114 / 224
第07章 チームエイジ
第01話 ローズ達の望み
しおりを挟む
キーンと耳鳴りが聞こえるほど静かな食堂で向かい合う四人。
俺の前には【星菓子】でリーダー格として皆を纏めている四人の内の三人が座っている。
ローズさんとアンジェリカさんとピーチさんの三人だ。
元奴隷だった十八人の中で、初めに商業ギルドに登録に行った四人の内の三人だ。
残りの一人のトムは、男なので今は【星菓子】に行って仕事をしてくれている。今日の話題には無用の人材だ。
今日の話題。
先日、俺が酔っ払って、この女子寮で無双をした件だ。
キッカを入れて十六人の女子の相手をしたんだろうから、無双と言っても過言ではないだろう。
ただ、まったく記憶に残ってないのが残念でしかない。
今から罵詈雑言を浴びせられる立場としては、せめてその辺りの事を覚えていれば少しは気持ち的にも納得なだけど、覚えてないのになじられると思うと気分は盛り下がるばかり。
朝、起きた時の状況証拠で有罪は確定してるので反論も言い訳もするつもりはないけど、せめて何人かの分だけでも覚えてればダメージも少しは軽減したかもな。
しかし、今日は覚悟を決めて来てるんだ。何を言われても泣かないぞ!
と、意を決してDOGEZAのために席を立とうと椅子を引いた。
「エイジ様」
「ひゃい!」
ちょうど立とうとした所で不意に声を掛けられたので、腰を曲げたまま見上げる姿勢で固まって返事をした。
声を掛けられたタイミングも、俺の決心の出鼻を挫くように来たので返事の声も裏返ってしまった。
そんな変な格好の俺など気にせず、いつも通りの口調でローズさんが代表して声を掛けてきた。
「先程の続きですが、よろしいでしょうか」
「ひゃ、ひゃい!」
まったくのスルーで更に意表をつかれ、またまた声が裏返ってしまった。
「先程のお話は本当なのですね?」
「…先程の話…?」
「やはり嘘だったのですね……」
「い、いやだなぁ、ローズさん。う、う、う、嘘なわけないじゃないですか。さ、さ、先ほどの話の事ですよね? 分かってますよ、当たり前じゃないですかぁ」
なんの事だっけ? 全然頭が回ってないんだけど、さっきの事? なんだっけ? 俺、何て言ったんだっけ。
プレッシャーがキツすぎて思考回路が全然回らない。
でも、覚えてないとか言えない雰囲気だし、このまま流されるしかないよね。
俺の返事に「ありがとうございます!」と素直に喜ぶピーチさんと、ニヤリと口角の上がるアンジェリカさん。
その二人に挟まれているローズさんが一つ肯き笑顔で話を続けた。
アンジェリカさんの笑顔で俺の背筋に悪寒が走ったのは気のせいだと思いたい。
「では、私たち全員の希望と、一人一人の希望がありますので、それぞれ叶えて頂けるのですね?」
「はいぃぃ! 当たり前じゃないですか!」
そんな話だっけ? ここで躊躇したら更なる悲劇を生みそうで咄嗟に返事しちゃったけど、それぐらいのお金は十分に持ってるし大丈夫かな。
でも、その俺の返事で三人の顔が綻ぶのを見ると、正解だったと安堵した。
「私たち全員の希望は、このままエイジ様の下でずっといられる事です。それは構いませんね?」
え? そんな事でいいの?
「それはもちろん有難いけど、本当にいいの?」
「はい、私たち全員の希望ですから」
「分かった。でも、独立したくなったらいつでも言ってね。皆にはここまで俺の我侭で頑張ってもらってるんだから、支度金も出すし、できる限りの応援はするから」
衝動買いで買ってしまった元奴隷だったのに、ずっと頑張ってくれてるもんな。今なんか【星菓子】も丸投げ状態なのに文句も言わずにやってくれてるし、それぐらいは当たり前だよな。
いなくなられると困るけど、元々独立を促してるのは俺の方なんだし、その時は募集をかけるか奴隷を買うかで補充すればいいよな。
「その独立という言葉を言うのを辞めて頂きたいのですが」
「え? なんで?」
「私たちは、もうエイジ様のものなんです。なのに……私たちを見捨てるような言葉は辞めて頂きたいのです」
どこにローズさんの琴線に触れる言葉があったのか分からないけど、怒った感じで主張するローズさん。
同意するようにウンウン肯くピーチさん。アンジェリカさんなんかローズさん以上に目つきが鋭くなっている。
そんな状況を打破するべく言い訳を並べ立てる俺。
「見捨てるなんて、そんな……そんな事は思ってないって。君たちは元々奴隷だったんだから自由に生きられる方がいいと思ってるだけだから。ローズさん達だって、その内結婚だってするだろうし、その時に俺が縛り付けててもダメじゃない。店の方は頑張ってもらいたいし、ここにいる間は皆に不自由なく暮らしてもらいたいとは思ってるけど、それで縛り付けてしまったら奴隷と一緒じゃない。それじゃ、何のために『奴隷の首輪』をはずしてもらったのか分かんなくなっちゃうよ」
あれ? なんかおかしな事を言った? ピーチさんまで怒り出したような……アンジェリカさんなんて、更に目つきが悪くなってるんだけど。
俺、今いい事言ったよね? なんで? 女心は分からん!
「もう私達はエイジ様のものだと申し上げたはずです。エイジ様の優しさは存じ上げていますが、私達にとっては非常に厳しい言葉なのです。今後、『独立』という言葉は言わないでください」
怒りを抑えながら静かな口調で話すローズさんだった。目には涙が溜まっていて、すぐにでも零れ落ちそうになっている。
そんなにNGワードだったの? 俺の考え方ってそんなにズレてるの?
「ゴ、ゴメン。もう独立なんて言わないから機嫌を直して。本当にごめんなさい」
何が悪かったのか全然理解できてないけど、三人ともが怒ってるんだから俺が悪いんだろう。
こういう時は、すぐに謝るに限る。たぶん、これで合ってるはず。
「ありがとうございます。ご理解いただき感謝致します」
ホッ、やっぱり謝るのが正解だったみたいだ。
「では、私たちの望みの話を続けます」
俺は肯いて了解を示した。
「各人からはエイジ様が聞き取りを行なってください。エイジ様との会話も皆には嬉しい事ですから」
「はい」
ちょっと面倒くさいと思うエイジだが、そんな事はこの場で言えない事は理解しているので黙って返事だけをした。
「私たち三名からは今言わせて頂きます」
ローズさんから目配せされたピーチさんが一番目に希望を言ってくれた。
「私はエイジ様とデ、デ、デー……は無理なのは分かってるから、一緒にダンジョンに行きたい。エイジ様はAランク冒険者だから、エイジ様と一緒なら私もダンジョンに行けるんですよね?」
確かに上級ランクが一緒なら入れたと思うけど、俺とダンジョンに行っても面白く無いと思うけどな。
だって魔物なんて出て来ないんだから。
そんな俺の考えなど知らぬローズさんとアンジェリカさんはフムフムとピーチさんに感心したような眼差しを向けている。
よく思いついたわねって感じだ。
「それは、全員で希望しましょう。それも、付いて行くのは一人ずつって事にして、一日エイジ様に付き合ってもらいましょう」
ピーチさんの案を補足するようにアンジェリカさんが付け足した。
それって十五人だから十五日もダンジョンに通うって事? ちょっと面倒すぎるんだけど。
「それぐらいエイジ様ならしてくださいますよね?」
面倒くさいって顔に出てしまったのか、ローズさんに釘を刺された。
「……はい」
もう返事をするしか俺に助かる道は無かった。
鋭すぎない? どんだけ俺を見てるんだか……
「次はアンジェリカさん」
ローズさんに指名を受けてアンジェリカさんから提案された。
あれ? これって一人一つじゃないの? 今、全員でダンジョンって言ったよね? まさか、十五×十五の希望をされるの?
そんな俺の疑問は関係なく話は続く。
「私は、そ、その…二人きりでの夜を希望します」
顔を真っ赤にしながら言い切ったアンジェリカさん。
美人だし、いつもの毅然とした感じのアンジェリカさんとのギャップで抱きつきたい衝動に駆られる。
これは俺も男なんだし、誰でも思う事だよな。と、自分の中で言い訳をする。
「それも全員で希望しましょう。エイジ様には本妻様やお妾様がいらっしゃるので頻繁にとは行かないでしょうが、三ヶ月…いえ、二ヶ月に一度はお願い致します」
だって、私たちはもうあったのですから。と付け加えられた。
確かにその事で今日来てるんだけど、更に増やしてどうすんの!
それに本妻と妾とは別枠扱いしてるけど、他には何があるの?
「では、私から」
やっぱり俺の疑問には関係なく話は続くようだ。
「エイジ様が【星菓子】の支店を各領に作る計画は存じておりますが、私をこの本店の店長として置いていただきたいのです」
はい? なんですと!? 支店? 本店? 店長? 何の話でしょう。
「もう、店長候補の教育はある程度は仕上がっています。アンジェリカさんなら王都支店の店長でもやってくれるでしょう。エイジ様、是非とも私を本店の店長に任命願います」
「ローズさん! あなた汚いですわ! エイジ様! 私こそ本店の店長の相応しいと思います!」
「いいえ! 私の方がフィッツバーグのスラムの事も良く分かってますから、私の方が相応しいと思います!」
ローズさんの主張に対して対抗するアンジェリカさんとピーチさん。
いやいや、まず君たちの前提がおかしい。なんだその本店や支店って。そんな話、初めて聞いたんだけど。誰が計画してるの?
しかも、王都が支店? 普通は王都が本店でしょう? このフィッツバーグの【星菓子】が一号店だから本店扱いなの?
その後、少し言い争いが続き、言い出しっぺのローズさんが本店の店長で落ち着いた。俺には口を挟む隙は一切無かったけどね。
だから、その支店ってどっから話が出てんだよ! 誰の店なんだ?
別に、店を出して仕入れを段取りするぐらいはできるけど、それって暖簾分けって事じゃないの? 独立を嫌がってたあなた達が自分で独立するって言ってるような気がするんだけど。
別会社じゃないから独立には当たらないかもしれないけど、こっから出て行くって事だよ?
「このジュラキュール王国だけで小領も合わせると二十以上の領地があります。まずは大領の六ヶ所と王都に支店を設けるとして、他国にも進出されるのでしょうか」
「それはもちろんの事ですわ、ローズさん。エイジ様がこの国だけで満足されるはずがありませんもの。でも、今は私達の力不足で店を管理できる者が不足している状態です。まずは、ジュラキュール王国を完全制覇してからの話になるでしょうね」
そんな野望なんて、これっぽっちも持ってませんから。【星菓子】一店舗だけで十分満足してますから。
大体、あなた達の食い扶持が稼げればいいと思って作ったお店ですから、態々増やさなくてもいいんだよ。
「あの……」
「はい、エイジ様の考えは分かっております。未だそのお考えには追いつけていませんが、早急に対処したいと思っております」
「そうです、もう少しお時間を頂ければ完璧にご用意させて頂きます」
「はい」
ローズさん、アンジェリカさん、ピーチさんはやる気を漲らせて俺に答えてくれる。
なーんにも言ってないのに答えが返ってくる。しかも、予想外の展望が俺にあったらしい。俺すら知らなかったのに、支店の開業も決まったらしい。
「では、時間がある時で構いませんから、一人ずつ願いを叶えてくださいませ」
それは忘れてないんだね。
謝罪として来たからどんな事でも飲むつもりだったけど、果たしてこれが彼女たちの要望という事でいいんだろうか。
その後、一人ずつ丸一日かけてダンジョン探索と夜までの付き合いをする事になるんだけど、これって俺の方が得じゃないの? 俗に言うハーレム的なやつじゃないの?
支店の相談はこれから行く大商人のバーンズさんが詳しいだろうから相談するとして、こんなに女性関係が多くて俺はやって行けるんだろうか。
「あ、忘れてましたが【星の家】の院長先生が相談したい事があるとおっしゃってました」
おいおい、それを先に言ってくれよ。昨夜は家に戻ってたんだしさ。皆の前で言えなかったって事は大事な話だろ?
