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57話 色とりどりな我が家も悪くないなと思います
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ギルド別館―
「今日はそんなことがあったのか?
海岸でよく魔法の練習してるやつらだろ?
遅咲きで魔法が使えるようになって嬉しいのか知らんが、
無駄に魔法を使ってる連中だ。制御が下手で的にも当たらねぇから、
魔物討伐も二人じゃできないって話だ。しかも性格が悪くて、誰もパーティ組んでくれねぇんだ。
しっかし、スライムくんたちには怖い思いをさせて悪かったな。
けどよ、こいつは安心していいからな。絶対にお前たちを護ってくれるぞ。」
「……」
「ガーノス師匠、ありがとう。」
「おお?ラピス、お前俺のことを“師匠”って呼んでくれるのか?」
「ギルドの頂点ですから。師匠みたいに、ちゃんと頂点に立って護りたいです。」
「そうかそうか!お前なら大丈夫だ、ラピス!その気持ちが大事なんだからな!」
ギルドの別館で夕食を囲みながら、今日あった出来事を話していた俺たち。
ガーノスさんから情報をもらって、あの魔導士二人がかなり問題のある連中だと分かった。
魔法が使えるようになったのが嬉しいのは分かるけど、ああいう使い方は違うだろうって思う。
力を持ったなら、それをどう使うかが大事なんだよな。
なんて思っていると、ガーノスさんは、あいつらの代わりにスライムたちに謝ってくれて、
それを見ていたラピスは、感謝の気持ちを込めて「師匠」と呼び始めた。
その理由は、ガーノスさんがこのギルドをまとめる“頂点”の存在だから。
ラピスも、そんなふうに誰かを護れる存在になりたいと思ったらしい。
なんか健気だなぁ、ラピスは。
そう思いながら、会話を続けて食事を楽しんだ。
ラピスの想い。
どうか、あの子たちに届いてほしいなぁ……。
◇
「それじゃあ、今日はありがとうございました!早速ゲートで帰ります!」
「ああ!こちらこそ楽しい食事をありがとな。また近いうちに会って飯食おうぜ!」
「ありがとうございます!それじゃあ、おやすみなさい!」
「またな!」
ガーノスさんたちと食事を楽しんで、約2時間が経った頃。
そろそろ帰ろうかと片づけを手伝い、帰り支度を済ませた。
そして、いよいよ初めての転移ゲートでの帰宅。
出来た時に覗いてみただけだった俺は、初めてのゲート移動にドキドキしていた。
ロウキたちが最初に通った時、何ともなかったよな?
そう思いながら、意を決してゲートに足を踏み入れた。
「…本当に帰れた…」
「作った時に見ただろうが?」
「見たけど、実感わかなくてさ。いやぁ、これは便利なもの作ったなぁ。
あ、スライム君たち。ここが俺たちの家だよ。好きな場所で過ごしてね。」
恐る恐る足を踏み入れてみると、出た先は本当に俺たちの家だった。
もしかして、俺ってば結構すごいものを作ったんじゃ?
そう思いながら、4匹のスライム君たちを地面に下ろして「自由に過ごしてね」と伝えた。
すると、そこら中に散らばっていたスライムたちが次々と顔を出し、
4匹の到着を祝うようにピョンピョンと跳ねながらこちらへ向かってきた。
その光景はとてもカラフルで本当に癒しの存在そのものだった。
「やっぱり、一緒がいいよなぁ。」
「良かったな!ラピス!」
「無事に全員が戻ってこられて、安心しましたね!」
「はい!クロちゃん、ユキちゃん、ミルくんもありがとう!」
「よかったね。ここなら、あるじがいるから、あんしん。」
再会を喜ぶ姿を見て、クロたちはラピスに「良かったね」と声をかけた。
魔物同士でこんなふうに言い合えるって、俺はすごいことなんじゃないかと思ってる。
だって、魔物だよ?
互いのために動くなんて、あまりしない気がする。
それは本能がそうさせるのか、自分が生きていくのに必死で、気遣う余裕がないからかもしれない。
でも、そんな中でもこうしてお互いの手を取り合えるって、
素敵じゃないの?って思う。
「ヨシヒロ様…本当にありがとうございます。
僕は、このご恩に報いるために、生涯あなたの側で、微力ながらお力になれたらと思います。」
「何でそんなにかしこまってんの。もう家族じゃん、俺たち。
家族が困ってる時は助け合うのが当たり前だからな。
これからは元気に過ごしてくれたら、それでいいよ。」
「ヨシヒロ様…」
ラピスは、今回の件で相当な恩を感じているのか、「生涯力になれたら」と言ってくれた。
まさかそんなふうに言うなんて思っていなかった俺は、「家族だから当たり前だよ」と返した。
そして、「元気に過ごしてくれたらそれでいい」と言うと、ラピスは俯いて、小さく笑った。
この子たちにとって、人間は脅威でしかなかった。
でも、少しでもその傷が癒せたらいいな。
そのためにもこの子たちは、絶対に護っていかなきゃ。
改めて、そう強く決意した―…。
◇
魔物管理室―
「ひび割れちゃってるけど、出ては来ないみたいだな。」
「しかし、ちゃんと鼓動は聞こえるからな。問題はないだろうとは思うが…」
「ヨシヒロ様、ごめんなさい…僕が飛び跳ねちゃったから…」
「あの時はラピスも大変だったんだから、もう気にしなくていいよ。」
その日の夜、俺たちはお風呂上がりに魔物管理室に立ち寄っていた。
ラピスが飛び跳ねてひびが入ってしまった卵は、鼓動はしているものの、まだ孵る気配はない。
本当に大丈夫なんだろうか?そんな不安がじわじわと胸に広がってくる。
ラピスも、自分のせいで卵に影響が出ているのではないかと、悲しそうな顔で謝ってくれた。
でも、ラピスにも事情があったんだから、仕方ないよな。
「それにしても、なんでこの卵2個は鑑定できないんだろうな?」
「この卵からは魔法の力を感じるからな。あの魔法使いが詮索されないように、何か仕掛けているのではないか?」
「あー…確かにそれはあるかも。それだけ貴重な卵なのか、護りたい卵だったのか…
どっちにしても、ひび割れちゃったんだから、早く出ておいでー?待ってるよー。」
ラピスが心配しちゃうから、早くその顔を見せてほしくて。
いつもは何かあったら怖くて触れられなかったけど、
卵に声をかけて、そっと手をかざし、優しく撫でてみた。
触れなくても命の鼓動は感じ取れていたけど、
こうして触れると、その鼓動がさらに強く伝わってくる気がした。
ああ、ちゃんと生きてる。
生きようとしてくれてるんだよな。
「じゃあ、また明日な?卵ちゃん。」
しばらく卵を撫でたあと、俺たちは1階に戻り、厨房の冷蔵庫からアイスを取り出して、夜風に当たりながら食べていた。
お風呂上がりのアイスって最高だよなぁ。
ジュースを凍らせただけなんだけど、氷魔法ってほんと便利だわ。
なんて思いながら、これからのことを考えていた。
「主、まだあの子たちを従魔にしなくてもいいのか?」
「んー…今、無理やり従魔になってもらうのはなぁ。
今は安全な場所に来て、少しは安心してくれてると思うから、
あとはあの子たちが“俺を許せる”って思ってくれたら、かな?」
「そっかー…主は良い奴なのになぁ!」
「そうですね。あるじさまは命を平等に大切にされる方で、
とても慈悲深いお方だって、分かってほしいです。」
「あるじ、すき。」
「やめろやめろ!恥ずかしい!」
明日からどうするか考えていると、クロがあのスライム4匹を従魔にしなくてもいいのかと問いかけてきた。
クロたちからすれば、早く従魔になっておいた方が安全だと考えてくれているんだろう。
だから俺は、今の気持ちを素直に話すと、皆が口々に俺を褒めてくれた。
さすがにそんな風に褒め殺しにあうと、照れくさいしムズムズしてしまう。
そんな俺の様子を見て、ロウキはフンッと鼻を鳴らしてニヤついていた。
俺の隣では、ラピスがその場でウロチョロするスライムたちを見つめて、嬉しそうにしていた。
これが“群れの長”なのかな。体は小さいけど、仲間を護りたいという気持ちはとてつもなく大きい。
自分が危険な状況になったとしても、その気持ちは変わらない。
そんなラピスを、俺は誇りに思う。
だから、たくさんいるスライムたちを護れるように、
弱い俺でも、護れる何かを掴まなきゃいけないかな。
そんなふうに思っていた―…。
「今日はそんなことがあったのか?
海岸でよく魔法の練習してるやつらだろ?
遅咲きで魔法が使えるようになって嬉しいのか知らんが、
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魔物討伐も二人じゃできないって話だ。しかも性格が悪くて、誰もパーティ組んでくれねぇんだ。
しっかし、スライムくんたちには怖い思いをさせて悪かったな。
けどよ、こいつは安心していいからな。絶対にお前たちを護ってくれるぞ。」
「……」
「ガーノス師匠、ありがとう。」
「おお?ラピス、お前俺のことを“師匠”って呼んでくれるのか?」
「ギルドの頂点ですから。師匠みたいに、ちゃんと頂点に立って護りたいです。」
「そうかそうか!お前なら大丈夫だ、ラピス!その気持ちが大事なんだからな!」
ギルドの別館で夕食を囲みながら、今日あった出来事を話していた俺たち。
ガーノスさんから情報をもらって、あの魔導士二人がかなり問題のある連中だと分かった。
魔法が使えるようになったのが嬉しいのは分かるけど、ああいう使い方は違うだろうって思う。
力を持ったなら、それをどう使うかが大事なんだよな。
なんて思っていると、ガーノスさんは、あいつらの代わりにスライムたちに謝ってくれて、
それを見ていたラピスは、感謝の気持ちを込めて「師匠」と呼び始めた。
その理由は、ガーノスさんがこのギルドをまとめる“頂点”の存在だから。
ラピスも、そんなふうに誰かを護れる存在になりたいと思ったらしい。
なんか健気だなぁ、ラピスは。
そう思いながら、会話を続けて食事を楽しんだ。
ラピスの想い。
どうか、あの子たちに届いてほしいなぁ……。
◇
「それじゃあ、今日はありがとうございました!早速ゲートで帰ります!」
「ああ!こちらこそ楽しい食事をありがとな。また近いうちに会って飯食おうぜ!」
「ありがとうございます!それじゃあ、おやすみなさい!」
「またな!」
ガーノスさんたちと食事を楽しんで、約2時間が経った頃。
そろそろ帰ろうかと片づけを手伝い、帰り支度を済ませた。
そして、いよいよ初めての転移ゲートでの帰宅。
出来た時に覗いてみただけだった俺は、初めてのゲート移動にドキドキしていた。
ロウキたちが最初に通った時、何ともなかったよな?
そう思いながら、意を決してゲートに足を踏み入れた。
「…本当に帰れた…」
「作った時に見ただろうが?」
「見たけど、実感わかなくてさ。いやぁ、これは便利なもの作ったなぁ。
あ、スライム君たち。ここが俺たちの家だよ。好きな場所で過ごしてね。」
恐る恐る足を踏み入れてみると、出た先は本当に俺たちの家だった。
もしかして、俺ってば結構すごいものを作ったんじゃ?
そう思いながら、4匹のスライム君たちを地面に下ろして「自由に過ごしてね」と伝えた。
すると、そこら中に散らばっていたスライムたちが次々と顔を出し、
4匹の到着を祝うようにピョンピョンと跳ねながらこちらへ向かってきた。
その光景はとてもカラフルで本当に癒しの存在そのものだった。
「やっぱり、一緒がいいよなぁ。」
「良かったな!ラピス!」
「無事に全員が戻ってこられて、安心しましたね!」
「はい!クロちゃん、ユキちゃん、ミルくんもありがとう!」
「よかったね。ここなら、あるじがいるから、あんしん。」
再会を喜ぶ姿を見て、クロたちはラピスに「良かったね」と声をかけた。
魔物同士でこんなふうに言い合えるって、俺はすごいことなんじゃないかと思ってる。
だって、魔物だよ?
互いのために動くなんて、あまりしない気がする。
それは本能がそうさせるのか、自分が生きていくのに必死で、気遣う余裕がないからかもしれない。
でも、そんな中でもこうしてお互いの手を取り合えるって、
素敵じゃないの?って思う。
「ヨシヒロ様…本当にありがとうございます。
僕は、このご恩に報いるために、生涯あなたの側で、微力ながらお力になれたらと思います。」
「何でそんなにかしこまってんの。もう家族じゃん、俺たち。
家族が困ってる時は助け合うのが当たり前だからな。
これからは元気に過ごしてくれたら、それでいいよ。」
「ヨシヒロ様…」
ラピスは、今回の件で相当な恩を感じているのか、「生涯力になれたら」と言ってくれた。
まさかそんなふうに言うなんて思っていなかった俺は、「家族だから当たり前だよ」と返した。
そして、「元気に過ごしてくれたらそれでいい」と言うと、ラピスは俯いて、小さく笑った。
この子たちにとって、人間は脅威でしかなかった。
でも、少しでもその傷が癒せたらいいな。
そのためにもこの子たちは、絶対に護っていかなきゃ。
改めて、そう強く決意した―…。
◇
魔物管理室―
「ひび割れちゃってるけど、出ては来ないみたいだな。」
「しかし、ちゃんと鼓動は聞こえるからな。問題はないだろうとは思うが…」
「ヨシヒロ様、ごめんなさい…僕が飛び跳ねちゃったから…」
「あの時はラピスも大変だったんだから、もう気にしなくていいよ。」
その日の夜、俺たちはお風呂上がりに魔物管理室に立ち寄っていた。
ラピスが飛び跳ねてひびが入ってしまった卵は、鼓動はしているものの、まだ孵る気配はない。
本当に大丈夫なんだろうか?そんな不安がじわじわと胸に広がってくる。
ラピスも、自分のせいで卵に影響が出ているのではないかと、悲しそうな顔で謝ってくれた。
でも、ラピスにも事情があったんだから、仕方ないよな。
「それにしても、なんでこの卵2個は鑑定できないんだろうな?」
「この卵からは魔法の力を感じるからな。あの魔法使いが詮索されないように、何か仕掛けているのではないか?」
「あー…確かにそれはあるかも。それだけ貴重な卵なのか、護りたい卵だったのか…
どっちにしても、ひび割れちゃったんだから、早く出ておいでー?待ってるよー。」
ラピスが心配しちゃうから、早くその顔を見せてほしくて。
いつもは何かあったら怖くて触れられなかったけど、
卵に声をかけて、そっと手をかざし、優しく撫でてみた。
触れなくても命の鼓動は感じ取れていたけど、
こうして触れると、その鼓動がさらに強く伝わってくる気がした。
ああ、ちゃんと生きてる。
生きようとしてくれてるんだよな。
「じゃあ、また明日な?卵ちゃん。」
しばらく卵を撫でたあと、俺たちは1階に戻り、厨房の冷蔵庫からアイスを取り出して、夜風に当たりながら食べていた。
お風呂上がりのアイスって最高だよなぁ。
ジュースを凍らせただけなんだけど、氷魔法ってほんと便利だわ。
なんて思いながら、これからのことを考えていた。
「主、まだあの子たちを従魔にしなくてもいいのか?」
「んー…今、無理やり従魔になってもらうのはなぁ。
今は安全な場所に来て、少しは安心してくれてると思うから、
あとはあの子たちが“俺を許せる”って思ってくれたら、かな?」
「そっかー…主は良い奴なのになぁ!」
「そうですね。あるじさまは命を平等に大切にされる方で、
とても慈悲深いお方だって、分かってほしいです。」
「あるじ、すき。」
「やめろやめろ!恥ずかしい!」
明日からどうするか考えていると、クロがあのスライム4匹を従魔にしなくてもいいのかと問いかけてきた。
クロたちからすれば、早く従魔になっておいた方が安全だと考えてくれているんだろう。
だから俺は、今の気持ちを素直に話すと、皆が口々に俺を褒めてくれた。
さすがにそんな風に褒め殺しにあうと、照れくさいしムズムズしてしまう。
そんな俺の様子を見て、ロウキはフンッと鼻を鳴らしてニヤついていた。
俺の隣では、ラピスがその場でウロチョロするスライムたちを見つめて、嬉しそうにしていた。
これが“群れの長”なのかな。体は小さいけど、仲間を護りたいという気持ちはとてつもなく大きい。
自分が危険な状況になったとしても、その気持ちは変わらない。
そんなラピスを、俺は誇りに思う。
だから、たくさんいるスライムたちを護れるように、
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そんなふうに思っていた―…。
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