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第五章
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しおりを挟む今私はジュゼッペ様の部屋にいる。
私の願いで、二人きりにしてもらっている。
「話があるなら手短に済ませてください。私も準備がありますので」
彼女の言う準備とは、平民になることだ。
心から望んでいるわけでもいないのに平然とやってのけているあたり今どれだけ傷ついているのかが感じられる。
「手短に済むような話ではないのですが」
「私はアイシア様と長く話すようなことはありませんわ」
前回のお茶会から一変して、ジュゼッペ様は冷たい空気を纏っていた。
「では…私が勝手に話します」
「……どうぞお好きに」
どうすれば彼女は救われるのだろうと散々悩んだ末、私なりに話そうと思った。ジュゼッペ様は同情されたいわけでは無い。
もちろん引き止める事もされたく無いかもしれないが。
だから私は私なりに考えた事を話そうと思う。
「私はジュゼッペ様が平民の暮らしができるとは思いませんわ」
「やってみなければわからないものですわ」
さっきは少し突き放したくせにこうやって返してくれるのだから、やはり彼女は優しい。
「いいえ。今まで貴族の華やかな生活をしてきた貴女が全く違う平民の生活で満足できるはず無いと思いますわ」
「華やか…」
「今まで好き勝手にわがまま言い放題で暮らしてきた方には到底無理かと」
「わがまま…?」
「傲慢に生きてきた貴女には───」
「いい加減にして!!!」
ジュゼッペ様は私の言葉を遮り怒りをあらわにした。
「アイシア様……貴女私の話を聞いてらしたの?華やか?わがまま?傲慢?一度たりともそんな暮らしができただなんて思ったことありませんわ!」
「まぁ、お可哀そうに。ではギャルツ家は今ではもう落ちぶれてしまったのですね…」
「そうかもしれませんわね?」
「そうなんですの。ギャルツ家は娘に平民の暮らしをさせる教育をする程落ちぶれてしまったのですね?今は亡き夫人はどういう教育をしていらしたのかしら!」
「!!」
夫人────サシェル様にもらったアドバイス。
ジュゼッペ様はサシェル様のことが大好きだ。
だからそこを上手く利用する。
ジュゼッペ様はギャルツ公爵がサシェル様にしてきた事をもちろん許せないが、それ以上に自分のせいでサシェル様に何か迷惑がかかるのを嫌うはずだ。
「全く…今は亡き夫人ではありますがそんな教養の無い方だったとは!」
「違います…違いますわ!」
「あら。何が違うんですの?」
「お母様は何も悪くありません…!私が勝手にしていることで…!」
「そうなんですか?」
「ええ!」
「では…ジュゼッペ様はその説明をこれから誤解していく人全員にするのですか?」
「あっ…」
「亡くなってしまった夫人の評判を下げるだなんてことを貴女はするのですか?」
「そんなつもりはっ…」
「ジュゼッペ様にそんなつもりが無くても、周りの貴族はそう捉えるのでは無いのですか?ギャルツ公爵がもしそういう方でしたら、公爵自身が責められる立場になりそうになった時、都合の良い夫人に全責任を擦り付けると思いますわ」
「………」
ジュゼッペ様は絶句していた。
ようやく自分がすることの全体図が見えたのだと思う。
少しの沈黙が続き、やっとジュゼッペ様が声をだした。
「なら……私はどうすれば良かったんですの…?」
涙声ながら私の目をしっかりと見てつのる思いを訴えてきた。
「私は…出来損ないですから、それ以外の方法が何も思いつきませんわ」
「思いつか無いことと出来損ないは違いますわ」
「…」
「私は…真逆の事をすれば良いのではないかと思いますわ」
「真逆…?」
「はい。ジュゼッペ様が優秀だと世に知り渡れば良いのではないかと」
「そ、そんなことは」
「無理では、ありませんわ」
「!」
「ジュゼッペ様が優秀だと世に知られれば…夫人の評判は落ちることなど無くむしろ上がるのではないのでしょうか?」
「お母様の…」
「ただ、別に夫人の評判云々で頑張るのでは無くジュゼッペ様がギャルツ家を見返す為にやれば良いのでは?」
「ギャルツ家を…」
ジュゼッペ様は少し戸惑いながら顔を伏せた。
「もし…貴女が変わりたいと言うのなら…私は全力で協力しますし、貴女を優秀にしてみせますわ」
「!」
私の持つ全ての力を活かして。
「どうして……そこまで…」
「言いませんでした?私はお節介なんです」
本当の理由にはサシェル様があるけど。
それを言う必要はどこにも無い。
「……っ」
ジュゼッペ様は意を決し自分の頬を軽く叩いた。
「…お願いいたします、アイシア様!」
「もちろん…!」
良かった。本当に。
不安だったが考えを変えてくれて安心した。
これからどうするか話し合おう。
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