「鍛冶師のゼパイルさんも何かおっしゃってたと思うのですが、ついでに覗かれては如何でしょうか」
ゼパイルさんは、ついで扱い? ゼパイルさんとは昨夜は会わなかったな。頼んでいた剣ができたかな? それって俺にとっては重要なんだけど。
結局、このままハイグラッドの町に向かおうと思ってたけど、ユーと一緒に【星の家】に戻る事になってしまった。
俺の前には【星菓子】でリーダー格として皆を纏めている四人の内の三人が座っている。
ローズさんとアンジェリカさんとピーチさんの三人だ。
元奴隷だった十八人の中で、初めに商業ギルドに登録に行った四人の内の三人だ。
残りの一人のトムは、男なので今は【星菓子】に行って仕事をしてくれている。今日の話題には無用の人材だ。
今日の話題。
先日、俺が酔っ払って、この女子寮で無双をした件だ。
キッカを入れて十六人の女子の相手をしたんだろうから、無双と言っても過言ではないだろう。
ただ、まったく記憶に残ってないのが残念でしかない。
今から罵詈雑言を浴びせられる立場としては、せめてその辺りの事を覚えていれば少しは気持ち的にも納得なだけど、覚えてないのになじられると思うと気分は盛り下がるばかり。
朝、起きた時の状況証拠で有罪は確定してるので反論も言い訳もするつもりはないけど、せめて何人かの分だけでも覚えてればダメージも少しは軽減したかもな。
しかし、今日は覚悟を決めて来てるんだ。何を言われても泣かないぞ!
と、意を決してDOGEZAのために席を立とうと椅子を引いた。
「エイジ様」
「ひゃい!」
ちょうど立とうとした所で不意に声を掛けられたので、腰を曲げたまま見上げる姿勢で固まって返事をした。
声を掛けられたタイミングも、俺の決心の出鼻を挫くように来たので返事の声も裏返ってしまった。
そんな変な格好の俺など気にせず、いつも通りの口調でローズさんが代表して声を掛けてきた。
「先程の続きですが、よろしいでしょうか」
「ひゃ、ひゃい!」
まったくのスルーで更に意表をつかれ、またまた声が裏返ってしまった。
「先程のお話は本当なのですね?」
「…先程の話…?」
「やはり嘘だったのですね……」
「い、いやだなぁ、ローズさん。う、う、う、嘘なわけないじゃないですか。さ、さ、先ほどの話の事ですよね? 分かってますよ、当たり前じゃないですかぁ」
なんの事だっけ? 全然頭が回ってないんだけど、さっきの事? なんだっけ? 俺、何て言ったんだっけ。
プレッシャーがキツすぎて思考回路が全然回らない。
でも、覚えてないとか言えない雰囲気だし、このまま流されるしかないよね。
俺の返事に「ありがとうございます!」と素直に喜ぶピーチさんと、ニヤリと口角の上がるアンジェリカさん。
その二人に挟まれているローズさんが一つ肯き笑顔で話を続けた。
アンジェリカさんの笑顔で俺の背筋に悪寒が走ったのは気のせいだと思いたい。
「では、私たち全員の希望と、一人一人の希望がありますので、それぞれ叶えて頂けるのですね?」
「はいぃぃ! 当たり前じゃないですか!」
そんな話だっけ? ここで躊躇したら更なる悲劇を生みそうで咄嗟に返事しちゃったけど、それぐらいのお金は十分に持ってるし大丈夫かな。
でも、その俺の返事で三人の顔が綻ぶのを見ると、正解だったと安堵した。
「私たち全員の希望は、このままエイジ様の下でずっといられる事です。それは構いませんね?」
え? そんな事でいいの?
