40 / 74
第四章
39
しおりを挟む荷造り等の準備があると言って兄様は部屋を後にした。
「まさかお嬢様がここまでセランと仲が良いとは…」
「兄妹仲が良いのは良いことでしょ?」
「そうですね。……私と会うまでは寂しく無かったようで安心です」
「え」
「お嬢様は寂しがり屋ですからね?」
「そんなことない…」
「冗談はさておき。前世では周りに私くらいしかいませんでしたから。…お嬢様が今世は大丈夫だったと考えると…どうやら幸せそうで何よりです」
「!」
…やっぱり赤月は変わらない。
私の行動一つがどこまでも心配させてしまうのなら、いい加減成長したいな…。心配を無くすのは多分無理だろうから、安心できる面を増やしていけたらな。
「赤月は…?前世と比べて今世は幸せに過ごせた?」
「失礼ながらお嬢様。それは愚問でございます。私はお嬢様が全て。貴女が…貴女さえいてくれればそれだけで幸せです。今世ではそれだけでは終わらせませんが」
そう言いながら赤月は私の腕を優しく持ち、自分の方へ引き寄せた。
「失礼します」
「あっ」
抵抗する間もなく、私は赤月の暖かな腕の中に収まってしまった。
「前世に比べて今世ではお嬢様に触れることができる…これがどれほど幸せなことでしょうか」
…どうしよう、おかしい。
兄様とハグしたときよりも圧倒的に緊張してしまっている。
…というか、私は腕を回すべきなのだろうか。
「こんなに幸せなことを常にセランがやっていると考えると少し妬いてしまいます」
「赤月…」
「お嬢様…。少しこのままでいることを許してください」
そう言って腕に少し力がこもる。
その腕には優しさや暖かさはもちろん今までの分の愛しい想いも込められている気がした。
「……」
ふと視線を上げれば、綺麗な殿下の横顔。
でもそこからは少しばかり疲れが見えた。
最近会っていないから忙しいのかなとは思っていが、自分の想像以上に疲れていそうだった。
「赤月…お疲れ様」
そう思いながらそっと腕を回した。
「!…全くお嬢様…貴女と言う人は…」
「…?」
「どれだけ私を好きにさせれば気が済むのですか」
「え…そんなつもりは」
「えぇ…。もちろんそれは知っています。そこも込みで貴女を愛しているのですから」
声から伝わる想いがあった。
「…お嬢様。貴女の全てが愛おしいです。……困りましたね離れ難いです」
「……っ」
赤月の笑みがこぼれている気がした。
別に今までの言葉を信用してなかったわけではないけど、どうしてか今日は赤月の言葉が純粋に嬉しかったし照れくさかった。
思えば、赤月にしっかり触れたのはこれが初めてだ。
だから調子が少しおかしいのかもしれない。
だって、変だ。
赤月とのハグが全く嫌じゃ無く、むしろ良かったと思うだなんて。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。
buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ?
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる