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67話 重労働ですが、とても楽しいです
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伐採する範囲が決まったところで、早速ロウキとミルが伐採と、伐採した木々をまとめる作業を始めてくれた。
有難いことに、その側にはガーネットがいてくれて、
伐採後に無造作に置かれた木々を飲み込んで木材に加工し、整理整頓までしてくれていた。
ここまで木材が増えたとなると、保管する場所があった方がいいなと思い、
薪置き場のようなものを生成すればいいのでは?と考え、
邪魔にならない位置に、俺がかつて見たことのある薪置き場をイメージして生成した。
「クレオ!」
「それが出来たら、オイラの出番だね!」
「さっきやってもらったばかりなのに、ごめんな?」
「大丈夫だよー!」
薪置き場が完成すると、すぐさまシトリンがやって来てくれて、強化・補強を施してくれた。
そのおかげで立派な薪置き場が完成し、前に放置していた加工済みの木材も、皆で手分けして運ぶことになった。
この時、何を思ったのかスライムたちが一列に並んで、バケツリレーみたいにして木材を運んでいるのを見た時は、さすがに可愛すぎて悶絶した。
それにしても、こういうのってなんだか野外活動みたいで楽しいな。
小学生の頃、野外活動でキャンプ場でカレーとサラダを作って食べたなぁ。
なんて懐かしく思いながら、作業を続けた。
多分、これは魔法で一瞬で解決できる案件なんだろうけど、
たまには自分でやってみないとな。
農家の方々が大変な思いをして、俺たちにお米を届けてくれていたことに感謝していたから、
異世界だけど、俺もちゃんと魔法以外でも頑張るってことをしたかった。
そんな気持ちで頑張ること数時間。
トラロープが張られた箇所の伐採が終わり、皆が協力してくれるって本当にありがたいなぁと、一人しみじみ感じていた。
そして、次に何をすればいいのか…?優秀なエマに教えてもらうことにした。
【田んぼ作りの第一歩は、伐採した土地を平らにならす整地です。
次に水を引くための水路を作り、水が漏れないように周りを畔で囲い、
最後に水を入れて土を泥状にする代掻きという作業をすれば、田植えの準備は完了します。】
「ああ、畔?水が出ないようにする土手だっけ?なんか見たことあるかも!ありがとうエマ!
じゃあ、まずはこの土地を平らにしないとな。」
エマに大まかな説明をしてもらった俺は、早速鍬《くわ》を手に取り、凸凹した地面を少しずつ削っていくことにした。
だけど、大小問わず石ころや木の根っこが邪魔をして、これは時間かかるなと額の汗を拭った。
すると、俺を心配したミルが根こそぎ引っこ抜いてくれて、そのおかげで作業はスムーズに。
しばらくその作業を続けていたんだけど、ロウキがしびれを切らして、自分の魔法で一反の範囲すべての邪魔な石や根を一掃してくれた。
「ヨシヒロよ…お前では遅い。我らがやる。
おい、スライムたちよ、全員集合だ。」
「はーーーい!」
「良いか?今からこの凸凹した土を平らにする作業を行う。
お前たちは全員巨大化して、この土地を綺麗に整地するのだ。よいな?」
「分かったー!」
「…やっぱり現場監督じゃんロウキって。」
自分で始めた瞬間、絶対今日中には終わらないだろうなと覚悟していた。
