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2 エルフの国と生贄の山
2- 6.エルフの国と生贄の山
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ニトゥリーの能力で、兄弟たちが首都セイヴを馬車で超え、飛行竜に乗り換えたとわかった。
オスティオスと教師が九人、それと二人の子供を連れ一番近い飛行竜の竜舎へと向かう。
軍部の者とはそこで落ち合う連絡をした。
「ミッツは、目隠ししているのに、よく自分の場所がわかるね」
「あいつは、自分の身体から抜け出して自分のことを見ることが出来るんよ。思考を飛ばして会話できるよう練習しとったとき、うっかり、自分の身体から幽体離脱してしもうて、あんまりゾッとしないんで、やめるよう言うとった。身体から離れられるんは一瞬やから、たぶん今も細切れに、抜け出して位置を確認しとる。使い道のない特技だと思とったが、役に立ったわ」
「俯瞰のスキルは、軍部ではハイクラスが約束される高等な魔術だ。園の者には知られてもいいが、外では喧伝しないよう注意するんだ」
オスティオスが釘を刺したところで、軍より派遣されてきた精鋭が到着した。
隙のない動きと表情のない顔、軍服の上からでもわかる強靭な肉体は、荒事に慣れていそうなタフさが見て取れる。
挨拶もなく、向こうの代表らしき男とオスティオスは視線を交わしただけで、直ぐに飛行竜に騎乗する。園の十一人と軍部の五人が十五騎にそれぞれ乗り国境を目指す。
国境を出るまでに、確保する事が何より優先される。
騎竜術に長けたペル・マムを先頭に、雁のように翼を広げた竜が並び飛行する。
鳶色の羽毛に覆われた、巨大な鳥型の恐竜のような見た目で、緑色のものを身に着ける事を好む謎の習性を利用し、手綱と鞍を取り付け、エメラルドに似た鉱石を飛行報酬として与えることにより、騎乗が可能となっている。
なかには、ペル・マムのように竜の方から、乗ってくださいと寄って来る特殊な体質を持つ者もいる。
オスティオスは、ソゴゥを抱えて竜に乗り、はしゃいで落ちないか内心、冷や冷やしながら上空を滑空する。
ふおおおおと、謎の奇声を発し続けているソゴゥ。
ニトゥリーより落ち着いて見えたが、その実、暗く思いつめた目をしていた。せめて、この瞬間だけでも気が紛れるのならと、オスティオスはその黒い髪をひと撫でする。
先頭の飛行竜が減速しだすと、オスティオスが先頭を代わり、許可申請を制限空壁へ投影し、間もなく、「許可」の表示と共に空壁に穴が開いて、飛行竜が連なってそこを通り抜ける。
首都セイヴから離れると、景色は街並みから森林地帯へと一変する。
低層雲を切り裂いて、長らく飛行を続けながら、ついに国境付近にまで差し掛かる。
オスティオスはペル・マムの竜と並走し「目標は!」と声を張り上げる。
「まだこの先です! 国境を越えている様です!!」
国境の空壁は封鎖され、如何なる出国申請も受け付けていないはずだが。どういうことだ?
「あそこです!」ペル・マムが叫び、指し示す先に、不自然に穴の開けられた空壁が現れた。三角に切り取れられた空壁の縁が、赤く発光している。
地上に、空壁の展開を遮断している装置を見つけ、計画性の高さを痛感した。
「このまま、国境を越えて追うぞ」
誘拐犯が用意した空壁の穴を通り抜ける。
隣国は友好国の一つだ。正式な謝罪は後でするとして、とにかく子供たちを取り戻さなくてはならない。
編隊は地上から視認を避けるために高度を上げ、防御膜を強化し、気圧と気温を保ちながら、ニトゥリーの案内に追従する。
山岳地帯上空を航行し、やがて見えてきた灰色の稜線は、有史以来最も噴火を繰り返しているスーパービィバ活火山群で、大規模な爆発を繰り返してはその形を変えてきた。
今もいくつかの山からは白い噴煙が上がり、火山雷が光っている。
降り積もる灰で一切の生き物を遮断し、灰色と白の山稜が連なるその中で標高が五千メートルにもなる最大のコーナンカインズ火山は、休止状態だが、遠目に見ても身が竦むほどの圧倒的な存在感を放っている。
やがて、ペル・マムの竜が高度を下げ、特徴的なカルデラを持つ火山の側へと先導した。数時間の連続飛行から、ようやく着陸姿勢をとった。
この場はすでに、友好国の端を横断して、国交の薄い中立国の領土だった。
灰色の渓谷の手前に、十五騎全てが降り立った。
狭間の手前に、数人の有翼人の姿が確認できる。
「スパルナ族ですね、すでにこちらには気づいているでしょう」
特殊部隊の男が言った。
「言わずもがなですが、有翼人は好戦的で、対空戦のみならず、地上での戦闘能力も高く、視力が発達しているため、閃光などの目つぶしや、逆に、周囲の光を遮断して暗闇にする魔法が有効とされております。しかし、そうした手段はすでに対策が取られている可能性があります」
「小細工なしで、正面から行こう。どうやら、あまり時間がないようだ」
オスティオスはニトゥリーの様子を見て、そう答える。
スパルナ族と思しき者たちは、灰色の服を着て、顔や身体、毛髪、そして本来は白い翼に至るまで、灰色の泥を塗りたくって背景と同化していた。
そのため、かなり視認し難く、見えている者が全てではない可能性がある。
オスティオスは特殊部隊の男と段取りを決めて、飛行竜とペル・マムだけを残し、ニトゥリーとソゴゥを伴って、渓谷へと正面から接近した。
