魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル

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68話 収穫までの時間が短くて驚きます

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【稲の苗は自分たちで植えますか?それとも生成して自動で植えますか?】

「あー、悩むけど…もうここは一気に片づけたいな。」

【では、田んぼに向かい、クレオで生成してください。
ただ、代掻き後は田んぼの土壌を落ち着かせるために、2日から3日ほど空けて田植えをするのが一般的のようです。】

「そっかぁ。じゃあ、今日はもうやめておこうか。」

【その方が賢明です。本日はお疲れ様でした。】

「というわけで、皆今日はお疲れ様!泥んこだらけの皆は綺麗にするから、こっちにおいでー!
ロウキたちも頑張ってくれて汚れちゃってるから来て!」

「はーーーいっ!」

代掻きという作業が終わり、やっと田植えができるんだなと思っていたところ、
土壌を落ち着かせるために日を空ける必要があるとエマに教えられた。
そうなると今日はここまでということになるから、
一日頑張ってくれた子たちを集めて、一気に綺麗にすることにした。


「“Purify Body(ピュリファイ・ボディ)”!」

「あるじさま、ありがとうございます!」

「ヨシヒロ様!ありがとうございます!皆、綺麗になりました!」


いつもの魔法で全員を一気に綺麗にしたあと、ひとまず休憩だと思いながら地べたに座り込んだ。
今日だけでこんなにも農作業に精を出すなんて思わなかったけど、すごく楽しかった。
俺一人じゃ到底できなかったことだから、今日手伝ってくれた皆には感謝しかない。


「今日は皆、お昼ご飯も食べずによく頑張ってくれてありがとう!
これからご飯の支度をしようと思うけど、前みたいにここで食べようかなぁ。」

「賛成ー!!主!またBBQってやつか?!」

「あるじさま!とても良い案だと思います!」

「BBQしたいですー!」

「おれ、おにく、じゅんびする!」

「良かった!それじゃあ、準備をするから、各自遊んでてもいいし、休んでてもいいから!
ミル、行こうー!」

「うん!」


今日は朝食を食べてからずっとこの湖で作業していたこともあり、
昼食抜きでここまで頑張ってくれたことに、心から感謝していた。
だから、皆が好きなBBQをこの場所で開催すべく、俺はミルと一緒に一度家に戻ることにした。

あと2、3日もすれば、ついに田植えが始まるのか。そう思うと楽しみで仕方がない。
うまく収穫できたらいいな。炊飯器の代わりになる土鍋を生成しておこうか。
あとは、ご飯に合う海苔も生成したいなぁ。
なんて、今からいろんなことが頭に浮かんで、一人浮かれていた―…。









3日後-



あれから3日が経ち、今日はついに田植えの日。
朝食を食べたあと湖へ向かうと、代掻きでかき混ぜられた土の粒子が沈殿し、聖水は透き通ってキラキラと輝いていた。
そして、スライムたちが完璧にならしてくれたおかげで、土の表面には凹凸がほとんどなく、まるで鏡のように美しかった。


「さてと、じゃあ一気にやっちゃいますか!
・・・クレオ!!」


ポコッ
ポコポコッ―


「わっ…!すごい!苗が土の中からポコポコ出てきたんですけど!」

【すべての苗が植え終わるまで、意識を集中させてください。】

「オッケー!」


いつものようにクレオを唱えると、土の中から一つ、二つと苗が姿を現した。
エマに「終わるまで意識を集中させて」と言われ、両手を広げて集中していると、
5分も経たないうちに田んぼ一面に苗が行き渡った。
魔法って、ほんとうに素晴らしい!

…って、肝心な田植えの時に魔法かよって思われそうだけど。
うちで田植えができそうなのは、ミルとクロくらいだろうし、さすがに大変!
なんて自分に言い訳してるあたりが、ダメなところなんだろうけど…。
とにかく、これでうまく育てば、念願のお米が食べられるんだという期待に満ちていた。


「主!これ、どれくらいで収穫できるんだ?」

「え?そうだなぁ。俺の世界の場合は4ヶ月から5ヶ月くらいだけど…」

【通常はとても時間のかかることですが、この世界とあなたの力で大幅に短縮されます。
田植えから5日ほど経った段階で、中干しと呼ばれる水抜きを行います。
田んぼの土を乾燥させ、稲の根をしっかり張らせるためです。
更にその5日後くらいには、黄金色の稲穂が見られるでしょう。】

「だってさ!」

「そっかぁ!じゃあ、それまではしっかり見張ってないとな!」

「あるじさま、僕たちがしっかり見張り役を務めますからね!」

「あはは、ありがとうな!頼りにしてるよ、警備隊のお二人さん!」


クロに収穫までの期間を訊かれ、迷わずエマに尋ねようとすると、
エマが気を利かせて、収穫までの日数を教えてくれた。
2週間もしないうちに収穫できるなんて、幸せすぎませんか?!
なんて思っていると、「収穫までの間は自分たちがしっかり見張るから」と、
自信に満ちた表情で言ったクロとユキ。
どうやらこの二人は、自分たちがこの地を護る“警備隊”という役職に就いているつもりらしく、
有難くて、そして何より何度見ても可愛らしい警備隊だなぁと、一人感心していた。


「なあ、主!そういえば猫ちゃんには名前つけないのか?」

「え?あー、飼い猫だったら普通は名前をつけてあげるんだけど、
俺が名前をつけちゃうと従魔契約になっちゃうじゃん?あの子の意思も分かんないし、
勝手に名前をつけるのはなぁって思ってた。」

「確かに、名前をつけると従魔契約になってしまうので悩みどころですね、あるじさま…」

「でしょ?でも、いつまでも“猫ちゃん”って呼ぶのもなぁって。」


微笑ましい警備隊の姿に癒されていると、クロが近くにいた猫ちゃんを見ながら、
「あの子たちに名前をつけないの?」と不思議そうな顔をした。
俺も猫ちゃんにはぜひ名前をつけたいと思っていたけど、
どうしても従魔契約になってしまうから、どうしようかと悩んでいたところだった。
だけど、クロはどうしても名前をつけたいようで、猫ちゃんを撫でながら俺たちに訴えた。


「でもさ、名前がないの、可哀想だよー。名前つけてあげようよ!」

「そんなに名をつけたいのなら、クロとユキで名をつけてやれ。
そうすれば従魔契約にはならん。
もし今後従魔契約ということになれば、ヨシヒロが同じ名で上書きすれば良い。」

【私もその意見に賛成です。ひとまず、お二人で名前をつけてあげてください。】

「いいのか?!」

「あるじさま、良いのでしょうか?」


名前をつけたいと訴えるクロに対し、ロウキが「二人で名づければ従魔契約にはならない」と提案。
すると、エマもその意見に賛成してくれて、クロとユキはキラキラと瞳を輝かせながら俺に許可を求めてきた。


「いいに決まってるだろう?
だって、もともとあの猫ちゃんを見つけてくれたのは二人なんだからさ!」

「わぁ!じゃあ、ユキ、考えようぜ!」

「はい!クロ兄さん!」


「いいに決まってる」と言うと、二人の瞳はさらにキラキラと輝き、
一旦猫ちゃんから離れて、二人でどこかへ出かけてしまった。
きっと名前が決まるまで、散歩でもしながら考えてくるつもりなんだろう。
こういうの、親が飼育を許可して、子供が名前をつけるという構図みたいで、
何だかとても微笑ましく思えていた。
二人は一体どんな名前をつけるのかな?
女の子はガーネットに続いて二人目だけど、可愛い名前をつけるのかな?


「にゃああん?」

「猫ちゃん、これから君の名前を考えてくれるからね。
可愛い名前をつけてもらえるといいね。
チビちゃんたちも、そのうち名前つけてもらおうねー。」

「んにゃああ!」


どんな名前になるのかなと思っていると、俺の足にスリスリと寄ってきた猫ちゃん。
ああ、猫カフェ万歳…なんて思ったのは秘密。
猫ちゃんの頭を優しく撫でながら、「名前をつけてもらえるからね」と言うと、
何となく嬉しそうな表情に変わったような気がした。

自分の名前がもらえるって、特別なことだもんな。
それがこの子にも伝わっているのだろうか?
きっと素敵な名前を付けてくれるからな。
なんて思いながら、クロとユキが戻ってくるのを待っていた―…。

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