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第05章 20枚の地図~王都編
第14話 思わぬ所でバレた?
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宴会の翌日、約束通りプリと一緒に採取依頼に出掛ける事になった。
メンバーは全員。
こっちは俺とクラマにマイアにユー。それにプリとシェルを加えた六人だ。
シェルは昨日クラマと一緒だったけど、大して疲れて無いみたいだね。元々Aランクだし、レベリングをするほどでも無かったのかも。
クラマがなぜシェルだけを連れて行ったのかは聞いて無いけど、聞きたかったけど何となく聞きづらくて。
でも、まだシェルは本調子じゃないようだね、大人しくしてるよ。
俺としてはその方が有難いんだよな。クラマといるとシェルが大人しくするんなら、シェルが来る時はクラマに面倒見てもらえばいいのかな?
ちょっと可哀想な気もするけど、調子に乗せれば俺が可哀想になるから黙ってよ。
今日の目的は王都の西側にある独立峰でカイレス山という山の麓にある採石場からミスリル鉱石を王都まで運ぶという依頼である。
今回は徒歩で半日の距離という事で、馬車を手配してもらっての移動だ。
馬車と言っても荷馬車で幌も無い。
こっちで出しても良かったんだけど、せっかくプリが用意してくれたようなので、うちの天馬三頭はお留守番だ。
御者はクラマがしてくれている。
ま、馬に命令して御者台にただ座ってるだけなんだけどね。
移動中にはプリが色々教えてくれた。
今回の依頼のミスリル鉱石を運ぶためには、資格がいるそうだ。
依頼自体は非常に楽な仕事なんだけど、依頼を受ける資格を得るまでが大変なんだって。
俺は無理やり押し付けられた気がするけどな。
ロンド姉弟はその条件をすべて満たしているので、この仕事がよく回って来ると自慢気に話してくれた。安全な上に報酬が高いんだって。
そういや報酬の話はしてないや、今回はお近づきの印って事でもいいかな。お金は昨日たくさん稼いだしね。
いつもなら二人だけで行くのだが、今回は上位種の魔物が発生したという情報があったので俺達を誘ったという事だった。
それで、条件だけど、このミスリル搬送の依頼はAランクの信用ある冒険団が依頼される。通常の国なら軍が派遣されるが、この国では冒険者に依頼される。信用ある冒険者として国家公認やその都市公認の冒険者が設定されていた。
地方都市公認<王都公認<国家公認というものがあって、どの公認冒険者でもこういう依頼を受ける事ができるんだって。
だったら俺もできるんだな。こういう仕事だったら俺の得意分野だね。フィッツバーグにもあるのか今度聞いてみよ。
依頼中は収納量の多い収納ボックスを貸与してくれるので、大量のミスリル鉱石と合わせて莫大な金額となるため、信用のおける公認冒険者への依頼になるんだって。
一回依頼を受けると一ヶ月は十分暮らせる報酬が出るというからボロい依頼だと思う。
他にも、公認冒険者について教えてもらった。
地方都市公認と王都公認は国内だけの適応だが国家公認になると他国でも権力を行使できるそうだ。
まるで上級貴族扱いなんだって。
どんな権力があるのか知らないけどね。
この国の貴族についても少しだけ教えてくれた。
貴族は上から順に、王族の公爵から侯爵・伯爵・子爵・男爵と、一世代限りの騎士爵のような爵位が国家から任命されたり地方の領主から任命されたりするようだ。
爵位持ちの当主以外にも兄弟や分家の従兄弟や妾の子も貴族扱いになるが、そういった下級貴族で爵位を持っている者は極稀だって教えてくれたけど、そういう事なら国家公認冒険者は、下級貴族以上伯爵以下ぐらいになるのかな? 王都公認冒険者で男爵ぐらい?
