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38話 お城で王家の方々と顔合わせをしました
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ガーノスさんの奥さんの手料理は、優しくて温もりを感じた。
都会に出ていた人間が、実家に帰って家の味を味わった時のような、そんな感覚。
“母の味”ってやつなんだろうな。
そんな奥さんと、ガーノスさん、受付のアリーシャさんと一緒に他愛のない話をしていた時、
別館のドアがノックされた。
「お迎えに上がりました。ヨシヒロ様。」
「あ、あなたは、アーロンさんの…」
「クロノスと申します。王がお待ちです。参りましょうか。」
「ありがとうございます。それじゃあ…」
開いたドアから現れたのは、アーロンさんの護衛騎士・クロノスさんだった。
どうやら俺を迎えに来てくれたようで、一緒に出ようとしたところで、ロウキが口を開いた。
「我はここで待っている。庭には行かん。ガーノスとやら、良いか?」
「ああ、俺は構わないぜ。ヨシヒロが王城に行ってる間、俺と話でもしようや。」
「そういうわけだ、ヨシヒロ。お前はクロとユキを連れて行ってこい。」
「分かった。じゃあ、ガーノスさん、申し訳ないのですがロウキをよろしくお願いします。」
「おう!任せな。」
ロウキはやっぱり王城そのものに行きたくないようで、この場で待つと言い、
ガーノスさんに了承を得ていた。
ガーノスさんもロウキと話したがっている様子だったので、
俺はユキとクロを連れて、用意されていた豪華な馬車に乗り込んだ。
やっぱりロウキは、近くに行くこと自体が嫌なんだな。そこは尊重してやらないと。
それに、ガーノスさんならロウキのこともちゃんと見てくれるだろうし、まぁ大丈夫だろう。
そう思いながら、揺れる馬車の中から外を眺めていた。
街を彩る露店やさまざまな施設からは、とても美味しそうな匂いが漂ってきて、
キラキラと輝く装飾品も見えて、思わずワクワクした。
そこから少し進むと、建物の雰囲気がガラリと変わり、
まさに貴族の屋敷というような建物ばかりが並ぶ区域に入った。
そして、その先に見えたのは、俺の家の城とは真逆の、白く輝く大きなお城。
青色の屋根との色のバランスが絶妙で、思わず声が漏れた。
「ここは変わらないな!前よりかなり古くなっちゃってるけど!」
「そっか。クロは前の家主と来たことあるんだっけ?」
「うん!前の主と一緒に魔道具を届けに来たり、頼まれごとを聞きに来たりしてた!」
「さすがだねぇ。偉大な魔法使いは王城にも通うレベルなんだねぇ。」
お城が見えてくると、クロは懐かしそうな声をあげた。
昔の思い出がいろいろと蘇ってきているのだろう。
それもまた、切ないけど良い記憶なんだろうな。
クロにとっては懐かしい思い出。
だけどロウキにとっては、癒えない傷がえぐられる場所。
そう思ってみると、何とも言えない複雑な気持ちになる。
そんなことを考えているうちに、お城の真下に到着。
馬車を降りると、大きな門の前には、鎧をまとった騎士たちが槍を携えて立ち並んでいた。
どう見ても普通の兵士よりも格上。
王家直属といった風貌で、レベルも違う気がする。
「アーロン様の客人です。失礼のないように。」
「はっ!話は聞いております。お通りください!」
「あ…ありがとう…ございます…」
クロノスさんが「客人です」と告げると、話が通っていたのか、あっさりと城の中へ通された。
この大きさと厳格な雰囲気を見ていると、俺なんかが入っても大丈夫なんだろうかと不安になる。
そんな気持ちのまま少し歩き、キョロキョロと周囲を見渡す。
どこを見ても豪華で煌びやかで、まるで洋画に出てくるお城のよう。
こんな場所に人が住んでいるなんて、信じられないな。
そう思いながら歩いていると、「応接間」と呼ばれる部屋の前で足が止まった。
「失礼いたします。」
「ああ。入ってくれ。」
ガチャ―
「あ…アーロン…さん?」
「やぁ、ヨシヒロ。何をそんなに固まっているのだ。早くこちらへ。」
「は、はいっ!」
ドアをノックして中に入ると、そこには俺の家の前で会った時とはまるで違う、
“私は国王です”という格好のアーロンさんが出迎えてくれた。
頭には王冠。深紅のマントには高級そうなファーがあしらわれ、
胸元には五つほどの大きな宝石が横に連なり、マント留めの役割を果たしていた。
どう見ても王様じゃんか…。
その姿を見た俺は、さすがに固まってしまった。
するとアーロンさんは、クスクスと笑いながら俺を手招きした。
いやいや、えー…?やばすぎない?