だけど、そんな様子を見ていたロウキがスライムたちを集めて、巨大化して整地するよう指示を出した。
すると、ラピスをはじめとしたスライム約20匹が次々に巨大な風船のようになり、
それぞれ散らばって整地作業を開始。
全員がプルプルと柔らかい体を波打たせながら、地面の凹凸に吸い付くようにして、
上から力を加えていく姿は本当に可愛いし、その力には脱帽だった。
最初は凸凹していた土地が、スライムたちが通った後には、まるで道路のように滑らかになっていた。
「ヨシヒロ様!ロウキ様!このくらいで大丈夫ですか?」
「うむ。皆、ご苦労だった。少し休んでおれ。」
「はーーい!」
ロウキの指示のもと、ラピスたちが作業を始めて1時間もかからないうちに整地作業は終了。
田んぼになる予定の一面が、惚れ惚れするほど綺麗に整地されていた。
もう今日はこれで終わりでいいんじゃないの?なんて思ったけど、
まだ暗くなるまで少し時間があるから、できるところまではやっておこうと思い、
エマに教えてもらった次の作業に移ることにした。
【整地作業が終わった次は、水路の確保です。】
「あ、そうだ。水路の確保だ。湖から田んぼまで水を引けばいいよな?」
【はい。田んぼから湖まで約10mの距離があります。
その距離を、深さ15cmから20cm、幅50cmほどで掘り進めるのが良いかと思われます。】
「深さ15cmから20cmと幅が50cmね…。じゃあ、まずは幅の指定をするかな。
横幅50cmの範囲に印を付けよ、Terramark(テラマーク)!」
シュパッ――
「皆さーん!ロープが張られた範囲で穴を掘るよ!
えっと、物差し物差し・・・クレオ!
はい、これは物差しと言って長さを測るものです。ちょうど20cmだから、
この物差しと同じ深さで掘ってください!適当に置いていくからなー。
そんで、土を運ぶネコがいるな…」
「んにゃあ?」
「あ、猫ちゃんじゃないのよ。大丈夫だよ。うるさくしてごめんね?
・・・クレオ!」
ゴトンッ――
「ミルー!ミルは水路を掘って出た土を、これに入れて水田の側まで運んでおいてくれるか?
このあと土が必要になるっぽいから!」
「あるじ、わかった!」
トラロープが張られたところで皆に声をかけた俺は、ロープの幅で穴を掘ってほしいと伝え、
物差しを生成してから水路の適当な位置に置き、この深さまで掘ってほしいと説明した。
そして同時に、土を運ぶための一輪車を生成。
ミルに運んでほしいと頼むと、満面の笑みで「分かった!」と答えてくれた。
次の作業の説明を一通り終えたところで作業開始。
俺は鍬で掘り進めていき、土の中にある大きな石や邪魔なものは、ユキとクロが一生懸命排除してくれた。
そしてロウキは、その鋭い爪で土を掘削してくれていて、その手首?の動きはまるでショベルカーのようでちょっと可愛い。
スライムたちはというと、掘削作業で出た土を体に取り込み、田んぼの方へと運び始めていて、
それを見た俺は、ネコいらないじゃん?なんて思いながら、
自分で出来ることをやってくれるって、ほんとうにいい子たちだなぁと改めて思った。
もちろん、ミルも負けじと一輪車で一生懸命土を運んでくれている。
協力してやるって、なんとも素晴らしい。
基本的にワンオペだった前世と比べると、天と地の差があるな。そう思っていた…。
◇
作業開始から30分も経たないうちに水路の確保が終わり、
湖の側から数センチだけ残して水が流れないようにして作業を止めた。
そこまでやり切った俺は、少し疲れて思わずドシンッと地面に座り込んだ。
前世でもここまで農作業をしたことはなかったし、肉体労働もしていなかったからな。
さすがにバテちゃってるな…なんて思っていると、ミルが「ちょっと待ってて」と言って家の方へ走り出した。
そして10分もしないうちに戻ってきたミルの手には、俺がいつも疲れた時に飲んでいるドリンクのボトルが握られていた。
「あるじ、つかれた。これ、のんで。」
「ミルーーーー!大好きっ!ありがとう!」
「おれも、あるじ、すき!」
まさかミルが、わざわざ俺のために飲み物を取りに行ってくれるなんて思いもしなくて、ちょっとウルッとしてしまった。
なんて優しい子なんだろう。世間の皆様にお知らせしたいくらいの感動があった。
そんな中、蓋を開けてコクコクと飲むと、喉が潤って冷たくて気持ちがいい。
これならもう少し頑張れそうだなと思い、次の作業に移ることにした。
「畔を作るって言ってたよな。
ってその前に、最後の10cmを掘り起こして、水がちゃんと田んぼに行くか確かめなきゃな。」
体に潤いが行き渡ったところで、湖のすぐそばの土を掘り進めた。
そして最後のひと掘りをすると、湖の水が先ほど皆で掘った水路を通り始めた。
そのまま水の流れを追いかけていくと、田んぼとなる場所に無事たどり着き、水が入り始めた。
ここで俺は、一旦水をせき止めなくてはと思い、ガーネットに薪置き場にある木材を水路の幅に合わせた大きさに加工してほしいとお願いした。
「任せてヨシヒロ様!」
「ありがとうガーネットー!」
「強度も足しておくねー!」
ガーネットにイメージを伝えてお願いすると、数秒で板が出来上がり、
すぐさまシトリンがその板の強化をしてくれた。
俺はその板を持って湖の側に戻り、ググッと水路に差し込んだ。
すると、ちゃんと水がせき止められていて、「二人がいい仕事をしてくれたな」と思いながら、次の段階に進んだ。
「畔を作る?畔塗り?だっけ?」
【はい。現代の日本では機械に乗って行う方法と、昔ながらの手作業がありますが、
時間を短縮するためにも、今回は土魔法で生成する方法をおすすめします。】
「え?そっかぁ。じゃあ、どんな風にすればいい?」
【土魔法ですぐに畔が完成します。魔法の名前は “Terramur《テラミュール》” です。】
「なるほど…では、いきますか。」
次の段階の作業は、田んぼの周りに畔を作るという作業だった。
だけど、手でやると時間を要する作業になるため、エマはこの作業は魔法を使った方が良いとアドバイスをくれた。
必要な魔法を教えてもらい、いざ唱えようと思ったところでピョコピョコやってきたラピス。
田んぼの近くに集めた土を見ながら言った。
「ヨシヒロ様!魔法をお使いになるのであれば、先ほど運んだ土はどうしましょうか?」
「あ…本当だね。田んぼの中に入れて混ぜようか。」
「分かりました!では、僕たちがそれを行います!」
「ありがとう、ラピス!」
ミルとラピスたちが一生懸命集めてくれた土について訊いてきたラピス。
うっかりしてた!と思いながら、田んぼの土と一緒に混ぜようかというと、
ピョンピョン跳ねながら土の方へと向かい、土の移動を始めてくれた。
その様子を見ながら俺は、畔を作るべく田んぼの前に立ち、土魔法を唱えた。
「では、改めまして…
…畔を生成せよ!“Terramur”!」
ボコッ
ボコボコッ―
「おお!土が盛り上がってきたー!すっご!
しかも湿ってる?あ、粘土みたいになって固まる感じ?ちゃんとしてるなぁ!」
Terramurを唱えると、田んぼの淵からボコボコッと粘土のような土が現れた。
それだけでも驚いたのに、その土は次第に盛り上がり、20cmほどの高さまで達した。
これが畔ってやつだよな?そう思いながら触ってみると、ポロポロと崩れることもなく、しっかりと固まっていた。
確かに、これをあの範囲分やろうと思ったら、かなりの時間がかかっていたかもな…。
なんて思いながらエマに感謝していると、土を田んぼの中に戻し終えたラピスたちも戻ってきた。
「終わりました!ヨシヒロ様!」
「皆、ありがとうな!」
【皆さん、お疲れ様です。次に行うのは代掻きという作業です。
泥んこになって良いという方は中に入ってください。
田んぼに水を張り、土を細かく砕いて平らに均す作業です。
この作業をすることで、田植えがしやすくなり、稲の根がしっかりと張れるようになります。】
「なるほど…じゃあ、まずは田んぼに水を入れますか!」
「はーい!」
エマの指示のもと、次の作業である代掻きを行うために、せき止めていた板を外し、湖の水を田んぼに向かって放出した。
板を外すと、太陽の光を浴びてキラキラと輝いた聖水が勢いよく流れ始めた。
すると、先に田んぼでスタンバイしていたスライムたちが体を少し大きくして溺れないようにし、
体をプルプルと震わせながら土をほぐし始めた。
そんなこともできるのか、この子たち…。恐るべしスライムの力。
なんて思いながら、ある程度水が入ったところで、もう一度水をせき止めた。
「皆ありがとねー!無理せずに作業してくれー!」
「大丈夫だよー!ヨシヒロ様ーー!」
「わぁ…綺麗だなぁ!」
スライムたちが大活躍してくれているけど、頑張りすぎないでほしくて声をかけると、
ラピスをはじめ、シトリン、ガーネット、そしてルドやムーンが「大丈夫だよ」と声をあげてくれた。
すると、一緒にいた他のスライムたちがピカピカといろんな色を点滅させて反応してくれた。
前にも見た光景だけど、本当に綺麗だなぁと見とれていた。
そんなスライムたちによって、土の粒子が細かく砕かれ、水と混ざり合っていき、
まるで自然のミキサーのように、土はみるみるうちにどろどろの泥状になっていった。
【一通り土がほぐれたら、田んぼの表面を平らにならします。】
「皆、よろしくね!」
「はーーーいっ!」
エマの指示を聞いたラピスたちは、今度は体を滑らせるように使って、土の中を平らにしていく。
スライムがここまで優秀だなんて、皆知っているのだろうか?
俺のワガママにも付き合ってくれて、泥だらけになりながら一生懸命働いてくれている。
そんなスライムを「初心者向けだから」と言って討伐なんて、絶対にしてほしくない。
そんなことを考えながら、彼らの作業を静かに見守っていた―…。
有難いことに、その側にはガーネットがいてくれて、
伐採後に無造作に置かれた木々を飲み込んで木材に加工し、整理整頓までしてくれていた。
ここまで木材が増えたとなると、保管する場所があった方がいいなと思い、
薪置き場のようなものを生成すればいいのでは?と考え、
邪魔にならない位置に、俺がかつて見たことのある薪置き場をイメージして生成した。
「クレオ!」
「それが出来たら、オイラの出番だね!」
「さっきやってもらったばかりなのに、ごめんな?」
「大丈夫だよー!」
薪置き場が完成すると、すぐさまシトリンがやって来てくれて、強化・補強を施してくれた。
そのおかげで立派な薪置き場が完成し、前に放置していた加工済みの木材も、皆で手分けして運ぶことになった。
この時、何を思ったのかスライムたちが一列に並んで、バケツリレーみたいにして木材を運んでいるのを見た時は、さすがに可愛すぎて悶絶した。
それにしても、こういうのってなんだか野外活動みたいで楽しいな。
小学生の頃、野外活動でキャンプ場でカレーとサラダを作って食べたなぁ。
なんて懐かしく思いながら、作業を続けた。
多分、これは魔法で一瞬で解決できる案件なんだろうけど、
たまには自分でやってみないとな。
農家の方々が大変な思いをして、俺たちにお米を届けてくれていたことに感謝していたから、
異世界だけど、俺もちゃんと魔法以外でも頑張るってことをしたかった。
そんな気持ちで頑張ること数時間。
トラロープが張られた箇所の伐採が終わり、皆が協力してくれるって本当にありがたいなぁと、一人しみじみ感じていた。
そして、次に何をすればいいのか…?優秀なエマに教えてもらうことにした。
【田んぼ作りの第一歩は、伐採した土地を平らにならす整地です。
次に水を引くための水路を作り、水が漏れないように周りを畔で囲い、
最後に水を入れて土を泥状にする代掻きという作業をすれば、田植えの準備は完了します。】
「ああ、畔?水が出ないようにする土手だっけ?なんか見たことあるかも!ありがとうエマ!
じゃあ、まずはこの土地を平らにしないとな。」
エマに大まかな説明をしてもらった俺は、早速鍬《くわ》を手に取り、凸凹した地面を少しずつ削っていくことにした。
だけど、大小問わず石ころや木の根っこが邪魔をして、これは時間かかるなと額の汗を拭った。
すると、俺を心配したミルが根こそぎ引っこ抜いてくれて、そのおかげで作業はスムーズに。
しばらくその作業を続けていたんだけど、ロウキがしびれを切らして、自分の魔法で一反の範囲すべての邪魔な石や根を一掃してくれた。
「ヨシヒロよ…お前では遅い。我らがやる。
おい、スライムたちよ、全員集合だ。」
「はーーーい!」
「良いか?今からこの凸凹した土を平らにする作業を行う。
お前たちは全員巨大化して、この土地を綺麗に整地するのだ。よいな?」
「分かったー!」
「…やっぱり現場監督じゃんロウキって。」
自分で始めた瞬間、絶対今日中には終わらないだろうなと覚悟していた。
だけど、そんな様子を見ていたロウキがスライムたちを集めて、巨大化して整地するよう指示を出した。
すると、ラピスをはじめとしたスライム約20匹が次々に巨大な風船のようになり、
それぞれ散らばって整地作業を開始。
全員がプルプルと柔らかい体を波打たせながら、地面の凹凸に吸い付くようにして、
上から力を加えていく姿は本当に可愛いし、その力には脱帽だった。
最初は凸凹していた土地が、スライムたちが通った後には、まるで道路のように滑らかになっていた。
「ヨシヒロ様!ロウキ様!このくらいで大丈夫ですか?」
「うむ。皆、ご苦労だった。少し休んでおれ。」
「はーーい!」
ロウキの指示のもと、ラピスたちが作業を始めて1時間もかからないうちに整地作業は終了。
田んぼになる予定の一面が、惚れ惚れするほど綺麗に整地されていた。
もう今日はこれで終わりでいいんじゃないの?なんて思ったけど、
まだ暗くなるまで少し時間があるから、できるところまではやっておこうと思い、
エマに教えてもらった次の作業に移ることにした。
【整地作業が終わった次は、水路の確保です。】
「あ、そうだ。水路の確保だ。湖から田んぼまで水を引けばいいよな?」
【はい。田んぼから湖まで約10mの距離があります。
その距離を、深さ15cmから20cm、幅50cmほどで掘り進めるのが良いかと思われます。】
「深さ15cmから20cmと幅が50cmね…。じゃあ、まずは幅の指定をするかな。
横幅50cmの範囲に印を付けよ、Terramark(テラマーク)!」
シュパッ――
「皆さーん!ロープが張られた範囲で穴を掘るよ!
えっと、物差し物差し・・・クレオ!
はい、これは物差しと言って長さを測るものです。ちょうど20cmだから、
この物差しと同じ深さで掘ってください!適当に置いていくからなー。
そんで、土を運ぶネコがいるな…」
「んにゃあ?」
「あ、猫ちゃんじゃないのよ。大丈夫だよ。うるさくしてごめんね?
・・・クレオ!」
ゴトンッ――
「ミルー!ミルは水路を掘って出た土を、これに入れて水田の側まで運んでおいてくれるか?
このあと土が必要になるっぽいから!」
「あるじ、わかった!」
トラロープが張られたところで皆に声をかけた俺は、ロープの幅で穴を掘ってほしいと伝え、
物差しを生成してから水路の適当な位置に置き、この深さまで掘ってほしいと説明した。
そして同時に、土を運ぶための一輪車を生成。
ミルに運んでほしいと頼むと、満面の笑みで「分かった!」と答えてくれた。
次の作業の説明を一通り終えたところで作業開始。
俺は鍬で掘り進めていき、土の中にある大きな石や邪魔なものは、ユキとクロが一生懸命排除してくれた。
そしてロウキは、その鋭い爪で土を掘削してくれていて、その手首?の動きはまるでショベルカーのようでちょっと可愛い。
スライムたちはというと、掘削作業で出た土を体に取り込み、田んぼの方へと運び始めていて、
それを見た俺は、ネコいらないじゃん?なんて思いながら、
自分で出来ることをやってくれるって、ほんとうにいい子たちだなぁと改めて思った。
もちろん、ミルも負けじと一輪車で一生懸命土を運んでくれている。
協力してやるって、なんとも素晴らしい。
基本的にワンオペだった前世と比べると、天と地の差があるな。そう思っていた…。
◇
作業開始から30分も経たないうちに水路の確保が終わり、
湖の側から数センチだけ残して水が流れないようにして作業を止めた。
そこまでやり切った俺は、少し疲れて思わずドシンッと地面に座り込んだ。
前世でもここまで農作業をしたことはなかったし、肉体労働もしていなかったからな。
さすがにバテちゃってるな…なんて思っていると、ミルが「ちょっと待ってて」と言って家の方へ走り出した。
そして10分もしないうちに戻ってきたミルの手には、俺がいつも疲れた時に飲んでいるドリンクのボトルが握られていた。
「あるじ、つかれた。これ、のんで。」
「ミルーーーー!大好きっ!ありがとう!」
「おれも、あるじ、すき!」
まさかミルが、わざわざ俺のために飲み物を取りに行ってくれるなんて思いもしなくて、ちょっとウルッとしてしまった。
なんて優しい子なんだろう。世間の皆様にお知らせしたいくらいの感動があった。
そんな中、蓋を開けてコクコクと飲むと、喉が潤って冷たくて気持ちがいい。
これならもう少し頑張れそうだなと思い、次の作業に移ることにした。
「畔を作るって言ってたよな。
ってその前に、最後の10cmを掘り起こして、水がちゃんと田んぼに行くか確かめなきゃな。」
体に潤いが行き渡ったところで、湖のすぐそばの土を掘り進めた。
そして最後のひと掘りをすると、湖の水が先ほど皆で掘った水路を通り始めた。
そのまま水の流れを追いかけていくと、田んぼとなる場所に無事たどり着き、水が入り始めた。
ここで俺は、一旦水をせき止めなくてはと思い、ガーネットに薪置き場にある木材を水路の幅に合わせた大きさに加工してほしいとお願いした。
「任せてヨシヒロ様!」
「ありがとうガーネットー!」
「強度も足しておくねー!」
ガーネットにイメージを伝えてお願いすると、数秒で板が出来上がり、
すぐさまシトリンがその板の強化をしてくれた。
俺はその板を持って湖の側に戻り、ググッと水路に差し込んだ。
すると、ちゃんと水がせき止められていて、「二人がいい仕事をしてくれたな」と思いながら、次の段階に進んだ。
「畔を作る?畔塗り?だっけ?」
【はい。現代の日本では機械に乗って行う方法と、昔ながらの手作業がありますが、
時間を短縮するためにも、今回は土魔法で生成する方法をおすすめします。】
「え?そっかぁ。じゃあ、どんな風にすればいい?」
【土魔法ですぐに畔が完成します。魔法の名前は “Terramur《テラミュール》” です。】
「なるほど…では、いきますか。」
次の段階の作業は、田んぼの周りに畔を作るという作業だった。
だけど、手でやると時間を要する作業になるため、エマはこの作業は魔法を使った方が良いとアドバイスをくれた。
必要な魔法を教えてもらい、いざ唱えようと思ったところでピョコピョコやってきたラピス。
田んぼの近くに集めた土を見ながら言った。
「ヨシヒロ様!魔法をお使いになるのであれば、先ほど運んだ土はどうしましょうか?」
「あ…本当だね。田んぼの中に入れて混ぜようか。」
「分かりました!では、僕たちがそれを行います!」
「ありがとう、ラピス!」
ミルとラピスたちが一生懸命集めてくれた土について訊いてきたラピス。
うっかりしてた!と思いながら、田んぼの土と一緒に混ぜようかというと、
ピョンピョン跳ねながら土の方へと向かい、土の移動を始めてくれた。
その様子を見ながら俺は、畔を作るべく田んぼの前に立ち、土魔法を唱えた。
「では、改めまして…
…畔を生成せよ!“Terramur”!」
ボコッ
ボコボコッ―
「おお!土が盛り上がってきたー!すっご!
しかも湿ってる?あ、粘土みたいになって固まる感じ?ちゃんとしてるなぁ!」
Terramurを唱えると、田んぼの淵からボコボコッと粘土のような土が現れた。
それだけでも驚いたのに、その土は次第に盛り上がり、20cmほどの高さまで達した。
これが畔ってやつだよな?そう思いながら触ってみると、ポロポロと崩れることもなく、しっかりと固まっていた。
確かに、これをあの範囲分やろうと思ったら、かなりの時間がかかっていたかもな…。
なんて思いながらエマに感謝していると、土を田んぼの中に戻し終えたラピスたちも戻ってきた。
「終わりました!ヨシヒロ様!」
「皆、ありがとうな!」
【皆さん、お疲れ様です。次に行うのは代掻きという作業です。
泥んこになって良いという方は中に入ってください。
田んぼに水を張り、土を細かく砕いて平らに均す作業です。
この作業をすることで、田植えがしやすくなり、稲の根がしっかりと張れるようになります。】
「なるほど…じゃあ、まずは田んぼに水を入れますか!」
「はーい!」
エマの指示のもと、次の作業である代掻きを行うために、せき止めていた板を外し、湖の水を田んぼに向かって放出した。
板を外すと、太陽の光を浴びてキラキラと輝いた聖水が勢いよく流れ始めた。
すると、先に田んぼでスタンバイしていたスライムたちが体を少し大きくして溺れないようにし、
体をプルプルと震わせながら土をほぐし始めた。
そんなこともできるのか、この子たち…。恐るべしスライムの力。
なんて思いながら、ある程度水が入ったところで、もう一度水をせき止めた。
「皆ありがとねー!無理せずに作業してくれー!」
「大丈夫だよー!ヨシヒロ様ーー!」
「わぁ…綺麗だなぁ!」
スライムたちが大活躍してくれているけど、頑張りすぎないでほしくて声をかけると、
ラピスをはじめ、シトリン、ガーネット、そしてルドやムーンが「大丈夫だよ」と声をあげてくれた。
すると、一緒にいた他のスライムたちがピカピカといろんな色を点滅させて反応してくれた。
前にも見た光景だけど、本当に綺麗だなぁと見とれていた。
そんなスライムたちによって、土の粒子が細かく砕かれ、水と混ざり合っていき、
まるで自然のミキサーのように、土はみるみるうちにどろどろの泥状になっていった。
【一通り土がほぐれたら、田んぼの表面を平らにならします。】
「皆、よろしくね!」
「はーーーいっ!」
エマの指示を聞いたラピスたちは、今度は体を滑らせるように使って、土の中を平らにしていく。
スライムがここまで優秀だなんて、皆知っているのだろうか?
俺のワガママにも付き合ってくれて、泥だらけになりながら一生懸命働いてくれている。
そんなスライムを「初心者向けだから」と言って討伐なんて、絶対にしてほしくない。
そんなことを考えながら、彼らの作業を静かに見守っていた―…。
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ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
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憧れのスローライフを異世界で?
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アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
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追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
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