貴族の集まる所に寄り付く気は無いからいいかな。
この前の領主様の所もパーティでも誰とも話せるような雰囲気じゃなかったしね。
あの時のプラスといえばアイリスから魔法書を貰った事か。確かに役立ってる気はするけどね、俺以外は。
あと、なぜか次期領主のアンソニー様が俺を睨むんだけど何でだろうね。
道程の方は順調で、王都を出てから目的のカイレス山までは何も出なかった。盗賊も魔物もね。うん、いつも通りの平常運転だ。
「プリ? 魔物が出るって話だったけど、どの辺で目撃されたの?」
「え? もうこんな所まで来てるんだ。やっぱり話が弾むと時間が経つのも早いわね。おかしいわね、もう採掘場まですぐだし、もっと手前のはずなんだけど。
やっぱりか。
「なんて魔物?」
「それがね、オーガっていう話なんだけど、オーガがミスリルを欲しがるのもおかしいし、まだ採掘場が襲われたって話も聞かないの。しかも上位種だって話が出てる割にはオーガファイターすら確認されてないのよ。私達二人だけでも、それぐらいなら対処できるんだけど、なにか嫌な予感がするの。だからAランクのイージを誘ったんだけど、取り越し苦労だったみたいね」
いえ、たぶん何かいたと思います。
何かするわけじゃないし、衛星に聞いてみるか。ユーもいるから超小声でね。
《衛星? この辺にいた魔物って全部倒しちゃった?》
衛星達が○を作る。
そうでしょうね、予想通りです。
《もしかして、その中にオーガの上位種もいたりした?》
やっぱり衛星達が○を作った。
そうだと思ってましたよ。どのぐらいの上位種でなんて種類か分かればいいんだけどなぁ。
《種族の名前は分かる?》
『大鬼族、大大鬼族、大鬼族魔法、大鬼族戦士、地潜龍、飛竜、大鬼族長、大鬼族女王、大大鬼族王子、大大大鬼族王、他雑魚多数』
鬼? 大鬼ってオーガの事? だろうね。鬼祭りっすか、最後の大大大鬼って…凄く大きい鬼がいたって事は分かったよ。途中、龍って聞こえたような気がしたのは気のせいでしょ。
この無理やり日本語訳を早く何とかしないとね。
早く王都を出発して地図の攻略だな。
「イージ今の言葉は何ですか?」
え? 今のが聞こえたの? プリは超いい耳してんだねー。
「えーと、今のはただひとり言です、特に意味は無いですよ」
「どこの国の言葉ですか? 何を言ってるのか分かりませんでしたが」
「えーと……」
「エイジ、もしかして日本語を使った?」
困ってる俺にユーが尋ねてきた。
首肯するとユーが溜息をついたあと、教えてくれた。
「ダメだよ~、この世界の人にはわからない言葉だから変人扱いされちゃうよ? 気を付けなよ~」
そういう事もあるんだ、気をつけよう。
「日本語? それって勇者様の国の言葉じゃないの! あなた達日本語を知ってるの?」
あ、やっちゃった? そこをプリからツッコまれるとは想定外だった。
ユーと見つめ合った後、良い言い訳も思いつかず、正直に話すことに決めた。
ただ両方の事を話す必要は無いと思うんだ。ここはユーに犠牲になってもらおう。
「エイジ?」
「え? は、はい」
「まさか自分だけ助かろうなんて考えてないでしょうね」
なんで分かった! ユーに読心のスキルでも付いたのか? さすが勇者、恐るべし……
「やっぱりね、そういう顔してたもん。エイジは私が勇者だってバラすとこだったんでしょ! 私はあなたに魔族から解放してもらって従者になったんだし、操られていたとはいえ召喚された国から出て来てる勇者だから、秘密にするんじゃなかったの!?」
……そういうのって、どっかの新喜劇で見た事があるよ。
全部説明してくれちゃったね、ありがとう。そしてさようなら、新天地で頑張ってくれ。
勇者ってバレたんなら、まずはこの国の王族も黙ってないだろうし、そんなとこまで俺は付き合わないから。
「勇者? 魔族? 従者?」
プリが目を丸くして驚いている。俺を見たりユーを見たり、クラマやマイアの事も順番に何度も見ている。
シェルも驚いているみたいだけど、声は出してない。
お前、昨日までは人魚だったとか言わないよな? 声を出さなすぎじゃない?
「そういう事だったのね、ユーが勇者でイージが従者ね。私もおかしいとは思ってたの、なんであんな超高級薬を持ってたのか不思議だったわ。勇者の従者ね、それなら分からなくもないわ」
昨日のオージュロスさんの腕や目が回復した薬の事を言ってるんだろうけど、色々と誤解してない? プリにしたら勇者様だから、勇者が従者になんて想像もつかないのかもね。
「だから今も小声で日本語の勉強をしてたのね。私もシェルほどじゃないけど少しは知ってるのよ。フジ、テンプーラ、オサシーミ。ね?」
いつの時代の外人さんだよ!
