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36話 ようやく王都に到着しました
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「さすがに疲れたかも…」
「俺も久々だから、飛び疲れたー!」
森という森を抜けた頃、空の色はすっかりオレンジ色に染まり始めていた。
森を抜けると、本当に小さな村があり、初めて見るその世界に少しばかり感動していた。
今回は王都が目的だから寄れないけど、小さな村や町にも興味があるな。
今度は、そういう場所にも行ってみたい。
なんて思いながら、「明日の昼前には王都のギルドに到着して手続きをしたい」と言うと、
ロウキに「もう少し進むぞ」と言われ、野営ができる場所まで歩き続けた。
到着した頃には、すっかり星空が辺り一面に広がっていた。
「いやー…本当に疲れたぁ…明日は絶対に筋肉痛だわ…」
「軟弱者め。今度から一日何時間か、何かやらせるか。」
「何をだよー!俺はスローライフができたらそれでいいんだから!
訓練とか必要ないから!」
「ロウキが言ってることもちょっと分かるなぁ。
主が死んじゃったら困るから、主には強くなってほしい…」
「クロぉ…」
現代の日本人が、一日中歩いて移動するなんて、ほとんど経験しないだろう。
だから姿かたちが変わっても、俺の体はそんなに強くできちゃいないのよ。
だから、弱音だって吐いちゃうわけ。
するとロウキは、すかさず「軟弱者」と罵り、呆れた様子でその場に座り込んだ。
そして、「これから毎日訓練が必要だな」と言い始めた。
スローライフに訓練は必要ないと言うと、
今度はクロが「主が死なないように、強くなってほしい」と訴えてきて…。
クロに言われると、どうも断りづらくなっちゃうんだよな。
なんて思いながら、どうにか話題をそらしてやろうと奮闘していた。
◇
「うんまーーいっ!」
「美味しいなぁ。外で食べるご飯って、何でも美味しく感じるよな。」
「お前が生成したステーキ専用ソースとやらは、本当に美味だな。
ボア肉がこんなに旨かったのは初めてだ。」
「だろう?前世の記憶のたまものなのよ、このソース!」
「ワウッ!」
あれから何とか話題を変えることに成功し、夕食の準備に取り掛かった。
昼に飲んだスープの残りを温め直し、持ってきていたフライパンに油を引いて、
アイテムボックスに保管していたお肉に塩コショウを振り、豪快に焼き上げる。
そこに、俺のへパイトスの加護で生成しておいたステーキ専用ソースをかけ、
少し染み込ませて完成。
前に生成したのは焼肉のたれっぽいものだったけど、
今回はちゃんとステーキ専用のソースができた。
この手のものは、料理下手な俺でも美味しく仕上がるから本当に助かる。
どうやらこのソースは、みんなの口にも合ったようで、あっという間に完食。
異世界の記憶が役に立って良かったなって、料理してる時に一番思うかもしれない。
「あー、お腹いっぱい!」
「食った食ったー!
それじゃあ、早めに片付けるか。…クリーンウォッシュッ!」
「…だいぶ生活魔法が板についてきたな。」
「でしょ?毎日のことだからさ。」
「同じ要領で戦闘魔法もマスターすれば良いだろう。
出来ぬとは言わせんからな。」
「えっ…やっと話題をそらせたと思ってたのに…
なんでまた言うんだよ!鬼!悪魔!人でなし!」
「我は鬼でも悪魔でも人でもないわ。」
「そういう意味じゃないわ!」
「あるじぃー!悪魔は俺だよー!」
「そうだねぇ?クロちゃんは可愛い可愛い悪魔だよねぇ!」
食事を終えて一息ついたあと、俺は面倒になる前に生活魔法を使い、
使った食器や調理器具を綺麗にしてアイテムボックスに戻した。
それを見ていたロウキは「板についてきたな」と言ったあと、
「同じ要領で戦闘魔法もマスターすればいい」と鼻を突き上げて俺を見下ろした。
そして、「出来ないとは言わせない」と言い放ち、フンッと鼻を鳴らす。
スローライフしたいだけなのに!なぜだ!
そう何度も叫んではみたけれど、ロウキはうるさいと言わんばかりに耳を塞いだ。
どうやっても、ロウキは俺に魔法の練習をさせたいらしい。
これは家に帰ってから地獄になりそうな気がしてならない。
グッバイ、俺のスローライフ…。
そう呟きながら、大きなため息を吐いた―…。
◇
翌日-
「あとどのくらい?もう少し?」
「ああ。昼前には到着する。昨日、遅くまで距離を進めたのが良かったな。」
「ほんと、昨日は頑張りすぎてハードな一日だったわ…」
ドキドキしながら眠った昨夜。
きっと恐怖で眠れないかもと思っていたけど、意外にも一番早く眠ってしまっていた。
そして案の定、足はパンパンで、少し動くだけでも痛いのなんのって。
それをロウキに訴えてみたものの、「そうやって強くなるのだ」と軽くあしらわれた。
魔獣って、こんなに鬼教官ばかりなんだろうか?
これから生まれるであろう卵の子たちとドラゴンの子が、
もしロウキと同じようなスパルタタイプだったらどうしよう…。
そんな根拠のない不安に襲われながら、王都に向かって歩き出した。
どうか、どうかあの子たちは主に激アマな性格でありますように!
◇
「はぁ、はぁ…よ、ようやく見えてきた…あれが…王都…デカイ…」
「久しぶりだなぁ!ここに来るのも!前に来た時より綺麗になってる!」
歩き続けて五時間ほど経っただろうか。
小さな村や町を横目に進み続け、ついにその姿が見えてきた。
アーロンさんが暮らすという王都は、見上げるほどの高い外壁に囲まれた巨大な都市だった。
あ、これ漫画で見たことあるやつだ。やっぱり王都ってこういう感じなんだな。
そう感動しながら正門へと向かうと、そこには冒険者や商人たちが列を作っており、
入国手続きを待つ人々で長蛇の行列ができていた。
そして、予想通りの反応が待ち構えていた。
「きゃああっ!魔獣よ!!誰か!!」
「何だアイツ…フェ、フェンリル?!本物…?嘘だろ…」
「しかもあれ見ろ…何か小さい魔物が飛んでる…何だあれ…」
「ヤバいんじゃない?!王都を襲いに来たんじゃ…」
「怖いっ…怖すぎるっ…!
フェンリルって何十年か前に王家が弱体化させたんじゃなかったのかよ…
あれとは別物…?」
俺たちが近づくのが見えた途端、外で順番待ちをしていた旅人たちが悲鳴を上げた。
そして、その悲鳴を聞きつけた門番の衛兵たちは、俺たちに持っていた槍を突きつけた。
だけど、その手は恐怖に怯えていて、震えているのが分かった。
まぁ、そうなるわな。皆のその反応は正しい…正しいんだけどね、可愛いって思わない?
なんて俺だけか。
そう思いながらチラリとロウキを見ると、「だから何だ」というような目で上から見下ろしていた。
その姿は、誰がどう見ても魔獣そのもの。
だから、そういうのがまたカッコいいんだよねぇ。何で分かんないかなぁ。
そう思いながら、慌てずアイテムボックスから書状を取り出した。
「あ、あのぉ…これ、確認お願いします。」
「何だその紙切れは……
…な、なにっ?!王家の紋章…!?こ、これは…!」
とりあえずこの場をどうにかしなければと思い、差し出した書状。
それを門番の一人が恐る恐る受け取った。
見た目からすると、この門番の中で一番偉い人のような気がする。
そして、開いた瞬間、その顔色が一変。慌てて周囲を振り返り、声を張り上げた。
「お、お前たちっ!今すぐ槍を下げろ!!」
「し、しかし…!」
「いいから下げろっ!こちらの方々は王家に関わるお方だ!
