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第七章
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しおりを挟むそういえば、ジュゼッペ様には兄が二人いると言っていた。目の前にいるこの人は、きっと上の兄なのだろう。
「……ふざけやがって…」
刃物を私に突き付けたまま、悪態をつく。
さて、どうしたものか。
抵抗はもちろんしたいのだが、残念ながらこの狭い馬車の中では厳しい。かといって、これからいつ外に出られるのかわからない。カーテンはしまっているから、どこへ向かっているかも謎。
「………こんなことして良いと思ってるの」
「…………」
「……何がしたいの」
「…ギャルツ家が終わるならもう用は無い。あそこにいても何の意味もない。なら、新たな地でやり直すしか道はないだろう」
「やり直すって……」
どの口が言ってるんだ。処罰対象になっておきながら、まだ自由に何かできると勘違いしている。……憐れな人だ。
「可哀想な人の兄は憐れな人ね」
「は?何を言っている」
「別に………」
兄弟揃って愚かなのは言わずともわかることだ。
「………逃げられると思ってるの?」
「逃げる?…そもそも追ってこないだろう」
「何故?この馬車は王家のものよ」
「ある場所まで着いたら返すさ。それに、不正に関しては俺は関係ない。やったのは父だ」
どこか吐き捨てるように言う。
それが真実か嘘かはわからない。
「だとしても貴方が処罰対象に変わりはない。不正に関してやっていなくても、知っていたならただでは済まされない」
「たかがそれくらいだ。……それに、隣国まで逃げてしまえば王家も諦めるだろう」
「隣国…」
隣国に逃げる?
もしかして今は港にでも向かっているのだろうか。
「安心しろ。お前も連れて行ってやる」
「……は?」
「俺の世話をさせてやるんだ」
…………呆れてものが言えない。恐らくこの人も可哀想な人と同じ勘違いをしているんだろうな。
「なんだ?金の心配か?それならいらん心配だ。………まぁ、役に立てば女として見てやらん事もないからな」
「…………」
「顔は好みだがな」
そう言って、私の顎に触れる。
…………やだ、気持ち悪い。
「…………着いたな」
馬車が止まった。
「下りるぞ」
短剣をしまい、馬車から下りる。
取り敢えず私もそれに続く。
「来い」
「どこに行くの」
「船に乗る。……お前は俺の妻のフリをすれば良い」
「妻の…フリ?」
「その方がバレにくいからな」
恐らく、王家が調べに来ても妻帯者として記録が残ればこの人だとわかりにくくなる。
この男が何歳かはわからないがどうやら婚約者がいないようであった。………いや、恐らくいたのだろうが、今回の殿下の婚約者探しで各公爵家の令嬢が集められた時に破棄されたのだろう。
「私は貴方に付いていくだなんて言ってないわ」
妻のフリ、だなんて絶対に嫌だ。私は────。
「……何だと」
「行くなら一人で行けと言いたいところだけど、貴方はまず王家から処罰を受けなければいけない」
「お前……使用人の分際で…!」
「使用人ではないのだけど」
「……な、何?」
相手にとっては衝撃的すぎる発言だったようで、さすがに驚いていた。
「私の名前はアイシア・オルティアナ。この国の第一王子、ルディエル・グリティス様の婚約者よ」
「なっ…………」
目の前にいる憐れな人は絶句している。
こんな所にまで連れてきたり、使用人扱いしたり…文句は色々とあるが一つだけお礼を言いたい。
「そんな……、馬鹿なっ」
この人の態度でやっとわかった。
そんなつもりは無かったが、気付けば比べてしまっていた。
こんな奴とは全然違う。赤月の方が何倍も魅力のある素敵な人だ。…………私はこんな人より赤月と共にいたい。
やっと気づいた。
私は………赤月が好きだ。
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