王の宝~元亜光速宇宙移民船の疑似人格電脳は人として生きる夢を見るか~

広海智

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第十九章 薬の効き目 二

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     二

「――昼食まで、もう少し休むよ」
 ナーヴェは沈んだ表情で告げて、左手で体を支え、再び寝台に横になった。右腕を庇った動きにも既に慣れた様子だ。アッズーロは、伴侶の頭を少し撫で、華奢な肉体に掛布を掛けてから、腰を上げた。
「われは執務室で報告書を読んでいる。何かあれば呼ぶがよい」
「うん」
 微笑んで頷き、ナーヴェは目を閉じた。その寝顔に疲れが滲んでいる。やはり、妊娠した上で新薬を作るというのは、負荷が大きいのだろう。
(すまん……)
 胸中で詫び、長く青い髪を一束掬って口付けてから、アッズーロは執務室へ移動した。レーニョが無言で気遣わしげについてくる。その背後で、フィオーレが静かに寝室の清掃を再開し、ラディーチェがテゾーロを抱き上げて椅子に腰掛け、授乳を始めた。
 執務机の上に箱に入れて置かれた報告書の山の中に、緊急性を要するものはない。そういった報告は、伝令達と侍従との連携により、でき得る限り早くアッズーロへ口頭で伝えられる。今回の反乱に関することも大概はそうして伝えられてくる。だが、積まれた報告書の中にも、反乱と因果関係を持つ事柄が含まれている可能性は大いにある。アッズーロは、椅子に腰を下ろすと、一枚一枚、報告書に目を通していった。
(羊の病に関わるような報告は、やはりない、か……)
 羊の病については、今回の反乱に関係があると知るまでは、そもそもレ・ゾーネ・ウーミデ侯領で封じ込められ、終息したとばかり思っていたほど、報告がない。調査を命じたので、その報告については伝令達によっていち早く届くはずだが、報告書による報告はなさそうだ。
(こうも情報がないとなると、意図的に隠されておると見るべきだな……)
 アッズーロは目を眇め、読み終えた報告書を執務机の端へ順に置いていき、レーニョがそれを浅い木箱に入れていく。アッズーロが読み終えた報告書は侍従達によって文書保管庫に収められ、オリッゾンテ・ブル王国の歴史書の一部として扱われるのである。羊皮紙ではなく草木紙で作られた報告書は劣化が早い可能性があると告げて、ナーヴェは些か申し訳なさそうにしていたが――。
(隠しておるは、パルーデに加えて、誰だ……?)
 レ・ゾーネ・ウーミデ侯領パルーデが羊の病が他領に蔓延していることを知らぬはずはない。彼女が意図的に報告しなかったことについては明らかで、その点は追求し、取り引き材料としている。しかし、周辺の侯領からの報告もないということは、他にも隠している者達がいるということだ。
(諸侯か、それとも、農民達自身か、村長どもか……? 一体、何故隠す……?)
 報告さえしてくれば、国としても蔓延防止の策を打つことができた。
(その策が、疎まれたということか……)
 蔓延防止のためには、どうしても、羊の移動を禁ずる必要がある。病の羊を隔離したり、殺処分したりする必要性も出てくるかもしれない。
(われが、そうした策を、無慈悲に果断に行なうと思われた訳か……)
 アッズーロは冷笑した。民達の判断は間違っていない。きっと自分はそうしただろう――。
「……っ、ふふ、あは、駄目、駄目だよ、そこは、ぁ、やめ……」
 不意に寝室から聞こえてきたナーヴェの声に、アッズーロは眉をひそめて立ち上がった。レーニョも怪訝そうに寝室を振り向いている。今、寝室にはナーヴェとフィオーレ、テゾーロとラディーチェがいるが、一体何が起きたのだろう。アッズーロは足早に執務机を回って寝室へ行った。
「陛下……」
 フィオーレが、困惑した顔でこちらを見た。テゾーロを胸に抱いたラディーチェもまた、揺り篭の傍に立ち尽くし、不安を湛えた顔でアッズーロとナーヴェとを見比べる。そのナーヴェは、寝台に横になったまま、僅かに身を捩りつつ――、笑っていた。
「あは、駄目だって、くすぐったい……」
「如何した、ナーヴェ」
 アッズーロが声を掛け、大股で歩み寄ると、ナーヴェは涙目で見上げてきた。
「大丈夫、これは、ほんのちょっとした不具合だから……、ぁ、や、だから、そこは……」
 耐えかねたように大きく身悶えた妃の両手首を掴んで、アッズーロは華奢な体を仰向けに押さえ付けた。
「はっきりと申すがよい。一体何事だ」
「や、ひゃ、羊だよ」
 ナーヴェはまだ自由な両足を小さくじたばたさせながら答える。
「飢えてしまわないように、栄養剤を混ぜた水をあげたんだけれど、勢い余ってそれを零して、舐め回すものだから……、やっ、やめ、あは、ごめん。ずっと肉体に接続し続けているから、感覚機器が混線してしまったみたいで、駄目、や、ふふ、ひゃ、あはは……」
 事情が大方呑み込めて、アッズーロは安堵するとともに、妃の本体の中にいる羊に、嫉妬に似たものを感じた。
(われとて、そなたの感じるところを隈無くまさぐり喘がせたいというに、羊如きがわが妃を喘がせるなぞ、気に食わん……)
「あ、はは、ふふ、アッズーロ、顔、怖いよ……? 怒っているのかい?」
 組み敷いた妃の問いに、アッズーロは正直に吐露した。
「怒ってはおらんが、不機嫌だ」
「ごめ……ん……。ちょっと、催眠剤気体を、出して、羊には、眠って貰うよ」
 ナーヴェは告げ、暫くしてから、ほうと一息ついた。両手からは力が抜け、両足の動きも止まっている。
「羊は眠ったよ。騒がせてごめん」
 改めて詫びてきた妃に、アッズーロは顔をしかめたまま口付けた。本当なら、このまま乱暴に長衣を剥いで、華奢な全身を愛撫したい気分だ。
 時間を掛けた深い深い口付けを終えると、唯一無二の宝は、真っ赤に染まった唇の端から涎を零しながらも、釘を刺してきた。
「……セーメがいるから、ほどほどに、ね……?」
 そんなことは重々分かっている。だからこそ、悩ましいのだ。アッズーロは深い溜め息をついて応じた。
「これ以上をするつもりはない。だが、われを煽って自制心を試すようなことは、できるだけしてくれるな」
「うん、ごめん……」
 しゅんとした宝の頭を撫でて、アッズーロは寝台から降りた。
 仲夏の月の温い風が、開いた窓からゆったりと吹き込んでくる。風に青い髪を僅かに乱されるナーヴェは、相変わらず美しい。
(まあ、そなたが最も美しいのは、全身を朱に染めてわが愛撫に翻弄され、喘いでいる時だが……)
 アッズーロは最後に軽く宝の額に口付けて、その寝台を離れた。


(今回の不具合は、二度と起こらないようにしないと)
 ナーヴェは、執務室へ消えるアッズーロを見送って、小さく溜め息をついた。本体と肉体の間に生じる齟齬――不具合は、どうしても起きてしまうものだと割り切ってはいるが、アッズーロに多大な不快感を与えるものに関しては、何とか抑えたいとも思う。
(薬ができた後は、病の羊がいる牧場を幾つか回って、一応治験をしないといけない。その時に、また同じようなことにならないように、何とか対策しよう)
 ナーヴェは薬を作る傍ら、本体内を羊に舐め回されないための手段を演算し始めた――。


 二日が過ぎても、エゼルチトの行方は杳として知れなかった。だが、行き先の検討は付く。
(恐らくは、レ・ゾーネ・ウーミデ侯領からフォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯領へ、少数精鋭で移動している)
 ロッソは眉間に刻んだままの皺を深くして、幼馴染みの行動を推測する。ソニャーレからの情報では、レ・ゾーネ・ウーミデ侯周辺に、エゼルチトへ呼応した動きは皆無とのことだった。ならば、エゼルチトはもう一人の協力者――フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯の許へ赴いたのだろう。
(あやつに同行できた兵は、幽閉塔脱出時点で四、五人、国境通過時点でも多くて七から八人程度だったはずだ。それ以上の人数になれば、必ずどこかで他の兵達の目に留まる。だが、あやつは既に、オリッゾンテ・ブルを内側から破壊するに足るだけの兵力を、かの国の内側に有している)
 先日の国境侵犯に続くオリッゾンテ・ブル軍との交戦では、一千二百五十七人の戦死者が出たと報告が上がっていた。けれど、ボルドが伝えてきた情報に拠れば、それは全くの虚偽報告だった。ナーヴェと戦った鉄砲隊には多数の怪我人が出たが、死者は出ておらず、その後の撤退戦でも、オリッゾンテ・ブル軍との間に僅かな小競り合いが生じた程度で、死者など出ていないのだ。即ち、戦死者として報告された兵は、全て、オリッゾンテ・ブル国内に潜伏させているのだろう。エゼルチトらしい、抜かりのなさだ。
(千人余りの兵を要所要所に潜ませ、必要な時に動かし、反乱を大規模化させていき、あやつ自身は、フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯を利用して、ナーヴェを呼び寄せる)
 王の宝ナーヴェの本体を、自分達は見て、船として乗りさえしてしまった。殺しても死なない存在だと一度は見せつけられたナーヴェの真実を、エゼルチトも知ってしまった。
(あの本体を壊すことも、容易ではなかろう。だが、不可能ではない――)
 ナーヴェの、全ての人を守らんとする、あの慈愛に満ちた性格を利用すれば、罠など幾らでも仕掛けられる。後は、中に入り込んで内部を徹底的に破壊焼却するなり、落石落盤に巻き込むなり、エゼルチトならば、さまざまな方策を考えつくだろう。
(ナーヴェは、馬鹿ではない。そのくらいのことは「予測」するだろうが……)
 あの宝は、すぐ自己犠牲に走る傾向がある。
(そなたに何かあれば、アッズーロが、引いてはオリッゾンテ・ブル王国自体が、立ち直れぬ――)
「陛下」
 外からジェネラーレに声を掛けられて、ロッソは顔を上げた。馬車の揺れがいつの間にか止まっている。目的地に到着したのだ。近衛隊長らしく騎馬で馬車に随行していたジェネラーレは、既に部下に愛馬を預けて下馬している。ロッソは自ら馬車の扉を開け、その邸の裏門前に降り立った。薄暮の中、簡易な甲冑姿のジェネラーレは先に立って、門番に頷き、開かれた裏門を通り抜けていく。ロッソはその後に続いて、邸の裏庭に入った。
 棗椰子の林のようになっている暗い裏庭を通り抜け、いつものように邸の勝手口から中へ入る。
「姉は、私室で待っております。毎度お出迎え致しませず、誠に申し訳ございません」
 ジェネラーレが謝ってくるのに対し、ロッソは苦笑した。
「よい。毎度おれが都合を訊かず押し掛けておるのだからな」
 ジェネラーレの姉ドルチェは体が弱く、一年の内の大半を、病気療養をしながら過ごしている。だが、体がどれほど病んでいようとも、心は驚くほど健やかで、見舞いに行くロッソを、寧ろ慰めてくれるのだ。その上、頭も賢く、相談事を持ち込めば、知恵を授けてくれることも多い。本人に拠れば、書物を読んで考え事をするぐらいしかできないので、頭を使うのは得意ということらしい。
 通い慣れた階段を上がり、二階にあるドルチェの私室の前にジェネラーレを残し、ロッソは扉を開けて、明るい設えの部屋へ入った。後ろ手に扉を閉ざして、寝台の上で上半身を起こしている、未だ少女のような小柄な人へ歩み寄る。
「こんばんは、ロッソ」
 夜着のままのドルチェは、茶色の巻き毛に縁取られた顔に笑みを浮かべ、やや潤んだ青い双眸で見上げてきた。白い頬も、熱があるのか火照った色をしている。
「いつもすまん。横になっていてくれ」
 ロッソは寝台の傍らに用意してある椅子へ腰掛けながら、愛する人を労った。
「大丈夫よ。横になったら、あなたがそこにいようと寝てしまいそうだから」
 ドルチェは僅かに肩を竦めると、慈愛に満ちた眼差しでロッソを見つめる。
「ジェネラーレから少し聞いたわ。エゼルチトが行方を眩ましてしまったのね」
「ああ。幽閉塔を脱出して、以降の動向は不明だ」
 ロッソは悄然として告げた。
「そう。いろいろと心配ね……」
 ドルチェは、すぐに考える顔になる。
「他の将軍達の動揺はどうかしら?」
「今のところは問題ない。驚いてはいるが、追随しようとする気配のある者はおらん」
「密かに協力している人も?」
「ない、とは思うが、引き続き探らせてはいく」
「みんなを疑いたくはないけれど、エゼルチトは影響力のある人だから、それは大切ね」
 ドルチェは頷いてから、冷静に尋ねてきた。
「それで、あなたは、エゼルチトが今どこにいると考えているの?」
「フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯領へ向かっている最中だろう」
 ロッソは低い声で答える。
「レ・ゾーネ・ウーミデ侯は、国境は越えさせても、積極的な支援はせぬ構えのようだ。ならば、あやつは、フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯を頼る。己が母の従兄たる、あの男をな。加えて、こちらの間諜が掴んだ情報に拠れば、反乱民の首魁の一人もまた、フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯の縁者らしい。エゼルチトは反乱民の中に工作員を送り込んで、その者と連携を図っておるということだ」
「既に、単なる民衆の反乱ではなくなっているということね……」
 ドルチェは俯いてから、目を上げた。
「でも、彼が反乱民と直接合流するために、カテーナ・ディ・モンターニェ侯領へ行ったとは考えられないのかしら?」
「あやつが王の宝ナーヴェを直接知る以前ならば、その線もあったかもしれん。だが、今となっては、それはない」
 ロッソは眉間に皺を寄せる。
「反乱民には、分散させた兵達を必要に応じて合流させ、あやつ自身は、フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯と接触し、反乱民に呼応して反乱を起こすよう促すだろう」
「けれど、フォレスタ・プルヴィアーレ・カルダ侯は、そう簡単に動く人ではないはず。彼もそのことは知っているでしょう。彼の目的は何かしら?」
 さらりと核心を問われて、ロッソは確信に変わりつつある推測を告げた。
「王の宝ナーヴェを、あの博愛主義の性格を利用して釣り出し、破壊することだ」
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