「プリ! スキヤーキとしゃぶしゃ~ぶも忘れてるわよ」
堪え切れずにシェルがツッコんできた。
だからお前達は何時代の何人だよ! 誰がそんなのを仕込んだんだ! 勇者か? 勇者しかいねーよな!
まぁいいや、ここはその流れに乗っとこ。
「勇者ユー様、失礼しました。今後、人前で日本語の練習は控えるように致します」
「うむ、よきにはからえ」
おっ、ユーも乗りがいいねぇ、もう勇者で行くのかな?
「あ、ちがーう! エイジ‼ 裏切者ー!」
遅っ! ボケ、長っ!
今のは普通に天然だったみたいだけど、もうこの状態からは否定できないだろ。
「ユー……いえ、失礼しました勇者様。他国の勇者様とはいえ、礼儀を弁えぬ態度でございました」
「いいのいいの、今までと同じように接してね、お忍びだから。だから私が勇者っていうのも内緒ね」
「いえ、しかし……」
プリの謝罪する言葉に合わせ、シェルも平伏していた。
「はいはい、顔を上げて? これからもさっきまでと同じようにしてね。それができないんならここでお別れだよ?」
「あ、は、はい勇者様」
「勇者じゃない、ユーだよ」
「それではユー様、どこの国の勇者様かだけでも教えて頂けませんか?」
「そうだわ、あなたも『月の指輪』を持ってるの?」
あれ? 『月の指輪』って、一昨日言ってたやつだよな。
「え? 『月の指輪』ってこの世界に一つだけって言って無かった? この国の勇者様が持ってるんだろ?」
「あなた何言ってんの。このミュージャメン王国の勇者様が持ってるのは黄色の『月の指輪』よ。敵対してるジュラキュール王国なら緑だし、西のウージロン王国は紫を持ってたはずよ」
こいつ勇者フェチか? 勇者に関する話になったら元気になって来たぞ?
ユーに目をやると困り顔をしている。あれは持って無いな。
衛星に頼んで作ってもらう? できるのか? でも、その前に、話すとプリには聞こえちゃうみたいなんだよな。
「エイジ、こちらを向いて話しなさい」
ん? マイア?
「どうしたの?」
「先程の聞き耳で確信しました。あのプリームという女はドラキュラです。何かが混ざってるのは分かっていましたが、あの聞き耳スキルはドラキュラのものでしょう。風の結界で向こうには声が届かないようにしてあります。どうするか決めてください」
「どうするって…」
「処分しますか?」
「なんで⁉ そんな事しないよ! なに物騒な事言ってんの! でも、ちょっと待って、そういう事なら先にユーを助けるよ。マイアは何もしちゃダメだよ」
へぇ、ドラキュラね。シェルが狼でプリがドラキュラだったら、どっかにフランケンもいるのかな。
そんな事より先にユーの指輪だ。
肯いて了解をするマイアを確認してから、衛星にお願いした。
《衛星、緑の『月の指輪』を作ってくれる?》
『Sir, yes, sir』
コトン
荷台の床に緑の宝石の付いた指輪が落ちた。
皆の視線が指輪に向く。
「あ、俺が持ってました。すみません、ユー様」
指輪を拾うとユーに渡した。
「エイジ、まだ続けるつもり?」
ちょっとからかい過ぎた? ユーの目が本気で怒ってるよ。
「ゴメン……」
「わかればよろしい!」エヘヘッ
ホッ、笑ってくれた。許してくれたみたいだ。
そんな俺達とは反対に、ロンド姉弟の顔色は悪い。
「緑……ジュラキュール王国の勇者様だったのね。これは誰にも言えないわね」
今、ジュラキュール王国は緑だって聞いたから緑にしただけなんだけど、ちょうどよかった?
