百物語 厄災

嵐山ノキ

文字の大きさ
80 / 101

第七十九話 気持ちが悪い彫刻たち

しおりを挟む
 少し変わったスポットへ行くのが好きだというSさんからの話。
 彼女の住む隣の県の山中に、不気味な彫刻ばかりが並んでいるという屋外の施設があった。
 旅行雑誌に載っているのを見たこともなく、公式サイトや宣伝アカウントなどもない。
 そのためにほとんど知る人がいない場所であったが、ある心霊スポット紹介サイトで取り上げられていたのを見てSさんは単独でやってきた。
 仮にここでは「不気味彫刻展示場」と呼称する。

「やっと着いた、そりゃ人も来ないはずだよ」

 場所は山の中ではあるのだが、街からそこまでとんでもなく離れているというわけではない。ただ、この不気味彫刻展示場を過ぎてもその先に何もないのだ。特に観光名所ではない山に続いていくだけである。
 民家はあるかもしれないが、そこに用がなければ行く人もいない。

 入口らしき場所には木にスポット名の書かれた看板があるだけだ。
 特に料金は取られない。受付もない。そもそも営業時間すら判然としない。Sさんが来たのも、休日の明るい時間帯ならば入れるだろうと思ったというだけの理由だった。

「うわあ、思ったより広そうだけど、帰りたくなったよ」

 いきなり弱音が口から出るSさん。
 どこかに設置されているのであろうスピーカーからお経が流れているのにまず辟易した。どういう効果を狙っているのだろうか。山中だから他の家に迷惑でないのだとは思われるが、従業員がいたら一日中これを聴いているのかと思うと背筋が寒くなる。

「あっ、そうそう、こういうのを見に来たのよね」

 そして展示物。屋外に化け物のような様子の彫刻が数多く並んでいる。
 奇怪なポーズをとっている彫刻、顔の一部が肥大化した彫刻、一部が欠損している彫刻……率直に言って気持ちが悪い。石を抱かされて天を仰いで泣いている彫刻、苦悶の表情で頭を抱えている彫刻など、見ていてこちらの気分が沈むようなものもある。
 Sさんは理解に苦しんだが、芸術というのは理解を超越したものかもしれないとも思った。

「はははっ、何これ、マジで」

 あまり細かく見ずに先へ先へと進んでいたSさんだが、前の方から人の声がしたため足を止めた。
 見ると同じようにサイトを見たのか学生風の男2人が先に来ており、彫刻を見てあざ笑っていた。

「なんじゃこりゃ、ひっでえ」

 あろうことか1人が彫刻に蹴りを入れ、もう1人が唾を吐きかけていた。
 いくらなんでも常識外れな行為。他に人がいないからやりたい放題だ。
 彼らの仲間と思われたくないSさんは、わざわざ一度見た彫刻をもう一度見るために来た道を戻り、再度順路を進むことにした。

「不気味は不気味だけど、どこか悲しさのようなものを感じるんだよね」

 改めて彫刻1つ1つを見ていく。タイトルの記載はないのでどういった意味を持つ彫刻なのかをSさん自身が考えざるを得なかった。
 まるで人間がその苦悶の瞬間を切り取られたような悲痛な顔つきをしているものもあり、もしかしたら苦しみを表現する彫刻群なのかもしれないとSさんは結論づけた。


 そして話は数年後に飛ぶ。
 ホラーを愛好する趣味で知り合った恋人と、Sさんは再びこの施設を訪れた。

「あっ、この彫刻は前にも見たやつだ、覚えてるよ」

 再訪するまではほとんど忘れていたが、現地に来て記憶が蘇った。
 拷問を受けている途中のような彫刻の横を通り過ぎると、気になるものがあった。虚空を蹴り上げているような彫刻、そして地面に向かって唾を吐いているような彫刻だ。
 2つとも、行動自体は勢い任せに思えるが、どこか顔には悲哀のようなものが感じられた。
 Sさんはこれらをどこかで見たような気がした。おそらく、前にも見た彫刻なのだろうとその時は思ったが、家に帰ってよく考えて、ゾッとしたという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

少し怖いホラー短編集(文字数500以下)

仙 岳美
ホラー
文字数500以下のショート集です、難しく無いので気楽にどうぞ。

私の居場所を見つけてください。

葉方萌生
ホラー
“「25」×モキュメンタリーホラー” 25周年アニバーサリーカップ参加作品です。 小学校教師をとしてはたらく25歳の藤島みよ子は、恋人に振られ、学年主任の先生からいびりのターゲットにされていることで心身ともに疲弊する日々を送っている。みよ子は心霊系YouTuber”ヤミコ”として動画配信をすることが唯一の趣味だった。 ある日、ヤミコの元へとある廃病院についてのお便りが寄せられる。 廃病院の名前は「清葉病院」。産婦人科として母の実家のある岩手県某市霜月町で開業していたが、25年前に閉鎖された。 みよ子は自分の生まれ故郷でもある霜月町にあった清葉病院に惹かれ、廃墟探索を試みる。 が、そこで怪異にさらされるとともに、自分の出生に関する秘密に気づいてしまい……。 25年前に閉業した病院、25年前の母親の日記、25歳のみよ子。 自分は何者なのか、自分は本当に存在する人間なのか、生きてきて当たり前だったはずの事実がじわりと歪んでいく。 アイデンティティを探る25日間の物語。

小さな町の不思議・怖い話

みつか
ホラー
小さな町内の怖い話。 実話と聞いた話、フィクションを混ぜた話となっています。 幽霊や妖怪?の話中心。

処理中です...