魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル

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41話 外に出たらギルド長と冒険者と出くわしました

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ミルが従魔になって、もう終わりかなと思っていたけど、
なぜかそのまま上の階層へと進んでいくロウキたち。
俺はというと、ロウキたちが倒してくれた魔物から落ちた魔石を拾ったり、
魔法石の結晶を採取したり、その場に生えていた薬草を摘んだりと、地味な活動をしていた。
だけど、時折ロウキに無理やり魔法を使わされては魔力が暴走し、そのたびにロウキに怒られる。
そんなことを繰り返しながら、ようやく最終階層の10階層にたどり着いた。

ここに来るまでに、動く骸骨やコウモリ、毒を持った大蛇など、
今まで平和に暮らしていた俺にとっては恐怖の連続だった。
そんな俺の気も知らず、皆は楽しそうに魔物討伐をしたり、宝箱を開けたりしていた。

「やっと終わりなのね。あーもう疲れた!今何時くらいだろう?
ご飯の持ち合わせもないから、細々とパン食べるだけだったし…
早く帰って、ちゃんとしたご飯食べたい…」

「これしきのことでバテたのか?想像より早く来れただろう?
外はまだ夕食時くらいだぞ。
ヨシヒロを鍛えるためにも、やはり定期的に来なければならんな。」

「えー?本当にまだ6時くらいなのかー?もう夜中までやってた気分…。
それに俺には必要ないのよー…本当に…」

「しかし、たまにはこうやって遊ばせないと、皆ストレスが溜まるぞ?」

「……それを言われちゃ何も言えない…。」

10階層には今はミルだけがいたらしく、
そのミルが従魔になったことで、誰もいなかった。
やっとこのまま帰れると安堵していたところに、ロウキからまたもや鬼教官発言。
即座に否定したら、「こういうダンジョン巡りは皆のストレス発散になる」と言われ、何も言えなくなった。
まぁ、確かに皆が遊べる空間と言えばそうなのかもしれないけどさ。
俺にはなかなかハードルが高い場所なのは間違いない。
そう思いながらも、楽しそうにしている皆を見ていると、ダメとも言えないっていう。

「お前たち、集めるものは集めたな。外に出るぞ。」

「おう!主のためにたくさん集めたぞ!」

「ワオンッ!」

「このへや、もうなにもない。そと、でる!」

「よし!出よ出よ!危ないから!」

ようやく外に出られると思うとホッとする。
俺は一番乗りで転移装置の側まで行き、皆を急かした。
そして、皆が転移装置の魔法陣の中に入ったのを確認し、
転移装置に触れると体がふっと軽くなり、一瞬でダンジョンの外に戻ることができた。

「これが転移……すごいな。やっぱり便利!俺も欲しい!」

こんな便利なもの、自分の家と繋がっていたら、どこまで行ってもすぐに帰宅できるじゃん。
そうなると、出かけやすくなるし便利だろうなぁ。
転移魔法は無理でも、転移装置みたいなもの、加護の力で生成できないかな?
なんて、ちょっと期待していた。

【どこでも行けるような転移装置は現在、生成不可。
その代わり、特定の場所にゲートを設置し、その間だけの移動魔道具なら生成可能。
生成のカギとなるのは、生成者の正しい記憶です。】

「え?」

【生成者が転移先と戻り先の記憶をゲートに流し込むことで、
その場所のみの転移ゲートが生成可能です。
生成には膨大な魔力を必要とするため、魔力量に制限がないことが条件です。】

どうにかならないか、そう考えていた時、突然エマが転移ゲートの生成方法を教えてくれた。
どうやら、正しい記憶を流し込むことで、場所限定のゲートが作れる。
しかも、魔力量に制限がなければ可能だという。
このやり方なら、ちゃんと作れるかもしれない!
いつの日か、転移装置を家に置いてみせる!
そう心に誓いながら、俺は静かに拳を握った。

その時だった。
どこからか人の気配がして、辺りを警戒した。
すると、俺の視線に入ってきたのは、冒険者ギルドのガーノスさんと、
いかにもベテランといった風貌の冒険者ご一行だった。

「ヨシヒロじゃねぇか!このダンジョンに来てたのか!
…ってお前、なんか増えてねぇか?」

「ガーノスさん!いや、まぁ色々ありまして。
それより、どうされたんですか?なんでダンジョンに?」

「いやな、最近このダンジョンのボスが低階層にいるって初心者冒険者たちが騒いでてな。
ちょうど時間が空いたベテラン勢がいたから、調査しようかと思ってよ。」

「あー…へぇ。そうなんですねぇ。」

突然ガーノスさんたちが現れたので、何があったのか訊いてみると、
ダンジョンのボスが低階層に現れているという噂の調査に来たらしい。
その話を聞いて、俺の顔は引きつった。
それって、もしかしなくてもミルのことだよな…?絶対に言えないな…。
そう思いながら、完全に知らないふりをした。

「お前たち、どこまで行ったんだ?」

「我がいて最後まで行かぬわけがないだろう、ガーノスよ。」

「まぁ、そりゃそうだなぁ。全部討伐しちまったのか?ボスも?」

「ボスは明日にでも魔素で新しい魔物が生まれる。それまでは10階層のボス不在だ。
それに、低階層に降りてくることも、これからはないだろう。」

「え?じゃあやっぱりロウキが倒したのか?あのバカデカいミノタウロス。」

「当然だ。我が負けるわけがないだろう?」

「はぁ、やっぱりフェンリルさんともなると違うなぁ。
そこの小柄な魔物はロウキの知り合いか?」

「こやつはミルと言ってな。ヨシヒロの従魔だ。」

「へぇ。ヨシヒロ、お前、特殊なもんばっか従魔にしてないか?」

「あはは……そ、そうですかねぇ?ミルはとても良い子ですよ!!
悪さはしません!!絶対に!!」

俺が知らないふりをしていたことに気づいたのか、ロウキも話を合わせてくれた。
そして、「俺の従魔だから大丈夫だ」と言わんばかりに鼻を突き上げる。
だから俺も、「ミルは悪さしません」と言い切って、苦笑いした。

「ははは、まぁいい。じゃあこのダンジョンはとりあえず安心ってわけだな。
悪いな、お前たち。今日の仕事は終わりだわ。」

「フェンリル…ヤバイっすねぇ…カッケェ!」

「この男の子が何で?まだ10代だろう?」

「こいつに手を出すなよ?王家直属だ。国王のご友人だからな?」

「ちょっ!ガーノスさんっ!」

「えええ?!マジかよ。じゃあ無級ライセンス?」

「ああ。このメンツで無級じゃねぇ方がおかしいだろう?」

「確かに…。ヤバイな…」

「ううっ…地味に暮らしていきたいのにぃぃっ…!」

俺たちが「ダンジョンはもう大丈夫だ」と伝えると、
ガーノスさんは冒険者たちに「今日の仕事は終わりだ」と言って解散させた。
その冒険者たちは、ロウキを見るなり目をキラキラと輝かせたり、
中身は30代だが、そんなの分かるはずもなく、10代の俺が何故?と不思議そうな顔をしていた。
するとガーノスさんは隠すこともなく、俺がアーロンさんの友達だと言い始め、
冒険者たちの顔色がガラリと変わってしまった。
俺は細々と地味にのんびり暮らしたいのに、こういうことがあると話が広がっちゃうじゃん…。
なんて思って、ガクッと肩を落とした。

「ヨシヒロ、ロウキ。多分お前たちが色々やってくれたんだろう?
今度礼でもさせてくれや。」

「いえいえ、そんな…。じゃあ、僕たちは帰りますね。」

「おう!じゃあまたな!」

これ以上この場にいたら何か聞かれそうで嫌だったのもあり、
「お礼をさせてくれ」と言ってくれたガーノスさんに短めの返事をして、その場を去った。
あの冒険者の人たち、絶対に聞きたいことがありますって顔してた。
だからこれ以上あの場にいると、俺が疲れる。そう思っていた。

「ロウキー、背中乗せてくれよー。」

「ミルがいるのだから無理に決まっておるだろうが…今日はいいとこまで歩いて野営だ。」

「そんなぁー…」

しばらく歩いたあと、「ロウキの足で帰った方が早い」と思って頼んでみたけど、
ミルが増えたのもあり、乗せられないと言って速攻で断られた。
もうダンジョンでヘトヘトなのに、まだ家に到着できないこの辛さといったら…。

でもまぁ、あの頃の疲れとは全然違うんだけど。
そういった意味では、充実した日の疲れという感じで、悪くはないのかな。
なんて、少しだけそう思っていた―…。
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