でも理由ぐらいは聞いておこうかな。
「ジュラキュール王国の勇者様だとなんで言えないの?」
「敵対してる国の勇者がこちらの国に黙って入ってくるはずがないでしょ。それなのに、ここにいるって事は、相当な訳アリって事よね? そんなの誰にも言えるはずがないでしょ」
そんなもんなの? 俺にはピンと来ないよ。勇者になると行きたいとこにもちゃんと許可を取らないといけないんだ、勝手に行っちゃダメなんだね。大変だね。
ま、俺達にとったら都合がいいだけなんだけどね。
採掘場に着くと、プリが持っていた収納ボックスを渡し、三十分も待たずに採石場を出る事が出来た。
王都に帰ったら夕方ぐらいになるかな。
じゃあ、王都は明日出発する事にしようかな、もうする事も無いしね。
それなら今日は、王都の夜の町でも探検してみようかな。
メンバーは全員。
こっちは俺とクラマにマイアにユー。それにプリとシェルを加えた六人だ。
シェルは昨日クラマと一緒だったけど、大して疲れて無いみたいだね。元々Aランクだし、レベリングをするほどでも無かったのかも。
クラマがなぜシェルだけを連れて行ったのかは聞いて無いけど、聞きたかったけど何となく聞きづらくて。
でも、まだシェルは本調子じゃないようだね、大人しくしてるよ。
俺としてはその方が有難いんだよな。クラマといるとシェルが大人しくするんなら、シェルが来る時はクラマに面倒見てもらえばいいのかな?
ちょっと可哀想な気もするけど、調子に乗せれば俺が可哀想になるから黙ってよ。
今日の目的は王都の西側にある独立峰でカイレス山という山の麓にある採石場からミスリル鉱石を王都まで運ぶという依頼である。
今回は徒歩で半日の距離という事で、馬車を手配してもらっての移動だ。
馬車と言っても荷馬車で幌も無い。
こっちで出しても良かったんだけど、せっかくプリが用意してくれたようなので、うちの天馬三頭はお留守番だ。
御者はクラマがしてくれている。
ま、馬に命令して御者台にただ座ってるだけなんだけどね。
移動中にはプリが色々教えてくれた。
今回の依頼のミスリル鉱石を運ぶためには、資格がいるそうだ。
依頼自体は非常に楽な仕事なんだけど、依頼を受ける資格を得るまでが大変なんだって。
俺は無理やり押し付けられた気がするけどな。
ロンド姉弟はその条件をすべて満たしているので、この仕事がよく回って来ると自慢気に話してくれた。安全な上に報酬が高いんだって。
そういや報酬の話はしてないや、今回はお近づきの印って事でもいいかな。お金は昨日たくさん稼いだしね。
いつもなら二人だけで行くのだが、今回は上位種の魔物が発生したという情報があったので俺達を誘ったという事だった。
それで、条件だけど、このミスリル搬送の依頼はAランクの信用ある冒険団が依頼される。通常の国なら軍が派遣されるが、この国では冒険者に依頼される。信用ある冒険者として国家公認やその都市公認の冒険者が設定されていた。
地方都市公認<王都公認<国家公認というものがあって、どの公認冒険者でもこういう依頼を受ける事ができるんだって。
だったら俺もできるんだな。こういう仕事だったら俺の得意分野だね。フィッツバーグにもあるのか今度聞いてみよ。
依頼中は収納量の多い収納ボックスを貸与してくれるので、大量のミスリル鉱石と合わせて莫大な金額となるため、信用のおける公認冒険者への依頼になるんだって。
一回依頼を受けると一ヶ月は十分暮らせる報酬が出るというからボロい依頼だと思う。
他にも、公認冒険者について教えてもらった。
地方都市公認と王都公認は国内だけの適応だが国家公認になると他国でも権力を行使できるそうだ。
まるで上級貴族扱いなんだって。
どんな権力があるのか知らないけどね。
この国の貴族についても少しだけ教えてくれた。
貴族は上から順に、王族の公爵から侯爵・伯爵・子爵・男爵と、一世代限りの騎士爵のような爵位が国家から任命されたり地方の領主から任命されたりするようだ。
爵位持ちの当主以外にも兄弟や分家の従兄弟や妾の子も貴族扱いになるが、そういった下級貴族で爵位を持っている者は極稀だって教えてくれたけど、そういう事なら国家公認冒険者は、下級貴族以上伯爵以下ぐらいになるのかな? 王都公認冒険者で男爵ぐらい?
貴族の集まる所に寄り付く気は無いからいいかな。
この前の領主様の所もパーティでも誰とも話せるような雰囲気じゃなかったしね。
あの時のプラスといえばアイリスから魔法書を貰った事か。確かに役立ってる気はするけどね、俺以外は。
あと、なぜか次期領主のアンソニー様が俺を睨むんだけど何でだろうね。
道程の方は順調で、王都を出てから目的のカイレス山までは何も出なかった。盗賊も魔物もね。うん、いつも通りの平常運転だ。
「プリ? 魔物が出るって話だったけど、どの辺で目撃されたの?」
「え? もうこんな所まで来てるんだ。やっぱり話が弾むと時間が経つのも早いわね。おかしいわね、もう採掘場まですぐだし、もっと手前のはずなんだけど。
やっぱりか。
「なんて魔物?」
「それがね、オーガっていう話なんだけど、オーガがミスリルを欲しがるのもおかしいし、まだ採掘場が襲われたって話も聞かないの。しかも上位種だって話が出てる割にはオーガファイターすら確認されてないのよ。私達二人だけでも、それぐらいなら対処できるんだけど、なにか嫌な予感がするの。だからAランクのイージを誘ったんだけど、取り越し苦労だったみたいね」
いえ、たぶん何かいたと思います。
何かするわけじゃないし、衛星に聞いてみるか。ユーもいるから超小声でね。
《衛星? この辺にいた魔物って全部倒しちゃった?》
衛星達が○を作る。
そうでしょうね、予想通りです。
《もしかして、その中にオーガの上位種もいたりした?》
やっぱり衛星達が○を作った。
そうだと思ってましたよ。どのぐらいの上位種でなんて種類か分かればいいんだけどなぁ。
《種族の名前は分かる?》
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この無理やり日本語訳を早く何とかしないとね。
早く王都を出発して地図の攻略だな。
「イージ今の言葉は何ですか?」
え? 今のが聞こえたの? プリは超いい耳してんだねー。
「えーと、今のはただひとり言です、特に意味は無いですよ」
「どこの国の言葉ですか? 何を言ってるのか分かりませんでしたが」
「えーと……」
「エイジ、もしかして日本語を使った?」
困ってる俺にユーが尋ねてきた。
首肯するとユーが溜息をついたあと、教えてくれた。
「ダメだよ~、この世界の人にはわからない言葉だから変人扱いされちゃうよ? 気を付けなよ~」
そういう事もあるんだ、気をつけよう。
「日本語? それって勇者様の国の言葉じゃないの! あなた達日本語を知ってるの?」
あ、やっちゃった? そこをプリからツッコまれるとは想定外だった。
ユーと見つめ合った後、良い言い訳も思いつかず、正直に話すことに決めた。
ただ両方の事を話す必要は無いと思うんだ。ここはユーに犠牲になってもらおう。
「エイジ?」
「え? は、はい」
「まさか自分だけ助かろうなんて考えてないでしょうね」
なんで分かった! ユーに読心のスキルでも付いたのか? さすが勇者、恐るべし……
「やっぱりね、そういう顔してたもん。エイジは私が勇者だってバラすとこだったんでしょ! 私はあなたに魔族から解放してもらって従者になったんだし、操られていたとはいえ召喚された国から出て来てる勇者だから、秘密にするんじゃなかったの!?」
……そういうのって、どっかの新喜劇で見た事があるよ。
全部説明してくれちゃったね、ありがとう。そしてさようなら、新天地で頑張ってくれ。
勇者ってバレたんなら、まずはこの国の王族も黙ってないだろうし、そんなとこまで俺は付き合わないから。
「勇者? 魔族? 従者?」
プリが目を丸くして驚いている。俺を見たりユーを見たり、クラマやマイアの事も順番に何度も見ている。
シェルも驚いているみたいだけど、声は出してない。
お前、昨日までは人魚だったとか言わないよな? 声を出さなすぎじゃない?
「そういう事だったのね、ユーが勇者でイージが従者ね。私もおかしいとは思ってたの、なんであんな超高級薬を持ってたのか不思議だったわ。勇者の従者ね、それなら分からなくもないわ」
昨日のオージュロスさんの腕や目が回復した薬の事を言ってるんだろうけど、色々と誤解してない? プリにしたら勇者様だから、勇者が従者になんて想像もつかないのかもね。
「だから今も小声で日本語の勉強をしてたのね。私もシェルほどじゃないけど少しは知ってるのよ。フジ、テンプーラ、オサシーミ。ね?」
いつの時代の外人さんだよ!
「プリ! スキヤーキとしゃぶしゃ~ぶも忘れてるわよ」
堪え切れずにシェルがツッコんできた。
だからお前達は何時代の何人だよ! 誰がそんなのを仕込んだんだ! 勇者か? 勇者しかいねーよな!
まぁいいや、ここはその流れに乗っとこ。
「勇者ユー様、失礼しました。今後、人前で日本語の練習は控えるように致します」
「うむ、よきにはからえ」
おっ、ユーも乗りがいいねぇ、もう勇者で行くのかな?
「あ、ちがーう! エイジ‼ 裏切者ー!」
遅っ! ボケ、長っ!
今のは普通に天然だったみたいだけど、もうこの状態からは否定できないだろ。
「ユー……いえ、失礼しました勇者様。他国の勇者様とはいえ、礼儀を弁えぬ態度でございました」
「いいのいいの、今までと同じように接してね、お忍びだから。だから私が勇者っていうのも内緒ね」
「いえ、しかし……」
プリの謝罪する言葉に合わせ、シェルも平伏していた。
「はいはい、顔を上げて? これからもさっきまでと同じようにしてね。それができないんならここでお別れだよ?」
「あ、は、はい勇者様」
「勇者じゃない、ユーだよ」
「それではユー様、どこの国の勇者様かだけでも教えて頂けませんか?」
「そうだわ、あなたも『月の指輪』を持ってるの?」
あれ? 『月の指輪』って、一昨日言ってたやつだよな。
「え? 『月の指輪』ってこの世界に一つだけって言って無かった? この国の勇者様が持ってるんだろ?」
「あなた何言ってんの。このミュージャメン王国の勇者様が持ってるのは黄色の『月の指輪』よ。敵対してるジュラキュール王国なら緑だし、西のウージロン王国は紫を持ってたはずよ」
こいつ勇者フェチか? 勇者に関する話になったら元気になって来たぞ?
ユーに目をやると困り顔をしている。あれは持って無いな。
衛星に頼んで作ってもらう? できるのか? でも、その前に、話すとプリには聞こえちゃうみたいなんだよな。
「エイジ、こちらを向いて話しなさい」
ん? マイア?
「どうしたの?」
「先程の聞き耳で確信しました。あのプリームという女はドラキュラです。何かが混ざってるのは分かっていましたが、あの聞き耳スキルはドラキュラのものでしょう。風の結界で向こうには声が届かないようにしてあります。どうするか決めてください」
「どうするって…」
「処分しますか?」
「なんで⁉ そんな事しないよ! なに物騒な事言ってんの! でも、ちょっと待って、そういう事なら先にユーを助けるよ。マイアは何もしちゃダメだよ」
へぇ、ドラキュラね。シェルが狼でプリがドラキュラだったら、どっかにフランケンもいるのかな。
そんな事より先にユーの指輪だ。
肯いて了解をするマイアを確認してから、衛星にお願いした。
《衛星、緑の『月の指輪』を作ってくれる?》
『Sir, yes, sir』
コトン
荷台の床に緑の宝石の付いた指輪が落ちた。
皆の視線が指輪に向く。
「あ、俺が持ってました。すみません、ユー様」
指輪を拾うとユーに渡した。
「エイジ、まだ続けるつもり?」
ちょっとからかい過ぎた? ユーの目が本気で怒ってるよ。
「ゴメン……」
「わかればよろしい!」エヘヘッ
ホッ、笑ってくれた。許してくれたみたいだ。
そんな俺達とは反対に、ロンド姉弟の顔色は悪い。
「緑……ジュラキュール王国の勇者様だったのね。これは誰にも言えないわね」
今、ジュラキュール王国は緑だって聞いたから緑にしただけなんだけど、ちょうどよかった?
でも理由ぐらいは聞いておこうかな。
「ジュラキュール王国の勇者様だとなんで言えないの?」
「敵対してる国の勇者がこちらの国に黙って入ってくるはずがないでしょ。それなのに、ここにいるって事は、相当な訳アリって事よね? そんなの誰にも言えるはずがないでしょ」
そんなもんなの? 俺にはピンと来ないよ。勇者になると行きたいとこにもちゃんと許可を取らないといけないんだ、勝手に行っちゃダメなんだね。大変だね。
ま、俺達にとったら都合がいいだけなんだけどね。
採掘場に着くと、プリが持っていた収納ボックスを渡し、三十分も待たずに採石場を出る事が出来た。
王都に帰ったら夕方ぐらいになるかな。
じゃあ、王都は明日出発する事にしようかな、もうする事も無いしね。
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なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
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