〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ

文字の大きさ
4 / 33

第四話 二人で

しおりを挟む
 テレビを見たり、雑談に興じたり。だらーっと休日を満喫してると、そろそろいい時間に。

 いやー、誰かと一緒だと、時間が経つのが早いねー。

「さーて、サンマでも焼きますかー」

「わたしがやりますよ」

 あ、そうだ。彼女が焼くって言ってたね。

「私は、頭、ワタ取り派だけど、ハルちゃんは?」

「わたしは、両方付きが好きですね」

 ほむ。

「じゃー、大根は私が擦るから、サンマは任せちゃうね!」

「ドンと任せてください!」

 庶民派お嬢様の、心強いお言葉。

 というわけで、作業分担。

「やっぱり、ハルちゃんちのキッチンって広い?」

「そうですねー。大勢のお客様を、もてなすときも多いですから」

「立食パーティーとか?」

 桂剥きをしながら問う。

「いえ、立食パーティーはめったにないですね」

「へー。アニメなんかだと、お金持ちのパーティーって立食のイメージが強くて」

「そうなんですかー」

 でも、考えてみたら、お金持ちが立ちんぼで飲み食いとか、たしかに変といえば変よね。

 二人で手際よく、それぞれの料理を作っていく。

 ほんとに、隣のこの子が、大企業のお嬢様だなんて思えないぐらいの、料理上手で。

「あー、いい匂い。サンマの焼ける匂いって、サイコーよねー」

「そうですね」

 ほんとは、炭火がいいんだろうけど。うち、ガスしかないからね。

 ……でっきあっがりー!

「美味しそうだねー」

「おねーさんの大根おろしも、美味しそうです」

 お酒を呑むつもりなので、ご飯は炊いていない。大根おろしごはんってのもオツなんだけどね。

 あとは、お酒にお猪口、予備の乾き物なんかを並べてー……。

「いただきます!」

 合唱&合掌。

「なるべく良さそうなの買ってきたけど、ハルちゃんの舌に適うかなー?」

 お酌しながら、ちょっと恐縮。だって、一本何万のワイン呑んでそうなイメージなんだもん。

「いえいえ! おねーさんのご厚意が、なにより最高の味ですよ!」

 あら、嬉しいこと言ってくれちゃって。

「乾杯!」

 お猪口を掲げ、つつ、といく。くーっ! イイ!

「美味しいです!」

 お世辞ではなさそうな、ハルちゃんからのお言葉。

「遠慮なく呑んでねー」

「ありがとうございます!」

 こうして、箸とお酒が進んでいく。

 ああ、サンマ美味しい……。絶妙な焼き加減だ。

「おうちで、サンマとかよく食べるの?」

「えーと、その、まあ、それなりに……」

 へー。結構庶民的なものも食べるのね。……なんて考えちゃうのはイヤミかな。こういう考え、良くないね。でも、彼女も少し、なんか言い淀んだような? 気のせいかな。

「ハルちゃん、お嫁さんにしたいなー。美味しい手料理、作ったり、作られたりしたーい」

 ありゃりゃ。さっそくお酒が回ってきたらしい。何か、我ながら変なこと言ってるー。あははは。

「わたしも、おねーさんに嫁ぎたいです~」

 頬が桜色に染まったハルちゃんも、上機嫌で返す。ああ、やっぱ、ひとり酒より誰かと呑んだほうが楽しいねー。

 談笑しながら、食べては呑み、呑んでは食べ。乾き物にも手を付けていく。

「あ、お酒なくなっちゃった」

 ハルちゃんにお酌しようとしたら、ひとしずく出て打ち止め。

「でも、あんしーん! うちには秘蔵っ子があるのよー。今度は、ビールいこう!」

 クラフトビールを呑むのが、私の愉しみの一つ。

 秘蔵っ子たちを、冷蔵庫から引っ張り出す。

「さ、も一度かんぱーい!」

「はーい、カンパーイ!」

 こうして、完全に出来上がっていく私たちでした。


 ◆ ◆ ◆


 翌朝。頭が痛い……ちょっと、吐き気も。そして、何よりハルちゃんともども、ネイキッドでお布団に転がってました……。

 またやってしまった……。酒癖の悪さに自己嫌悪。とほほ。

 とりあえず、二度寝しよ。


 ◆ ◆ ◆


「……きてください!」

 んー?

 瞼を開けると、服を着たハルちゃんに、ゆさぶられてました。

「おはよー」

「おはよーじゃないですよ。もう、こんな時間ですよ。あたた……」

 側頭部を押さえる彼女。

「ハルちゃんも、二日酔いかー」

 時計を見ると、お昼近く。さっき起きたとき、そのへんに乱雑に脱ぎ散らかしてあった服は、ハルちゃんが畳んでくれたようで。食器類も片付いている。

「ごめん、ちょっと向こう向いてて」

 今更照れる関係でもないけど、まあ、エチケットとして。

 彼女は、言われたとおり、くるりと反対を向いてくれました。

「わたし、あんな泥酔したの初めてです」

「でしょうねー。ハルちゃんのうち、ハメ外すとか考えられないもん」

 着替えながら、相槌を打つ。

「これが、二日酔いなんですね。おねーさんと出会ってから、いろんな初体験しまくりです」

「あはは……。その、奪っちゃってゴメン。ほんとに」

「いえ、ステキな体験でした。初めてが、おねーさんで良かったです」

 なんだか、変なムード。

「OK。こっち向いていいよ」

 再度、こちらをくるりと向く。

「とりあえず、買い出し行こうか。お腹ペコペコ」

「そうですね。私も、ペコペコです」

 そんなわけで、ハルちゃんにもメイク道具を貸してあげつつ、私もメイク。駅前のスーパーへ、てくてくと歩いて行くことに。

「きょーうは、なーににしよーかなー♪」

 大根が残ってるから、煮て良し、大根おろしご飯にしてよし。大根おろしご飯が、二日酔いには良さそうかな。

「おねーさん、このイワシ良さそうですね!」

「へー、たしかにこれ良さそうだね。ハルちゃん、目利きできるんだ」

「ミドリさん仕込みです!」

 えっへんと胸を反らす彼女。ほんとに、お師匠さんなんだねー。そんな彼女と、引き離されたのか……。

「秋といえば、栗よね。栗ご飯作ろっか」

「はい!」

 さらば、大根おろしご飯。また今度~。代わりに、お味噌汁になってね。

 こうして、遅い朝ごはん兼、昼ごはんの内容が決まっていく。

 そして通りかかるは、アルコールコーナー。

「チョットだけね」

 と言いつつ、クラフトビールをかごに入れる。私の辞書に、自制心の文字はないようです。

「そういえば、お仕事するにあたって、そろえるものってあります?」

「あー、そうだね! 履歴書買っていこう! あと、外で証明写真も」

 とりあえず、履歴書をかごへ。

「夜は、何にしようかなー。きのこスパゲッティーでも作ろっかな」

「昼と夜、逆のほうがよくありません?」

 たしかに。

「気が利くねー、ハルちゃん。あとは、パンと牛乳とおせんべいを……。こんなもんかな?」

 というわけで、お会計を済ませた後、ハルちゃんの写真を撮影。

「チョット表情が堅いけど、まー、おーけーかな!」

「うわー、どきどきしますー!」

 安泰な生活を蹴って、私とともに歩もうとする彼女。会って二日で、こんなに意気投合するなんてねー。彼女とは、何かと波長が合うんだなあ。

 この先、変な波乱が、もう起きないといいけれど。

 ともかく、帰ってご飯にしますかー!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

処理中です...