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69話 名前が決まったので報告したあと通報しに行きます
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「主ー!名前決めたよー!」
「お、戻ってきた!」
「とてもお似合いの名前になったと思います!」
クロとユキが出かけてどれくらい経っただろうか。
俺を呼ぶ声がして振り返ると、二人が嬉しそうに駆け寄ってきた。
どうやら、ちゃんと名前が決まったようだ。
一体どんな名前にしたのかな?なんて楽しみにしていると、
クロが猫ちゃんの元へ行き、ヨシヨシと優しく頭を撫でながら言った。
「猫ちゃん、今日から君の名前は"ルーナ"だよ!」
「ルーナ…可愛らしい名前じゃん!」
「そうだろー!いい名前だなってユキと決めたんだぜ!」
「この猫さんにはピッタリだと思います!」
二人が一生懸命考えた名前、それは「ルーナ」。
響きが綺麗で、お月さま系の名前かな?この子にぴったりな気がする。
クロが「ルーナ」と呼ぶと、自分の名前だと分かったのか、
クロの体にスリスリとすり寄っていった。
その姿は本当に可愛くて、見ているだけで胸がいっぱいになる。
ルーナもきっと気に入ってくれたんだろうなと感じていた。
「ルーナ、よろしくね。」
「よろしくね、ルーナ!ラピスだよー!」
「私はガーネットよ!女の子は私とルーナだけだから、仲良くしてね!」
ルーナと名前を紹介すると、そばにいた皆がそれぞれ名前を呼んで自己紹介を始めた。
ガーネットは、自分以外に女の子の友達ができたことが嬉しいみたいで、
ルーナの体に自分の体をくっつけて、ピカピカと光らせていた。
女子同士、仲良くしてくれるといいな。
なんて思いながら、この平和な空気がとてつもなく幸せに思えていた。
最近は鉱山に行ったり、洞窟に潜ったり、変な冒険者を追い返したりと、
ちょっと“異世界っぽい”生活をしていたけど、やっぱり、こういうのんびりライフが一番だよなぁ。
そう、しみじみと感じていた。
「さてと、ルーナの名前も決まったことだし、
この子たちが間違えて田んぼに入らないように結界張っておこうっと。」
「その方が良いだろうな。子猫はどこにでも行くからな。」
「だよね?子猫が入れないように…
…セルリアン・バリア!」
ポワアアッ―
「よし、これで大丈夫だな。
じゃあ、皆今日は自由に遊んでて。俺はちょっとガーノスさんのところに行ってくる。」
「何をしに行くのだ?」
「ルーナに怪我を負わせた奴に、責任取ってもらわなきゃいけないだろ?」
「うむ。あの時の気配感知に引っかかった男か。覚えておるのか?」
田んぼに結界を張ったあと、皆に留守番を頼んだ俺。
王都に行くと言うと理由を聞かれたので、ガーノスさんのところへ行くと伝えた。
ルーナに怪我を負わせた犯人について話すつもりだと告げると、
ロウキに「覚えているのか?」と問われ、俺はコクリと頷いた。
そして、絶対に許さないという思いを伝えた。
「あの気配さ、よく冒険者ギルドで感じてた気がするんだよな。
問い詰められるかは分かんないけど、ガーノスさんに報告はしておきたいじゃん。
俺は絶対に許さないからね。あんなに痛めつけておいて、処罰なしとかあり得ないでしょ!」
「まあ、そうだな。一緒に行って、もし発見したら食ってやろうか?」
「ちょ、それはさすがにダメに決まってんでしょうが!」
「主!俺がついて行くぜ!」
「僕もご一緒してもいいですか、あるじさま。」
「うん。じゃあ今日はクロとユキと行ってくる。皆、留守番頼むな!」
「ああ。任せておけ。」
今の気持ちを話すと、ロウキは鼻息荒く「食ってやろうか」と笑った。
さすがにそれはダメでしょう…。ロウキが優しいのは知ってるけど!
なんて思いながら、一緒に行きたいというクロとユキを連れて、転移ゲートへ向かった。
「主、悪者退治に行くのか?」
「そうだよー。犯人が分かるかどうかは微妙なんだけど、
それでも動物虐待は立派な犯罪なんだからな!
俺がいた世界では、みだりに殺傷した場合には5年以下の懲役または500万円以下の罰金だし、
虐待したり遺棄した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金なんだ。
この世界じゃ弱肉強食だから、日本みたいな罰はないだろうけど…
それでも、むやみに傷つけていいわけじゃないだろ?」
「主のいた世界では、動物たちが大切にされてるんだな!」
「そうだよ!それでも犯罪は後を絶たないんだけど…
でも、せめて俺が護れる命があるなら護りたいんだ。
俺に生きる力をくれてるからさ!」
「あるじさまは、本当にお優しいです。」
「あはは、そうかな?よし、じゃあ行きますか!」
「はーい!」
ゲートに向かう途中、クロに「悪者退治に行くの?」と問われ、俺は頷いた。
そして、日本では動物虐待は立派な犯罪だと教え、救える命は救いたいと話した。
この世界では弱肉強食が基本だから、日本のような法律はきっと根付かない。
だからこそ、俺は自分の手で救える命を救いたいと思う。
少しでも、誰かの命を救えたら。
そのために今、俺は自分に出来る事をしようと動いていた―…。
◇
「お邪魔しまっー」
「おお、ヨシヒロ!どうした?」
「え?アーロンさん?!」
「クロ!ユキ!こっちにおいで!」
ゲートを潜り抜けると、そこにはお忍び外出用の格好をしたアーロンさんがいて、目が合った。
驚いて声を上げると、アーロンさんも一瞬驚いた表情を見せたあと、すぐにクロとユキを呼び寄せて撫でまわしていた。
本当にクロたちのことが好きだな。
「今日はどうしたんですか?お忍びですよね?」
「ああ。正式な格好で動くのはあまり好かんからな。
今日は、先日お前たちに迷惑をかけたパーティのライセンス剥奪を正式に言い渡しに来たのよ。
王の決定に背く者に、冒険者を続けさせるわけにはいかんからな。」
クロとユキに構うアーロンさんに、改めてどうしたのかと尋ねると、
先日現れた問題のある冒険者たちのライセンス剥奪を、直接伝えに来たのだと言った。
そういうのって、ベルさんとかルセウスさんでも良いのでは?
なんて思いながらも、本当に色々と対処してくれたんだなと、少し驚いた。
「…あの人たち、やっぱり剥奪ですか…。まあ、仕方ないでしょうけど…」
「そうだろう?いつの時代も、守らねばならぬ決まりはある。
ヨシヒロにも手を出そうとしたし、従魔にも手を出した。もう無理だな。」
アーロンさんは、国王として罰すべき相手は必ず罰するという姿勢の持ち主で、
少々は見逃すなんて生ぬるいことはしない性格なんだな。
でも、そうでもしないと犯罪が横行して国が壊れていくだろうから、
こういう判断ができるというのは、とても大切なことなんだろうなと思っていた。
「それで?ヨシヒロはどうしたのだ?ガーノスに呼び出されたのか?」
「あー、いえ。そういうわけじゃないんですけど…
先日、母猫と子猫3匹をふれあい広場に迎え入れたんです。」
「猫!!猫カフェか?」
「猫カフェですねぇ。で、その経緯っていうのが、クロとユキがその猫が人間に痛めつけられているのを発見して助けたのがきっかけだったんです。
瀕死だったんですけど、ハイヒールで何とか回復できて…。
その時、気配感知で男の人の気配を感じ取って、あとからこのギルドで感じた気配に似ていて…
一応、ガーノスさんに報告しようかなって。だって、猫って討伐すべき動物じゃないでしょ?
でも、日本と違って動物愛護法なんてないでしょうから、逮捕とか難しいんでしょうけど…
犯人を見つけたら、一言言わないと気が済まないっていうか…」
アーロンさんは自分の話が終わるとすぐに、俺がなぜここに来たのかを尋ねた。
こんなことをアーロンさんに話してもいいものかと迷ったけど、
自分の家族となったルーナが傷つけられたことは、どうしても許せなかった。
何が起きて、どうしたいのかを正直に話すと、アーロンさんは眉間にシワを寄せて険しい表情に変わった。
アーロンさんも動物が好きな人だから、こういうことは許せないんだろうな…。
「日本のように動物愛護法があれば、すぐにでも逮捕したい人物だな…。
この世界では、それがとても難しいというのが歯がゆいものよな。
しかし、注意喚起をすることは可能だ。王国からも、むやみに動物を傷つけぬよう通達を出させよう。」
「アーロンさん…ありがとうございます!とても助かります!
王国からの正式な通達でしたら、何か変わるかもしれませんね。」
アーロンさんは、この世界では日本のような法律を作れないことが歯がゆいと言いながらも、
王国から注意喚起の通達を出すことを提案してくれた。
王国からの通達であれば、少しは市民の意識が変わるかもしれない。
根付いた意識を変えるのは難しいかもしれないけど、それでも無意味な殺傷はなくしていきたい。
そう思いながら感謝していると、助けたルーナについて質問を受けた。
「どんな猫なのだ?」
「メインクーンみたいな容姿で、サバトラ柄の猫で、名前は―」
「名前は俺とユキで考えたんだぜ!ルーナって言うんだ!」
「おお!今回はクロとユキの二人が考えたのか?」
「そうなのです。あるじさまが名前を付けてしまうと、従魔契約になってしまう可能性が高いので…
父上が、僕たちで名前を付けたらどうかと提案してくださいました。」
「そうかそうか!なるほど…ルーナ、良き名だな!美しい猫なのだろうな。
今度ぜひ、私にも会わせておくれ。」
「いいぜ!慣れたら連れてくる!」
「…俺より仲良しだな。」
どんな猫かと問われた俺は、メインクーンのような猫だと答えようとしたところ、
すかさずクロが前に出て、自慢げに自分たちが名前を決めたと話した。
その報告を優しい表情で聞いているアーロンさん。
その光景は、孫の話を嬉しそうに聞く祖父のようで。
父というよりは、祖父の表情に思えていた。
そして、俺よりもはるかに仲良しになっている気がする。
ユキは母親のことがあるから複雑なんだろう。
少し距離を感じるけど、それでも自分の話を聞いてもらえるのは嬉しいようだった。
王家の人間とはあまり関わらないようにと思っていたけど、
結局こうやって関わってしまうんだな。
転生者同士の繋がりがあって、関わってしまう運命なのかもしれない。
そう思いながらも、今のところは戦争や巨悪な魔物討伐に駆り出されたりということがないのが救いだな。
それに、今回の件でアーロンさんが動いてくれるのはとても大きい。
あとはガーノスさんに報告をして、少しギルドで見張らせてもらえたら、犯人が訪れるかもしれない。
そう考えながら、ガーノスさんが来るまでの間、アーロンさんとルーナの話で盛り上がっていた-…
「お、戻ってきた!」
「とてもお似合いの名前になったと思います!」
クロとユキが出かけてどれくらい経っただろうか。
俺を呼ぶ声がして振り返ると、二人が嬉しそうに駆け寄ってきた。
どうやら、ちゃんと名前が決まったようだ。
一体どんな名前にしたのかな?なんて楽しみにしていると、
クロが猫ちゃんの元へ行き、ヨシヨシと優しく頭を撫でながら言った。
「猫ちゃん、今日から君の名前は"ルーナ"だよ!」
「ルーナ…可愛らしい名前じゃん!」
「そうだろー!いい名前だなってユキと決めたんだぜ!」
「この猫さんにはピッタリだと思います!」
二人が一生懸命考えた名前、それは「ルーナ」。
響きが綺麗で、お月さま系の名前かな?この子にぴったりな気がする。
クロが「ルーナ」と呼ぶと、自分の名前だと分かったのか、
クロの体にスリスリとすり寄っていった。
その姿は本当に可愛くて、見ているだけで胸がいっぱいになる。
ルーナもきっと気に入ってくれたんだろうなと感じていた。
「ルーナ、よろしくね。」
「よろしくね、ルーナ!ラピスだよー!」
「私はガーネットよ!女の子は私とルーナだけだから、仲良くしてね!」
ルーナと名前を紹介すると、そばにいた皆がそれぞれ名前を呼んで自己紹介を始めた。
ガーネットは、自分以外に女の子の友達ができたことが嬉しいみたいで、
ルーナの体に自分の体をくっつけて、ピカピカと光らせていた。
女子同士、仲良くしてくれるといいな。
なんて思いながら、この平和な空気がとてつもなく幸せに思えていた。
最近は鉱山に行ったり、洞窟に潜ったり、変な冒険者を追い返したりと、
ちょっと“異世界っぽい”生活をしていたけど、やっぱり、こういうのんびりライフが一番だよなぁ。
そう、しみじみと感じていた。
「さてと、ルーナの名前も決まったことだし、
この子たちが間違えて田んぼに入らないように結界張っておこうっと。」
「その方が良いだろうな。子猫はどこにでも行くからな。」
「だよね?子猫が入れないように…
…セルリアン・バリア!」
ポワアアッ―
「よし、これで大丈夫だな。
じゃあ、皆今日は自由に遊んでて。俺はちょっとガーノスさんのところに行ってくる。」
「何をしに行くのだ?」
「ルーナに怪我を負わせた奴に、責任取ってもらわなきゃいけないだろ?」
「うむ。あの時の気配感知に引っかかった男か。覚えておるのか?」
田んぼに結界を張ったあと、皆に留守番を頼んだ俺。
王都に行くと言うと理由を聞かれたので、ガーノスさんのところへ行くと伝えた。
ルーナに怪我を負わせた犯人について話すつもりだと告げると、
ロウキに「覚えているのか?」と問われ、俺はコクリと頷いた。
そして、絶対に許さないという思いを伝えた。
「あの気配さ、よく冒険者ギルドで感じてた気がするんだよな。
問い詰められるかは分かんないけど、ガーノスさんに報告はしておきたいじゃん。
俺は絶対に許さないからね。あんなに痛めつけておいて、処罰なしとかあり得ないでしょ!」
「まあ、そうだな。一緒に行って、もし発見したら食ってやろうか?」
「ちょ、それはさすがにダメに決まってんでしょうが!」
「主!俺がついて行くぜ!」
「僕もご一緒してもいいですか、あるじさま。」
「うん。じゃあ今日はクロとユキと行ってくる。皆、留守番頼むな!」
「ああ。任せておけ。」
今の気持ちを話すと、ロウキは鼻息荒く「食ってやろうか」と笑った。
さすがにそれはダメでしょう…。ロウキが優しいのは知ってるけど!
なんて思いながら、一緒に行きたいというクロとユキを連れて、転移ゲートへ向かった。
「主、悪者退治に行くのか?」
「そうだよー。犯人が分かるかどうかは微妙なんだけど、
それでも動物虐待は立派な犯罪なんだからな!
俺がいた世界では、みだりに殺傷した場合には5年以下の懲役または500万円以下の罰金だし、
虐待したり遺棄した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金なんだ。
この世界じゃ弱肉強食だから、日本みたいな罰はないだろうけど…
それでも、むやみに傷つけていいわけじゃないだろ?」
「主のいた世界では、動物たちが大切にされてるんだな!」
「そうだよ!それでも犯罪は後を絶たないんだけど…
でも、せめて俺が護れる命があるなら護りたいんだ。
俺に生きる力をくれてるからさ!」
「あるじさまは、本当にお優しいです。」
「あはは、そうかな?よし、じゃあ行きますか!」
「はーい!」
ゲートに向かう途中、クロに「悪者退治に行くの?」と問われ、俺は頷いた。
そして、日本では動物虐待は立派な犯罪だと教え、救える命は救いたいと話した。
この世界では弱肉強食が基本だから、日本のような法律はきっと根付かない。
だからこそ、俺は自分の手で救える命を救いたいと思う。
少しでも、誰かの命を救えたら。
そのために今、俺は自分に出来る事をしようと動いていた―…。
◇
「お邪魔しまっー」
「おお、ヨシヒロ!どうした?」
「え?アーロンさん?!」
「クロ!ユキ!こっちにおいで!」
ゲートを潜り抜けると、そこにはお忍び外出用の格好をしたアーロンさんがいて、目が合った。
驚いて声を上げると、アーロンさんも一瞬驚いた表情を見せたあと、すぐにクロとユキを呼び寄せて撫でまわしていた。
本当にクロたちのことが好きだな。
「今日はどうしたんですか?お忍びですよね?」
「ああ。正式な格好で動くのはあまり好かんからな。
今日は、先日お前たちに迷惑をかけたパーティのライセンス剥奪を正式に言い渡しに来たのよ。
王の決定に背く者に、冒険者を続けさせるわけにはいかんからな。」
クロとユキに構うアーロンさんに、改めてどうしたのかと尋ねると、
先日現れた問題のある冒険者たちのライセンス剥奪を、直接伝えに来たのだと言った。
そういうのって、ベルさんとかルセウスさんでも良いのでは?
なんて思いながらも、本当に色々と対処してくれたんだなと、少し驚いた。
「…あの人たち、やっぱり剥奪ですか…。まあ、仕方ないでしょうけど…」
「そうだろう?いつの時代も、守らねばならぬ決まりはある。
ヨシヒロにも手を出そうとしたし、従魔にも手を出した。もう無理だな。」
アーロンさんは、国王として罰すべき相手は必ず罰するという姿勢の持ち主で、
少々は見逃すなんて生ぬるいことはしない性格なんだな。
でも、そうでもしないと犯罪が横行して国が壊れていくだろうから、
こういう判断ができるというのは、とても大切なことなんだろうなと思っていた。
「それで?ヨシヒロはどうしたのだ?ガーノスに呼び出されたのか?」
「あー、いえ。そういうわけじゃないんですけど…
先日、母猫と子猫3匹をふれあい広場に迎え入れたんです。」
「猫!!猫カフェか?」
「猫カフェですねぇ。で、その経緯っていうのが、クロとユキがその猫が人間に痛めつけられているのを発見して助けたのがきっかけだったんです。
瀕死だったんですけど、ハイヒールで何とか回復できて…。
その時、気配感知で男の人の気配を感じ取って、あとからこのギルドで感じた気配に似ていて…
一応、ガーノスさんに報告しようかなって。だって、猫って討伐すべき動物じゃないでしょ?
でも、日本と違って動物愛護法なんてないでしょうから、逮捕とか難しいんでしょうけど…
犯人を見つけたら、一言言わないと気が済まないっていうか…」
アーロンさんは自分の話が終わるとすぐに、俺がなぜここに来たのかを尋ねた。
こんなことをアーロンさんに話してもいいものかと迷ったけど、
自分の家族となったルーナが傷つけられたことは、どうしても許せなかった。
何が起きて、どうしたいのかを正直に話すと、アーロンさんは眉間にシワを寄せて険しい表情に変わった。
アーロンさんも動物が好きな人だから、こういうことは許せないんだろうな…。
「日本のように動物愛護法があれば、すぐにでも逮捕したい人物だな…。
この世界では、それがとても難しいというのが歯がゆいものよな。
しかし、注意喚起をすることは可能だ。王国からも、むやみに動物を傷つけぬよう通達を出させよう。」
「アーロンさん…ありがとうございます!とても助かります!
王国からの正式な通達でしたら、何か変わるかもしれませんね。」
アーロンさんは、この世界では日本のような法律を作れないことが歯がゆいと言いながらも、
王国から注意喚起の通達を出すことを提案してくれた。
王国からの通達であれば、少しは市民の意識が変わるかもしれない。
根付いた意識を変えるのは難しいかもしれないけど、それでも無意味な殺傷はなくしていきたい。
そう思いながら感謝していると、助けたルーナについて質問を受けた。
「どんな猫なのだ?」
「メインクーンみたいな容姿で、サバトラ柄の猫で、名前は―」
「名前は俺とユキで考えたんだぜ!ルーナって言うんだ!」
「おお!今回はクロとユキの二人が考えたのか?」
「そうなのです。あるじさまが名前を付けてしまうと、従魔契約になってしまう可能性が高いので…
父上が、僕たちで名前を付けたらどうかと提案してくださいました。」
「そうかそうか!なるほど…ルーナ、良き名だな!美しい猫なのだろうな。
今度ぜひ、私にも会わせておくれ。」
「いいぜ!慣れたら連れてくる!」
「…俺より仲良しだな。」
どんな猫かと問われた俺は、メインクーンのような猫だと答えようとしたところ、
すかさずクロが前に出て、自慢げに自分たちが名前を決めたと話した。
その報告を優しい表情で聞いているアーロンさん。
その光景は、孫の話を嬉しそうに聞く祖父のようで。
父というよりは、祖父の表情に思えていた。
そして、俺よりもはるかに仲良しになっている気がする。
ユキは母親のことがあるから複雑なんだろう。
少し距離を感じるけど、それでも自分の話を聞いてもらえるのは嬉しいようだった。
王家の人間とはあまり関わらないようにと思っていたけど、
結局こうやって関わってしまうんだな。
転生者同士の繋がりがあって、関わってしまう運命なのかもしれない。
そう思いながらも、今のところは戦争や巨悪な魔物討伐に駆り出されたりということがないのが救いだな。
それに、今回の件でアーロンさんが動いてくれるのはとても大きい。
あとはガーノスさんに報告をして、少しギルドで見張らせてもらえたら、犯人が訪れるかもしれない。
そう考えながら、ガーノスさんが来るまでの間、アーロンさんとルーナの話で盛り上がっていた-…
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