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43話 やっぱりギルドからの依頼が来るようになりました
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魔物管理室 ―
「ほう。これが、あの魔法使いが遺した卵とドラゴンか。」
「そう。でも、資料には何の卵か書いてなくて。ちょっとドキドキしてるんだよな。」
「たまご、いつ、うまれる?」
「どうかなぁ?もう結構経つけど、まだ反応がないもんな。」
この日は、ロウキが初めて卵とドラゴンと対面した日だった。
今までは体の大きさのせいで入れなかったけど、小さくなれることを公表したこともあり、
お風呂上がりに魔物管理室へと足を運んだ。
そこで初めて眠るドラゴンと、2つの卵を見たロウキ。
すると、すぐさま何の卵か考え始めた。
「この柄の卵なら、我は見たことがある。…しかし、何かは忘れたがな。」
「そこ一番忘れないで欲しかったやつ!!」
「まぁ、もうそろそろではないか?生まれるのは。もう一つの卵はまだまだのようだが。」
「え?本当?じゃあもう少ししたら会えるんだ?!」
「ロウキ本当か?!嬉しいっ!俺の弟!!
主は今のうちから、ちゃんと名前考えておいた方がいいぜ!」
「確かに…苦手作業の一つだからな。頑張る。」
ロウキは何の卵かは覚えていないようだったけど、見かけたことがあると言っていた。
そして「もうすぐ生まれるかもしれない」とも言っていて、一気に期待が高まった。
もちろん、中身がどんな魔獣なのか分からないから不安もあるけれど…。
クロは「今のうちに名前を考えておいた方がいいよ」とアドバイスをくれたので、
ちゃんと事前に考えておこうかなとは思っていた。
そんな時だった。
「ん?何かこっちに来る?」
「ああ。伝書ガラスだな。誰かからの手紙。おおかたギルドか王家じゃないのか?」
「ええ…やだよそれ…。」
「まぁ、とりあえず外に出てみろ。」
「分かったよ…はぁ…嫌だなぁ…。」
突然感じた気配。
敵意とかそういうものではなく、ただ静かに近づいてくる気配だった。
ロウキが「伝書ガラスだ」と言い、誰かが手紙をよこしたのだろうと教えてくれた。
俺に手紙をくれるなんて、誰だろうと思ったけど、
ロウキから「ギルドか王家」と言われて、ですよね…と重たい足取りで外へ向かった。
扉を開けて外に出ると、すでに1匹の伝書ガラスがテーブルの上にちょこんと乗っていた。
首からぶら下げているのがどうやら手紙らしく、そっと外してやると、そのまま飛び立っていった。
さすがにカラスは喋らないか。
なんて思いながら受け取った手紙を見ると、
封蝋にはギルドの紋章がハッキリと押されていて、嫌な予感しかしなかった。
「えーと…?
ヨシヒロと従魔たちに討伐依頼をしたいので、
3日以内に一度ギルドに来てほしい。…だって。」
俺の予想は当たり。早速ギルドからの討伐依頼だった。
俺のスローライフを邪魔する存在は、やっぱりギルドか…。
なんて思いながらロウキに伝えると、明らかに不服そうな表情をしていた。
そりゃそうだよな。人間に使われるなんて、ロウキが一番嫌がるだろうし。
「我を何だと思っておるんだ、ガーノスめ…。
まぁ、どうせ暇だし行ってやらんこともない。
それに先日ダンジョンに潜った時に手に入れた戦利品を売るのに丁度いいな。
これでクロが食べたがっていたルビートマトの種が買えるぞ。」
「ええ?!今の表情は明らかに行かない流れだったじゃん!?」
絶対に断ると思っていたのに、戦利品の換金とルビートマトの種の話を持ち出したロウキ。
すると、それに反応したのはクロだった。
大きな瞳をキラキラと輝かせながら、俺の目の前で翼をパタパタさせて言った。
「やったー!主!絶対行こう!!ルビートマト!!」
「ううっ…」
「あるじ、いっしょに、いこう。おれが、まもってあげる。」
「・・・・・・・はいぃ。」
「ワオオンッ!」
案の定、クロはルビートマトという言葉に釣られてギルドに行こうと言い出し、
それにつられたのか、ミルまで「行こう」と言い始めた。
そして俺は、はいと言うしかなく…。
これから準備を始めて、王都に向かう羽目になった。
何でだよ!俺が主だろ?!全然権限がないじゃないの!
そう心の中で叫んではみたものの、ロウキは「諦めろ」と言わんばかりに俺の背中をポンッと叩いた。
ああ……今日もこうして従魔に振り回されていくんだな―…。
◇
「俺は思うんだよ。」
「何をだ?」
「もしだよ?もしも、これからこういうことが増えるならば!
家と王都のギルドを繋ぐ転移装置作りたいわけ。
もう二日もかけて行くの、辛い!!」
「軟弱者の考えそうなことだな。
しかしまあ、移動中に面倒ごとに巻き込まれなくて済むなら、悪くはないな。」
「そうだろう?エマが前に教えてくれたんだよ。
俺の記憶次第で、ギルドとこの家が繋がるゲートが作れるって!
家の場所の記憶をギルドに設置するゲートに流し込んで、
家に設置するゲートにはギルドの記憶を流すことで、その間だけ移動できるらしいんだ!
今度絶対作るから!俺、魔力量だけはあるから絶対に作れる!性能は別として!」
「ほう。それは便利だな。早速、今回の依頼が終わったら生成してみるといい。」
「そうだな!とりあえず後でガーノスさんにも相談してみるよ!」
王都に向かう途中、俺はどうしても転移装置なるものを生成したくて、
エマが教えてくれた転移ゲートの話をロウキにしてみた。
するとロウキも、最初は「軟弱者」と罵っていたけど、
便利そうだからやってみるといいと言ってくれた。
だから俺は、王都に着いたらガーノスさんに相談してみるつもりでいた。
ガーノスさんがOKを出してくれたら、王都にも行きやすくなって、
もっといろんなことができるかもしれない。
それに、俺はまだスローライフを諦めたわけじゃないから!
王都と繋がることで、生活をより豊かにするためのものに出会えるかもしれない。
そうなれば、この世界をもっと楽しめるだろうから。
なんて思いながら、どんな風に作ろうか?
そんなことを考えていた-…
◇
ザワザワ―
ザワザワ―
「アイツだろ?王家直属の冒険者って。」
「あのフェンリル、やばくない?」
「俺、前に来た時も見たけど、1匹増えてる…。
あれ、ミノタウロスじゃね?」
「どんな従魔連れてんだよアイツ…まだガキだろ?」
「ガキかもしれないけど、王家直属だぞ?国王と知り合いらしいし、
あんまり変なこと言うとチクられて終わりだぜ?」
「あんま見んなって…」
ああ、今回も俺たちを見る目が怖いなぁ。
俺は何もしてないんだけどなぁ…。
なんて思いながら受付に向かうと、前回と同じくアリーシャさんが笑顔で迎えてくれた。
「お待たせしましたー。ガーノスさん、いますか?」
「はい!では、前回と同じように裏に回っていただけますか?」
「分かりました。」
アリーシャさんに声をかけると、前回と同じく別館に行くよう案内された。
この異様な空気の部屋から早足で抜け出し、裏手に回って別館へと移動する。
ドアを開けると、すでにガーノスさんが待っていてくれたので、軽く挨拶をしたあと、
今回の依頼の話を聞く前に、早速ゲートについての提案をしてみた。
「・・・・という感じなんですけど…。
お邪魔じゃなければ、この部屋にゲートを置いても大丈夫ですか?
ゲートは俺と魔力で繋がっている関係者だけなので、
俺たちしか通れはしないんですけどね…」
「いや、でもそれはいいんじゃないか?
何かあった時に、すぐに駆けつけてもらえるし。」
「本当ですか?!じゃあ、案がまとまったらまたご連絡します!」
「ああ。楽しみにしているぞ。」
「ありがとうございます!
あの、それで今回はどういった依頼なんでしょうか?」
ガーノスさんにゲートの提案をすると、あっさりと受け入れてもらえた。
許しももらえたことだし、ちゃんとしっかり案を練って、それから生成しようと決めた。
これができれば、俺の歩きの旅はぐっと楽になる。嬉しい!
そう思いながら、今度はガーノスさんの話を聞くために、依頼内容の確認に入った。
「王都を出て西に10キロほど向かうと鉱山があるんだが、
そこで採掘作業をしていた作業員が魔物に襲われてな。
一度は腕利きの冒険者パーティに調査に行かせたんだが、
魔物の正体が分からないまま、大怪我して帰ってきちまった。
そこでロウキやお前たちの力を借りられないかと思ってな…。」
「ええ…それ、俺生きて帰れます?」
「ロウキがいるなら大丈夫だろう。それに、そこのミノタウロス君も強そうじゃないか。」
「おれ、なまえ、ミル。」
「そうか!じゃあミル!俺たちの依頼、受けてくれるか?」
「ボスと、あるじが、いくならいく。」
「…まぁ、行きますけど。この子たち、こういうの好きみたいなので…
俺は自分が生きていられるか心配…。」
ガーノスさんに話を聞いた俺は、正直引いていた。
腕利きの冒険者が魔物の正体も分からずに大怪我を負って帰ってきたとか、普通にヤバいだろうよ。
だけど、俺の従魔たちはそれはそれは強くてたくましいからね。
こういう話がきっと大好きなんだろう。さっきからやたら楽しそうにしてるし。
「それじゃあ、食料とかを調達したら出かけますね。
あ、そういえば前回ダンジョンに入った時に色々素材が取れたんで、
売ってお金にしてから食料調達しようかなって。」
「お、じゃあひとまずここに出しな?俺たちが鑑定してやるからよ。」
「分かりました。大したものはないんですけど…
魔石と、魔法石の結晶と…あ、あった。ロウキの毛を集めたものです。
これで防具とかコートとかマントとか作れるって聞いたんで、一応持ってきました。」
「おお?!これはすげぇ量だな!フェンリルの毛は希少すぎてどこにも出回ってないから助かるぜ!
できればこれからも定期的に提供頼みたいくらいだ!」
「そうなんですか?じゃあ、集まれば持ってくるようにしますね。」
「おう!頼むわ!じゃあちょっと待ってな!」
「よろしくお願いします!」
鉱山に出かける前に、ダンジョンで採取できた素材と、
お風呂で集めたロウキの毛をアイテムボックスの鞄から取り出した。
ロウキとユキの二匹の毛は、子供のユキくらいの量で、ガーノスさんを驚かせていた。
本当に希少なんだと実感しながらしばらく待っていると、
ジャラジャラと音のする袋を持ったガーノスさんが戻ってきた。
「ヨシヒロ、良かったなぁ。一気に金持ちじゃねぇか?」
「え?」
「魔石は、低級魔物の魔石が48個、中級魔物の魔石が52個で、合わせて100個だった。
低級が4コセルと8コパ、中級が1ゴルドと5セルと6コセル。
魔法石は小サイズが20個で2セル、中サイズが10個で1ゴルド。
そして最後のフェンリルの体毛は、あの量だからな。一番の稼ぎ頭だ。5プラだ。
これで今回預かった素材の換金は終わりだな。」
「ありがとうございます。」
戻ってきたガーノスさんから換金したお金の説明を受け、袋を受け取った。
だけど、いまいちピンと来ていなくて頭の中で考えていると、エマが教えてくれた。
【低級魔物の魔石が4,800円、中級魔物の魔石が156,000円、
小サイズの魔法石が20,000円、中サイズの魔法石が100,000円、
フェンリルの体毛が5,000,000円です。合計5,280,800円です。】
「ヘッ?!ご、500万?!」
「どうした?急に大声出して。500万でも安いかもしれないがな。
なんせフェンリルの体毛だからな?あれはほぼ手に入らない代物だ。
それくらいの価値はあるもんさ。」
「ええ…フェンリルって…怖い…」
エマから聞かされた金額に驚愕していると、ガーノスさんは
「ロウキの体毛はものすごく希少で、それくらいの金額になるのは妥当だ」と教えてくれた。
ちょっと稼げたらいいな、くらいの気持ちで集めていたけど、まさかの結果。
そもそも前世でも、そんな大金を一度に手にしたことなんてないぞ…。
異世界の価値って、怖すぎる…。
そう思った瞬間だった。
「さてと。それじゃあ準備してきますね!準備ができたらお声掛けします!」
「ああ。そうしてくれ!」
もらった金額を鞄に入れた俺は、ひとまず鉱山に行くための準備をするためにギルドを出た。
ロウキたちはギルドに残して、初めて一人での王都探索。ちょっとだけワクワクした。
前回来たときはアーロンさんのところに行くから、それどころじゃなかったしな。
どんなものがあるのか楽しみだ。
そう思いながら、少しの間、買い物を楽しんでいた―…。
「ほう。これが、あの魔法使いが遺した卵とドラゴンか。」
「そう。でも、資料には何の卵か書いてなくて。ちょっとドキドキしてるんだよな。」
「たまご、いつ、うまれる?」
「どうかなぁ?もう結構経つけど、まだ反応がないもんな。」
この日は、ロウキが初めて卵とドラゴンと対面した日だった。
今までは体の大きさのせいで入れなかったけど、小さくなれることを公表したこともあり、
お風呂上がりに魔物管理室へと足を運んだ。
そこで初めて眠るドラゴンと、2つの卵を見たロウキ。
すると、すぐさま何の卵か考え始めた。
「この柄の卵なら、我は見たことがある。…しかし、何かは忘れたがな。」
「そこ一番忘れないで欲しかったやつ!!」
「まぁ、もうそろそろではないか?生まれるのは。もう一つの卵はまだまだのようだが。」
「え?本当?じゃあもう少ししたら会えるんだ?!」
「ロウキ本当か?!嬉しいっ!俺の弟!!
主は今のうちから、ちゃんと名前考えておいた方がいいぜ!」
「確かに…苦手作業の一つだからな。頑張る。」
ロウキは何の卵かは覚えていないようだったけど、見かけたことがあると言っていた。
そして「もうすぐ生まれるかもしれない」とも言っていて、一気に期待が高まった。
もちろん、中身がどんな魔獣なのか分からないから不安もあるけれど…。
クロは「今のうちに名前を考えておいた方がいいよ」とアドバイスをくれたので、
ちゃんと事前に考えておこうかなとは思っていた。
そんな時だった。
「ん?何かこっちに来る?」
「ああ。伝書ガラスだな。誰かからの手紙。おおかたギルドか王家じゃないのか?」
「ええ…やだよそれ…。」
「まぁ、とりあえず外に出てみろ。」
「分かったよ…はぁ…嫌だなぁ…。」
突然感じた気配。
敵意とかそういうものではなく、ただ静かに近づいてくる気配だった。
ロウキが「伝書ガラスだ」と言い、誰かが手紙をよこしたのだろうと教えてくれた。
俺に手紙をくれるなんて、誰だろうと思ったけど、
ロウキから「ギルドか王家」と言われて、ですよね…と重たい足取りで外へ向かった。
扉を開けて外に出ると、すでに1匹の伝書ガラスがテーブルの上にちょこんと乗っていた。
首からぶら下げているのがどうやら手紙らしく、そっと外してやると、そのまま飛び立っていった。
さすがにカラスは喋らないか。
なんて思いながら受け取った手紙を見ると、
封蝋にはギルドの紋章がハッキリと押されていて、嫌な予感しかしなかった。
「えーと…?
ヨシヒロと従魔たちに討伐依頼をしたいので、
3日以内に一度ギルドに来てほしい。…だって。」
俺の予想は当たり。早速ギルドからの討伐依頼だった。
俺のスローライフを邪魔する存在は、やっぱりギルドか…。
なんて思いながらロウキに伝えると、明らかに不服そうな表情をしていた。
そりゃそうだよな。人間に使われるなんて、ロウキが一番嫌がるだろうし。
「我を何だと思っておるんだ、ガーノスめ…。
まぁ、どうせ暇だし行ってやらんこともない。
それに先日ダンジョンに潜った時に手に入れた戦利品を売るのに丁度いいな。
これでクロが食べたがっていたルビートマトの種が買えるぞ。」
「ええ?!今の表情は明らかに行かない流れだったじゃん!?」
絶対に断ると思っていたのに、戦利品の換金とルビートマトの種の話を持ち出したロウキ。
すると、それに反応したのはクロだった。
大きな瞳をキラキラと輝かせながら、俺の目の前で翼をパタパタさせて言った。
「やったー!主!絶対行こう!!ルビートマト!!」
「ううっ…」
「あるじ、いっしょに、いこう。おれが、まもってあげる。」
「・・・・・・・はいぃ。」
「ワオオンッ!」
案の定、クロはルビートマトという言葉に釣られてギルドに行こうと言い出し、
それにつられたのか、ミルまで「行こう」と言い始めた。
そして俺は、はいと言うしかなく…。
これから準備を始めて、王都に向かう羽目になった。
何でだよ!俺が主だろ?!全然権限がないじゃないの!
そう心の中で叫んではみたものの、ロウキは「諦めろ」と言わんばかりに俺の背中をポンッと叩いた。
ああ……今日もこうして従魔に振り回されていくんだな―…。
◇
「俺は思うんだよ。」
「何をだ?」
「もしだよ?もしも、これからこういうことが増えるならば!
家と王都のギルドを繋ぐ転移装置作りたいわけ。
もう二日もかけて行くの、辛い!!」
「軟弱者の考えそうなことだな。
しかしまあ、移動中に面倒ごとに巻き込まれなくて済むなら、悪くはないな。」
「そうだろう?エマが前に教えてくれたんだよ。
俺の記憶次第で、ギルドとこの家が繋がるゲートが作れるって!
家の場所の記憶をギルドに設置するゲートに流し込んで、
家に設置するゲートにはギルドの記憶を流すことで、その間だけ移動できるらしいんだ!
今度絶対作るから!俺、魔力量だけはあるから絶対に作れる!性能は別として!」
「ほう。それは便利だな。早速、今回の依頼が終わったら生成してみるといい。」
「そうだな!とりあえず後でガーノスさんにも相談してみるよ!」
王都に向かう途中、俺はどうしても転移装置なるものを生成したくて、
エマが教えてくれた転移ゲートの話をロウキにしてみた。
するとロウキも、最初は「軟弱者」と罵っていたけど、
便利そうだからやってみるといいと言ってくれた。
だから俺は、王都に着いたらガーノスさんに相談してみるつもりでいた。
ガーノスさんがOKを出してくれたら、王都にも行きやすくなって、
もっといろんなことができるかもしれない。
それに、俺はまだスローライフを諦めたわけじゃないから!
王都と繋がることで、生活をより豊かにするためのものに出会えるかもしれない。
そうなれば、この世界をもっと楽しめるだろうから。
なんて思いながら、どんな風に作ろうか?
そんなことを考えていた-…
◇
ザワザワ―
ザワザワ―
「アイツだろ?王家直属の冒険者って。」
「あのフェンリル、やばくない?」
「俺、前に来た時も見たけど、1匹増えてる…。
あれ、ミノタウロスじゃね?」
「どんな従魔連れてんだよアイツ…まだガキだろ?」
「ガキかもしれないけど、王家直属だぞ?国王と知り合いらしいし、
あんまり変なこと言うとチクられて終わりだぜ?」
「あんま見んなって…」
ああ、今回も俺たちを見る目が怖いなぁ。
俺は何もしてないんだけどなぁ…。
なんて思いながら受付に向かうと、前回と同じくアリーシャさんが笑顔で迎えてくれた。
「お待たせしましたー。ガーノスさん、いますか?」
「はい!では、前回と同じように裏に回っていただけますか?」
「分かりました。」
アリーシャさんに声をかけると、前回と同じく別館に行くよう案内された。
この異様な空気の部屋から早足で抜け出し、裏手に回って別館へと移動する。
ドアを開けると、すでにガーノスさんが待っていてくれたので、軽く挨拶をしたあと、
今回の依頼の話を聞く前に、早速ゲートについての提案をしてみた。
「・・・・という感じなんですけど…。
お邪魔じゃなければ、この部屋にゲートを置いても大丈夫ですか?
ゲートは俺と魔力で繋がっている関係者だけなので、
俺たちしか通れはしないんですけどね…」
「いや、でもそれはいいんじゃないか?
何かあった時に、すぐに駆けつけてもらえるし。」
「本当ですか?!じゃあ、案がまとまったらまたご連絡します!」
「ああ。楽しみにしているぞ。」
「ありがとうございます!
あの、それで今回はどういった依頼なんでしょうか?」
ガーノスさんにゲートの提案をすると、あっさりと受け入れてもらえた。
許しももらえたことだし、ちゃんとしっかり案を練って、それから生成しようと決めた。
これができれば、俺の歩きの旅はぐっと楽になる。嬉しい!
そう思いながら、今度はガーノスさんの話を聞くために、依頼内容の確認に入った。
「王都を出て西に10キロほど向かうと鉱山があるんだが、
そこで採掘作業をしていた作業員が魔物に襲われてな。
一度は腕利きの冒険者パーティに調査に行かせたんだが、
魔物の正体が分からないまま、大怪我して帰ってきちまった。
そこでロウキやお前たちの力を借りられないかと思ってな…。」
「ええ…それ、俺生きて帰れます?」
「ロウキがいるなら大丈夫だろう。それに、そこのミノタウロス君も強そうじゃないか。」
「おれ、なまえ、ミル。」
「そうか!じゃあミル!俺たちの依頼、受けてくれるか?」
「ボスと、あるじが、いくならいく。」
「…まぁ、行きますけど。この子たち、こういうの好きみたいなので…
俺は自分が生きていられるか心配…。」
ガーノスさんに話を聞いた俺は、正直引いていた。
腕利きの冒険者が魔物の正体も分からずに大怪我を負って帰ってきたとか、普通にヤバいだろうよ。
だけど、俺の従魔たちはそれはそれは強くてたくましいからね。
こういう話がきっと大好きなんだろう。さっきからやたら楽しそうにしてるし。
「それじゃあ、食料とかを調達したら出かけますね。
あ、そういえば前回ダンジョンに入った時に色々素材が取れたんで、
売ってお金にしてから食料調達しようかなって。」
「お、じゃあひとまずここに出しな?俺たちが鑑定してやるからよ。」
「分かりました。大したものはないんですけど…
魔石と、魔法石の結晶と…あ、あった。ロウキの毛を集めたものです。
これで防具とかコートとかマントとか作れるって聞いたんで、一応持ってきました。」
「おお?!これはすげぇ量だな!フェンリルの毛は希少すぎてどこにも出回ってないから助かるぜ!
できればこれからも定期的に提供頼みたいくらいだ!」
「そうなんですか?じゃあ、集まれば持ってくるようにしますね。」
「おう!頼むわ!じゃあちょっと待ってな!」
「よろしくお願いします!」
鉱山に出かける前に、ダンジョンで採取できた素材と、
お風呂で集めたロウキの毛をアイテムボックスの鞄から取り出した。
ロウキとユキの二匹の毛は、子供のユキくらいの量で、ガーノスさんを驚かせていた。
本当に希少なんだと実感しながらしばらく待っていると、
ジャラジャラと音のする袋を持ったガーノスさんが戻ってきた。
「ヨシヒロ、良かったなぁ。一気に金持ちじゃねぇか?」
「え?」
「魔石は、低級魔物の魔石が48個、中級魔物の魔石が52個で、合わせて100個だった。
低級が4コセルと8コパ、中級が1ゴルドと5セルと6コセル。
魔法石は小サイズが20個で2セル、中サイズが10個で1ゴルド。
そして最後のフェンリルの体毛は、あの量だからな。一番の稼ぎ頭だ。5プラだ。
これで今回預かった素材の換金は終わりだな。」
「ありがとうございます。」
戻ってきたガーノスさんから換金したお金の説明を受け、袋を受け取った。
だけど、いまいちピンと来ていなくて頭の中で考えていると、エマが教えてくれた。
【低級魔物の魔石が4,800円、中級魔物の魔石が156,000円、
小サイズの魔法石が20,000円、中サイズの魔法石が100,000円、
フェンリルの体毛が5,000,000円です。合計5,280,800円です。】
「ヘッ?!ご、500万?!」
「どうした?急に大声出して。500万でも安いかもしれないがな。
なんせフェンリルの体毛だからな?あれはほぼ手に入らない代物だ。
それくらいの価値はあるもんさ。」
「ええ…フェンリルって…怖い…」
エマから聞かされた金額に驚愕していると、ガーノスさんは
「ロウキの体毛はものすごく希少で、それくらいの金額になるのは妥当だ」と教えてくれた。
ちょっと稼げたらいいな、くらいの気持ちで集めていたけど、まさかの結果。
そもそも前世でも、そんな大金を一度に手にしたことなんてないぞ…。
異世界の価値って、怖すぎる…。
そう思った瞬間だった。
「さてと。それじゃあ準備してきますね!準備ができたらお声掛けします!」
「ああ。そうしてくれ!」
もらった金額を鞄に入れた俺は、ひとまず鉱山に行くための準備をするためにギルドを出た。
ロウキたちはギルドに残して、初めて一人での王都探索。ちょっとだけワクワクした。
前回来たときはアーロンさんのところに行くから、それどころじゃなかったしな。
どんなものがあるのか楽しみだ。
そう思いながら、少しの間、買い物を楽しんでいた―…。
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とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
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