衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第08章 魔王

第09話 勝敗は。

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 まさかの勝利と目の前まで迫った魔王の剣の恐ろしさで、二重の驚きのため、その場に立ち尽くす俺。
 周りも魔王の敗北など考えてなかったようで、何が起こったか分からず呆然としている。
 魔王と俺。どう贔屓目に見ても俺の勝利など誰も予想してなかっただろう。
 もちろん俺も魔王の勝利を疑ってなかった。

 そんな中、一番初めに覚醒したのは意外にもマーラだった。
 なぜか嬉しそうな笑顔で俺に駆け寄って来ると、笑顔のまま声を掛けられた。

「婿殿! 凄い! お父様を倒したのだから、今日から婿殿が魔王を名乗るのだな」
 そして私は王妃…ぷぷぷ、と言ってるが、俺には何を言ってるのかわからない。

 魔王? 婿殿? 王妃? なに言ってんの?

 このままではマズいと思い、俺は魔王に出血大サービスで回復薬を十本、全部振りかけてやった。
 すぐに意識を取り戻した魔王は、何事も無かったかのように、すぐに立ち上がった。
 こうやって落ち着いて見てみると、凄くデカかったのだと遅まきながら気がついた。

 二メートル半はあるだろう。俺は一六五センチぐらいだけど、倍以上大きく見えるほどデカい大男だった。
 髪は燃えるような赤で、ツーブロックでアップにしてツンツンヘア。顎鬚も赤く、目つきは鋭いを超えていて、見られるだけで射殺されそうな眼光を放っていた。
 その魔王が、俺の前で見下ろすように俺を見ている。というか睨んでる。

「次は魔法戦だ」
「え?」
 え―――――! まだやるの? 魔王って超負けず嫌い?

「お父様。それはあんまりではありませんか?」
 王女マーラが、すぐに雪辱戦を始めようとする魔王を止めてくれた。
 おお! 王女様! ナイスフォローです!

「まずは、お父様に勝った褒美が先ですわ。仕方がありません、私がエイジの戦利品として捧げられましょう」
 はい?

「もし、次にエイジが勝てば、お父様はどうされるのですか?」
「……配下に下ろう」
「わかりました。もう私はエイジ側の者です。その言質、しっかりと頂きました」

 え? 茶番? この親娘は何の話をしてんの? いつから王女様は俺側になったの?

「エイジ、お父様から言質は取りました。後はあなたが勝つだけです。この勝負、あなたの妻として負ける事は許しませんよ」
 はい? まったく付いて行けてないんですけど。俺はこれからどうなるの?

「ファイッ!」
 王女が試合開始とばかりに声を上げた。

 あ、やっぱり試合をするんだね。
 王女は止めに入ってくれたんじゃないのかよ。ファイ! じゃねーし!

 王女の声に反応し、素早く浮かび上がる魔王。魔王は既に戦闘体勢だ。
 マジか……よく分からないけど、俺も何かしないと瞬殺されそうだ。

「極炎魔法【獄炎黒点コロナ】!」
 魔王が叫ぶと巨大な炎の塊が四つ、魔王の周辺に現れた。

「ま、まさか、お父様が最終究極魔法【獄炎黒点コロナ乱撃】をこんな所で唱えるとは……終わった」

 魔王は異様なほど汗を掻き、俺を見据えたまま動かない。巨大な炎がまだ更に大きくなって行くところを見ると魔法はまだ完成していないようだ。

 なんだよあれ。あんなのどうやって防げって言うの! ここにいる全員が死んじゃうんじゃないの?
 王女様だって終わったって呟くぐらいのものだろ? 絶対無理じゃん! たかが試合で、何でそんなの使うかなぁ。だから魔王なのか? いやいや最早アホウだよ。

 周囲を見回すと、全員がさっき見た呆けた状態のままだ。まだ覚醒してなかったようだ。
 魔王があの魔法をあのまま放つと全員が焼かれてしまうんじゃないのか?
 うちの連中は覚醒してるようだが、炎の大きさを見て諦めてるように見える。それとも防ぐ自信があるのかもしれない。

「クラマ! マイア! ユー! お前達はアレ防げるの?」
「無理じゃな」
「無理ですね」
「うん、無理」

 全員、諦めてる方だったか。

「だったら何でそんなに余裕があるの!」
「エイジと一緒じゃからかの」
「エイジが一緒ですからね」
「うん、エイジが一緒だもん! そっちに行っていい?」

 俺ってそんなに愛されてたの? マジ嬉しいー!

「もちろん。でも、俺は諦めないよ。最後まで頑張ってみる」
 と言っても、俺の魔法で太刀打ちできない事は分かってる。衛星に頼むしかない。でも、衛星で俺だけじゃなく、ここにいる全員を救えるのか? 俺だけならさっきの結界で助かりそうだけど、せめてうちの連中は助けたい。
 最終手段だな。
 俺の下に集まったクラマ、マイア、ユーを背に、魔王に向かって叫んだ。

「魔王様! 参りました!」

 魔王の作った巨大炎球が超巨大になり、完成に至ったようだ。
 あんなの衛星でも防げないから。絶対に無理だから。
 降参したんだから早く魔法を消せよ!

「【乱撃】!」

 俺の言葉なんて聞いちゃいねぇ。本当に撃って来やがった。やっぱりお前はアホウだ!
 四つの超巨大球が、ゴオォォォォ! っと、螺旋を描きながら降って来る。

「タマちゃん! 頼む! あの魔法を消せない? 防ぐだけじゃ他の人達がやられちゃうんだよ! クラマもマイアもユーもやられちゃうんだ! 助けて衛星ー!」

『Sir, yes, sir』

 十三個の衛星が俺の前に陣取り魔王の魔法に備えた。
 その上で、大きい球のタマちゃんだけが魔法に向かって突っ込んで行った。
 えっ、タマちゃん、大丈夫か?

 ヒュ―――――――! シュポン!
 ヒュ―――――――! シュポン!
 ヒュ―――――――! シュポン!
 ヒュ―――――――! シュポン!

 タマちゃんが四つの超巨大炎球を一瞬で吸い込んでしまった。

 マジか……

 そうして戻って来るタマちゃんと入れ替わりに十三の衛星が魔王に向かった。

 ゴンガンゴンギンゴンゴンガンゴン……チッ!

 衛星の攻撃を受け、上空で舞う魔王。もう無慈悲なぐらい魔王が空中で乱舞している。最後のチッに行くまでに既に意識は無かった気がする。
 魔王はそのまま落下して地面へと激突した。

 ドゴ――――ンッ!!

「……」

 勝ったには勝ったが、こいつを回復させたくないって思ってるのは俺だけだろうか……
「どうしよっか。このまま放置して行っちゃってもいいかな」
 振り返りながら皆に尋ねた。

「そうじゃな。よいのではないかの」
「ええ、私ももういいと思います」
「そうだね、こんなの放っておいて行っちゃおうよ」
「そうよな。放置で構わぬ、許す」

 あれ? 一人多い? いや、でも四人だな。一人男がいなかったか?
 そう、ラーセンがいたよな。だったら今のは……

「王女?」
「なんだ」
「なんでここにいるの?」
「お父様の魔法から逃げるためだ」
「いやいや、そうじゃなくって。あなたは魔王の娘でしょ?」
「そうだが」
「だったらあなたがいるのは向こうでしょ?」
「なんだ、さっきの話を聞いてなかったのか。私は既にエイジのものだ…ポッ」

 ポッじゃねーし! こんな曰く付きの不良物件はいらないんですけど! 一緒にいるだけで面倒事を持って来そうで嫌なんですけど!

「いや、俺は望んでませんけど。そもそもそっちが勝手に戦いを挑んで来ただけで、こっちが負けても何も出しませんでしたよ。俺は何も賭けてませんから」
「そっちがそうでも、こっちはこうなのだ。だから私はエイジのものだ…ポッ」
 意味わかんねー。

「ま、俺達はこの魔族領の出入りと、このダンジョンの許可が貰えたので助かりましたけど、俺はここに住む気もありませんし、もう嫁候補もこうしていますから」
「私は何番目でも構わぬぞ」
「俺が構います! 俺達はもう行きますけど、付いて来ないでくださいね」

 クラマ達に目配せして出発を促した。

「待てぃ!」
 誰かが回復させたのだろう。魔王が復活して俺達を呼び止めた。あ、さっき俺が余分に渡した回復薬のせいみたいだ。

「さっきの勝負、我の勝ちだな」
「えっ?」
 別にそれでもいいけど、本当に負けず嫌いな人なんだな。

「お前はさっき『参りました』と言ったな」
「はい、言いました」
「では、お前の負けだな」
「はい、あなたがそれで良ければ。気絶させられたあなたがそれで良ければ、あなたの勝ちで結構です。元々俺から仕掛けた戦いでもありませんので」

 あの魔法をタマちゃんが防がなければ何人死んだと思ってるんだ。それなのに、そんなに勝敗が大事なのか! と思ったら、結構イラっと来たので言いたい事を言ってやった。

「むぐっ、それでは引き分けでどうだ」
「俺はそれで結構ですよ。負けでもいいと言ってるではありませんか」
「ぐぐっ、では、こうしよう。あの降参で二戦目は我の勝ち。そして三戦目がお前の勝ちだ」

 どうあっても一勝はした事にしたいんだな。ホント超負けず嫌いな人なんだな。

「なんでもいいです、好きにしてください。ただ、今後もこの鉱石ダンジョンは利用させてもらいますので」
「……わかった」

 言いたい事を言って、場を離れようとしたら、魔族達が俺達に向かって頭を下げている。
 一糸乱れぬ四十五度の敬礼。手を使う敬礼ではないが、全員が同じ角度で頭を下げる姿は絶賛もので、俺達に敬意を表してるのが凄く伝わって来た。
 さっきま魔王を倒した事で、俺達を認めてくれての敬礼なんだろう。もしかしたら、その上……いや、何も言うまい。
 これ以上、魔族には関わりたくない。人族から恐れられている魔族なんだ。これ以上関わると、俺も魔族の一員と思われてしまう。それでなくても既に五人も魔族がいるのに、これ以上は勘弁だ。

「では、俺達はこれで失礼します」

「「「はっ! お疲れ様でした!!」」」

 兵士全員から返事を受けるエイジであった。
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