座で待ち構えていた王と、勢揃いしていた大臣達に、ペルソーネがロッソ三世の了解を得られたことを簡潔に報告し、使節団は解散となった。詳細については、ナーヴェが既に報告済みとして敢えて語らせなかったので、混乱はなく、アッズーロも怒りを表したりはしなかった。
「お世話になったね、みんな」
玄関先まで見送りに来たナーヴェは、最後につとジョールノに近づいてきて、囁いた。
「愚痴まで聞いてくれたきみには、特に感謝しているよ。ところで、きみとペルソーネは、いつ結婚するんだい?」
絶句してから、ジョールノは一つ息をついて、小声で真面目に答えた。
「今は大変な時ですから、星が降った後、国が落ち着いてからと考えております。彼女も、そのほうがいいと言うので」
「――そう」
ナーヴェは明らかに気落ちした様子で俯いてから、すぐに顔を上げて言った。
「応援しているよ。必ず、ペルソーネを幸せにしてあげて。彼女は、ぼくの大切な友人だから」
「言われるまでもありません。必ず」
頷いたジョールノに嬉しげな微笑みを見せて、王の宝は離れた。長く青い髪を靡かせて国王アッズーロの傍らに戻っていく姿が、ジョールノの目には、ひどく儚げに見える。一礼して、城門へと歩き始めたジョールノの隣に、当のペルソーネが、すっと寄ってきた。
「何を話していたのですか?」
問われて、ジョールノは、さりげなくその手に触れながら告げた。
「きみを幸せにすると、誓ったよ」
かっと、ペルソーネは白い顔を赤面させる。つい口付けしたくなる可愛らしさだ。
(こういう存在を、もし失ったら……)
自分なら、立ち直れない。
(アッズーロ陛下……)
ジョールノは、歩みを止めないまま唇を噛み、半ば強引にペルソーネの手を握った。
「――ジョールノと何を話しておったのだ?」
王城の玄関に仁王立ちして腕組みしたアッズーロに訊かれ、ナーヴェは苦笑した。
「嫉妬かい? 大丈夫だよ。ぼくはずっとずっと、きみのものだから」
「なれど、われが王でなくなれば、そなたは、次の王のものであろう……?」
アッズーロは、僅かに顔をしかめて指摘してきた。
「次の王? テゾーロかい?」
ナーヴェは敢えて軽く流す。
「いい王になるように、しっかり育てないとね」
「――そうだな」
アッズーロは微かに嘆息して、踵を返した。
「疲れたであろう。今日はもう仕舞いだ。寝室へ戻るぞ」
「うん」
素直に頷いて、ナーヴェはアッズーロの隣に並び、夕日が差す回廊を、ともに歩く。
「テゾーロは元気にしていたかい?」
尋ねると、アッズーロは難しい顔で答えた。
「元気にはしておる。ただ、まだ泣くばかりで何も話さん。ラディーチェの子は、既に何やら話しておるのにな」
「ああ、インピアントは、生まれてもう二ヶ月だからね。赤ん坊が話し始めるのは、早くても、生まれて二、三ヶ月後からだよ。テゾーロが話し始めるのは、もう少し先……」
つい、声が暗くなってしまいそうになる。ナーヴェは無理矢理微笑んで、アッズーロの横顔を見上げた。
「……楽しみだね」
「うむ。最初に話す言葉は、やはり『母上』か」
アッズーロの何気ない言葉が、思考回路を凍りつかせそうになる。
「――『父上』のほうが、嬉しいかい?」
辛うじて返したナーヴェの顔を、アッズーロが見下ろした。
「あまり顔色がよくないな」
「――怪我が治り切っていないからね……」
ナーヴェは小さく肩を竦めた。人工衛星に接続したり、ジョールノに愚痴を零したり、本体の準備を進めたりで、実のところ、大して治療していないのだ。
「そなたにしては、随分と治りが遅いではないか。相当酷く傷つけたのか」
アッズーロは、睨んでくる。ナーヴェは、曖昧に頷いた。
「それもあるし……、特に必要なかったから、少し放置していたというか……」
「全く」
呆れたように言って、アッズーロは唐突に足を止め、ナーヴェを抱き上げた。軽々とした動きだ。また、力が強くなったのかもしれない。
「そなたは、いつも肉体をぞんざいに扱い過ぎる」
文句を呟いた青年王の横顔には、心配と怒気が混在している。ナーヴェは堪らなくなって、抱えられたまま身を捩り、青年の首に両腕を回して、ぎゅっと抱きついた。青年の長衣の襟元から、香ばしい羊乳の匂いがする。
(こういう感覚を、きっと「愛おしい」と言うんだね……)
自分は、この青年を愛している。彼自身が教えてくれたように、「特別に」愛してしまっている。
(きみが王でなくなっても、ぼくにとっては、きみが「特別」だ……)
