〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ

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第二十七話 決意

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「二人に、聞いてほしいことがあるんです」

 朝、まかないを食べてる私たち三人。ハルちゃんはお弁当係、私が明太サラダスパを作り、ミドリさんはミネストローネと、役割分担。お弁当はサンドイッチで、具は開けてのお楽しみだそうで、わくわく。

「わたし、作曲してみようかな、って」

「いいじゃない! ハルちゃんの楽才ならいけるよ!」

わたくしも、同様に存じます」

 二人で背中を押す。

「うち、ピアノ教室ですから、コンテストのパンフとかよく来るんですけど、これは! と思ったのが、作詞の必要なものでして」

「いいんじゃない? うんうん」

「それがその……わたし、詩才には、からっきし自信がないんです」

 あらま、意外。

「そこまで?」

「はい」

 ミドリさんのほうに目をやると、うなずいて肯定する。あちゃー。

「なので、お二人に、歌詞を考えていただこうかと思ってまして」

「うーん、私はかまわないけど、ミドリさんは?」

「それでしたら、わたくしより適任者がいますよ。あとで、話をしてみます」

 ほほう? 適任者とな? どなたでしょ?

 謎を含みつつ、朝ごはんを終えるのでした。


 ◆ ◆ ◆


 うふふ~。ハルちゃんの愛情弁当~。ぱかっ。

 ツナきゅうりサンド、たまごサンド、ハムチーズレタスサンド、BLTサンドを各種クロワッサンで! 美味しそ~。

「おおう、今日は豪華弁当じゃないのか~」

 また、高級弁当のお相伴に与ろうとしていたであろう同僚が、ちょっと残念そうに言う。素直ですねえ。

「私にとっては、豪華弁当ですよん。愛する人の手料理だもん。いっただっきまーす!」

「え!? 愛する人って、マ? 誰々?」

「ヒミツー」

 ぱくっ! ツナきゅうりおいし~!

「美味しそうに食べるなあ」

「美味しいですし~」

 ハルちゃんとあんな出会いをした私が、よくぞここまでバカップルの片割れに成長したものです。そして、自分の性指向を知る切っ掛けにもなって。自分がレズビアンだとは、お付き合いするまで思ってもみなかったよ。

 そういえば、パートナーシップ制度って「重婚」OKなのかな? 今度調べてみよう。

 ふう。ごちそうさまでした。ハルちゃん、美味しいお弁当をありがとう~!


 ◆ ◆ ◆


「ただいまー。ハルちゃんは?」

 今日も一日、よく働きましたよっと。出くわしたメイドさんに尋ねる。

「ご入浴中です」

「自室?」

「いえ、大浴場です」

「わわ! 一緒にはーいろ! あ、すみません、これお願いします」

 空のお弁当箱を手渡し、着替え一式を持って大浴場へ!

「ハールーちゃーん! 一緒にはーいりーましょ~!」

 勢いよく扉を開けると、ハルちゃんの背中を流すミドリさんが。

「にゅーん、先を越されましたか~」

「すみません」

 恐縮するミドリさん。

「謝らなくていいですって。一緒に流しっこしましょ」

 まずは、かけ湯。で、わしゃわしゃと私はハルちゃんの「前」を洗います。

「こそばゆいです~」

「ふふふ、ダブル愛情ゴシゴシアタックをくらいなさ~い!」

 今度は、ハルちゃんが流してくれることに。くはぁ。疲れた体に心地いい……。

 頭も洗って、ざぶん。私たち三人、髪短いから、髪を上げなくていいのが楽よね。

「ところで……」

 ハルちゃんがなにやら、もじもじ切り出す。今朝の続きかしら?

「ここで、したく・・・なっちゃいました」

「え、ええ……!? 誰が入ってくるか、わからないよ!?」

「それがいいといいますか……」

 ヘンタイだ~! とんだ変態ガールさんですね! 見ず知らずの女の子を連れ込んで、そのまま致したやつが言うなって感じだけど!

「ミドリさんは、どうです?」

「お嬢様の、仰せのままに……」

 今、気づいた。私ら三人、ストッパーがいない!

「でもたしかに、こういうのも、ちょっとコーフンするよね……」

 というわけで、バトル開始!

 幸い誰も来ず、ミッション・コンプリートです。新しい感覚に目覚めそう……。

 のぼせそう~。牛乳飲もっと。

「ハルちゃんたちは、食事済み?」

「いえ、おねーさんを待ってました」

「あら、悪いことしちゃったね。ぱぱっと何か作ろう」

 三人で手分けして、おにぎりを作る。ふふ、こういうのもいいよね。

「おねーさんは、海苔いっぱい巻くんですね?」

「逆に二人は、よくマンガで見かけるようなおにぎりだね。個性が出て面白いねー」

 というわけで、お腹もぺこぺこなので、さっそくいただく。

 うーん、梅干しのおにぎりって、たまに食べたくなるよねー!

「そういえばさ、私ハルちゃんのオリ曲って聞いたことないわ。どんな感じの作るの?」

「基本おとなしめというか、ゆったりした曲ですね」

 へー。

「そういえばといえば、ミドリさん。歌詞の助っ人さんって誰なんです?」

「そうですね。今頃くつろいでるでしょうから、電話してみますね……ユキ、今いいかな?」

 なんと、ユキさんでしたか!

「お嬢様がね……」

 作詞のお願いをするミドリさん。

「ありがとう。お嬢様に変わりますね」

「あ、ユキさん、お久しぶりです! ええ、はい。私、本当に詩才がなくて……。なるほど、なるほど。ありがとうございます!」

「なんだって?」

「まずは、わたしの曲を聴いてみたいそうです。ピアノ室へ行きましょう」


 ◆ ◆ ◆


「スマホは、スピーカーモードにしますね」

 ミドリさんが、手頃な台にスマホを立てる。

「では……」

 鮮やかな手付きで、ピアノを弾いていくハルちゃん。おお、いい曲だ……。爽やかで、華があって。春のそよ風のような。

「……こんな感じですが、いかがでしょう」

「いい曲ですねー。ちなみに、失礼ですけど、詩才がないというご謙遜は、ほんとですか?」

「はい。それがもう、恥ずかしいぐらい……。さっきの曲に、私が仮に当てたのを歌いますね」

 その歌は……一言でいえば、クサかった。もう、どうしようかというほど、聴いてるほうが小っ恥ずかしいほどに。

「なるほど。わかりました。ミドリ、この案件乗るよ。ただ、新人賞と平行だから、小説優先になるけどいい?」

「いえもう、乗っていただけるだけでありがたいです! よろしくお願いします!」

 ビデオ通話になっているスマホに、頭を下げるハルちゃん。

「お気になさらず。締切は?」

「三ヶ月後の……」

 日程を説明するハルちゃん。

「並行するとタイトだけど、なんとかなるかな? よし、任せてくださいな!」

「ありがとうございます!」

 お辞儀するハルちゃんとミドリさん。つられて、私も。

「打ち合わせは、MOOZのリモートでいいですかね?」

「はい」

「じゃあ、何かあれば、この番号に連絡くださいな。LIZEも交換しましょう」

 というわけで、演奏会&打ち合わせはお開きに。

 こうして、ハルちゃんにまた一人、心強い味方ができました!
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