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第07章 チームエイジ
第07話 移住
しおりを挟む領主様の城を出て、スラム地区へと向かった俺は、院長先生達と合流した。
移住希望者の募集は既に終わっていて名簿も出来ていた。
前々から院長先生が話を進めてくれてた事もあり、スラムの住民も事情は分かってる人が多かった。
条件は、衣食住の保障をする代わりに働けという事と、給料は月に金貨二枚で話が付いている。
一度入ったら五年は出て行けないというのは伏せていて、今回は体験という事になっている。
その出発は明日の朝、俺が先導して連れて行く手筈だ。場所は俺しか知らないから、この先導役を俺がするしかない。というか、まだ居住区を作ってない。今から戻って作る予定だ。だから出発は明日にしてもらったのだ。
その条件で集まったのがスラム地区の住民の九割。スラム地区の大半の人が移住を希望していた。
衣食住の中でも食の部分が魅力的だったようだ。仕事をしたいと思ってる人も食えないから仕事を探してるだけで、貯金があるとか、仕事をしなくても食べれるんなら、仕事なんていらないと思ってる人達だからね。
その辺の対策は既に考えている。格差を付けようと思ってるんだ。
仕事をよくする人は【星の家】のように俺の考える普通の暮らしを保障する。でも、仕事をしないとかサボる人には、それなりの環境しか与えないようにしようと思ってる。でも、食事だけは保障するよ。それが約束だからね。それなりの食事だけど。
今日、集まってもらった人達には、明日の朝に集合してもらう事にして、俺は居住区を作るべくレッテ山の麓に向かった。
明日の集合の時には、人数が多いから農業ギルドの人や商業ギルドの人にもお手伝いをお願いした。
出発して町を出てしまえば、後は俺一人で何とかなるからね。一応見張りはサーフェ、ドーラ、プーちゃんの三精霊に頼もうかと思ってるけどね。
でも、妖精樹のヨウムに森を操作してもらって、一本道にしてもらうように頼むつもりだから三精霊が手を出す事も無いと思うよ。
で、場所は【星の家】から更に山沿いを北に徒歩で二時間ほど行った所で、樹々は鬱蒼と茂っていた。
来る途中で妖精樹のヨウムに説明してあるから、明日はうまくやってくれるだろう。
さて、居住区だけど、真ん中に細長ーい倉庫を作って、左右に居住区を分けよう。
山側が富裕層で町側が貧困層だ。町側と言っても、森を抜けないと行く事ができないから逃げようと思っても意味無いけどね。
富裕層側は少しレッテ山の斜面に上った所に作って山手だな。昔から日本では山手の方に金持ちが住むからね。少し例外はあるみたいだけど。
山手の居住区から下には畑を作って、畑の区切りとして道を作ればいいか。畑と居住区の間にはスペースを取って将来店を出したい人にはそこで出してもらってもいいね。
貧困層側には畑は作らない。だって、働かない者に美味しい物を食べさせるつもりは無いから。
それでも、ここで出す料理は調味料をふんだんに使うから、他所の町で食べるより断然美味しいと思うけどね。
だけどね、最初は全員山手側に住まわせるんだ。先に贅沢を覚えさせるんだよ。だったら、貧困層には行きたいとは思わないよね? しかも、そこでも町より美味しい食事ができると分かれば町に戻ろうとも思わないよね。
他にも格差は付ける。
建物は二階建てのハイツにしようと思ってる。各家族で住めて、ある程度世帯数を押し込めるから。八世帯が入れるハイツを五〇棟も作れば余裕だろ。
トイレは衛生上、全部水洗にするけど、風呂はつけない。キッチンは付けるけどね。風呂は大浴場を山手側に十個作ってそこに入ってもらう。もちろん男女分けて作ろうと思う。
元々風呂って馴染みの無い世界みたいなので、銭湯みたいでいいんじゃない?
貧困層側には一つだけしか作らない予定。
今、【星の家】では大浴場は一つだけだけど、お湯はずっと一定の温度を保ち巡回させて清潔を保たせているから、浴槽については全然掃除すらしなくていいんだ。それと同じもので、もう少し規模の大きなものに使用と思う。
浴槽はいいんだけど、洗い場や脱衣場は掃除をしなければならない。【星の家】では子供達が当番で掃除をしているけど、これも移民達に当番制でやってもらおうと思う。
食事は大食堂を作って、そこでしてもらう。
料理もできるものが当番でするとか、専門でしてもらう事にして、倉庫作業を免除してもいいね。
初めは出来ないだろうから、ミニーさんの下で料理修行している子供達にやってもらうのがいいかな。女子寮から応援に来てもらうのもいいかも。どうせ、支店の話は、砂糖の件が落ち着かないと進まないんだから。
慣れてくれば移民達にすべて任せようと考えてるんだ。
仕事の方は、もちろんメインは農業。ま、作るのは精霊や妖精がするので、収穫するぐらいなんだけど。それも妖精が手伝ってくれるからね。
そして倉庫の作業。
ここで大半の人に働いてもらう。
今回考えてる加工品は調味料。だから畑に植えるものも調味料の元になるもの。
ケチャップだったらトマトだし、一味唐辛子はそのまま唐辛子。醤油に味噌は大豆だし、酒類なんかもいいね。ワインだったら葡萄とかね。
ソースについては色々入ってるので、”必殺アバウト衛星頼み”で行こうと思ってる。『ソースに必要な作物を必要な分だけ区画に分けて植えて』って感じでね。土地はいっぱい余ってるんだから。
そして、その作業を真面目にやってるかを点数制で採点して、あまりにも酷い人には貧困層に移ってもらう事にする。
その採点をする管理責任者をロジャーとロイドにやってもらおうかと思ってる。
ロジャーには作業管理責任者を、ロイドには収支管理責任者をやってもらうのだが、その上で採点管理責任者も兼任してもらおうと思ってる。
自分でしなくとも、出来る者に任せる事も責任者には必要になってくる。
院長先生が推した二人なら、それぐらいやれるのではないかと思ってるんだが、青年間近の彼らには荷が重いか? でも、サポートは大勢いるから、すぐにできるようになるんじゃないかな。二〇〇人もいないんだから。
もちろんトップは俺なんだけど、初めに軌道に乗るまでは見るけど、後は問題が起こらない限りノータッチで行こうと思ってるんだ。
できれば、スラムの人も社会復帰したいと思ってるかもしれないし、その時に自主性が全く無い人になってもらっても困る。
でも、五年はここから出すつもりは無い。
このシステムや点数制を見る限り、俺が悪の支配者って感じに映るかもしれないけど、仕事にも有り付けずにスラムにいた人達なんだ。初めはこっちサイド主導で全面的に言う事を聞いてもらった方がいいと思うんだ。
それから後に食堂や服屋などの商売をここで始めて旅立って行けば、出て行った後も失敗が少なくなると思うんだ。五年経てば、ここを出て行ってもらってもいいと思ってる。その頃には、この地も独立権を得てると思うから。
この居住区では貨幣を使わず点数制にするので、会計は弱くなるかもしれないけど、独立したければそれぐらい勉強するよね。
領地として独立を考えてる訳ではなくて、フィッツバーグ領の一地区となれればいいと思ってるんだ。貴族じゃないのに土地を持つのは領主様が反対してたからね。
今の状態でバカな貴族が利権を狙ってやって来ても返り討ちにしてやるだけなんだけど、返り討ちにするともっと騒ぎ立てられて領主様でも守りきれなくなると思うから。バカな貴族ってどこからか湧いて来るようだからさ。
だから、もう領主様やこの居住区が、砂糖やここから売られる商品でもうちょっと力を付けるまで、五年あれば何とかなるんじゃないかと見ている。
あと、加工済み商品についての移送は、こればかりは【星の家】子達か卒業生に頼むしかない。