けれど、それは最早、伝えてはならない情報だ。
「いつも、ごめん……」
万感を込めて囁くと、アッズーロは鼻を鳴らして、再び歩き始めた。
その夜、アッズーロは、ナーヴェの左腕を気遣って、優しく、強引だった。
夕食には、乾酪と茹で卵と羊の肉が並んだ。飲み物は羊乳だ。乾酪には当然のように蜂蜜が掛けてあり、茹で卵には酢漬けの玉葱が添えてある。羊の肉は、焼いてあり、椒と塩で味つけしてあるようだ。
「こんなに、申し訳ないよ……」
ナーヴェは恐縮した。豪華過ぎる食事だ。特に、羊の肉など、年に一、二度しか食べないものだ。
「ぼくなんかに、こんなに命を費やしたら駄目だよ……」
「その肉体は、われのものであろう。きちんと食して、健康を維持せよ」
アッズーロは卓の向かいで、目を眇めてナーヴェを見据えている。仕方なく、ナーヴェは肉叉を手にした。
「命達よ、いただきます」
感謝して、肉から口に運ぶ。焼き加減が絶妙で、美味しい。貧血が続く肉体が欲する味だ。ナーヴェは羊肉の切れを、ぱくぱくと口に運んだ。アッズーロが、満足そうに見つめてくる。
「――きみも、食べたら?」
ナーヴェが促すと、アッズーロは漸く自らも肉叉を手にして、羊肉を食べ始めた。
「ふむ。よい肉だ。レ・ゾーネ・ウーミデ侯領で流行っていた羊の病も心配したが、あまり広がらずに済んだな」
「パルーデが頑張ったからね。彼女のそういう手腕は、やっぱり凄いよ」
ナーヴェは頷いて、茹で卵を頬張った。とても濃い味で美味しい。玉葱の酢漬けも卵の味によく合う。こういう取り合わせも、アッズーロが考えたものだろう。
(きみと、こうして一緒に食事をするのも、後十日……)
小惑星を確実に迎撃するためには、落下当日までなど待ってはいられない。そのことは、既にアッズーロにも知らせて、本体の発進に巻き込まれないよう、王都の人々の避難を急がせるように頼んである――。
思考回路で迎撃の検算をしつつ、乾酪の最後の一切れを口に入れたナーヴェに、つとアッズーロが手を伸ばしてきた。指先で、ナーヴェの口の端をなぞる。乾酪に掛かっていた蜂蜜が口元に付いていたのを、拭い取ってくれたらしい。
「相変わらず、幼子のようだな」
呆れたように言って、アッズーロは蜂蜜の付いた指先を、そのまま自分でぺろりと舐めた。
「きみのそういうところも、相当子どもっぽいと思うけれど」
ナーヴェが苦笑して言い返すと、アッズーロは溜め息をついて不意に立ち上がり、卓を回ってきた。見上げたナーヴェの顎を捉えて、アッズーロはそのまま口付けてくる。
「んっ……。ちょ、まだ、フィオーレも」
いるのに、と抗議する言葉も舐め取られてしまった。食べたものが同じなので、同じ味がする。いつもより激しい口付けに息の上がったナーヴェを椅子から抱え上げ、アッズーロは有無を言わさず寝台へ運んだ。フィオーレは、油皿の灯りを一つだけにして、素早く退室している。
「……一体、どうしたんだい……?」
息も絶え絶えに尋ねたナーヴェを、アッズーロは青空色の双眸で見下ろしてきて、低い声で言った。
「そなたがまたロッソに触られたと聞いて、心穏やかにいられる訳なかろう。そなたは、われを王とのみ思うておるようだが、われは、王であると同時に、そなたの伴侶だ。――それともそなたは、われが伴侶として苛立つことすら、許さぬか」
答えることは、難しかった。上手く言葉を選べなければ、アッズーロに余計な情報を与えてしまう。ナーヴェは、辛うじて告げた。
「ぼくのこの体は、きみのために作った、きみのものだ。きみは、寝室で、ぼくの許しなんて求めなくていい」
「――ならば、覚悟せよ」
アッズーロは、硬い口調で言いながらも、決してナーヴェの左腕に負担を掛けないよう、労わって体を動かした。ナーヴェは、ただ全てを受け入れた。
翌日の朝早く、使節団一行はテッラ・ロッサ王宮を発った。ロッソ三世と王妹二人は玄関での見送りだったが、多くの近衛兵達と衛兵達、それに数人の女官達が宮門まで来て一行の馬車を見送ってくれた。見知った顔があったのか、王の宝は嬉しげに手を振り、別れを惜しんでいた。
御者台には、ノッテが座っている。その手綱捌きで、馬車は快調に王都の街路を走り、やがて貧民街が見える辺りへ差し掛かった。
「あ! ごめん、停めて」
急に、窓の外を眺めていたナーヴェが声を上げたので、ジョールノは小窓から御者台のノッテに声を掛けた。
「ちょっと停められるかな?」
「はい」