なんて思っていると、アーロンさんのそばにユキが無邪気に近づいていった。
「ああっ!ユキ!ダメだよ!」
「構わんよ。そなたはユキというのか。女の子か?」
「いえ。男の子なんですけど、幸せになってほしくて、
“幸せ”という漢字一文字でユキと名付けました。」
「おお、そうか。“幸せ”と書いてユキか。良い名だな。」
慌ててユキを止めに行こうとすると、アーロンさんはユキをひょいっと抱き上げ、
「ユキ」と呼んで愛おしそうに頭を撫でてくれた。やっぱり動物が好きなんだな。
そして、漢字で名前を付けたと伝えると、「良い名だ」と言って、
さらにギュッと抱きしめてくれた。
「俺はクロって言うんだぜ!」
「クロか。そなたにぴったりな名だな。良かったな。良い主に出会えて。」
「そうだろ!俺、今すっげぇ幸せなんだ!」
「こらこら…王様相手にタメ口聞いちゃダメだよ、クロ!」
「いいさ。私にこんなふうに話してくれる者はそういない。
クロはそのままで良いぞ。」
「分かった!」
ユキだけ名前を呼ばれて不服だったのか、すかさずクロが自分の名前をアピール。
アーロンさんは笑って対応してくれたけど、王様相手にタメ口はさすがにマズいと思い注意した。
するとアーロンさんは、「こんなふうに会話することは滅多にないから、そのままでいい」と
言ってくれて、クロの小さな頭を優しく撫でていた。
アーロンさん、優しいな。俺たちをちゃんと受け入れてくれて。
そう思っていると、突然「ゴホンッ」と大きな咳払いが聞こえ、辺りを見回した。
「王の御前で失礼にあたりますよ、ヨシヒロ殿。
主なら従魔たちの躾をきちんとしてください。不敬罪に問われますよ。」
「えっ…?あ、あなたは…?」
「やめんか、ベル。こちらの方は私の友人なのだ。お前の方こそ不敬罪だ。」
「なっ…王よ!私は王の威厳を―」
「私の威厳などどうでも良いわ。私は友人が会いに来てくれて気分が良いのだ。
あまり空気を悪くするんじゃない。」
突然の咳払いに驚いていると、アーロンさんから少し離れた場所から、一人の青年が現れた。
この人は前世の俺より若い?でも今の俺よりは年上だろうか。
クロやユキが馴れ馴れしく接してしまったのが癇に障ったのだろう。
すぐさま俺に「ちゃんと躾けてください」と言い、キッと睨みつけてきた。
するとアーロンさんは、「やめろ」と言ってくれて、「友人なのだ」と庇ってくれた。
何だか申し訳ないなと思っていると、青年はシュンとなりながら、俺に頭を下げた。
「申し訳ございません…。
ヨシヒロ殿、失礼いたしました。
改めまして、私はここでアーロン陛下に仕えております、ベル・ブラックと申します。」
「あ、はい…。俺はヨシヒロと言います。よろしくお願いします。
クロとユキが失礼しました。ちゃんと躾けますので…申し訳ないです。」
「いえ、私の方こそ難癖をつけてしまい、申し訳ございません。
あなたはまだ17歳で若いというのに、陛下と仲良くされているのが…その…」
「あー…なるほど。」
「え?」
「いえ。とりあえず、従魔たちには失礼のないように言っておきます。」
「はい…ありがとうございます。」
頭を下げたベルさんは、どうやら俺たちがアーロンさんと仲良くしているのが羨ましくて、
つい少しキツく言ってしまったらしい。
自分の立場じゃ、こんなふうに砕けた感じで接することなんてできないもんな。
まぁ、分からなくもないけどな…なんて思いながら、ひとまず和解した。
「ロウキ殿は庭に?」
「あ、いえ。ギルドでガーノスさんと一緒にいますよ。」
「ああ、ガーノスか。アイツは元・王国御用達の冒険者でな。
歳も近くて、若い頃から一緒にやってきたんだ。
だから今回のことも、快く引き受けてくれたよ。」
「だからアーロンさんのことを呼び捨てにしてたんですねー。」
「はは、アイツは昔からああいう性格でな。よく他の連中に怒られてたもんだ。」
ベルさんと和解すると、アーロンさんはロウキのことが気になったようで尋ねてきた。
「ギルドでガーノスさんと一緒にいます」と伝えると、
王国御用達の冒険者だったことを教えてくれた。
こんなにスムーズにことが運んだのは、この二人の協力があってこそなのかもしれない。
普通じゃあり得ない状況だもんなぁ。
俺みたいな一般人が、自由市民の権利とギルドの“無級”扱いなんて。
なんかこの場にふさわしくないなぁ…もう帰りたい!