「それはもちろん有難いけど、本当にいいの?」
「はい、私たち全員の希望ですから」
「分かった。でも、独立したくなったらいつでも言ってね。皆にはここまで俺の我侭で頑張ってもらってるんだから、支度金も出すし、できる限りの応援はするから」
衝動買いで買ってしまった元奴隷だったのに、ずっと頑張ってくれてるもんな。今なんか【星菓子】も丸投げ状態なのに文句も言わずにやってくれてるし、それぐらいは当たり前だよな。
いなくなられると困るけど、元々独立を促してるのは俺の方なんだし、その時は募集をかけるか奴隷を買うかで補充すればいいよな。
「その独立という言葉を言うのを辞めて頂きたいのですが」
「え? なんで?」
「私たちは、もうエイジ様のものなんです。なのに……私たちを見捨てるような言葉は辞めて頂きたいのです」
どこにローズさんの琴線に触れる言葉があったのか分からないけど、怒った感じで主張するローズさん。
同意するようにウンウン肯くピーチさん。アンジェリカさんなんかローズさん以上に目つきが鋭くなっている。
そんな状況を打破するべく言い訳を並べ立てる俺。
「見捨てるなんて、そんな……そんな事は思ってないって。君たちは元々奴隷だったんだから自由に生きられる方がいいと思ってるだけだから。ローズさん達だって、その内結婚だってするだろうし、その時に俺が縛り付けててもダメじゃない。店の方は頑張ってもらいたいし、ここにいる間は皆に不自由なく暮らしてもらいたいとは思ってるけど、それで縛り付けてしまったら奴隷と一緒じゃない。それじゃ、何のために『奴隷の首輪』をはずしてもらったのか分かんなくなっちゃうよ」
あれ? なんかおかしな事を言った? ピーチさんまで怒り出したような……アンジェリカさんなんて、更に目つきが悪くなってるんだけど。
俺、今いい事言ったよね? なんで? 女心は分からん!
「もう私達はエイジ様のものだと申し上げたはずです。エイジ様の優しさは存じ上げていますが、私達にとっては非常に厳しい言葉なのです。今後、『独立』という言葉は言わないでください」
怒りを抑えながら静かな口調で話すローズさんだった。目には涙が溜まっていて、すぐにでも零れ落ちそうになっている。
そんなにNGワードだったの? 俺の考え方ってそんなにズレてるの?
「ゴ、ゴメン。もう独立なんて言わないから機嫌を直して。本当にごめんなさい」
何が悪かったのか全然理解できてないけど、三人ともが怒ってるんだから俺が悪いんだろう。
こういう時は、すぐに謝るに限る。たぶん、これで合ってるはず。
「ありがとうございます。ご理解いただき感謝致します」
ホッ、やっぱり謝るのが正解だったみたいだ。
「では、私たちの望みの話を続けます」
俺は肯いて了解を示した。
「各人からはエイジ様が聞き取りを行なってください。エイジ様との会話も皆には嬉しい事ですから」
「はい」
ちょっと面倒くさいと思うエイジだが、そんな事はこの場で言えない事は理解しているので黙って返事だけをした。
「私たち三名からは今言わせて頂きます」
ローズさんから目配せされたピーチさんが一番目に希望を言ってくれた。
「私はエイジ様とデ、デ、デー……は無理なのは分かってるから、一緒にダンジョンに行きたい。エイジ様はAランク冒険者だから、エイジ様と一緒なら私もダンジョンに行けるんですよね?」
確かに上級ランクが一緒なら入れたと思うけど、俺とダンジョンに行っても面白く無いと思うけどな。
だって魔物なんて出て来ないんだから。
そんな俺の考えなど知らぬローズさんとアンジェリカさんはフムフムとピーチさんに感心したような眼差しを向けている。
よく思いついたわねって感じだ。
「それは、全員で希望しましょう。それも、付いて行くのは一人ずつって事にして、一日エイジ様に付き合ってもらいましょう」
ピーチさんの案を補足するようにアンジェリカさんが付け足した。
それって十五人だから十五日もダンジョンに通うって事? ちょっと面倒すぎるんだけど。
「それぐらいエイジ様ならしてくださいますよね?」
面倒くさいって顔に出てしまったのか、ローズさんに釘を刺された。
「……はい」
もう返事をするしか俺に助かる道は無かった。
鋭すぎない? どんだけ俺を見てるんだか……
「次はアンジェリカさん」
ローズさんに指名を受けてアンジェリカさんから提案された。
あれ? これって一人一つじゃないの? 今、全員でダンジョンって言ったよね? まさか、十五×十五の希望をされるの?
そんな俺の疑問は関係なく話は続く。
「私は、そ、その…二人きりでの夜を希望します」
顔を真っ赤にしながら言い切ったアンジェリカさん。
美人だし、いつもの毅然とした感じのアンジェリカさんとのギャップで抱きつきたい衝動に駆られる。
これは俺も男なんだし、誰でも思う事だよな。と、自分の中で言い訳をする。
「それも全員で希望しましょう。エイジ様には本妻様やお妾様がいらっしゃるので頻繁にとは行かないでしょうが、三ヶ月…いえ、二ヶ月に一度はお願い致します」
だって、私たちはもうあったのですから。と付け加えられた。
確かにその事で今日来てるんだけど、更に増やしてどうすんの!
それに本妻と妾とは別枠扱いしてるけど、他には何があるの?
「では、私から」
やっぱり俺の疑問には関係なく話は続くようだ。
「エイジ様が【星菓子】の支店を各領に作る計画は存じておりますが、私をこの本店の店長として置いていただきたいのです」
はい? なんですと!? 支店? 本店? 店長? 何の話でしょう。
「もう、店長候補の教育はある程度は仕上がっています。アンジェリカさんなら王都支店の店長でもやってくれるでしょう。エイジ様、是非とも私を本店の店長に任命願います」
「ローズさん! あなた汚いですわ! エイジ様! 私こそ本店の店長の相応しいと思います!」
「いいえ! 私の方がフィッツバーグのスラムの事も良く分かってますから、私の方が相応しいと思います!」
ローズさんの主張に対して対抗するアンジェリカさんとピーチさん。
いやいや、まず君たちの前提がおかしい。なんだその本店や支店って。そんな話、初めて聞いたんだけど。誰が計画してるの?
しかも、王都が支店? 普通は王都が本店でしょう? このフィッツバーグの【星菓子】が一号店だから本店扱いなの?
その後、少し言い争いが続き、言い出しっぺのローズさんが本店の店長で落ち着いた。俺には口を挟む隙は一切無かったけどね。
だから、その支店ってどっから話が出てんだよ! 誰の店なんだ?
別に、店を出して仕入れを段取りするぐらいはできるけど、それって暖簾分けって事じゃないの? 独立を嫌がってたあなた達が自分で独立するって言ってるような気がするんだけど。
別会社じゃないから独立には当たらないかもしれないけど、こっから出て行くって事だよ?
「このジュラキュール王国だけで小領も合わせると二十以上の領地があります。まずは大領の六ヶ所と王都に支店を設けるとして、他国にも進出されるのでしょうか」
「それはもちろんの事ですわ、ローズさん。エイジ様がこの国だけで満足されるはずがありませんもの。でも、今は私達の力不足で店を管理できる者が不足している状態です。まずは、ジュラキュール王国を完全制覇してからの話になるでしょうね」
そんな野望なんて、これっぽっちも持ってませんから。【星菓子】一店舗だけで十分満足してますから。
大体、あなた達の食い扶持が稼げればいいと思って作ったお店ですから、態々増やさなくてもいいんだよ。
「あの……」
「はい、エイジ様の考えは分かっております。未だそのお考えには追いつけていませんが、早急に対処したいと思っております」
「そうです、もう少しお時間を頂ければ完璧にご用意させて頂きます」
「はい」
ローズさん、アンジェリカさん、ピーチさんはやる気を漲らせて俺に答えてくれる。
なーんにも言ってないのに答えが返ってくる。しかも、予想外の展望が俺にあったらしい。俺すら知らなかったのに、支店の開業も決まったらしい。
「では、時間がある時で構いませんから、一人ずつ願いを叶えてくださいませ」
それは忘れてないんだね。
謝罪として来たからどんな事でも飲むつもりだったけど、果たしてこれが彼女たちの要望という事でいいんだろうか。
その後、一人ずつ丸一日かけてダンジョン探索と夜までの付き合いをする事になるんだけど、これって俺の方が得じゃないの? 俗に言うハーレム的なやつじゃないの?
支店の相談はこれから行く大商人のバーンズさんが詳しいだろうから相談するとして、こんなに女性関係が多くて俺はやって行けるんだろうか。
「あ、忘れてましたが【星の家】の院長先生が相談したい事があるとおっしゃってました」
おいおい、それを先に言ってくれよ。昨夜は家に戻ってたんだしさ。皆の前で言えなかったって事は大事な話だろ?
「鍛冶師のゼパイルさんも何かおっしゃってたと思うのですが、ついでに覗かれては如何でしょうか」
ゼパイルさんは、ついで扱い? ゼパイルさんとは昨夜は会わなかったな。頼んでいた剣ができたかな? それって俺にとっては重要なんだけど。
結局、このままハイグラッドの町に向かおうと思ってたけど、ユーと一緒に【星の家】に戻る事になってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる