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35話 王都までは2日かかるので、とりあえず昼食を食べましょう
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「王都までこの道でいいのか?」
「ああ。我に付いてくれば明日には到着する。
森を抜けたら街道に出るから歩きやすくもなるだろう。」
アーロンさんと出会った翌日の朝、俺たち早速王都に向けて出発した。
ここから王都までは歩いて2日、距離にして50kmから60kmくらいと聞いた。
今まで生きてきた中で移動と言えば車、電車、バス、飛行機をフル活用していた俺に、
果たしてそんな距離を歩いて行けるのか不安でしかなかった。
「お前は足腰弱そうだからな。ちゃんとついて来いよ。」
「酷いこと言うねーロウキは!」
「楽しみだなー!ユキも楽しみだって!」
「クロちゃんはいいねぇ。お空が飛べて!」
「悪魔だからなぁ~!」
森を出発して数分後、ロウキには足腰が弱いと馬鹿にされて鼻で笑われた。
まぁ、否定はしない。前世の俺なら確実に行くのを諦める案件だからな。
そんな中、クロは翼をパタパタと羽ばたかせて楽しそうに飛んでいた。
ユキも尻尾をゆらゆらと揺らしながら俺の横を歩いていて、何とも可愛らしい。
「今日中に森を抜けて街道に出たらその辺で寝泊まりする。」
「野宿ってどこでやっても大丈夫なのか?」
「街道に出ても小さな森は存在するし、人通りも少ないから野営は可能だ。
ただ食事の匂いや煙で魔物や変な輩が来る可能性もあるから注意が必要だがな。」
「やっぱりそうだよなー…。ちゃんと護衛してくれよ?」
「何故だ?戦えばよいだろう。我も一緒にやってやるから。」
「何でそうなんのよー。なるべく平和に生きたいじゃない。」
「魔物を狩ってアイテムボックスに入れておけばギルド登録したらすぐに金にできるぞ。」
「あー…それはまぁ、そうなんだけどさー…」
歩きながら話していた時、ふいに話題に上がった野営のこと。
漫画の世界では何度も見ていたことだけど、いざ自分が経験するとなると結構不安になる。
だからなるべく平和に生きたいと言ったのに、ロウキは魔物を狩っておけば、
ギルド登録が終わればすぐにお金にできると現実思考。
しかもだよ?魔物が出たら戦えばいいだろうっておかしいと思うんだ。
それってやったことある人に対して言う言葉じゃないの?
本当にロウキは鬼教官!
なんて思いながら、辺りを見回しながら歩いていた。
行けども行けども森の中。
だけど、湖の浄化が終わったこともあり、空気は澄んでいて、
呼吸がしやすくて気持ちがいい。
まさに、自然の癒しって感じだ。
今のところ、運よく魔物には出くわしていないし、
このまま夜まで何事もなく、森を抜けられたらいいな。
そう思いながら、俺は静かに歩き続けた―…。
◇
「主、お腹空いたー!」
「そうだな、クロ。もう太陽が真上ってことはお昼だ!ご飯にしようか!」
休憩を挟みながら歩き続けて、早数時間。
クロがお腹が空いたと言うので空を見上げたら、太陽が真上に昇っていて、
ようやく昼だと気づいた。
「ご飯を食べるなら、ちょっとテーブル欲しいな。
えーっと、イメージイメージ…クレオ!」
「あ!テーブル!」
「そうだよー。テーブルがあった方が食べやすいからなぁ。
じゃあ、ご飯出すから待っててねー。」
辺りを見回すと、椅子にちょうどよさそうな大木が横たわっていたので、
そこで食べることにした。
俺は簡易テーブルをイメージして生成した。
…魔法の無駄遣いって、こういうことだろうな。
「さてと。朝のうちに作っておいたオークのお肉と野菜の串焼き、
それと俺が生成した調味料で作ったスープ!これを温めまーす!」
アイテムボックス鞄から取り出したのは、
早起きして支度した串焼きと、スープの入ったお鍋。
アイテムボックスならこぼれたりしないと教えてもらったから、
一度こうして持ち出してみたかったんだよね。
そして、そこから取り出した調理器具が2つ。
ガスコンロのようなアイテムが2台と、串焼き用の網が1つ。
これは俺が前世の記憶をイメージして生成したアイテムで、今日のために頑張った。
…あ、まあ頑張ったのは魔法自身の想像力と生成力だけどな。
なんて心の中でツッコミながら、俺はクロを呼び寄せた。
「クロちゃーん!尻尾の炎をこのアイテムに近づけておくれ!」
「え?こうか?」
ボオオオオオッ!
「火がついた!俺、魔法使ってないのに!」
「エッヘン!これは魔力のこもった火を近づけると着火する仕組みなのだ!
クロの尻尾の炎は人間に害はないし、燃え移ったりしないけど、
魔力が流れてるからちゃんと火がつくのだよ。」
「すげぇ!俺、役に立った?」
「もちろん!じゃあ、今から肉焼いていくな!もう少し待ってね。」
クロを呼んで尻尾の炎でアイテムに火をつけると、クロは大喜び。
その姿はまるで子供のようで、可愛すぎた。
そんなクロの横で、ロウキは目をギュッと細めて、フウッとため息を吐いていた。
相変わらず、呆れるの好きね。
なんて思いながら、とにかく俺は串を焼き続けた。
なんせ大食いばかりがいるから、結構な量の串を作ったのよ。
「スープはもう温まったから飲んでいいよ。
で、串は焼けたやつからどんどん食べて…って、よく考えたら、
ロウキとユキは手で串を持てなかったな。ごめん!すぐにバラして出すからなー!」
「そういうとこだぞ。」
「うるさいなー!作ってる時に言えよ!串はダメだって!」
「お前が楽しそうに作ってるのに、止められるか。」
「うっ……」
串が焼けたところで手渡そうとしたら、クロ以外は手で串を持てないことが発覚した。
こんなことなら、最初から肉と野菜を混ぜておけばよかった!二度手間!
慌てて串から肉と野菜を外す横で、クロは器用に串を持って頬張っていた。
いつも本当に美味しそうに食べるから、作り甲斐があるなーって思う。
前世では料理なんてほとんどしてこなかったけど、
自分が作った料理を喜んで食べてもらえるって、こんなに嬉しいことなんだと、
皆に作るようになってから初めて知った。
異世界で、こんな感情に出会うなんてなぁ。
こんなふうに、新しい感情を知るっていうのも、悪くない。
そう思いながら、初めての“外食”を楽しんでいた―…。
「ああ。我に付いてくれば明日には到着する。
森を抜けたら街道に出るから歩きやすくもなるだろう。」
アーロンさんと出会った翌日の朝、俺たち早速王都に向けて出発した。
ここから王都までは歩いて2日、距離にして50kmから60kmくらいと聞いた。
今まで生きてきた中で移動と言えば車、電車、バス、飛行機をフル活用していた俺に、
果たしてそんな距離を歩いて行けるのか不安でしかなかった。
「お前は足腰弱そうだからな。ちゃんとついて来いよ。」
「酷いこと言うねーロウキは!」
「楽しみだなー!ユキも楽しみだって!」
「クロちゃんはいいねぇ。お空が飛べて!」
「悪魔だからなぁ~!」
森を出発して数分後、ロウキには足腰が弱いと馬鹿にされて鼻で笑われた。
まぁ、否定はしない。前世の俺なら確実に行くのを諦める案件だからな。
そんな中、クロは翼をパタパタと羽ばたかせて楽しそうに飛んでいた。
ユキも尻尾をゆらゆらと揺らしながら俺の横を歩いていて、何とも可愛らしい。
「今日中に森を抜けて街道に出たらその辺で寝泊まりする。」
「野宿ってどこでやっても大丈夫なのか?」
「街道に出ても小さな森は存在するし、人通りも少ないから野営は可能だ。
ただ食事の匂いや煙で魔物や変な輩が来る可能性もあるから注意が必要だがな。」
「やっぱりそうだよなー…。ちゃんと護衛してくれよ?」
「何故だ?戦えばよいだろう。我も一緒にやってやるから。」
「何でそうなんのよー。なるべく平和に生きたいじゃない。」
「魔物を狩ってアイテムボックスに入れておけばギルド登録したらすぐに金にできるぞ。」
「あー…それはまぁ、そうなんだけどさー…」
歩きながら話していた時、ふいに話題に上がった野営のこと。
漫画の世界では何度も見ていたことだけど、いざ自分が経験するとなると結構不安になる。
だからなるべく平和に生きたいと言ったのに、ロウキは魔物を狩っておけば、
ギルド登録が終わればすぐにお金にできると現実思考。
しかもだよ?魔物が出たら戦えばいいだろうっておかしいと思うんだ。
それってやったことある人に対して言う言葉じゃないの?
本当にロウキは鬼教官!
なんて思いながら、辺りを見回しながら歩いていた。
行けども行けども森の中。
だけど、湖の浄化が終わったこともあり、空気は澄んでいて、
呼吸がしやすくて気持ちがいい。
まさに、自然の癒しって感じだ。
今のところ、運よく魔物には出くわしていないし、
このまま夜まで何事もなく、森を抜けられたらいいな。
そう思いながら、俺は静かに歩き続けた―…。
◇
「主、お腹空いたー!」
「そうだな、クロ。もう太陽が真上ってことはお昼だ!ご飯にしようか!」
休憩を挟みながら歩き続けて、早数時間。
クロがお腹が空いたと言うので空を見上げたら、太陽が真上に昇っていて、
ようやく昼だと気づいた。
「ご飯を食べるなら、ちょっとテーブル欲しいな。
えーっと、イメージイメージ…クレオ!」
「あ!テーブル!」
「そうだよー。テーブルがあった方が食べやすいからなぁ。
じゃあ、ご飯出すから待っててねー。」
辺りを見回すと、椅子にちょうどよさそうな大木が横たわっていたので、
そこで食べることにした。
俺は簡易テーブルをイメージして生成した。
…魔法の無駄遣いって、こういうことだろうな。
「さてと。朝のうちに作っておいたオークのお肉と野菜の串焼き、
それと俺が生成した調味料で作ったスープ!これを温めまーす!」
アイテムボックス鞄から取り出したのは、
早起きして支度した串焼きと、スープの入ったお鍋。
アイテムボックスならこぼれたりしないと教えてもらったから、
一度こうして持ち出してみたかったんだよね。
そして、そこから取り出した調理器具が2つ。
ガスコンロのようなアイテムが2台と、串焼き用の網が1つ。
これは俺が前世の記憶をイメージして生成したアイテムで、今日のために頑張った。
…あ、まあ頑張ったのは魔法自身の想像力と生成力だけどな。
なんて心の中でツッコミながら、俺はクロを呼び寄せた。
「クロちゃーん!尻尾の炎をこのアイテムに近づけておくれ!」
「え?こうか?」
ボオオオオオッ!
「火がついた!俺、魔法使ってないのに!」
「エッヘン!これは魔力のこもった火を近づけると着火する仕組みなのだ!
クロの尻尾の炎は人間に害はないし、燃え移ったりしないけど、
魔力が流れてるからちゃんと火がつくのだよ。」
「すげぇ!俺、役に立った?」
「もちろん!じゃあ、今から肉焼いていくな!もう少し待ってね。」
クロを呼んで尻尾の炎でアイテムに火をつけると、クロは大喜び。
その姿はまるで子供のようで、可愛すぎた。
そんなクロの横で、ロウキは目をギュッと細めて、フウッとため息を吐いていた。
相変わらず、呆れるの好きね。
なんて思いながら、とにかく俺は串を焼き続けた。
なんせ大食いばかりがいるから、結構な量の串を作ったのよ。
「スープはもう温まったから飲んでいいよ。
で、串は焼けたやつからどんどん食べて…って、よく考えたら、
ロウキとユキは手で串を持てなかったな。ごめん!すぐにバラして出すからなー!」
「そういうとこだぞ。」
「うるさいなー!作ってる時に言えよ!串はダメだって!」
「お前が楽しそうに作ってるのに、止められるか。」
「うっ……」
串が焼けたところで手渡そうとしたら、クロ以外は手で串を持てないことが発覚した。
こんなことなら、最初から肉と野菜を混ぜておけばよかった!二度手間!
慌てて串から肉と野菜を外す横で、クロは器用に串を持って頬張っていた。
いつも本当に美味しそうに食べるから、作り甲斐があるなーって思う。
前世では料理なんてほとんどしてこなかったけど、
自分が作った料理を喜んで食べてもらえるって、こんなに嬉しいことなんだと、
皆に作るようになってから初めて知った。
異世界で、こんな感情に出会うなんてなぁ。
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