なんて思っていると、応接間のドアが開き、女性と男性が入室してきた。
その見た目からすぐに、それがアーロンさんの奥さんと、息子さん、娘さんだと分かった。
なんでこんなに王族の人が来るわけ?!
「ヨシヒロ。私の妻と娘と息子たちだ。よろしく頼む。」
「初めまして。夫から話は聞いています。妻のレイラ・ソウリアスと申します。
今後も夫と仲良くしてやってくださいね。」
「初めまして。私はソウリアス王国王家の長男、ルーク・ソウリアスです。」
「ヨシヒロ様、初めまして。
私はソウリアス王国王家の長女、アーロン・ソウリアス王とレイラ王妃の娘、
ルーシー・ソウリアスでございます。」
「初めまして!僕はソウリアス王国王家の次男、レイロン・ソウリアスです!」
「あ、えーっと…ヨシヒロと申します。
アーロン国王とは良いお付き合いをさせていただいています。
こちらは使い魔のクロ、そして従魔のユキです。ユキの父親はロウキと言って、
今は冒険者ギルドで待機中です。」
心の中で「帰りたいコール」を連呼していた俺に向かって、王家の皆さんは丁寧に挨拶をしてくれた。
これが王家の風格か…
皆、とても礼儀正しくてお上品だな。
なんて思いながら、俺もアワアワしながら自己紹介をした。
俺は失礼のないようにとドキドキしているっていうのに、
クロやユキはそんなの関係なく王家の人たちに懐いていて、正直心臓が飛び出るかと思った。
ほ、本当に不敬罪になったらどうしよう…!
そう思いながら、心の中で何度も「早く帰らせてくれ」と叫んでいた―…
都会に出ていた人間が、実家に帰って家の味を味わった時のような、そんな感覚。
“母の味”ってやつなんだろうな。
そんな奥さんと、ガーノスさん、受付のアリーシャさんと一緒に他愛のない話をしていた時、
別館のドアがノックされた。
「お迎えに上がりました。ヨシヒロ様。」
「あ、あなたは、アーロンさんの…」
「クロノスと申します。王がお待ちです。参りましょうか。」
「ありがとうございます。それじゃあ…」
開いたドアから現れたのは、アーロンさんの護衛騎士・クロノスさんだった。
どうやら俺を迎えに来てくれたようで、一緒に出ようとしたところで、ロウキが口を開いた。
「我はここで待っている。庭には行かん。ガーノスとやら、良いか?」
「ああ、俺は構わないぜ。ヨシヒロが王城に行ってる間、俺と話でもしようや。」
「そういうわけだ、ヨシヒロ。お前はクロとユキを連れて行ってこい。」
「分かった。じゃあ、ガーノスさん、申し訳ないのですがロウキをよろしくお願いします。」
「おう!任せな。」
ロウキはやっぱり王城そのものに行きたくないようで、この場で待つと言い、
ガーノスさんに了承を得ていた。
ガーノスさんもロウキと話したがっている様子だったので、
俺はユキとクロを連れて、用意されていた豪華な馬車に乗り込んだ。
やっぱりロウキは、近くに行くこと自体が嫌なんだな。そこは尊重してやらないと。
それに、ガーノスさんならロウキのこともちゃんと見てくれるだろうし、まぁ大丈夫だろう。
そう思いながら、揺れる馬車の中から外を眺めていた。
街を彩る露店やさまざまな施設からは、とても美味しそうな匂いが漂ってきて、
キラキラと輝く装飾品も見えて、思わずワクワクした。
そこから少し進むと、建物の雰囲気がガラリと変わり、
まさに貴族の屋敷というような建物ばかりが並ぶ区域に入った。
そして、その先に見えたのは、俺の家の城とは真逆の、白く輝く大きなお城。
青色の屋根との色のバランスが絶妙で、思わず声が漏れた。
「ここは変わらないな!前よりかなり古くなっちゃってるけど!」
「そっか。クロは前の家主と来たことあるんだっけ?」
「うん!前の主と一緒に魔道具を届けに来たり、頼まれごとを聞きに来たりしてた!」
「さすがだねぇ。偉大な魔法使いは王城にも通うレベルなんだねぇ。」
お城が見えてくると、クロは懐かしそうな声をあげた。
昔の思い出がいろいろと蘇ってきているのだろう。
それもまた、切ないけど良い記憶なんだろうな。
クロにとっては懐かしい思い出。
だけどロウキにとっては、癒えない傷がえぐられる場所。
そう思ってみると、何とも言えない複雑な気持ちになる。
そんなことを考えているうちに、お城の真下に到着。
馬車を降りると、大きな門の前には、鎧をまとった騎士たちが槍を携えて立ち並んでいた。
どう見ても普通の兵士よりも格上。
王家直属といった風貌で、レベルも違う気がする。
「アーロン様の客人です。失礼のないように。」
「はっ!話は聞いております。お通りください!」
「あ…ありがとう…ございます…」
クロノスさんが「客人です」と告げると、話が通っていたのか、あっさりと城の中へ通された。
この大きさと厳格な雰囲気を見ていると、俺なんかが入っても大丈夫なんだろうかと不安になる。
そんな気持ちのまま少し歩き、キョロキョロと周囲を見渡す。
どこを見ても豪華で煌びやかで、まるで洋画に出てくるお城のよう。
こんな場所に人が住んでいるなんて、信じられないな。
そう思いながら歩いていると、「応接間」と呼ばれる部屋の前で足が止まった。
「失礼いたします。」
「ああ。入ってくれ。」
ガチャ―
「あ…アーロン…さん?」
「やぁ、ヨシヒロ。何をそんなに固まっているのだ。早くこちらへ。」
「は、はいっ!」
ドアをノックして中に入ると、そこには俺の家の前で会った時とはまるで違う、
“私は国王です”という格好のアーロンさんが出迎えてくれた。
頭には王冠。深紅のマントには高級そうなファーがあしらわれ、
胸元には五つほどの大きな宝石が横に連なり、マント留めの役割を果たしていた。
どう見ても王様じゃんか…。
その姿を見た俺は、さすがに固まってしまった。
するとアーロンさんは、クスクスと笑いながら俺を手招きした。
いやいや、えー…?やばすぎない?
なんて思っていると、アーロンさんのそばにユキが無邪気に近づいていった。
「ああっ!ユキ!ダメだよ!」
「構わんよ。そなたはユキというのか。女の子か?」
「いえ。男の子なんですけど、幸せになってほしくて、
“幸せ”という漢字一文字でユキと名付けました。」
「おお、そうか。“幸せ”と書いてユキか。良い名だな。」
慌ててユキを止めに行こうとすると、アーロンさんはユキをひょいっと抱き上げ、
「ユキ」と呼んで愛おしそうに頭を撫でてくれた。やっぱり動物が好きなんだな。
そして、漢字で名前を付けたと伝えると、「良い名だ」と言って、
さらにギュッと抱きしめてくれた。
「俺はクロって言うんだぜ!」
「クロか。そなたにぴったりな名だな。良かったな。良い主に出会えて。」
「そうだろ!俺、今すっげぇ幸せなんだ!」
「こらこら…王様相手にタメ口聞いちゃダメだよ、クロ!」
「いいさ。私にこんなふうに話してくれる者はそういない。
クロはそのままで良いぞ。」
「分かった!」
ユキだけ名前を呼ばれて不服だったのか、すかさずクロが自分の名前をアピール。
アーロンさんは笑って対応してくれたけど、王様相手にタメ口はさすがにマズいと思い注意した。
するとアーロンさんは、「こんなふうに会話することは滅多にないから、そのままでいい」と
言ってくれて、クロの小さな頭を優しく撫でていた。
アーロンさん、優しいな。俺たちをちゃんと受け入れてくれて。
そう思っていると、突然「ゴホンッ」と大きな咳払いが聞こえ、辺りを見回した。
「王の御前で失礼にあたりますよ、ヨシヒロ殿。
主なら従魔たちの躾をきちんとしてください。不敬罪に問われますよ。」
「えっ…?あ、あなたは…?」
「やめんか、ベル。こちらの方は私の友人なのだ。お前の方こそ不敬罪だ。」
「なっ…王よ!私は王の威厳を―」
「私の威厳などどうでも良いわ。私は友人が会いに来てくれて気分が良いのだ。
あまり空気を悪くするんじゃない。」
突然の咳払いに驚いていると、アーロンさんから少し離れた場所から、一人の青年が現れた。
この人は前世の俺より若い?でも今の俺よりは年上だろうか。
クロやユキが馴れ馴れしく接してしまったのが癇に障ったのだろう。
すぐさま俺に「ちゃんと躾けてください」と言い、キッと睨みつけてきた。
するとアーロンさんは、「やめろ」と言ってくれて、「友人なのだ」と庇ってくれた。
何だか申し訳ないなと思っていると、青年はシュンとなりながら、俺に頭を下げた。
「申し訳ございません…。
ヨシヒロ殿、失礼いたしました。
改めまして、私はここでアーロン陛下に仕えております、ベル・ブラックと申します。」
「あ、はい…。俺はヨシヒロと言います。よろしくお願いします。
クロとユキが失礼しました。ちゃんと躾けますので…申し訳ないです。」
「いえ、私の方こそ難癖をつけてしまい、申し訳ございません。
あなたはまだ17歳で若いというのに、陛下と仲良くされているのが…その…」
「あー…なるほど。」
「え?」
「いえ。とりあえず、従魔たちには失礼のないように言っておきます。」
「はい…ありがとうございます。」
頭を下げたベルさんは、どうやら俺たちがアーロンさんと仲良くしているのが羨ましくて、
つい少しキツく言ってしまったらしい。
自分の立場じゃ、こんなふうに砕けた感じで接することなんてできないもんな。
まぁ、分からなくもないけどな…なんて思いながら、ひとまず和解した。
「ロウキ殿は庭に?」
「あ、いえ。ギルドでガーノスさんと一緒にいますよ。」
「ああ、ガーノスか。アイツは元・王国御用達の冒険者でな。
歳も近くて、若い頃から一緒にやってきたんだ。
だから今回のことも、快く引き受けてくれたよ。」
「だからアーロンさんのことを呼び捨てにしてたんですねー。」
「はは、アイツは昔からああいう性格でな。よく他の連中に怒られてたもんだ。」
ベルさんと和解すると、アーロンさんはロウキのことが気になったようで尋ねてきた。
「ギルドでガーノスさんと一緒にいます」と伝えると、
王国御用達の冒険者だったことを教えてくれた。
こんなにスムーズにことが運んだのは、この二人の協力があってこそなのかもしれない。
普通じゃあり得ない状況だもんなぁ。
俺みたいな一般人が、自由市民の権利とギルドの“無級”扱いなんて。
なんかこの場にふさわしくないなぁ…もう帰りたい!
なんて思っていると、応接間のドアが開き、女性と男性が入室してきた。
その見た目からすぐに、それがアーロンさんの奥さんと、息子さん、娘さんだと分かった。
なんでこんなに王族の人が来るわけ?!
「ヨシヒロ。私の妻と娘と息子たちだ。よろしく頼む。」
「初めまして。夫から話は聞いています。妻のレイラ・ソウリアスと申します。
今後も夫と仲良くしてやってくださいね。」
「初めまして。私はソウリアス王国王家の長男、ルーク・ソウリアスです。」
「ヨシヒロ様、初めまして。
私はソウリアス王国王家の長女、アーロン・ソウリアス王とレイラ王妃の娘、
ルーシー・ソウリアスでございます。」
「初めまして!僕はソウリアス王国王家の次男、レイロン・ソウリアスです!」
「あ、えーっと…ヨシヒロと申します。
アーロン国王とは良いお付き合いをさせていただいています。
こちらは使い魔のクロ、そして従魔のユキです。ユキの父親はロウキと言って、
今は冒険者ギルドで待機中です。」
心の中で「帰りたいコール」を連呼していた俺に向かって、王家の皆さんは丁寧に挨拶をしてくれた。
これが王家の風格か…
皆、とても礼儀正しくてお上品だな。
なんて思いながら、俺もアワアワしながら自己紹介をした。
俺は失礼のないようにとドキドキしているっていうのに、
クロやユキはそんなの関係なく王家の人たちに懐いていて、正直心臓が飛び出るかと思った。
ほ、本当に不敬罪になったらどうしよう…!
そう思いながら、心の中で何度も「早く帰らせてくれ」と叫んでいた―…
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【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
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