百物語 厄災

嵐山ノキ

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第五十五話 にげるなよ

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 Rさんは駅から好みの女性の後を付けていたという。
 この時点で話を聞いていいものかと悩んだが、話の本筋は別のところにあるということなので、最後まで聞くことにした。

「つかず離れずの距離を取るのは難しいんです」

 女性の後を付ける目的はいろいろある。家の場所を知るためだったり、こっそり盗撮したり、危害を加える目的だったりする。
 Rさんは盗撮が目的だった。

「意外と歩くの早いな。逃げるなよ」

 目当ての女性は目的地が決まっているようにスタスタと歩いて行くので、Rさんは見失わないように早足で着いていった。
 駅から出て、地下街へと女性は向かっていった。地下鉄が発展している都市であり、数多くの店が地下街に展開している。
 女性はその中でスーパーマーケットに入り、かごを持って買い物を始めた。

「うわ、参ったな」

 女性に続いてスーパーに入ったRさんは困ってしまった。
 手ぶらでスーパーマーケットを徘徊するのは不自然だ。
 しかし買い物かごを持って何も入れないのもまずい。そして何かをかごに入れると買わなければならず、レジを通している間に女性を見失ってしまうだろう。
 悩んだ末に、Rさんはスーパーマーケットの外で女性が出てくるのを待つことにした。
 いったん入ったスーパーを手ぶらで出る。
 出口に、追いかけてきたはずの女性が立っていた。

「え、あれ、中に……」

 状況がつかめないRさん。
 Rさんに向かって女性はニッコリと笑って言う。

「買い物、されないんですかあ?」

 そのまま女性の横を急いですり抜けて逃げ出したRさん。

 
「幽霊とかよりも、その状況の方が怖かったです」

 それからは、もっと周りに注意して後を付けるようにしているという。 
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