魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル

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66話 理想の広場の次は自分の希望を叶えようと思います

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「猫ちゃんたち、ここが君たちの新しいお家だよ。
これからちょっと作るものがあるから、皆は遊んでていいからね。」

「主ー!子猫かわいい!」

「そうだなぁ。癒しだよなぁ。」


母猫と子猫たちを連れてやってきた、ふれあい広場。
この広場がこんなにも早く役に立つとは思わなかったな。
なんて思いながら、俺が生成を始めたのはアレですよ、アレ。


「猫と言えば、これがないと始まらないよなー。
・・・クレオ!」


猫たちが広場で遊び始めた間に、俺は早速作業を開始した。
俺が一番に作りたかったもの。それは、猫大好きキャットタワー。
きっとこの世界の猫ちゃんも好きだろうなと思って、生成した。


「あるじさま、それは何ですか?」

「お、ユキは興味ある?これはキャットタワーって言って、猫ちゃんは多分好きだと思うんだよね。
猫はもともと高い場所が好きだろ?
それに、ここが爪を研げるところになってるから、ストレス解消にもなるしな。
古くなった爪の外側の層をはがして、その下にある新しく鋭い爪を出すためにやるんだってさ。
これは猫ちゃんが常に爪を健康に保つための行動なんだよ。
…って、これは俺の世界にいた猫ちゃんの情報なんだけど。
まあ、このキャットタワーは猫ちゃんたちにとっては遊び場みたいな感じかな?」

「さすがです、あるじさま!猫たちのことをちゃんと考えての生成なのですね!」

「でも、この辺は高いところたくさんあるじゃん、主!爪とぎも木で出来るぞ?」

「うっ…それはそうなんだけど!猫と言えばキャットタワーなの!」

「ふーん!主そうなのかー!の前の世界のアイテムなんだな!」

「そうだよー。あとは…小屋にクッションと寝床のベッドを用意して…
よし・・・クレオ!」


キャットタワーを生成すると、それは何?と聞いたユキに説明をした。
すると、クロが「この辺りは高いところがたくさんあるじゃん」と笑ってきた。
それはそうなんだけど!
猫を飼うならキャットタワーを買うって決めてた俺にとっては、重要アイテムなのよ。
なんて思いながら、他に必要なアイテムも生成して小屋に詰め込んだ。
その時、ふと思った。
雨が降った時に、小屋の中から出られないのは可哀想だなぁと。


「この辺りに雨をガードできる屋根がいるよな!
今から生成するから、シトリン呼んできてくれない?」

「ヨシヒロ様!オイラならここにいるよー!」

「シトリン!いつの間に?でも助かったよ。
俺、これからこの場所に屋根を作るから、強化してほしいんだけどいいかな?」

「うん!任せて!」

「ありがとう!じゃあ作るよー。
・・・クレオ!」


雨避けの屋根を生成したくて、強化専門の黄色いスライムのシトリンを探すと、
ヒョコッとロウキの背中の毛の中から顔を覗かせた。
ロウキの奴、完全に乗り物扱いされてるな…。ちょっと面白い。
なんて思いながら、シトリンに事情を説明すると快く引き受けてくれた。

俺はまず、公園によくあるような休憩所、確か一般的には東屋って言うんだっけ?
西洋ではガゼボ…とか何とか言ってたような気がする。
その東屋を作りたかった俺は、洋風にしたくてガゼボをイメージして生成した。
別にこれは無くても良かったんだけど、この場に似合うと思ってつい作っちゃった。

それに加えて、それぞれの小屋とキャットタワーがある場所にも大きな屋根を生成して、
小屋から出ても雨に濡れずに外で遊べるようにした。
これは一般家庭の駐車場にある雨避けのイメージで、柵の中全体を覆えるほどの大きさをイメージして生成した。


「シトリン、よろしく頼む!」

「オッケー!ちょっと待っててー!」


大きな屋根と東屋ができたところで、シトリンに補強をお願いした。
シトリンはまず、東屋を包み込んで強化。
そして次に、大きな屋根を目いっぱい自分の体で包み込んで補強してくれた。
それが終わると、俺はすぐさま「ハイヒール・マナヒーリング」を唱えて魔力と体力を回復。
「ありがとう」と言って頭を撫でると、シトリンは得意げに笑ってみせた。


「ヨシヒロにしては、まあまあな出来だな。これならこの猫たちも安心して暮らせるだろう。」

「そうだよね!俺にしては結構センス良く仕上がったよね!もっと褒めてくれてもいいよ!」

「すぐ調子に乗るのが残念なところだがな。」

「酷いなぁ、ロウキは!」


完成したふれあい広場を見たロウキは、良い出来栄えだと褒めてくれた。
もっと褒めてくれてもいいと言うと、「そういうところが残念だ」と鼻で笑われた。
いつもそう。ロウキはいつも最後まで褒めてくれない。
まあ、別にいいんだけどさ。

それよりも、この空間はもう既にに俺は大好きだった。
猫ちゃん親子もいるし、毎日通ってしまいそう。
本当に、動物カフェ的なやつだな。と、大満足していた-…。










「今日はいい仕事したなー。なんかおにぎり食べたいなぁ。
…っていうか、あれじゃない?稲の苗を生成できたら勝ち組になれるのでは?
エマちゃん、俺って稲の苗を生成できる?」

【はい。あなたはかつて日本人です。ヘパイトスの加護を用いれば、稲の苗の生成は可能です。】

「マジかー!!なんでもっと早く気づけなかったんだろう!!
よーし―」

【きちんと田んぼを作ってからの方が良いかと思います。
田んぼの水を引きやすいことから、この湖の側をおすすめします。聖水で育つ稲の苗は安全です。
本来は土と肥料を混ぜ合わせますが、聖水と聖水で浄化されている土地の土はその必要がありません。】

「あ、なるほど…。聖水さまさまじゃん!
小さくてもいいから田んぼ作ろう!!
ロウキーー!ミルーーー!ちょっと助けてーーー!!」


ふれあい広場のログハウスでのんびりしていた時、ふいにおにぎりが食べたくなった。
そこで思いついたのが、ヘパイトスの加護で稲の苗を生成できないかということ。
エマに質問すると、即座に「可能」と返答があり、
田んぼを作ってから生成した方がいいという的確なアドバイスもくれた。
この国にはどうやらお米の文化がないらしいから、もしちゃんとお米が育ったら、アーロンさんにもお裾分けしてあげようかな。
なんて思いながら、田んぼを作るためにログハウスを出て、ロウキとミルを呼び寄せた。


「聞いてた?エマとの話。」

「きいてた。おれ、なにをすればいい?」

「また労働か…フェンリル使いが荒いな、お前は。我は一応魔獣でだな―」

「ミルとロウキには、まず田んぼに必要な土地分だけ伐採をお願いしたい。
えーっと…田んぼってどれくらい必要なんだろう?エマー!!」

「聞かぬか我の話を!」

【あなたには農家の知識はないのですね?では、お答えします。
日本の農法を参考にすると、成人が一年間に食べるお米の量は約60kgほどです。
これを収穫するためには、約100㎡の広さが必要となります。
しかし、皆さんで食べる分と、アーロン国王へのお土産を考慮すると、
その10倍の広さである約1000㎡の田んぼを準備するのが良いかと思います。
ヘパイトスの加護で生成する稲と聖水があれば、苦労することなく育てることは可能です。】

「さすがエマ…すごい。でも、残念なことに俺には全然分からない…」


ロウキとミルを呼び寄せると、ロウキはブツブツと反抗するもんだから、
その言葉を遮ってエマに水田についての説明を求めた。
すると、本当にエマはAIらしい回答をくれて、どうしようかと思った。
だって、言われたことが全然分からなかったから。
それを察していたのか、エマは呆れた声色に変わりながら俺に言った。


【無知なのは知っています。では、伐採する範囲を指定してみてください。
先ほどお話した田んぼの大きさを“一反いったん”と呼びますので、
「一反の範囲に印を付けよ、Terramarkテラマーク」と唱えてください。
その範囲にロープが張られるかと思いますので、その範囲を伐採してください。】

「ほえぇ…え、俺いる?
この世界に俺は必要でしょうか?」

【あなた以外に生成は不可です。さっさとやってください。】

「え?!エマちゃんがロウキみたいになってきた!!」

【・・・】

「はぁ…分かりましたよ。やります。やりましょ…
“一反の範囲に印を付けよ・・・Terramark!!”」


俺が無知なのは既に知っているとエマは言い、
伐採する範囲を指定できる魔法を唱えてくださいと、その魔法の名前を教えてくれた。
ここまできたら、もう俺の存在は不要なのでは?そう感じて思わず聞くと、
「魔力無限のあなたにしかできないから、さっさとやれ」と、まるでロウキのような回答をされて驚いた。
どうしよう、このままじゃエマがロウキ化してしまう!怖い!
そう思いながら、また怒られる前にと、エマに教えてもらった範囲指定魔法を唱えた。

すると、突如現れたトラロープ。…トラロープって異世界にもあるのか。
そのロープがパンッ!パンッ!と音を立てながら張られていき、
あっという間に伐採する範囲の指定ができた。
もしかして、これも生活魔法なのかな?
だとしたら、これからいろいろ使えそうだなぁ。
そう感心しながら、ロウキとミルに伐採を依頼した。

田んぼなんて、俺にとってはオタマジャクシと遊ぶ場所だったからなぁ。
この世界にもオタマジャクシ、いるといいなぁ。
なんて思いながら、一人こっそり期待していた―…。
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