魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル

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51話 じいちゃんに魔物について教えてもらいました

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「ヨシヒロよ、今日は鉱山に何か用があって来たのか?
セルリアが足らぬのか?」

「あ、そうそう。今日はね、ちょっと相談があって。」

「相談?吾輩に語りかけるだけではダメだったのか?」

「いや、それも考えたんだけど、クロたちが遊びたがってたし、
セドラに会いたいだろうから来たんだ。」

「そうか…嬉しいのう。
長い時代を生き抜いてきたが、吾輩は天涯孤独の身じゃった。
唯一心を通わせておったのが、あの魔法使いだけじゃったからな。
それが今では、こんなにも沢山の家族ができた。
家族がいるというのは、この上ない至福じゃな。」

「セドラ…」


クロとユキとしばらく戯れていたあと、セドラは今日この場に来た理由を訊ねてきた。
相談があると伝えると、「語りかければよかったのに」と言ってくれたけど、
クロたちが会いたがっていたからと話すと、セドラは目尻を下げて優しく微笑んだ。
セドラには家族がいなかったようで、かつての友である偉大な魔法使いが亡くなってから、
眠りにつくまでの間は、本当に孤独だったらしい。
だからこそ、今クロたちが懐いてくれて、家族と呼べる存在になったことが、心から嬉しいようだった。
俺、こういうの弱いんだよな…。なんて思いながら、少しウルッとしていた。


「それで?吾輩に相談というのは?」

「あ、実は魔物について教えてほしくて…。
俺が生成したものや既存品を、解析して複製できる魔物っていないかなって。」

「…知識系魔物と呼ばれる存在か?」

「あ、ロウキもそんなこと言ってた。
人間でできる人もいると思うんだけど、俺、人間あんまり得意じゃなくてさ。
“信用できる”って思える人って、そう簡単には出会えない気がしてて。
だから、友達になれる子がいたら、俺を手伝ってくれないかなぁって。」

「なるほどのう。」

「都合がいいことは分かってるんだけど、できたらいいなぁって。
俺は自分の知識をもとに、いろいろ生成することはできるんだけど、解析はダメみたいで…。」


家族の絆にポカポカしていたところで、セドラは話題を戻してくれた。
今探している魔物について話すと、ロウキと同じように「知識系魔物のことか」と言った。
この世界では、そういう魔物を“知識系”って呼ぶのか。なんだか不思議だなぁ。


「解析と生成か…。うーむ…スライムではダメなのか?
あれらの中には特殊個体がいて、お前さんの望む力を持つ子もおるぞ?」

「スライムかぁ…前世では漫画でよく見かけたけど…
そういうタイプのスライムって、本当に存在するんだ?」

「そうじゃな。過去には魔導書を飲み込んでそこに書いてあった魔法をマスターした個体もおったぞ。
まぁ、吾輩も詳しいことは分からんのじゃが、
この辺りだと…ここから海岸に向かって歩いていくと洞窟があるんじゃ。
昔はその洞窟に、スライムが大量発生しておったぞ。行ってみるといい。」


どんな魔物がいるのかなとワクワクしていると、セドラは「スライムではダメなのか」と言った。
そういうの、見たことはあったけど本当に特殊個体のスライムって存在するんだ?と驚いた。
そして、海岸にある洞窟にスライムが生息していることを教えてもらうと、
即座に反応したのはクロとミルだった。


「洞窟?!探検?!主、行こーぜ!」

「おれ、いきたい!」

「クロ兄さん。僕もすぐに行ってみたい気持ちはあるんだけど…
もうすぐ日が暮れますので、今日は野営か王都に泊まって、
明日の朝出発した方がいいかなと思います。」

「うむ。夜には夜の魔物が出るからな。ぎゃーぎゃーうるさいし、
明日の朝出る方が良いかもしれんな。」

「んー…確かに主が怪我しちゃいけないしなぁ…。じゃあ明日だな!ミル!」

「あした、たのしみ!」


クロはすぐさま行きたいと言って、翼をパタパタさせていたけど、
そこは冷静なユキが「夜は危険だから明日にした方がいい」と提案してくれた。
ユキってロウキとは正反対な感じがするけど、
ロウキと同じで冷静に判断する子なんだよなぁ。
なんだか秘書のような存在。俺にとってはありがたいかも?
なんて思っていると、クロもロウキもユキの意見に賛成して、
今日の夜はゆっくり過ごすことが決まった。


「そうだなぁ。じゃあ、せっかくだし今日はここに泊まっていこうよ。
俺が皆のベッドとか布団とか、生成するからさ。」

「わー!そうしようそうしよう!じゃあ今日はじいちゃんと一緒だな!」

「良いのか?王都に行けば快適に休めるのじゃぞ?」

「大丈夫だよー。俺はベッドさえあれば寝られるし。
じゃあ、ちょっと待っててねー・・・・・クレオ!」



ゴトンッ-



「できたできたー。はい、これで今日はここに泊まれるねぇ。」

「なんと…!ヨシヒロはやはり面白いのう。」

「そう?結構便利な加護をもらっちゃったから、こういうのは有効活用しないとねぇ。」

「そうか…ありがとう、ヨシヒロ。」


今夜はこの場で一泊することが決まり、どうせなら野営しようと俺が提案した。
そしてすぐに、自分のベッドを生成。ロウキたちが眠れるように布団も用意した。
その様子を見ていたセドラは、「王都に行かなくてもいいのか」と心配してくれたけど、
俺は「今日はここに泊まるのが正解だ」と、はっきり思っていた。
だから、「大丈夫だよ」と伝えると、セドラは小さく「ありがとう」と呟いた。

家族って、一緒にいられるときは、いられた方がいいに決まってる。
そう思いながら、いろんな話に花を咲かせて、夜を過ごした――…。









翌朝-


「それじゃあ、行ってくるな、じいちゃん!またな!」

「行ってきます!セドラおじい様!」

「ばいばい!」


朝食のサンドイッチをみんなで食べて、少し休憩したあと。
俺たちはセドラに手を振って、鉱山をあとにした。
みんな、すっかり家族だなぁ。幸せだなぁ―。
なんて思いながら外に出ると、太陽が眩しくて一瞬目を閉じた。
そして目を開けた瞬間、目の前に鉱山の採掘作業員の皆さんがずらりと並んでいて、俺は固まった。


「ヨシヒロ様ご一行がお帰りだ!道を開けるように!」

「ええっ…そんなたいそうなことしなくても…」

「すげぇ…フェンリルにミノタウロスに、なんかちっこいのが飛んでる…」

「本当にこのガキが従えてんのか?どう見てもおかしいだろう…」

「俺、初めて見たよフェンリルとか…」

「デカい…こわっ…」


どうやら昨日は本当に作業の休みだったらしく、
今日はガタイのいいお兄さんやおじさんたちで鉱山が溢れかえっていた。
そんな作業員の皆さんは、俺たちを見て驚いた表情を浮かべたあと、
警備兵の指示で道を開けてくれた。

いやいや…こういうのやめてよ、目立つじゃない!
なんて思いながら、苦笑いで足早にその場を離れた。
鉱山が作業場だってこと、すっかり忘れてたな…。
今度から気をつけて行かないと、作業員の人たちにも迷惑がかかってしまうからな。

そう思いながら、今度王都で仕事のサイクルについて聞いてみようと考えていた。


「えーっと、ここから海岸に向けて道なりに進めばいいのか?」

「そうだな。じいさんに言われて、洞窟があったことを思い出したわ。
我は随分とそこには行っておらぬが、確かに昔はスライムが湧いて出ていた気がする。」

「そっかぁ。でもスライムって、友達になれるかな?」

「従魔だろうが?」

「そうなんだけど、せっかくなら友達になりたいじゃん。
だってスライムだよ?ぷにぷに天国だよ?」

「知らんわ!毒持ちスライムもいるんだ。安易に手を出すなよ。」

「そうなのかぁ…それは気をつけないとだなぁ…。」


海岸に向けて続く道を歩きながら、ロウキは洞窟のことを思い出したようで、
「昔はスライムが湧いていた」と教えてくれた。
湧くほどの従魔は必要ないかなぁと思うけど、選別するのが難しそうだな。
そう思いながら「友達になれるかな」と問うと、いつものように目を細めて呆れ顔のロウキ。
スライムは絶対的にぷにぷにで癒し枠だと思っていたから、
そう伝えると、「毒持ちもいるから安易に触るな」と、しっかり怒られてしまった。

さすがに毒を持ったスライムは抱きしめられないなぁ…。
でも、可愛いんだろうなぁ。だってスライムだからさ。
なんて一人でぶつぶつ言いながら、海岸の洞窟を目指して歩き出した―…。
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