後でエルダードワーフの件で秘密を共有してもらう事になる商人がいたとしても、ここの秘密だけは明かしたくない。また院長先生に負担をかける事になるが、この件を持って来たのも院長先生だ。これぐらいは甘えさせてもらおう。
五年後に出て行きたい者が現れても、その審査も任せようと思う。
翌日、約束通り、スラム地区に人が集まっていた。昨日よりも多い気がするんだけど。
よく見ると工事作業者のような格好をした人まで混ざってた。
商業ギルドのボダコリーさんが説明してくれたけど、ここからスラムの人達が移住して空いた家は全部取り壊すのだそうだ。
その為に集まった工事業者のようだ。
スラム区画は一度全部更地にしてしまうようで、今回付いて来ない人達の仮住居の建造も行なうそうだ。
仮と言っても、そのまま住み着くんだろうけどね。残るのは二〇人もいないと聞いてるけど。
倉庫の建造の方は、更地にした所から順次建てて行くそうだ。中規模の倉庫を建てて行き、隣り合った同規模の倉庫を建てて行く。そして繋がるように建て終えると、最終的には大規模な倉庫の完成となるようだ。
俺には中規模な倉庫ができ次第、砂糖製造機械を入れて行ってくれと依頼を受けた。
面倒だから収納バッグに全部入れて渡しておいた。これでいつでも出せるでしょ。
請求は領主様にしておこう。機械の料金設定なんかしてないし、相場があると思うから領主様に判断してもらおう。あの領主様なら収納バッグの分も出してくれると思うからね。
町を出るまでは皆に送ってもらい、門を出てからはロイドとロジャーを連れた俺が先頭に立って居住区に向かった。所要時間は三時間ぐらいだと見てるが、子供もいるのでもっと掛かるかもしれない。それでも、今日中に着く事はできるだろう。
一時間ほど街道を北へ進み、そこから森に入る。
ここでひと騒ぎあった。誰も森に入ってくれないのだ。「やはり我々は始末されるのだ」と騒ぎ立てられてしまった。
絶対に安全だからと説得するのに一時間掛かった。確かに護衛も無く、魔物が多いと知っているだろうし、そう思うよね。Aランク冒険者の護衛でもあれば違うんだろうけど……俺がAランクじゃん!
という事で、俺の冒険者カードを見せて、絶対に安全だからと説得し、ようやく森に入ってくれた。
森に入ってしまえばこっちのものだ。
妖精樹ヨウムの力で樹々を除けさせ全員が入ったと思った所で、先頭を行く俺の前には居住区が現れた。
え? ワープした? ヨウムってそんな事までできたんだ。この能力は聞いてなかったな。
後から確認したが、ヨウムの持つ『迷いの森』の能力は、効果範囲の森の中なら、いつまでも同じ場所で彷徨わせる事も出来るし、別の地点に一気に運ぶ事もできるそうだ。効果範囲は半径五〇キロだいうから、端から端だと一気に一〇〇キロを移動できるのか。端から端まで移動する事は無いだろうけど、それでも凄い能力だな。
先に言っててくれればスラムの人達の説得も楽だったのにな。
そして全員が居住区に入り、移動は完了した。
既に畑も実が実っている。妖精も多くいるようだが、今の所は姿を見せないように頼んでいる。
スラムの人達には、まずは家を自分達で決めてもらって、食堂と風呂の事だけを説明した。
仕事を始めるのは一週間後からで、それまではこの居住区に慣れる為にゆっくり休んでくださいと案内した。
もちろんこれも作戦だ。
説明が終わると、全員が嬉々として家を決め、食堂に殺到した。
食堂の収容人数は一〇〇人。入りきれない人達は、待ってもらうか並んでもらうしかない。
酒は用意してないので回転率もいいだろうから、それほど待つ事もないだろう。
そして一週間後、移民達が風呂にも慣れ、ここでの生活に馴染んだ頃、仕事の説明をすると言って、全員を倉庫に集合させた。
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