〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ

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第六話 のほほん?

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「どうですか?」

 帰宅後、私専用ファッションショーを開いてくれる、ハルちゃん。

「いいよいいよー! どれも、ほんと似合ってる!」

 ぱちぱちと拍手する、たったひとりのオーディエンス

「これ、楽ですね~」

 長袖とデニムで決め打ちし、ちゃぶ台につく彼女。

「楽よねー、その手の。私も、それ系に着替えよっと」

 クローゼットから淡赤の長袖とカーキのチノパンを出し、着替える。

「ふふ、おねーさんも、似合ってますよ」

 微笑むハルちゃん。誰が見てもかわいい。

「じゃあ、きのこスパ、作りますね」

「ああ、ねえ。スパゲッティーの茹で方教えて?」

「いいですよ。えっとですね……」

 実際作りながら、レクチャーを受ける。お湯二リットルに、塩二十グラムも入れるのがコツなのだとか。

「へー。こんなに入れるんだ」

「はい、それで、ほんと変わるんですよ」

 ミドリさん、直伝のテクニック。どんな人なんだろう。会ってみたいような、会ってはいけないような……。

 一方のハルちゃんは、きのこの調理。醤油とバターもじゅうじゅう香ばしい、エリンギやえのきが、とても美味しそう!

 それぞれ完成したので、併せて和風きのこスパゲッティーにする。

 最後に、刻み海苔をまぶして完成~!

「いただきまーす!」

 うん、美味しい!

「ほんと美味しい! 自分で作ったんじゃないみたい!」

「お塩だけでそんなに喜ばれたら、恐縮しちゃいます」

 照れくさそうに、はにかむハルちゃん。

 さっきも思ったけど、ほんとの妹ができたみたいで、かわいい。

「あ、そろそろだ」

 お茶を用意し、テレビを点け、競馬にチャンネルを合わせる。

「今日も、スターランサーちゃんが出るんですか?」

「そんな事したら、馬が潰れちゃうよ。今日は、マリアージュベーゼちゃんの応援だよん」

 彼女のレースは、もう少し先。

 ハルちゃんと一緒に別のレースを観戦しながら、ベーゼちゃんの登場を待つ。

「このレースだよ」

 本日のメインレース!

 パドックで、ベーゼちゃんが、かぽかぽと歩いている。黒毛の美人……もとい、美馬さんだ。

「この子も強いんですか?」

「うーん、コテコテのスプリンターでねえ。スプリンターズステークスに、期待がかかるってとこかな」

「よくわからないですけど、それもすごいレースなんですか?」

 湯呑を手に、尋ねてくるハルちゃん。

「重賞戦線の猛者ってとこかな。あ、重賞についても、すごいレース程度の認識でいいから」

 さて、ベーゼちゃん。馬体は仕上がっている。現在、二番人気に推され、期待度も高い。

 これは、やってくれるよね?

 ベーゼちゃんが去ると、しばし、「アキおねーさんの競馬講座」を開催。

 初めて知ることの数々に、興味津々なハルちゃん。

 そして、各馬一斉にゲートイン!

 ベーゼは、スターランサーとは対象的に、逃げて逃げて逃げまくるタイプ。さあ、逃げ切りなるか!?

 スタート!

「はやいはやい! すごい飛ばしようですね!」

「それが、この子の持ち味なのよ!」

 思わず、握りこぶし。負けるなー!

 ゴール前、一番人気の先行馬に差されそうになるも……ハナ差で勝利!

「やったー!」

 ハルちゃんと、手をぺしーんと打ち合わせる。ふう、心臓に悪い。

「よーし、これで乾杯だー!」

 冷蔵庫から、缶飲料を取り出す。

「ビールですか?」

「ノンアルのね。私、呑み始めると自制が利かなくなるから、日~木はこれで禁酒してるんだ」

 一緒にタブを、プシュ、と開ける。

「カンパーイ!」

 酔いはこないけど、雰囲気は味わえる。まったく、ありがたい話だ。

「そういえばさ」

「はい?」

「なんか、私の趣味ばっかり披露してる気がするけど、ハルちゃんは何かないの?」

 最後の一滴を呷りつつ、素朴な疑問を呈す。

「わたしですか? ピアノでしょうか。もとは、嫌々やらされてた習い事だったんですけど、こっそり作曲するようになってから、楽しくなっちゃって」

 へえ~。

「聴いてみたいなあ、ハルちゃんのオリジナル曲~」

「いつか、披露したいですね。ところで、おねーさん」

「ほい?」

 唐突な逆フリ・・に、変な返事をしてしまう。

「その……キス、しませんか?」

「ひょっ!?」

 突飛な提案に、今度は変な声が出てしまう。

「まさかハルちゃん、ノンアルで酔ってるんじゃないでしょーね!?」

「違います、違います! 今までお酒の勢いで、あんなことしてたじゃないですか。でも、意識がハッキリしてるときに、こう、イイコトしたいなあって」

 ひょ~。ダイタンな子ですこと。

「でも、キスでいいの?」

「素面版の入門編ってことで」

 ほむ。

 何しろ、ヨッパ状態とはいえ、もう二度も致してる身。今更断るものでもないけれど。

「うう、照れくさいなあ~……」

 素面でこう迫られると、たじろいでしまう純情乙女ナノデス。

 するとハルちゃん、つつとこちらに寄ってきて。

「ダメ、ですか……?」

 私の両頬に手を添え、潤んだ目で見つめてくる。

 うう、この子犬のような瞳、断れな~い!

「は、恥ずかしいから、ハルちゃんからお願い」

「素面だと、すごい奥手なんですね。じゃあ、目、つぶってください……」

 言われた通りに、目を閉じる。ドキドキ……。

 すると、少し間があって、とても柔らかい感触が唇に。ひゃ~! 恥ずかしー!

「舌、入れていいですか?」

 ひえー! ハルちゃん、だいたーん! 本当にお嬢様~!?

「や、優しくしてね……」

 昨日、一昨日と、あんなことした人間の言葉じゃないね、これ。

 でも、これが素面の私なんだもん!

 あ、入って来たあ~!

 ただ、ハルちゃん舌使い上手い……。どこで覚えたの?

「ん、あむっ」

 しばし、熱戦。受けるに任せて、ハルちゃんの舌使いを愉しむ。

 唇を離すと、つ……とよだれが糸を引く。恥ずかしい。素面でやると、キスだけで、こんなにも照れくさいのか。

「良かったですよ、おねーさん」

 とろんとした目つきで、見つめてくるハルちゃん。恥ずかしさ倍増!

「今度は、私からしていい……?」

 余韻が名残惜しくて、おねだり。彼女は、こくりとうなずきました。

 第二ラウンド。

 思えば、私のファーストキス、小学校の親友、ふーちゃんだったな。

 特に恋愛感情とかなくて、「ためしに、やってみる!?」みたいな、いたずらノリで。

 でも、あるいはふーちゃんは、密かに本気だったかもしれない。今よりもさらに、オープンな時代じゃなかったから。

 今頃、どうしてるのかな。

 おっと。考え事なんて、ハルちゃんに失礼よね。

 舌を交わし合う私たち。とろけそう。

 もう、こうなると止まらない。そのまま勢いで、致して・・・しまいました。

 息も絶え絶えな私たち。素面で、初めてやっちゃった……。未だに、指に感触が残ってる。

 寄った勢いで覚えてないなんて、二回も、もったいないことしたなあ。

 ハルちゃんと見つめ合い、手をつなぐ。いわゆる、恋人つなぎ。

 ふふ、今日は色々濃厚だね。

 余韻を愉しみ終わったら、ご飯つくろっと。
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