…た、大変失礼いたしました!」
「ははは…いえ、分かっていただければ…」
「フン…早く通せ。」
「はっ!こ、こちらから中へどうぞ……!」
書状の中身を確認し、俺たちがアーロンさんたちと関わりのある人物だと分かると、
一斉に槍が俺たちから離れ、衛兵たちは深々と頭を下げた。
その姿を見た周りの旅人たちは、驚きの声を上げて俺たちを見ていた。
そんな旅人たちの横を歩き、正門の横にある別の扉から王都の中へと入った。
この扉は王都の市民が通る扉で、身分証を見せればすぐに入れるらしい。
それにしても、王都に入る前からずいぶんと目立っちゃったなぁ。
俺は地味に、静かに、のんびりライフを送りたいのに。
これはちょっと、無理そうだな。
そう感じながら、案内人に連れられて冒険者ギルドへと向かった―…。
「俺も久々だから、飛び疲れたー!」
森という森を抜けた頃、空の色はすっかりオレンジ色に染まり始めていた。
森を抜けると、本当に小さな村があり、初めて見るその世界に少しばかり感動していた。
今回は王都が目的だから寄れないけど、小さな村や町にも興味があるな。
今度は、そういう場所にも行ってみたい。
なんて思いながら、「明日の昼前には王都のギルドに到着して手続きをしたい」と言うと、
ロウキに「もう少し進むぞ」と言われ、野営ができる場所まで歩き続けた。
到着した頃には、すっかり星空が辺り一面に広がっていた。
「いやー…本当に疲れたぁ…明日は絶対に筋肉痛だわ…」
「軟弱者め。今度から一日何時間か、何かやらせるか。」
「何をだよー!俺はスローライフができたらそれでいいんだから!
訓練とか必要ないから!」
「ロウキが言ってることもちょっと分かるなぁ。
主が死んじゃったら困るから、主には強くなってほしい…」
「クロぉ…」
現代の日本人が、一日中歩いて移動するなんて、ほとんど経験しないだろう。
だから姿かたちが変わっても、俺の体はそんなに強くできちゃいないのよ。
だから、弱音だって吐いちゃうわけ。
するとロウキは、すかさず「軟弱者」と罵り、呆れた様子でその場に座り込んだ。
そして、「これから毎日訓練が必要だな」と言い始めた。
スローライフに訓練は必要ないと言うと、
今度はクロが「主が死なないように、強くなってほしい」と訴えてきて…。
クロに言われると、どうも断りづらくなっちゃうんだよな。
なんて思いながら、どうにか話題をそらしてやろうと奮闘していた。
◇
「うんまーーいっ!」
「美味しいなぁ。外で食べるご飯って、何でも美味しく感じるよな。」
「お前が生成したステーキ専用ソースとやらは、本当に美味だな。
ボア肉がこんなに旨かったのは初めてだ。」
「だろう?前世の記憶のたまものなのよ、このソース!」
「ワウッ!」
あれから何とか話題を変えることに成功し、夕食の準備に取り掛かった。
昼に飲んだスープの残りを温め直し、持ってきていたフライパンに油を引いて、
アイテムボックスに保管していたお肉に塩コショウを振り、豪快に焼き上げる。
そこに、俺のへパイトスの加護で生成しておいたステーキ専用ソースをかけ、
少し染み込ませて完成。
前に生成したのは焼肉のたれっぽいものだったけど、
今回はちゃんとステーキ専用のソースができた。
この手のものは、料理下手な俺でも美味しく仕上がるから本当に助かる。
どうやらこのソースは、みんなの口にも合ったようで、あっという間に完食。
異世界の記憶が役に立って良かったなって、料理してる時に一番思うかもしれない。
「あー、お腹いっぱい!」
「食った食ったー!
それじゃあ、早めに片付けるか。…クリーンウォッシュッ!」
「…だいぶ生活魔法が板についてきたな。」
「でしょ?毎日のことだからさ。」
「同じ要領で戦闘魔法もマスターすれば良いだろう。
出来ぬとは言わせんからな。」
「えっ…やっと話題をそらせたと思ってたのに…
なんでまた言うんだよ!鬼!悪魔!人でなし!」
「我は鬼でも悪魔でも人でもないわ。」
「そういう意味じゃないわ!」
「あるじぃー!悪魔は俺だよー!」
「そうだねぇ?クロちゃんは可愛い可愛い悪魔だよねぇ!」
食事を終えて一息ついたあと、俺は面倒になる前に生活魔法を使い、
使った食器や調理器具を綺麗にしてアイテムボックスに戻した。
それを見ていたロウキは「板についてきたな」と言ったあと、
「同じ要領で戦闘魔法もマスターすればいい」と鼻を突き上げて俺を見下ろした。
そして、「出来ないとは言わせない」と言い放ち、フンッと鼻を鳴らす。
スローライフしたいだけなのに!なぜだ!
そう何度も叫んではみたけれど、ロウキはうるさいと言わんばかりに耳を塞いだ。
どうやっても、ロウキは俺に魔法の練習をさせたいらしい。
これは家に帰ってから地獄になりそうな気がしてならない。
グッバイ、俺のスローライフ…。
そう呟きながら、大きなため息を吐いた―…。
◇
翌日-
「あとどのくらい?もう少し?」
「ああ。昼前には到着する。昨日、遅くまで距離を進めたのが良かったな。」
「ほんと、昨日は頑張りすぎてハードな一日だったわ…」
ドキドキしながら眠った昨夜。
きっと恐怖で眠れないかもと思っていたけど、意外にも一番早く眠ってしまっていた。
そして案の定、足はパンパンで、少し動くだけでも痛いのなんのって。
それをロウキに訴えてみたものの、「そうやって強くなるのだ」と軽くあしらわれた。
魔獣って、こんなに鬼教官ばかりなんだろうか?
これから生まれるであろう卵の子たちとドラゴンの子が、
もしロウキと同じようなスパルタタイプだったらどうしよう…。
そんな根拠のない不安に襲われながら、王都に向かって歩き出した。
どうか、どうかあの子たちは主に激アマな性格でありますように!
◇
「はぁ、はぁ…よ、ようやく見えてきた…あれが…王都…デカイ…」
「久しぶりだなぁ!ここに来るのも!前に来た時より綺麗になってる!」
歩き続けて五時間ほど経っただろうか。
小さな村や町を横目に進み続け、ついにその姿が見えてきた。
アーロンさんが暮らすという王都は、見上げるほどの高い外壁に囲まれた巨大な都市だった。
あ、これ漫画で見たことあるやつだ。やっぱり王都ってこういう感じなんだな。
そう感動しながら正門へと向かうと、そこには冒険者や商人たちが列を作っており、
入国手続きを待つ人々で長蛇の行列ができていた。
そして、予想通りの反応が待ち構えていた。
「きゃああっ!魔獣よ!!誰か!!」
「何だアイツ…フェ、フェンリル?!本物…?嘘だろ…」
「しかもあれ見ろ…何か小さい魔物が飛んでる…何だあれ…」
「ヤバいんじゃない?!王都を襲いに来たんじゃ…」
「怖いっ…怖すぎるっ…!
フェンリルって何十年か前に王家が弱体化させたんじゃなかったのかよ…
あれとは別物…?」
俺たちが近づくのが見えた途端、外で順番待ちをしていた旅人たちが悲鳴を上げた。
そして、その悲鳴を聞きつけた門番の衛兵たちは、俺たちに持っていた槍を突きつけた。
だけど、その手は恐怖に怯えていて、震えているのが分かった。
まぁ、そうなるわな。皆のその反応は正しい…正しいんだけどね、可愛いって思わない?
なんて俺だけか。
そう思いながらチラリとロウキを見ると、「だから何だ」というような目で上から見下ろしていた。
その姿は、誰がどう見ても魔獣そのもの。
だから、そういうのがまたカッコいいんだよねぇ。何で分かんないかなぁ。
そう思いながら、慌てずアイテムボックスから書状を取り出した。
「あ、あのぉ…これ、確認お願いします。」
「何だその紙切れは……
…な、なにっ?!王家の紋章…!?こ、これは…!」
とりあえずこの場をどうにかしなければと思い、差し出した書状。
それを門番の一人が恐る恐る受け取った。
見た目からすると、この門番の中で一番偉い人のような気がする。
そして、開いた瞬間、その顔色が一変。慌てて周囲を振り返り、声を張り上げた。
「お、お前たちっ!今すぐ槍を下げろ!!」
「し、しかし…!」
「いいから下げろっ!こちらの方々は王家に関わるお方だ!
…た、大変失礼いたしました!」
「ははは…いえ、分かっていただければ…」
「フン…早く通せ。」
「はっ!こ、こちらから中へどうぞ……!」
書状の中身を確認し、俺たちがアーロンさんたちと関わりのある人物だと分かると、
一斉に槍が俺たちから離れ、衛兵たちは深々と頭を下げた。
その姿を見た周りの旅人たちは、驚きの声を上げて俺たちを見ていた。
そんな旅人たちの横を歩き、正門の横にある別の扉から王都の中へと入った。
この扉は王都の市民が通る扉で、身分証を見せればすぐに入れるらしい。
それにしても、王都に入る前からずいぶんと目立っちゃったなぁ。
俺は地味に、静かに、のんびりライフを送りたいのに。
これはちょっと、無理そうだな。
そう感じながら、案内人に連れられて冒険者ギルドへと向かった―…。
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