15 / 15
15 翌日⑥ 一生かなわない
しおりを挟む
「本っ当にごめんね……」
「ふふ、もう大丈夫……あれ」
椋は自分の声に驚いた。掠れていて、まるで知らない誰かの声みたいだった。
「声、ガラガラになっちゃってる……!ちょっと待ってて。」
ベッドの上は、2人がたっぷり愛し合った名残で、見事なまでにぐちゃぐちゃだった。体力を使い果たしてふにゃふにゃになった椋を、レンはお姫様抱っこで風呂場まで連れて行き、優しく洗い清めた。
そのあと、ふわふわのタオルで拭いて、新しい部屋着に着替えさせて、そっとソファに寝かせる。
リビングには、洗濯機の回る音と、レンがキッチンで何かを用意している小さな物音だけが響いている。どれも心地よくて、椋はまるで子守唄みたいだなぁと思いながら、うとうとしていた。
「椋、はちみつのやつできたよ。飲める?」
レンの声で、ふっと意識が浮かぶ。ソファのそばにしゃがみこんだレンが、そっとマグカップを差し出した。中には、ふわりと香る、はちみつ入りのホットミルク。
レンにそっと支えられて、マグカップを両手で受け取る。
ふぅ、ふぅと熱を逃し口含めば、あたたかくて、やさしくて――じんわりと、心まで満たされていく。
「……おいしい。ありがとう、レン」
「よかった……」
大きく息をついたレンは、ソファのすぐそば、床にぺたんと座り込んだ。
「本当はさ、もっと椋のこと甘やかしたかったのに……途中からガツガツしちゃって、俺、かっこ悪かった」
「そんなことないよ。ちょっと意地悪なレンも、かっこよかったし」
そう言うと、先ほどの行為を思い出して頬が真っ赤になる。
その様子にレンはじとっと椋を睨んできた。
「もー……元はと言えば椋が」
「え、僕ぅ?」
「……椋のおっぱいしゃぶったとき……」
ぽつりと落ちた声は、どこか拗ねたようで、それでいて、どこか恥ずかしさも滲んでいた。
「子ども扱い、されたみたいで……なんか、悔しくなっちゃって」
視線は合わせず、目を泳がせながらぽつぽつと語るその様子に、椋は思わずあぁ、と少し反省した。
レンにとって“子どもに戻る”ことは、どうしても戸惑うようで。
だから、“大人の自分”とセックスしていたのに、最中に頭を撫でられたことで、子ども扱いされたように感じてしまって。気づけば、意地悪スイッチが入ったみたいだった。
「レン」
「……なに」
ちょっとだけ不貞腐れたようなその横顔。椋はレンの髪に指を滑らせながら、やわらかく語りかけた。
「僕はね、レンの幼なじみで、親友で、恋人で、そして時々……ママにもなるよ」
「昨日のママモードがまだ残ってたみたいで……ごめんね?」
「……べつに。いいけど」
「僕は、どんなレンも大好き。優しいレンも、可愛いレンも、しっかり者でかっこいいレンも――」
一呼吸おいて、いたずらっぽく笑う。
「そして、ちょっとエッチで意地悪なレンも、ね」
レンが照れ隠しのように唇を尖らせて俯いた。椋はくすっと笑って、そっとその手を取る。
「だから……もっとたくさん見せてね。レンの全部。ちゃんと受け止めるから。安心してね」
その言葉に、レンは目を見開く。あぁ、こんなふうに無条件で愛してくれる人なんて、どこを探してもいない。
社長は言ってくれた。「君はどこまでも飛べる」と。
でも――。椋とじゃなければ意味がない。
(……椋には、一生敵わない)
「ありがとう、椋。……愛してる」
「ふふっ。僕もっ」
静かにそう思って、レンはそっと椋を抱きしめた。
胸に顔を埋めると、そこからはいつもと同じ、あたたかくてやさしい匂いがした。
「ふふ、もう大丈夫……あれ」
椋は自分の声に驚いた。掠れていて、まるで知らない誰かの声みたいだった。
「声、ガラガラになっちゃってる……!ちょっと待ってて。」
ベッドの上は、2人がたっぷり愛し合った名残で、見事なまでにぐちゃぐちゃだった。体力を使い果たしてふにゃふにゃになった椋を、レンはお姫様抱っこで風呂場まで連れて行き、優しく洗い清めた。
そのあと、ふわふわのタオルで拭いて、新しい部屋着に着替えさせて、そっとソファに寝かせる。
リビングには、洗濯機の回る音と、レンがキッチンで何かを用意している小さな物音だけが響いている。どれも心地よくて、椋はまるで子守唄みたいだなぁと思いながら、うとうとしていた。
「椋、はちみつのやつできたよ。飲める?」
レンの声で、ふっと意識が浮かぶ。ソファのそばにしゃがみこんだレンが、そっとマグカップを差し出した。中には、ふわりと香る、はちみつ入りのホットミルク。
レンにそっと支えられて、マグカップを両手で受け取る。
ふぅ、ふぅと熱を逃し口含めば、あたたかくて、やさしくて――じんわりと、心まで満たされていく。
「……おいしい。ありがとう、レン」
「よかった……」
大きく息をついたレンは、ソファのすぐそば、床にぺたんと座り込んだ。
「本当はさ、もっと椋のこと甘やかしたかったのに……途中からガツガツしちゃって、俺、かっこ悪かった」
「そんなことないよ。ちょっと意地悪なレンも、かっこよかったし」
そう言うと、先ほどの行為を思い出して頬が真っ赤になる。
その様子にレンはじとっと椋を睨んできた。
「もー……元はと言えば椋が」
「え、僕ぅ?」
「……椋のおっぱいしゃぶったとき……」
ぽつりと落ちた声は、どこか拗ねたようで、それでいて、どこか恥ずかしさも滲んでいた。
「子ども扱い、されたみたいで……なんか、悔しくなっちゃって」
視線は合わせず、目を泳がせながらぽつぽつと語るその様子に、椋は思わずあぁ、と少し反省した。
レンにとって“子どもに戻る”ことは、どうしても戸惑うようで。
だから、“大人の自分”とセックスしていたのに、最中に頭を撫でられたことで、子ども扱いされたように感じてしまって。気づけば、意地悪スイッチが入ったみたいだった。
「レン」
「……なに」
ちょっとだけ不貞腐れたようなその横顔。椋はレンの髪に指を滑らせながら、やわらかく語りかけた。
「僕はね、レンの幼なじみで、親友で、恋人で、そして時々……ママにもなるよ」
「昨日のママモードがまだ残ってたみたいで……ごめんね?」
「……べつに。いいけど」
「僕は、どんなレンも大好き。優しいレンも、可愛いレンも、しっかり者でかっこいいレンも――」
一呼吸おいて、いたずらっぽく笑う。
「そして、ちょっとエッチで意地悪なレンも、ね」
レンが照れ隠しのように唇を尖らせて俯いた。椋はくすっと笑って、そっとその手を取る。
「だから……もっとたくさん見せてね。レンの全部。ちゃんと受け止めるから。安心してね」
その言葉に、レンは目を見開く。あぁ、こんなふうに無条件で愛してくれる人なんて、どこを探してもいない。
社長は言ってくれた。「君はどこまでも飛べる」と。
でも――。椋とじゃなければ意味がない。
(……椋には、一生敵わない)
「ありがとう、椋。……愛してる」
「ふふっ。僕もっ」
静かにそう思って、レンはそっと椋を抱きしめた。
胸に顔を埋めると、そこからはいつもと同じ、あたたかくてやさしい匂いがした。
18
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた
胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。
失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……?
「俺たち付き合ってたないだろ」
「……本気で言ってるのか?」
不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け
※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる