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30話 領地の探検に出かけよう思ったら、初めての来客がありました
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「きゅうりだろ?キャベツだろ?人参だろ?ピーマン!じゃがいも!玉ねぎ!」
「だいぶ野菜ができたな。」
「主ー!早くルビートマトも欲しいな!」
「ワオウッ!」
畑を耕し、種を植えてから早数日。
見事に野菜が育ち、とても美味しそうに輝いていた。
最初に収穫したものはすでにサラダとして食卓に並んでいたけれど、
この王道野菜たちが採れたことで、料理の幅もぐっと広がりそうだ。
そして、それを見たクロはますますルビートマトが食べたくなったようだった。
それには街へ出て、種を買いに行かなきゃいけない。
しかし、俺たちにはお金がない。
「お金をどうにかして稼がなきゃだな。」
「手っ取り早く、ルミグミを売るか?」
「確かに高額って書いてあったけどさー。
聖水がある場所でしか育たないってことはだよ?
この場所で採取したってバレるかもしれないじゃん?
そうなると、俺がここに住んでる、もしくは不法侵入者だと思われるわけよ。」
「あぁ…どちらにしても面倒なことになりそうだな。」
「そうでしょう?だからルミグミは売れないのさ。
それに、クロの好物をお金にするのもね。」
お金を稼ぐ方法の一つとして、ロウキは湖で採れるルミグミを売る案を出してくれた。
確かに、あれを売ればすぐにまとまった金額が手に入るだろう。
でもどう考えても、面倒なことに巻き込まれそうな匂いしかしない。
それに、クロの好物を売りに出すというのも気が進まなかった。
そのことを伝えると、ロウキはギュッと目を細めて俺を見てきた。
あ、今絶対「面倒な奴だな」って思ったろ。
なんて思いながら、別の方法を考えていた時だった。
「じゃあどうするのだ?魔物でも狩って売りに行くか?」
「あ、そういうのアリ?」
「ああ。ただし、その前にギルドに加入しなければならないがな。
無所属でも売ることはできるが、信用性なしと判断されて安値でしか売れぬ。」
「そうなのかぁ。ギルドっていいなぁ。異世界だわぁ。
って、冒険者ギルドでいいのかな?」
「そうだな。依頼を受けて金も稼げる。冒険者ギルドが妥当だろう。
クロの使い魔、そして我とユキの従魔登録もしておくといい。
そうしなければお前、変に疑いをかけられるぞ。
我は希少な生き物。それにクロなんて悪魔だからな。
一緒にいるだけで、皆気絶してしまうぞ。」
「えー?このカッコよさと可愛さと愛おしさが分からないなんて、逆に罪じゃない?」
「…そう感じるのは、お前ぐらいだろ…。
普通、森で我を見た者は怯え、逃げ出すか腰が抜けて動けなくなるものだ。
それに悪魔を使い魔として従えるなど…今の時代、あまり聞かぬわ。」
「そう?」
どうしたもんかと思っていると、ロウキは魔物を狩って売ればお金になると提案してくれた。
魔物狩りができるかどうかはさておき、ギルドに所属しないと二束三文らしい。
まぁ、確かにそれはそうだ。
得体の知れない人に物を売ったり、その人から買ったりなんて、怖くてできないよな。
それに、従魔と使い魔の登録ができるのもありがたい。
登録しておけば、もう手出しされなくなるだろうし、安心材料が一つでも増えるのは嬉しい。
そんなことを考えていた時、ふと疑問が浮かんで訊いてみた。
「ていうかさ、そもそも使い魔と従魔って何が違うの?」
「主、そんなことも知らないのかよー!」
「俺は日本人なのでー。従魔とか使い魔とか、そんな素晴らしい制度はないんですよ、クロちゃん。」
「あ、そっか!なんか日本って可哀想だな!
あのなー、俺たち使い魔は主の身の回りのサポート役だよ。
前の主の時は魔法研究の手伝いをしたり、欲しい情報を集めたりしてた!」
「我のような従魔は、主の戦闘要員だな。
調教して従わせる者もいれば、魔獣との相性がもともと良くて、
主人のために自ら先頭に立つ者もいる。
我の場合はまぁ、気が向いたら助けてやる。」
今まで特に気にしていなかった使い魔と従魔の違い。
どちらも主のサポート役だと思っていたけど、ちゃんとそれぞれに役割があるんだなと感心した。
クロが一生懸命、研究の手伝いをしている姿を思い浮かべるだけで癒されるし、
従魔が一緒に戦ってくれる仲間というのも、なんだか元気が出る。
だけど、ロウキは「気が向いたら助けてやる」と言って、鼻息をフンッと俺に吹きかけてきた。
このワンちゃんさ、高貴なのか何なのか分かんなくなる。
でもまあ、そんなことを言いながらも、ちゃんと助けてくれそうな気がする。
だけど、ユキにはまだ早いから、絶対にそういう場所には連れて行かないようにしなきゃな。
そう思いながら、フリフリと尻尾を揺らして笑うユキの頭をそっと撫でた。
「じゃあ、今日はとりあえず城から離れて探検してみるか!」
「いいね!行く!」
「魔物に出くわすだろうからな。一度狩ってみればよい。」
「え?!いきなり戦闘なの?!俺、そういうのやったことないんだけど!」
「実践なくして、どうやって学ぶのだバカめ。」
「鬼教官タイプなのね、ロウキは…」
いまだに城付近しか行ったことがなかったこともあり、探検してみるのも悪くないかなと思った。
皆にそう言うと、楽しそうに尻尾を振っていたから、きっとみんなもどこかへ出かけたかったんだろうな。
そう思いながら、出かける支度をするために一度城の中へ戻った。
持っていくものは、アイテムボックスの鞄と、作り置きしていたサンドイッチ。
パンの生成はまだできないけど、アイテムボックスに食パンがたくさんストックされているから助かってる。
前に食べた時は野菜がなかったから、お肉サンドだったな…。
なんて思い出しながら、いろいろと支度を整えつつ、初めての探検にちょっとワクワクしていた。
◇
出かける支度を始めて数分後。
先ほどまで穏やかな空気が流れていたのに、突如ロウキたちとは違う気配を感じて、慌てて城の外へ出た。
城の扉を開けると、そこにはものすごい殺気を放つロウキの姿があった。
なぜだ?俺の気配感知では、ロウキが殺気を向ける相手は感じなかったはず。
そう思い駆け寄ってみると、そこにはいかにも貴族か王族かという身なりをしたイケオジと、
その護衛らしき騎士が一人。騎士はイケオジの前に立ち、ロウキに剣を向けていた。
「やめろ!何やってるんだ!あんたら誰だよ?!
ロウキ!お前も殺気立つのはやめろ!落ち着けって!」
「ガルルルルルルルッ…」
「どちら様でしょうか?よくこの場所にたどり着けましたね?」
ロウキの前に飛び出し、剣を向ける騎士をキッと睨みつけた。
…まあ、まったく効果はなさそうだったけど。
なんとかロウキを落ち着かせようとしていると、
騎士の後ろにいたイケオジが「剣を下ろせ」と騎士に命じ、後ろに下げた。
このイケオジは一体誰なんだ?そう思っていると、俺より先に彼の方が口を開いた。
「女神アイリスの神託により参った。そなたがヨシヒロか?」
「えっ…ん?なぜ俺の名を?それにアイリスの神託って…」
【女神アイリスは王族に転生者がいると言っていました。この方がそうです。】
「ああ…!あなた、てんせっ…なんですか?」
「ああ、その通りだ。この護衛の騎士は私の素性を知っている。隠さずともよい。」
「あ、そうですか…。では、あなたがこの王国の王族の転生者の方でしたか。
そうとは知らず、従魔が威嚇してしまって申し訳ありませんでした。」
イケオジは突然俺の名を呼び、「女神アイリスの神託により参った」と決め顔で言った。
頭に「?」が浮かんでいた俺に、ナイスタイミングでエマがアイリスが以前伝えていたことを教えてくれた。
そのおかげで、女神アイリスからの手紙を思い出した俺は、
彼に向かって思わず「転生者」と言いそうになりながら、濁して伝えた。
すると、一緒に来ていた騎士は「自分が転生者だと知っているから大丈夫だ」と言い、優しく笑った。
そういえば、いつか「転生者の王族が来るかもしれない」って言ってたな。
それがこの人ってことか…。
ということは、この人は別に俺をどうこうしようってわけじゃないのか?
じゃあ、なんでロウキがあんなに殺気立って、今にも噛み殺しそうになってたんだ?
ロウキにとってこの人たちは嫌な存在ってことか?
なんて思いながらしばらく様子をうかがっていた。
「だいぶ野菜ができたな。」
「主ー!早くルビートマトも欲しいな!」
「ワオウッ!」
畑を耕し、種を植えてから早数日。
見事に野菜が育ち、とても美味しそうに輝いていた。
最初に収穫したものはすでにサラダとして食卓に並んでいたけれど、
この王道野菜たちが採れたことで、料理の幅もぐっと広がりそうだ。
そして、それを見たクロはますますルビートマトが食べたくなったようだった。
それには街へ出て、種を買いに行かなきゃいけない。
しかし、俺たちにはお金がない。
「お金をどうにかして稼がなきゃだな。」
「手っ取り早く、ルミグミを売るか?」
「確かに高額って書いてあったけどさー。
聖水がある場所でしか育たないってことはだよ?
この場所で採取したってバレるかもしれないじゃん?
そうなると、俺がここに住んでる、もしくは不法侵入者だと思われるわけよ。」
「あぁ…どちらにしても面倒なことになりそうだな。」
「そうでしょう?だからルミグミは売れないのさ。
それに、クロの好物をお金にするのもね。」
お金を稼ぐ方法の一つとして、ロウキは湖で採れるルミグミを売る案を出してくれた。
確かに、あれを売ればすぐにまとまった金額が手に入るだろう。
でもどう考えても、面倒なことに巻き込まれそうな匂いしかしない。
それに、クロの好物を売りに出すというのも気が進まなかった。
そのことを伝えると、ロウキはギュッと目を細めて俺を見てきた。
あ、今絶対「面倒な奴だな」って思ったろ。
なんて思いながら、別の方法を考えていた時だった。
「じゃあどうするのだ?魔物でも狩って売りに行くか?」
「あ、そういうのアリ?」
「ああ。ただし、その前にギルドに加入しなければならないがな。
無所属でも売ることはできるが、信用性なしと判断されて安値でしか売れぬ。」
「そうなのかぁ。ギルドっていいなぁ。異世界だわぁ。
って、冒険者ギルドでいいのかな?」
「そうだな。依頼を受けて金も稼げる。冒険者ギルドが妥当だろう。
クロの使い魔、そして我とユキの従魔登録もしておくといい。
そうしなければお前、変に疑いをかけられるぞ。
我は希少な生き物。それにクロなんて悪魔だからな。
一緒にいるだけで、皆気絶してしまうぞ。」
「えー?このカッコよさと可愛さと愛おしさが分からないなんて、逆に罪じゃない?」
「…そう感じるのは、お前ぐらいだろ…。
普通、森で我を見た者は怯え、逃げ出すか腰が抜けて動けなくなるものだ。
それに悪魔を使い魔として従えるなど…今の時代、あまり聞かぬわ。」
「そう?」
どうしたもんかと思っていると、ロウキは魔物を狩って売ればお金になると提案してくれた。
魔物狩りができるかどうかはさておき、ギルドに所属しないと二束三文らしい。
まぁ、確かにそれはそうだ。
得体の知れない人に物を売ったり、その人から買ったりなんて、怖くてできないよな。
それに、従魔と使い魔の登録ができるのもありがたい。
登録しておけば、もう手出しされなくなるだろうし、安心材料が一つでも増えるのは嬉しい。
そんなことを考えていた時、ふと疑問が浮かんで訊いてみた。
「ていうかさ、そもそも使い魔と従魔って何が違うの?」
「主、そんなことも知らないのかよー!」
「俺は日本人なのでー。従魔とか使い魔とか、そんな素晴らしい制度はないんですよ、クロちゃん。」
「あ、そっか!なんか日本って可哀想だな!
あのなー、俺たち使い魔は主の身の回りのサポート役だよ。
前の主の時は魔法研究の手伝いをしたり、欲しい情報を集めたりしてた!」
「我のような従魔は、主の戦闘要員だな。
調教して従わせる者もいれば、魔獣との相性がもともと良くて、
主人のために自ら先頭に立つ者もいる。
我の場合はまぁ、気が向いたら助けてやる。」
今まで特に気にしていなかった使い魔と従魔の違い。
どちらも主のサポート役だと思っていたけど、ちゃんとそれぞれに役割があるんだなと感心した。
クロが一生懸命、研究の手伝いをしている姿を思い浮かべるだけで癒されるし、
従魔が一緒に戦ってくれる仲間というのも、なんだか元気が出る。
だけど、ロウキは「気が向いたら助けてやる」と言って、鼻息をフンッと俺に吹きかけてきた。
このワンちゃんさ、高貴なのか何なのか分かんなくなる。
でもまあ、そんなことを言いながらも、ちゃんと助けてくれそうな気がする。
だけど、ユキにはまだ早いから、絶対にそういう場所には連れて行かないようにしなきゃな。
そう思いながら、フリフリと尻尾を揺らして笑うユキの頭をそっと撫でた。
「じゃあ、今日はとりあえず城から離れて探検してみるか!」
「いいね!行く!」
「魔物に出くわすだろうからな。一度狩ってみればよい。」
「え?!いきなり戦闘なの?!俺、そういうのやったことないんだけど!」
「実践なくして、どうやって学ぶのだバカめ。」
「鬼教官タイプなのね、ロウキは…」
いまだに城付近しか行ったことがなかったこともあり、探検してみるのも悪くないかなと思った。
皆にそう言うと、楽しそうに尻尾を振っていたから、きっとみんなもどこかへ出かけたかったんだろうな。
そう思いながら、出かける支度をするために一度城の中へ戻った。
持っていくものは、アイテムボックスの鞄と、作り置きしていたサンドイッチ。
パンの生成はまだできないけど、アイテムボックスに食パンがたくさんストックされているから助かってる。
前に食べた時は野菜がなかったから、お肉サンドだったな…。
なんて思い出しながら、いろいろと支度を整えつつ、初めての探検にちょっとワクワクしていた。
◇
出かける支度を始めて数分後。
先ほどまで穏やかな空気が流れていたのに、突如ロウキたちとは違う気配を感じて、慌てて城の外へ出た。
城の扉を開けると、そこにはものすごい殺気を放つロウキの姿があった。
なぜだ?俺の気配感知では、ロウキが殺気を向ける相手は感じなかったはず。
そう思い駆け寄ってみると、そこにはいかにも貴族か王族かという身なりをしたイケオジと、
その護衛らしき騎士が一人。騎士はイケオジの前に立ち、ロウキに剣を向けていた。
「やめろ!何やってるんだ!あんたら誰だよ?!
ロウキ!お前も殺気立つのはやめろ!落ち着けって!」
「ガルルルルルルルッ…」
「どちら様でしょうか?よくこの場所にたどり着けましたね?」
ロウキの前に飛び出し、剣を向ける騎士をキッと睨みつけた。
…まあ、まったく効果はなさそうだったけど。
なんとかロウキを落ち着かせようとしていると、
騎士の後ろにいたイケオジが「剣を下ろせ」と騎士に命じ、後ろに下げた。
このイケオジは一体誰なんだ?そう思っていると、俺より先に彼の方が口を開いた。
「女神アイリスの神託により参った。そなたがヨシヒロか?」
「えっ…ん?なぜ俺の名を?それにアイリスの神託って…」
【女神アイリスは王族に転生者がいると言っていました。この方がそうです。】
「ああ…!あなた、てんせっ…なんですか?」
「ああ、その通りだ。この護衛の騎士は私の素性を知っている。隠さずともよい。」
「あ、そうですか…。では、あなたがこの王国の王族の転生者の方でしたか。
そうとは知らず、従魔が威嚇してしまって申し訳ありませんでした。」
イケオジは突然俺の名を呼び、「女神アイリスの神託により参った」と決め顔で言った。
頭に「?」が浮かんでいた俺に、ナイスタイミングでエマがアイリスが以前伝えていたことを教えてくれた。
そのおかげで、女神アイリスからの手紙を思い出した俺は、
彼に向かって思わず「転生者」と言いそうになりながら、濁して伝えた。
すると、一緒に来ていた騎士は「自分が転生者だと知っているから大丈夫だ」と言い、優しく笑った。
そういえば、いつか「転生者の王族が来るかもしれない」って言ってたな。
それがこの人ってことか…。
ということは、この人は別に俺をどうこうしようってわけじゃないのか?
じゃあ、なんでロウキがあんなに殺気立って、今にも噛み殺しそうになってたんだ?
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【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
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