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29話 この世界について少しだけ教えてもらいました
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「お金を稼ぐ方法が知りたーーーーいっ!!」
そう叫んだ昼下がり。
というのも、先日クロとロウキが言っていた“ルビートマト”の種を買いに行きたいのだけど、
それには当然、お金が必要だ。
この世界のお金を持っていない俺は、どうやって稼げばいいのかを考えていた。
そもそも通貨についても何も知らない。
そんなふうに悩んでいると、いつものようにエマが教えてくれた。
【この世界では、コインのようなものがお金と呼ばれる存在です。
銅貨、銅銀貨、銀貨、金貨、白金貨の5種類があります。これはあくまでも前世での読み方です。
この世界では、銅貨を“コパ”、銅銀貨を“コセル”、銀貨を“セル”、金貨を“ゴルド”、白金貨を“プラ”と言います。
前世での単位で言うと、1コパ=100円、1コセル=1,000円、1セル=10,000円、1ゴルド=100,000円、1プラ=1,000,000円です。】
「へぇ。やっぱ異世界だねぇ。でも単位は分かりやすくていいね。
本物のお金を見たら、改めてちゃんと勉強しよっかな。」
お金について教えてもらった俺は、分かりやすい単位でひとまず安心した。
だけどそのお金が、ないのよ。
それをどうするかが問題なのよね。
なんて考えていると、俺は自分が今どこに住んでいるのかも知らないことに、今さら気づいた。
そこで、畑の範囲を広げるために森の開拓を手伝ってくれていたロウキに訊いてみることにした。
「ロウキー?」
「なんだ?」
「この地域のことについて教えてよ。物知りなんだろう?」
「そんなもの、エマとやらに訊けばいいだろう。」
「エマはさっき通貨について教えてくれたから。次はロウキの番だろ?
だいたいエマは一方通行だから。」
「なんと面倒な…」
「自分が物知りだって言ったんだろー?教えてー!」
「仕方のない奴め。」
ロウキに教えてくれと頼むと、樹木を切る手を止めて、面倒くさそうな顔でこちらにやってきた。
「物知りなんだから教えて」と言うと、はぁ…とため息を吐いて、ドスンッと座り込んだ。
そして、この土地についていろいろと教えてくれた。
「いいか?この国は“ソウリアス王国”と言って、割と大きめの王国だ。
港が近い場所に王都があって、貿易もそれなりに盛んなようだな。
王都には王族や貴族、平民と呼ばれる存在のほかに、獣人などの他種族も普通に暮らしている。
もちろん、たくさんの店や各ギルドが存在していて、やかましいほど賑やかなところだ。
その王都の周りには、小さな村や小規模な街が数多くあり、山岳地帯や鉱山なんかもある。
森の途中にはダンジョンもあって、冒険者が毎日のように行き来しているな。
ただし、今我々がいるこの領地への立ち入りは禁止されている。
現在は王国管理の土地として、封印されているようなものだ。」
「あ、この土地、もう俺の名義に変更されたんだって。
女神アイリスが王族の中にいる転生者に神託を下して、俺の領地として登録されたらしいよ。」
「はぁ?ヨシヒロ、お前…女神に何をさせているんだ…?」
「俺がお願いしたわけじゃなくて、女神アイリスが勝手にそうしたって言ってたんだよ。」
「はーん…この土地を任せようと思える男だったということなんだろう。
ヨシヒロ、お前は責任重大だなぁ?できるのか?」
「そんな目で俺を見るんじゃない!俺は自由に、やりたいように、好きに生きるんだからな!」
「どうだかなぁ?自由に生きられたらいいな?」
「何その言い方!何か企んでるのか?!」
「我は別にー?何にもー?さて、大木を片付けよう。お前もサボるなよ。」
「はぁ…」
この王国の名前、初めて聞いたな。
割と大きな国だと知らされて、その中に東京ドーム11個分の俺の領地があるのかと思うと、なんだか恐ろしい。
領地の名義がすでに俺になっていると言うと、ロウキは何とも言えない表情で俺を見ていた。
そして、女神に任されているということは責任重大だな、と憐れむような目で笑って、伐採作業に戻っていった。
俺はこの世界でのんびりゆっくりスローライフを生きるんだ!
そう心の中で呟きながら農地開拓に戻った。
◇
「主ー!さっきユキと一緒に湖に行ったら、俺の好きな果実がなってたから取ってきた!」
「お!それがクロの好きな果実かぁ!なんて名前?」
「知らない!美味しい果実!」
作業を続けていた時、クロとユキが満面の笑みでこちらに向かってくるのが見えた。
手には何か小さなものを持っていて、「なんだ?」と思っていると、
クロが「好きな果実だ」と言って、嬉しそうに俺に手渡してくれた。
それはとても小粒で、太陽にかざすと少し透けて見える。
果実の中心には、淡く灯る光が宿っているようにも見えた。
これ、夜でも光ってそうだな。
そう思いながら果実の名前を訊ねると、クロは首を横に振って「知らない」と答えた。
こういうときに“鑑定”とかできれば便利だよな。
なんて思いながら、冗談半分で口にしてみた。
「これって鑑定とかできないのかしらねー。
鑑定!なんちゃって。」
ヴインッ―
「わっ!なんか出た!