ノッテは落ち着いた手綱捌きで、馬車を街路の端に寄せ、停めた。
「ありがとう!」
軽やかに礼を述べ、ナーヴェは急いで馬車を降りていく。ジョールノの目配せに頷いたルーチェが、その後に素早く続いた。
「ソニャーレ! 会えると思っていなかったから、嬉しいよ。シンティラーレ、ありがとう。見送りのみんなの中にいなかったから、気にしていたんだ。ソニャーレを呼んでくれていたんだね。お祖父さんも元気そうで何よりだよ」
窓から、明るいナーヴェの声が聞こえてくる。応じる声も聞こえてきた。
「あなた様も、生きていらして、お元気そうで、本当に嬉しいです……。その節は、大変お世話になりました。感謝の言葉もありません」
(工作員ソニャーレか)
ジョールノは、窓に顔を近づけ、外に立つ、胡桃色の髪を布で覆った少女を見た。その傍らには、高齢の男性と、王妹で薬師のシンティラーレの姿もある。
(工作員ソニャーレとフェッロは、一応わが国では指名手配犯に指定されているんだが、まあ、今回は目を瞑るか……)
バーゼとペルソーネに目を向けると、同じことを考えていたのか、二人とも阿吽の呼吸で頷いた。御者台のノッテも、動こうとはしていない。皆、王の宝の心情第一で一致したらしい。
(いい連携だ)
ジョールノは満足して微笑んだ。
外で五分間ほど話していたナーヴェは、名残惜しそうに馬車の中へ戻ってきた。
「待たせてごめん。ありがとう」
「いえいえ、あなた様が嬉しそうで何よりです」
ジョールノは答えて、御者台に合図した。ノッテが手綱を操り、馬車が、ゆっくりと走り出す。ナーヴェは、窓際で暫く手を振ってから、口元に寂しげな笑みを残して座席に座り直した。
ジョールノは、笑顔で告げた。
「あの方々は、あなた様のことを恐れず、人として接しておられましたね」
ナーヴェは顔を上げ、ジョールノを見つめてから、微笑んで頷いた。
「うん。とても、嬉しかったよ」
翌日、何事もなく国境を越えた馬車は、王都エテルニタに入った後、王城へは直行せず、郊外にあるプラート・ブル大公城へ寄った。ナーヴェが、予めそうするよう頼んでいたからだ。
「では、また待たせるけれど、半時ほどで戻るから」
ナーヴェはすまなそうに断って、馬車を降りた。
「同行しては駄目なんですね?」
その背中へジョールノが確認すると、ナーヴェは振り向いて頷いた。
「ごめん。二人だけで話したいことがあるんだ」
「いいですよ。ゆっくり待たせて貰います。まだ日暮れまでには、間がありますしね」
「ありがとう」
ナーヴェは微笑んで、従僕に先導され、大公城の玄関を入っていった。
「何の話をなさるのでしょうね……?」
呟いたルーチェに、ジョールノもノッテも、ペルソーネですら沈黙を以て答えた。御者台のバーゼも、耳はいいはずだが、何も言わない。
(こればかりは仕方ない)
ジョールノは微苦笑して、馬車の窓から大公城を見上げる。
(大公チェーロ殿下とアッズーロ陛下との関係は、未だに微妙だからな……)
新王アッズーロが、先王チェーロに毒を盛り、退位を早めさせて即位したという噂は、根強くある。それでも新王アッズーロの治世がそれなりに安定し、人望もあるのは、王の宝ナーヴェという存在が目立っているからだ。王妃にまでなったナーヴェの人気は、絶大である。
(庶民にとっては、血筋の不明さなどより、王の宝という神秘性や、実際の美しさ、優しさ、賢さが重要だろうからな。それに)
アッズーロ自身も変わった。
(王太子時代は、もっと険しい表情をした、近寄り難い雰囲気の方だったが、最近は随分と笑顔が増え、気安い雰囲気を纏うようになられた)
何より、王の宝を気遣い労わる様子は、傍目にも微笑ましい。
(きっとナーヴェ様は、アッズーロ陛下とチェーロ殿下の間も、取り持つおつもりなんだろう)
ロッソ三世とアッズーロの間も、レ・ゾーネ・ウーミデ侯とアッズーロの間も、ナーヴェが取り持ってきたようなものだ。
(ナーヴェ様が、アッズーロ陛下と周囲を繋いでいく……)
そこまで考えて、ふとジョールノは眉をひそめた。
(しかし、今までナーヴェ様自身、チェーロ殿下とは距離を保っておられたのに、ここに来て急に……)
ナーヴェが、帰りにプラート・ブル大公城に寄りたいと言い出したのは、五日前、テッラ・ロッサへ出立する前日だった。
(あの時から、何故、とは思っていたが……)
ついでがなければ、なかなか訪れにくい場所だからだろう、と推測していたのだが。
(ナーヴェ様は、何か急がれているのか……?)
ジョールノは、唐突に不安に駆られた。
(まさか――)
ナーヴェは、ロッソ三世に対しても、降ってくる星を自ら「迎え撃つ」と言っていた。
(復活までしたあの方は、何でもできる方だと、わたしも含めて、誰もが思っているが……)
星を「迎え撃つ」とは、相当な危険を伴うことなのではないだろうか――。
(万が一、あの方を失うようなことになったら、アッズーロ陛下は、この国は、テッラ・ロッサとの関係は、どうなる……?)
空恐ろしいような気持ちになったジョールノの視界に、さらりと、青い髪が現れた。従僕に先導されて、ナーヴェが玄関から出てくる。従僕にも親しげに会釈して別れた王の宝は、ルーチェが開けた馬車の扉から、足早に乗ってきた。
「待たせてごめん」
重ねて詫びて、席に着く。かなり急いで戻ってきたのか、微かに息が上がっている。ジョールノは、御者台のバーゼに合図してから、ナーヴェに向き直った。
「わたくしどものことは、お気になさらず。あなた様は、王の宝なのですから。わたくしどもは、ただあなた様に尽くすのみです」
真摯に告げると、ナーヴェは僅かに目を瞠ってから、複雑そうに微笑んだ。
「――ありがとう。でも、本当の王の宝は、ぼくではないんだよ……。直接きみ達と触れ合うようになって、ぼくも漸くそのことに気づいたんだ。建造されてから三千年も経って、漸くね……。ぼくはただ、きみ達を守るために在るんだよ」
青い双眸に強く見つめられ、ジョールノは言葉を返すことができなかった。代わりにペルソーネが、いつもの生真面目な口調で言った。
「けれど、御無理はなさらないで下さい。陛下の御ためにも」
「――努力するよ……」
王の宝は、優しい表情で小さく頷いた。
夕焼けの中、王城の玄関前で馬車から降りた使節団一行は、その足で、王の間へ入った。
王座で待ち構えていた王と、勢揃いしていた大臣達に、ペルソーネがロッソ三世の了解を得られたことを簡潔に報告し、使節団は解散となった。詳細については、ナーヴェが既に報告済みとして敢えて語らせなかったので、混乱はなく、アッズーロも怒りを表したりはしなかった。
「お世話になったね、みんな」
玄関先まで見送りに来たナーヴェは、最後につとジョールノに近づいてきて、囁いた。
「愚痴まで聞いてくれたきみには、特に感謝しているよ。ところで、きみとペルソーネは、いつ結婚するんだい?」
絶句してから、ジョールノは一つ息をついて、小声で真面目に答えた。
「今は大変な時ですから、星が降った後、国が落ち着いてからと考えております。彼女も、そのほうがいいと言うので」
「――そう」
ナーヴェは明らかに気落ちした様子で俯いてから、すぐに顔を上げて言った。
「応援しているよ。必ず、ペルソーネを幸せにしてあげて。彼女は、ぼくの大切な友人だから」
「言われるまでもありません。必ず」
頷いたジョールノに嬉しげな微笑みを見せて、王の宝は離れた。長く青い髪を靡かせて国王アッズーロの傍らに戻っていく姿が、ジョールノの目には、ひどく儚げに見える。一礼して、城門へと歩き始めたジョールノの隣に、当のペルソーネが、すっと寄ってきた。
「何を話していたのですか?」
問われて、ジョールノは、さりげなくその手に触れながら告げた。
「きみを幸せにすると、誓ったよ」
かっと、ペルソーネは白い顔を赤面させる。つい口付けしたくなる可愛らしさだ。
(こういう存在を、もし失ったら……)
自分なら、立ち直れない。
(アッズーロ陛下……)
ジョールノは、歩みを止めないまま唇を噛み、半ば強引にペルソーネの手を握った。
「――ジョールノと何を話しておったのだ?」
王城の玄関に仁王立ちして腕組みしたアッズーロに訊かれ、ナーヴェは苦笑した。
「嫉妬かい? 大丈夫だよ。ぼくはずっとずっと、きみのものだから」
「なれど、われが王でなくなれば、そなたは、次の王のものであろう……?」
アッズーロは、僅かに顔をしかめて指摘してきた。
「次の王? テゾーロかい?」
ナーヴェは敢えて軽く流す。
「いい王になるように、しっかり育てないとね」
「――そうだな」
アッズーロは微かに嘆息して、踵を返した。
「疲れたであろう。今日はもう仕舞いだ。寝室へ戻るぞ」
「うん」
素直に頷いて、ナーヴェはアッズーロの隣に並び、夕日が差す回廊を、ともに歩く。
「テゾーロは元気にしていたかい?」
尋ねると、アッズーロは難しい顔で答えた。
「元気にはしておる。ただ、まだ泣くばかりで何も話さん。ラディーチェの子は、既に何やら話しておるのにな」
「ああ、インピアントは、生まれてもう二ヶ月だからね。赤ん坊が話し始めるのは、早くても、生まれて二、三ヶ月後からだよ。テゾーロが話し始めるのは、もう少し先……」
つい、声が暗くなってしまいそうになる。ナーヴェは無理矢理微笑んで、アッズーロの横顔を見上げた。
「……楽しみだね」
「うむ。最初に話す言葉は、やはり『母上』か」
アッズーロの何気ない言葉が、思考回路を凍りつかせそうになる。
「――『父上』のほうが、嬉しいかい?」
辛うじて返したナーヴェの顔を、アッズーロが見下ろした。
「あまり顔色がよくないな」
「――怪我が治り切っていないからね……」
ナーヴェは小さく肩を竦めた。人工衛星に接続したり、ジョールノに愚痴を零したり、本体の準備を進めたりで、実のところ、大して治療していないのだ。
「そなたにしては、随分と治りが遅いではないか。相当酷く傷つけたのか」
アッズーロは、睨んでくる。ナーヴェは、曖昧に頷いた。
「それもあるし……、特に必要なかったから、少し放置していたというか……」
「全く」
呆れたように言って、アッズーロは唐突に足を止め、ナーヴェを抱き上げた。軽々とした動きだ。また、力が強くなったのかもしれない。
「そなたは、いつも肉体をぞんざいに扱い過ぎる」
文句を呟いた青年王の横顔には、心配と怒気が混在している。ナーヴェは堪らなくなって、抱えられたまま身を捩り、青年の首に両腕を回して、ぎゅっと抱きついた。青年の長衣の襟元から、香ばしい羊乳の匂いがする。
(こういう感覚を、きっと「愛おしい」と言うんだね……)
自分は、この青年を愛している。彼自身が教えてくれたように、「特別に」愛してしまっている。
(きみが王でなくなっても、ぼくにとっては、きみが「特別」だ……)
けれど、それは最早、伝えてはならない情報だ。
「いつも、ごめん……」
万感を込めて囁くと、アッズーロは鼻を鳴らして、再び歩き始めた。
その夜、アッズーロは、ナーヴェの左腕を気遣って、優しく、強引だった。
夕食には、乾酪と茹で卵と羊の肉が並んだ。飲み物は羊乳だ。乾酪には当然のように蜂蜜が掛けてあり、茹で卵には酢漬けの玉葱が添えてある。羊の肉は、焼いてあり、椒と塩で味つけしてあるようだ。
「こんなに、申し訳ないよ……」
ナーヴェは恐縮した。豪華過ぎる食事だ。特に、羊の肉など、年に一、二度しか食べないものだ。
「ぼくなんかに、こんなに命を費やしたら駄目だよ……」
「その肉体は、われのものであろう。きちんと食して、健康を維持せよ」
アッズーロは卓の向かいで、目を眇めてナーヴェを見据えている。仕方なく、ナーヴェは肉叉を手にした。
「命達よ、いただきます」
感謝して、肉から口に運ぶ。焼き加減が絶妙で、美味しい。貧血が続く肉体が欲する味だ。ナーヴェは羊肉の切れを、ぱくぱくと口に運んだ。アッズーロが、満足そうに見つめてくる。
「――きみも、食べたら?」
ナーヴェが促すと、アッズーロは漸く自らも肉叉を手にして、羊肉を食べ始めた。
「ふむ。よい肉だ。レ・ゾーネ・ウーミデ侯領で流行っていた羊の病も心配したが、あまり広がらずに済んだな」
「パルーデが頑張ったからね。彼女のそういう手腕は、やっぱり凄いよ」
ナーヴェは頷いて、茹で卵を頬張った。とても濃い味で美味しい。玉葱の酢漬けも卵の味によく合う。こういう取り合わせも、アッズーロが考えたものだろう。
(きみと、こうして一緒に食事をするのも、後十日……)
小惑星を確実に迎撃するためには、落下当日までなど待ってはいられない。そのことは、既にアッズーロにも知らせて、本体の発進に巻き込まれないよう、王都の人々の避難を急がせるように頼んである――。
思考回路で迎撃の検算をしつつ、乾酪の最後の一切れを口に入れたナーヴェに、つとアッズーロが手を伸ばしてきた。指先で、ナーヴェの口の端をなぞる。乾酪に掛かっていた蜂蜜が口元に付いていたのを、拭い取ってくれたらしい。
「相変わらず、幼子のようだな」
呆れたように言って、アッズーロは蜂蜜の付いた指先を、そのまま自分でぺろりと舐めた。
「きみのそういうところも、相当子どもっぽいと思うけれど」
ナーヴェが苦笑して言い返すと、アッズーロは溜め息をついて不意に立ち上がり、卓を回ってきた。見上げたナーヴェの顎を捉えて、アッズーロはそのまま口付けてくる。
「んっ……。ちょ、まだ、フィオーレも」
いるのに、と抗議する言葉も舐め取られてしまった。食べたものが同じなので、同じ味がする。いつもより激しい口付けに息の上がったナーヴェを椅子から抱え上げ、アッズーロは有無を言わさず寝台へ運んだ。フィオーレは、油皿の灯りを一つだけにして、素早く退室している。
「……一体、どうしたんだい……?」
息も絶え絶えに尋ねたナーヴェを、アッズーロは青空色の双眸で見下ろしてきて、低い声で言った。
「そなたがまたロッソに触られたと聞いて、心穏やかにいられる訳なかろう。そなたは、われを王とのみ思うておるようだが、われは、王であると同時に、そなたの伴侶だ。――それともそなたは、われが伴侶として苛立つことすら、許さぬか」
答えることは、難しかった。上手く言葉を選べなければ、アッズーロに余計な情報を与えてしまう。ナーヴェは、辛うじて告げた。
「ぼくのこの体は、きみのために作った、きみのものだ。きみは、寝室で、ぼくの許しなんて求めなくていい」
「――ならば、覚悟せよ」
アッズーロは、硬い口調で言いながらも、決してナーヴェの左腕に負担を掛けないよう、労わって体を動かした。ナーヴェは、ただ全てを受け入れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
わたしたちの庭
犬飼ハルノ
恋愛
「おい、ウェスト伯。いくらなんでもこんなみすぼらしい子どもに金を払えと?」
「まあまあ、ブルーノ伯爵。この子の母親もこんな感じでしたが、年ごろになると見違えるように成熟しましたよ。後妻のアリスは元妻の従妹です。あの一族の女は容姿も良いし、ぽんぽんと子どもを産みますよ」
「ふうん。そうか」
「直系の跡継ぎをお望みでしょう」
「まあな」
「しかも伯爵以上の正妻の子で年ごろの娘に婚約者がいないのは、この国ではこの子くらいしかもう残っていませんよ」
「ふ……。口が上手いなウェスト伯。なら、買い取ってやろうか、その子を」
目の前で醜悪な会話が繰り広げられる中、フィリスは思った。
まるで山羊の売買のようだと。
かくして。
フィリスの嫁ぎ先が決まった。
------------------------------------------
安定の見切り発車ですが、二月中に一日一回更新と完結に挑みます。
ヒロインのフィリスが自らの力と人々に支えられて幸せをつかむ話ですが、
序盤は暗く重い展開です。
タグを途中から追加します。
他サイトでも公開中。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。
ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる