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54話 その想いがいつか届きますように
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緊張するなぁ…。でも、やるしかないよな。
どうか、ラピスの気持ちがみんなに届きますように。
「我が従魔ラピスを長と認める者よ、意志を示して我が従魔となれ!」
「……」
「……」
「……」
エマに教えてもらった言葉を、緊張しながらスライムたちに向けて発した。
10秒、20秒、30秒…待つ時間がやけに長く感じる。
ラピスじゃダメなのか?俺の従魔になるのが嫌なのか?
何も変化がないまま、不安ばかりが募っていく。
ラピスもじっとスライムたちを見つめて、答えを今か今かと待っていた。
その時―
ポワッ
ポワッ ポワッ
「わっ!え、スライムの体が光り始めたけど?!」
「これは…」
【スライムたちがラピスを長と認め、従魔になると決めたようです。】
「すげぇー!綺麗だなぁ!」
「おいしそう…」
「とても綺麗です、あるじさま!」
「ああ、そうだな。とっても綺麗だ…」
不安ばかりが募っていたその時、スライムたちが一匹、また一匹と光り始めた。
まるでクリスマスシーズンのイルミネーションのような、美しい光。
その光を見たエマが「ラピスが長として認められたようです」と教えてくれて、
俺はホッとして、体の力が一気に抜けた。
そして、ラピスの眷属となったことで、ラピス自身にも変化が訪れた。
他のスライム同様、青い光に包まれ、あっという間に一回り大きくなった。
ユキの時は角が生えたりしたけど、ラピスは見た目の変化は大きさだけ。
スライムの進化は、外見にはあまり現れないのかもしれないな。
そう思っていると、ラピスが俺の方を向き、じっと見つめた。
そしてニッと笑って口を開いた。
「ヨシヒロ様。僕たちを助けてくれてありがとう。」
「わぁ…本当に進化できたら喋れるようになるんだな?」
「僕は、皆を護りたくてヨシヒロ様に頼りました。
受け入れてくれて、本当に嬉しい!
ラピスという名前も気に入ってます!ありがとう!」
「ラピスー…可愛いなぁ。これからよろしくな?」
俺をじっと見つめたあと、ラピスは言葉を発した。
進化すれば喋れるようになるって言ってたけど、本当だったんだな。
ラピスの勇気がもたらした奇跡。そんな気がして、胸がいっぱいになった。
その時、ロウキが少し気まずそうに声を出した。
「全員…というわけではないようだな…」
「え?」
「あの4匹は…どうやら、まだ気持ちが動いていないようだ。」
「あ…」
全員が従魔になったと思っていたけど、ロウキに言われて一番左の穴の入り口側を見ると、
4匹のスライムが固まって一緒にいることに気づいた。
他のスライムたちは光に包まれ、少し大きくなっていたけど、
あの4匹は小さいまま。
それに、どうも俺を睨んでいるように見えた。
ふとラピスを見ると、悲しそうな目でその4匹を見つめたあと、
ピョンピョンと跳ねながら彼らのもとへ向かった。
俺には言葉が分からないけど、何やら話し込んでいるようで。
3分ほどの話し合いの末、ラピスは突然背を向けて、4匹から離れた。
「ラピス?あの子たちはどうした?」
「皆、人間は信じられないって…どうせ殺されるって…」
「ああ…そうか…まあ、そうだな…。そう思われても仕方がないかもしれないな…。」
「ヨシヒロ様は違うって言った…だけど、信じられないって…
一緒には行かずに、ここに残るって…」
「そっか…」
戻ってきたラピスに事情を訊くと、どうやら人間そのものが信じられないようで、
従魔になり、この地を離れることを拒んでいたらしい。
最初にラピスの記憶を覗かせてもらった時、
人間は何のためらいもなくスライムを討伐し、素材として使っていた。
きっと、その中にはこの子たちにとって許せない行為があったんだろう。
そんな人間を信じるなんて、簡単にはできない。
それは、俺にも理解できた。
「ラピスよ。今は何を言っても平行線だ。日を改めて話し合う方が良いぞ。」
「…はい。フェンリル様。」
「我のことはロウキと呼ぶがいい。」
「ロウキ様…」
俺にはどうしてやることもできずに考え込んでいると、ロウキが「日を改めた方がいい」と言い、
ラピスもその言葉に静かに頷いて、力なく俺の肩に乗っかった。
まあ、確かに今すぐどうこうできる問題ではないのかもしれない。
嫌だと言う者を無理やり従魔にすることはできないし、それでラピスが喜ぶわけもない。
時間はかかるかもしれないけど、今日はひとまず帰った方がいいかもな。
そう思いながら、この20匹余りのスライムをどうやって連れて帰るか悩んだ。
「ねぇ、この子たち、どうやって連れて帰ればいいの?」
「…大行進で歩かせるか?」
「スライムの大行進ってこと?!可愛いけど、注目の的だから困るなぁ…」
「小さくなってもらい、父上の背中に乗ってもらうのはどうでしょうか?」
「なっ?!」
「お、それいいね!もうそれしかない!
ロウキ、お願い!」
「…仕方があるまい。今日だけだぞ。」
「ありがと!ラピス!皆に小さくなるように言って、ロウキの背中に乗るように伝えて!」
「はい!分かりました、ヨシヒロ様!」
ロウキは「歩かせるか」と言ったけど、さすがに目立ちすぎるから即却下。
…でも、大行進を見てみたい気もめっちゃする。絶対可愛いじゃんね。
そんなことを考えていると、ユキが「みんなに小さくなってもらい、ロウキの背中に乗せる」という提案をしてくれた。
さすがのロウキも、ユキの提案をむげにはできなかったのか、渋々了承してくれたので、
ラピスにそれを伝えて、早速みんなには小さくなってもらい、ロウキの背中に乗ってもらった。
小さくなったせいで、モフモフの体毛の中に埋もれて、まったく見えなくなった。
「よし…じゃあ、今日は帰ろうか、ラピス。」
「はい…」
「早いうちにまた来よう。な?」
「はい…ヨシヒロ様。」
準備ができたところで「帰ろう」と言うと、ラピスはあの4匹のスライムをしばらく見つめていた。
やっぱり、大切な仲間を全員連れて帰れないことが辛いんだろうな…。
だけど、さっきロウキが言ったように、すぐには解決できる問題じゃない。
少し時間をおいて、もう一度説得する方がいい気がする。
ラピスには残酷かもしれないけど、俺たちは洞窟を出るために出口へ向かった。
だけど、また来るまでに、あの子たちが誰にも襲われないようにしなきゃ。
そう思い、入り口に結界を張ることにした。
「セルリアン・バリア!」
「…まあ、これなら誰も入ってこれまい。」
「だといいけど、俺の魔法の性能は不明だからな…」
「まあ、大丈夫だろう。さっさと帰るぞ。」
無事に結界を張ることはできたけど、その性能がちゃんとしているかは不明。
俺の場合、魔力は無限なのに、威力や性能がまともじゃないから、
ちゃんと機能しているのか不安になる。
そんなことを考えながら洞窟をあとにして、早くスライムたちを家に連れて帰るため、
どこにも寄らずに帰宅することにした。
「ラピス、あんまり考えすぎないようにな。」
「ありがとうございます、ヨシヒロ様…」
「俺にできることがあれば、するからな。」
「はいっ…」
帰り道の途中、ラピスに声をかけると、あまり元気がなくて心配になった。
一生懸命頑張っても、すんなりうまくいくことばかりじゃないからなぁ。
だけど、ラピスの場合は、危険を顧みず仲間を助けてほしいって訴えた。
その頑張りが、どうにか報われてほしい。
そう思いながら、ラピスの頭をそっと撫でた。
一日でも早く、ラピスの気持ちがあの4匹のスライムに届く日が来ますように―…。
どうか、ラピスの気持ちがみんなに届きますように。
「我が従魔ラピスを長と認める者よ、意志を示して我が従魔となれ!」
「……」
「……」
「……」
エマに教えてもらった言葉を、緊張しながらスライムたちに向けて発した。
10秒、20秒、30秒…待つ時間がやけに長く感じる。
ラピスじゃダメなのか?俺の従魔になるのが嫌なのか?
何も変化がないまま、不安ばかりが募っていく。
ラピスもじっとスライムたちを見つめて、答えを今か今かと待っていた。
その時―
ポワッ
ポワッ ポワッ
「わっ!え、スライムの体が光り始めたけど?!」
「これは…」
【スライムたちがラピスを長と認め、従魔になると決めたようです。】
「すげぇー!綺麗だなぁ!」
「おいしそう…」
「とても綺麗です、あるじさま!」
「ああ、そうだな。とっても綺麗だ…」
不安ばかりが募っていたその時、スライムたちが一匹、また一匹と光り始めた。
まるでクリスマスシーズンのイルミネーションのような、美しい光。
その光を見たエマが「ラピスが長として認められたようです」と教えてくれて、
俺はホッとして、体の力が一気に抜けた。
そして、ラピスの眷属となったことで、ラピス自身にも変化が訪れた。
他のスライム同様、青い光に包まれ、あっという間に一回り大きくなった。
ユキの時は角が生えたりしたけど、ラピスは見た目の変化は大きさだけ。
スライムの進化は、外見にはあまり現れないのかもしれないな。
そう思っていると、ラピスが俺の方を向き、じっと見つめた。
そしてニッと笑って口を開いた。
「ヨシヒロ様。僕たちを助けてくれてありがとう。」
「わぁ…本当に進化できたら喋れるようになるんだな?」
「僕は、皆を護りたくてヨシヒロ様に頼りました。
受け入れてくれて、本当に嬉しい!
ラピスという名前も気に入ってます!ありがとう!」
「ラピスー…可愛いなぁ。これからよろしくな?」
俺をじっと見つめたあと、ラピスは言葉を発した。
進化すれば喋れるようになるって言ってたけど、本当だったんだな。
ラピスの勇気がもたらした奇跡。そんな気がして、胸がいっぱいになった。
その時、ロウキが少し気まずそうに声を出した。
「全員…というわけではないようだな…」
「え?」
「あの4匹は…どうやら、まだ気持ちが動いていないようだ。」
「あ…」
全員が従魔になったと思っていたけど、ロウキに言われて一番左の穴の入り口側を見ると、
4匹のスライムが固まって一緒にいることに気づいた。
他のスライムたちは光に包まれ、少し大きくなっていたけど、
あの4匹は小さいまま。
それに、どうも俺を睨んでいるように見えた。
ふとラピスを見ると、悲しそうな目でその4匹を見つめたあと、
ピョンピョンと跳ねながら彼らのもとへ向かった。
俺には言葉が分からないけど、何やら話し込んでいるようで。
3分ほどの話し合いの末、ラピスは突然背を向けて、4匹から離れた。
「ラピス?あの子たちはどうした?」
「皆、人間は信じられないって…どうせ殺されるって…」
「ああ…そうか…まあ、そうだな…。そう思われても仕方がないかもしれないな…。」
「ヨシヒロ様は違うって言った…だけど、信じられないって…
一緒には行かずに、ここに残るって…」
「そっか…」
戻ってきたラピスに事情を訊くと、どうやら人間そのものが信じられないようで、
従魔になり、この地を離れることを拒んでいたらしい。
最初にラピスの記憶を覗かせてもらった時、
人間は何のためらいもなくスライムを討伐し、素材として使っていた。
きっと、その中にはこの子たちにとって許せない行為があったんだろう。
そんな人間を信じるなんて、簡単にはできない。
それは、俺にも理解できた。
「ラピスよ。今は何を言っても平行線だ。日を改めて話し合う方が良いぞ。」
「…はい。フェンリル様。」
「我のことはロウキと呼ぶがいい。」
「ロウキ様…」
俺にはどうしてやることもできずに考え込んでいると、ロウキが「日を改めた方がいい」と言い、
ラピスもその言葉に静かに頷いて、力なく俺の肩に乗っかった。
まあ、確かに今すぐどうこうできる問題ではないのかもしれない。
嫌だと言う者を無理やり従魔にすることはできないし、それでラピスが喜ぶわけもない。
時間はかかるかもしれないけど、今日はひとまず帰った方がいいかもな。
そう思いながら、この20匹余りのスライムをどうやって連れて帰るか悩んだ。
「ねぇ、この子たち、どうやって連れて帰ればいいの?」
「…大行進で歩かせるか?」
「スライムの大行進ってこと?!可愛いけど、注目の的だから困るなぁ…」
「小さくなってもらい、父上の背中に乗ってもらうのはどうでしょうか?」
「なっ?!」
「お、それいいね!もうそれしかない!
ロウキ、お願い!」
「…仕方があるまい。今日だけだぞ。」
「ありがと!ラピス!皆に小さくなるように言って、ロウキの背中に乗るように伝えて!」
「はい!分かりました、ヨシヒロ様!」
ロウキは「歩かせるか」と言ったけど、さすがに目立ちすぎるから即却下。
…でも、大行進を見てみたい気もめっちゃする。絶対可愛いじゃんね。
そんなことを考えていると、ユキが「みんなに小さくなってもらい、ロウキの背中に乗せる」という提案をしてくれた。
さすがのロウキも、ユキの提案をむげにはできなかったのか、渋々了承してくれたので、
ラピスにそれを伝えて、早速みんなには小さくなってもらい、ロウキの背中に乗ってもらった。
小さくなったせいで、モフモフの体毛の中に埋もれて、まったく見えなくなった。
「よし…じゃあ、今日は帰ろうか、ラピス。」
「はい…」
「早いうちにまた来よう。な?」
「はい…ヨシヒロ様。」
準備ができたところで「帰ろう」と言うと、ラピスはあの4匹のスライムをしばらく見つめていた。
やっぱり、大切な仲間を全員連れて帰れないことが辛いんだろうな…。
だけど、さっきロウキが言ったように、すぐには解決できる問題じゃない。
少し時間をおいて、もう一度説得する方がいい気がする。
ラピスには残酷かもしれないけど、俺たちは洞窟を出るために出口へ向かった。
だけど、また来るまでに、あの子たちが誰にも襲われないようにしなきゃ。
そう思い、入り口に結界を張ることにした。
「セルリアン・バリア!」
「…まあ、これなら誰も入ってこれまい。」
「だといいけど、俺の魔法の性能は不明だからな…」
「まあ、大丈夫だろう。さっさと帰るぞ。」
無事に結界を張ることはできたけど、その性能がちゃんとしているかは不明。
俺の場合、魔力は無限なのに、威力や性能がまともじゃないから、
ちゃんと機能しているのか不安になる。
そんなことを考えながら洞窟をあとにして、早くスライムたちを家に連れて帰るため、
どこにも寄らずに帰宅することにした。
「ラピス、あんまり考えすぎないようにな。」
「ありがとうございます、ヨシヒロ様…」
「俺にできることがあれば、するからな。」
「はいっ…」
帰り道の途中、ラピスに声をかけると、あまり元気がなくて心配になった。
一生懸命頑張っても、すんなりうまくいくことばかりじゃないからなぁ。
だけど、ラピスの場合は、危険を顧みず仲間を助けてほしいって訴えた。
その頑張りが、どうにか報われてほしい。
そう思いながら、ラピスの頭をそっと撫でた。
一日でも早く、ラピスの気持ちがあの4匹のスライムに届く日が来ますように―…。
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