えーと…何だって?“ルミグミ”って言うらしいぞ。
水分が多くて、口の中で優しい甘さが広がって食べやすいらしい。
なんか、乱れた感情を一時的に和らげる効果もあるんだって。
安定剤ってことか?
聖水で育てられたルミナスツリーから採れるって。
あの樹木、ルミナスツリーって言うのか。
希少性が高くて、王都では高値で取引されるらしいけど、
過剰摂取すると、副作用で体中から光が放射されて目立つ…だって!
ウケるんだけど!体が光るって笑う!」
冗談半分で「鑑定」と言ってみたら、まさかの本当に四角いパソコン画面のようなものが現れて驚いた。
それは最初にステータスを見た時と同じで、やればできる子じゃんと我ながら感心してしまった。
果実の説明を読んでいると、まさかの副作用の項目で思わず吹き出した。
もしかして、今までもクロは食べ過ぎて度々光ってたんじゃ?
そう思うと、ちょっと可愛くて笑えてくる。
そんな俺の横で、ロウキはなぜかまたため息を吐いていた。
「我と従魔契約したせいか…?我の鑑定スキルが身についたようだな。誤算だった。
鑑定スキルは誰でも使えるものではない。人前で使わぬように。」
「あ、そういうこと?漫画でも鑑定スキルってレアだったりするもんな。
人がいるところでは使わないように気をつけるわ!」
俺はたまたま鑑定できただけだと思っていたけど、どうやらそれは違ったらしい。
ロウキと従魔契約を結んだことで、ロウキが持っていたスキルを使えるようになったらしい。
とても便利だけど、人前では使わないようにと言われたことで、慎重さが必要だと感じた。
悪用されたりしたら、俺のスローライフが台無しだもんな。
そう考えながら、手にしていたルミグミをクロに食べさせてみた。
「うまーーーいっ!ユキにも食べさせよっと!ユキ、行こーぜ!
主とロウキの分も取ってくるなー!」
「ワウッ!」
一口でパクリと食べたクロは、何とも幸せそうな表情で、こちらもつられて頬が緩んだ。
そして「俺たちの分も取ってくる」と言い残し、ユキと二人で湖へと出かけていった。
子供は元気だねぇ。
そう思いながら、俺とロウキは畑の開拓作業に戻っていった―・・・
そう叫んだ昼下がり。
というのも、先日クロとロウキが言っていた“ルビートマト”の種を買いに行きたいのだけど、
それには当然、お金が必要だ。
この世界のお金を持っていない俺は、どうやって稼げばいいのかを考えていた。
そもそも通貨についても何も知らない。
そんなふうに悩んでいると、いつものようにエマが教えてくれた。
【この世界では、コインのようなものがお金と呼ばれる存在です。
銅貨、銅銀貨、銀貨、金貨、白金貨の5種類があります。これはあくまでも前世での読み方です。
この世界では、銅貨を“コパ”、銅銀貨を“コセル”、銀貨を“セル”、金貨を“ゴルド”、白金貨を“プラ”と言います。
前世での単位で言うと、1コパ=100円、1コセル=1,000円、1セル=10,000円、1ゴルド=100,000円、1プラ=1,000,000円です。】
「へぇ。やっぱ異世界だねぇ。でも単位は分かりやすくていいね。
本物のお金を見たら、改めてちゃんと勉強しよっかな。」
お金について教えてもらった俺は、分かりやすい単位でひとまず安心した。
だけどそのお金が、ないのよ。
それをどうするかが問題なのよね。
なんて考えていると、俺は自分が今どこに住んでいるのかも知らないことに、今さら気づいた。
そこで、畑の範囲を広げるために森の開拓を手伝ってくれていたロウキに訊いてみることにした。
「ロウキー?」
「なんだ?」
「この地域のことについて教えてよ。物知りなんだろう?」
「そんなもの、エマとやらに訊けばいいだろう。」
「エマはさっき通貨について教えてくれたから。次はロウキの番だろ?
だいたいエマは一方通行だから。」
「なんと面倒な…」
「自分が物知りだって言ったんだろー?教えてー!」
「仕方のない奴め。」
ロウキに教えてくれと頼むと、樹木を切る手を止めて、面倒くさそうな顔でこちらにやってきた。
「物知りなんだから教えて」と言うと、はぁ…とため息を吐いて、ドスンッと座り込んだ。
そして、この土地についていろいろと教えてくれた。
「いいか?この国は“ソウリアス王国”と言って、割と大きめの王国だ。
港が近い場所に王都があって、貿易もそれなりに盛んなようだな。
王都には王族や貴族、平民と呼ばれる存在のほかに、獣人などの他種族も普通に暮らしている。
もちろん、たくさんの店や各ギルドが存在していて、やかましいほど賑やかなところだ。
その王都の周りには、小さな村や小規模な街が数多くあり、山岳地帯や鉱山なんかもある。
森の途中にはダンジョンもあって、冒険者が毎日のように行き来しているな。
ただし、今我々がいるこの領地への立ち入りは禁止されている。
現在は王国管理の土地として、封印されているようなものだ。」
「あ、この土地、もう俺の名義に変更されたんだって。
女神アイリスが王族の中にいる転生者に神託を下して、俺の領地として登録されたらしいよ。」
「はぁ?ヨシヒロ、お前…女神に何をさせているんだ…?」
「俺がお願いしたわけじゃなくて、女神アイリスが勝手にそうしたって言ってたんだよ。」
「はーん…この土地を任せようと思える男だったということなんだろう。
ヨシヒロ、お前は責任重大だなぁ?できるのか?」
「そんな目で俺を見るんじゃない!俺は自由に、やりたいように、好きに生きるんだからな!」
「どうだかなぁ?自由に生きられたらいいな?」
「何その言い方!何か企んでるのか?!」
「我は別にー?何にもー?さて、大木を片付けよう。お前もサボるなよ。」
「はぁ…」
この王国の名前、初めて聞いたな。
割と大きな国だと知らされて、その中に東京ドーム11個分の俺の領地があるのかと思うと、なんだか恐ろしい。
領地の名義がすでに俺になっていると言うと、ロウキは何とも言えない表情で俺を見ていた。
そして、女神に任されているということは責任重大だな、と憐れむような目で笑って、伐採作業に戻っていった。
俺はこの世界でのんびりゆっくりスローライフを生きるんだ!
そう心の中で呟きながら農地開拓に戻った。
◇
「主ー!さっきユキと一緒に湖に行ったら、俺の好きな果実がなってたから取ってきた!」
「お!それがクロの好きな果実かぁ!なんて名前?」
「知らない!美味しい果実!」
作業を続けていた時、クロとユキが満面の笑みでこちらに向かってくるのが見えた。
手には何か小さなものを持っていて、「なんだ?」と思っていると、
クロが「好きな果実だ」と言って、嬉しそうに俺に手渡してくれた。
それはとても小粒で、太陽にかざすと少し透けて見える。
果実の中心には、淡く灯る光が宿っているようにも見えた。
これ、夜でも光ってそうだな。
そう思いながら果実の名前を訊ねると、クロは首を横に振って「知らない」と答えた。
こういうときに“鑑定”とかできれば便利だよな。
なんて思いながら、冗談半分で口にしてみた。
「これって鑑定とかできないのかしらねー。
鑑定!なんちゃって。」
ヴインッ―
「わっ!なんか出た!
えーと…何だって?“ルミグミ”って言うらしいぞ。
水分が多くて、口の中で優しい甘さが広がって食べやすいらしい。
なんか、乱れた感情を一時的に和らげる効果もあるんだって。
安定剤ってことか?
聖水で育てられたルミナスツリーから採れるって。
あの樹木、ルミナスツリーって言うのか。
希少性が高くて、王都では高値で取引されるらしいけど、
過剰摂取すると、副作用で体中から光が放射されて目立つ…だって!
ウケるんだけど!体が光るって笑う!」
冗談半分で「鑑定」と言ってみたら、まさかの本当に四角いパソコン画面のようなものが現れて驚いた。
それは最初にステータスを見た時と同じで、やればできる子じゃんと我ながら感心してしまった。
果実の説明を読んでいると、まさかの副作用の項目で思わず吹き出した。
もしかして、今までもクロは食べ過ぎて度々光ってたんじゃ?
そう思うと、ちょっと可愛くて笑えてくる。
そんな俺の横で、ロウキはなぜかまたため息を吐いていた。
「我と従魔契約したせいか…?我の鑑定スキルが身についたようだな。誤算だった。
鑑定スキルは誰でも使えるものではない。人前で使わぬように。」
「あ、そういうこと?漫画でも鑑定スキルってレアだったりするもんな。
人がいるところでは使わないように気をつけるわ!」
俺はたまたま鑑定できただけだと思っていたけど、どうやらそれは違ったらしい。
ロウキと従魔契約を結んだことで、ロウキが持っていたスキルを使えるようになったらしい。
とても便利だけど、人前では使わないようにと言われたことで、慎重さが必要だと感じた。
悪用されたりしたら、俺のスローライフが台無しだもんな。
そう考えながら、手にしていたルミグミをクロに食べさせてみた。
「うまーーーいっ!ユキにも食べさせよっと!ユキ、行こーぜ!
主とロウキの分も取ってくるなー!」
「ワウッ!」
一口でパクリと食べたクロは、何とも幸せそうな表情で、こちらもつられて頬が緩んだ。
そして「俺たちの分も取ってくる」と言い残し、ユキと二人で湖へと出かけていった。
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