カミソリ状に切り立つ山を割く細い道、その断崖の高さは、千メートル近くある。
オスティオスが子供たちを守りながら、他二人の教師が後方を警戒しつつ、特殊部隊五名を先頭に、突っ込んでゆく。
オスティオスと教師が九人、それと二人の子供を連れ一番近い飛行竜の竜舎へと向かう。
軍部の者とはそこで落ち合う連絡をした。
「ミッツは、目隠ししているのに、よく自分の場所がわかるね」
「あいつは、自分の身体から抜け出して自分のことを見ることが出来るんよ。思考を飛ばして会話できるよう練習しとったとき、うっかり、自分の身体から幽体離脱してしもうて、あんまりゾッとしないんで、やめるよう言うとった。身体から離れられるんは一瞬やから、たぶん今も細切れに、抜け出して位置を確認しとる。使い道のない特技だと思とったが、役に立ったわ」
「俯瞰のスキルは、軍部ではハイクラスが約束される高等な魔術だ。園の者には知られてもいいが、外では喧伝しないよう注意するんだ」
オスティオスが釘を刺したところで、軍より派遣されてきた精鋭が到着した。
隙のない動きと表情のない顔、軍服の上からでもわかる強靭な肉体は、荒事に慣れていそうなタフさが見て取れる。
挨拶もなく、向こうの代表らしき男とオスティオスは視線を交わしただけで、直ぐに飛行竜に騎乗する。園の十一人と軍部の五人が十五騎にそれぞれ乗り国境を目指す。
国境を出るまでに、確保する事が何より優先される。
騎竜術に長けたペル・マムを先頭に、雁のように翼を広げた竜が並び飛行する。
鳶色の羽毛に覆われた、巨大な鳥型の恐竜のような見た目で、緑色のものを身に着ける事を好む謎の習性を利用し、手綱と鞍を取り付け、エメラルドに似た鉱石を飛行報酬として与えることにより、騎乗が可能となっている。
なかには、ペル・マムのように竜の方から、乗ってくださいと寄って来る特殊な体質を持つ者もいる。
オスティオスは、ソゴゥを抱えて竜に乗り、はしゃいで落ちないか内心、冷や冷やしながら上空を滑空する。
ふおおおおと、謎の奇声を発し続けているソゴゥ。
ニトゥリーより落ち着いて見えたが、その実、暗く思いつめた目をしていた。せめて、この瞬間だけでも気が紛れるのならと、オスティオスはその黒い髪をひと撫でする。
先頭の飛行竜が減速しだすと、オスティオスが先頭を代わり、許可申請を制限空壁へ投影し、間もなく、「許可」の表示と共に空壁に穴が開いて、飛行竜が連なってそこを通り抜ける。
首都セイヴから離れると、景色は街並みから森林地帯へと一変する。
低層雲を切り裂いて、長らく飛行を続けながら、ついに国境付近にまで差し掛かる。
オスティオスはペル・マムの竜と並走し「目標は!」と声を張り上げる。
「まだこの先です! 国境を越えている様です!!」
国境の空壁は封鎖され、如何なる出国申請も受け付けていないはずだが。どういうことだ?
「あそこです!」ペル・マムが叫び、指し示す先に、不自然に穴の開けられた空壁が現れた。三角に切り取れられた空壁の縁が、赤く発光している。
地上に、空壁の展開を遮断している装置を見つけ、計画性の高さを痛感した。
「このまま、国境を越えて追うぞ」
誘拐犯が用意した空壁の穴を通り抜ける。
隣国は友好国の一つだ。正式な謝罪は後でするとして、とにかく子供たちを取り戻さなくてはならない。
編隊は地上から視認を避けるために高度を上げ、防御膜を強化し、気圧と気温を保ちながら、ニトゥリーの案内に追従する。
山岳地帯上空を航行し、やがて見えてきた灰色の稜線は、有史以来最も噴火を繰り返しているスーパービィバ活火山群で、大規模な爆発を繰り返してはその形を変えてきた。
今もいくつかの山からは白い噴煙が上がり、火山雷が光っている。
降り積もる灰で一切の生き物を遮断し、灰色と白の山稜が連なるその中で標高が五千メートルにもなる最大のコーナンカインズ火山は、休止状態だが、遠目に見ても身が竦むほどの圧倒的な存在感を放っている。
やがて、ペル・マムの竜が高度を下げ、特徴的なカルデラを持つ火山の側へと先導した。数時間の連続飛行から、ようやく着陸姿勢をとった。
この場はすでに、友好国の端を横断して、国交の薄い中立国の領土だった。
灰色の渓谷の手前に、十五騎全てが降り立った。
狭間の手前に、数人の有翼人の姿が確認できる。
「スパルナ族ですね、すでにこちらには気づいているでしょう」
特殊部隊の男が言った。
「言わずもがなですが、有翼人は好戦的で、対空戦のみならず、地上での戦闘能力も高く、視力が発達しているため、閃光などの目つぶしや、逆に、周囲の光を遮断して暗闇にする魔法が有効とされております。しかし、そうした手段はすでに対策が取られている可能性があります」
「小細工なしで、正面から行こう。どうやら、あまり時間がないようだ」
オスティオスはニトゥリーの様子を見て、そう答える。
スパルナ族と思しき者たちは、灰色の服を着て、顔や身体、毛髪、そして本来は白い翼に至るまで、灰色の泥を塗りたくって背景と同化していた。
そのため、かなり視認し難く、見えている者が全てではない可能性がある。
オスティオスは特殊部隊の男と段取りを決めて、飛行竜とペル・マムだけを残し、ニトゥリーとソゴゥを伴って、渓谷へと正面から接近した。
カミソリ状に切り立つ山を割く細い道、その断崖の高さは、千メートル近くある。
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