魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル

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72話 無事に収穫出来て大満足です

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稲刈り作業に集中していると、あっという間に時間が過ぎていく。
気がつけば1時間、2時間と経ち、あんなに広がっていた稲穂がすべて刈り取られていた。
山積みになった稲穂を見ていると、本当にお米を作ったんだなぁと、しみじみと実感する。


「エマ、これからどうするのが正解?」

【稲刈りが終了したら、本来は刈り取った稲穂を数日間、逆さにして吊るします。】

「ああ、あの光景は毎年見てたな。」

【乾燥が終わったあとは、稲穂から米粒を取り出す“脱穀”、さらに硬い籾殻《もみがら》を取り除いて玄米にする“籾すり”という作業が待っています。
ヨシヒロさんもご存じのように、これらの作業は専用の機械で行われていますね。】

「確かに…」

【乾燥、脱穀、玄米、精米、そして精米されたお米を米俵にする作業は、魔法で行うことをおすすめします。】

「そうだなぁ…あの機械を生成するのはさすがに無理だろうなぁ。
これは絶対に魔法だな、うん。どうすればいい?」


稲刈りの次は、きっと干す作業だろうなと思いながらエマに尋ねると、予想通りの答えが返ってきた。
ただ、その後の工程は機械がないと厳しいと判断され、魔法での処理を勧められた。
手作業と魔法の融合で進める米作り。それも異世界らしくて、なんだかいいよな。
そう思いながら、どんな魔法を使えばいいのか、エマに訊ねた。


【万能神聖魔法のひとつに“Harvest Gift(ハーベスト・ギフト)”というものがあります。
この魔法は実りを扱う万能魔法です。最高位魔法のひとつで、クレオと同じ感覚で使用してください。】

「え?じゃあ、イメージして生成する感じなんだ?
オッケー。じゃあ、やってみる!」

「やってみるってお前…。まあ、そうだな。お前にはこの手の魔法は朝飯前だろうな。」

「難しい魔法なのか?」

「神聖魔法自体が珍しいのだ。それにハーベスト・ギフトは古代魔法のひとつでもある。
もう100年以上、使えた者はいないはずだ。
神聖魔法には“純粋な魔力”が必要だ。穢れのない魔力を持つ者なんて滅多にいない。
ましてや、この魔法に必要な魔力量は、普通の人間じゃ到底耐えきれん。
…だが、転生者のお前なら簡単にできてしまうだろう。」

「ほえー…魔力無限で良かったー!」


エマに“ハーベスト・ギフト”という魔法の存在を教えてもらい、
早速使おうとすると、呆れたような声を出すロウキ。
難しい魔法なのかと訊くと、この魔法は古代魔法で、もうずっと使える人がいなかったと知らされた。
そんなに大変な魔法なのかと思うと同時に、
転生時に“魔力無限”と“万能属性魔法適性”をもらえて良かったなぁと、つくづく思った。


「よーし…イメージ…お米を乾燥させて、脱穀して、玄米、精米する…
・・・・・・Harvest Gift(ハーベスト・ギフト)!!」


カサカサッ―

フワリッ―


「おお…!稲穂が光に包まれた…」


ハーベスト・ギフトと唱えた瞬間、大量にあった稲穂がふわりと浮き上がり、
丸い光がその稲穂を包み込んでいった。
その光の中で何が起きているのかは分からなかったけど、何だかとても温かい。
同時に、大量の魔力が持っていかれるあの気持ち悪い感覚もありながら、
光の中でうまく精米されていることを願っていた。

そして、魔法を使い続けて待つこと10分ほど経った頃、体がふっと軽くなるのを感じた。
その瞬間、稲穂を包んでいた光がゆっくりと地面に降りていき、スウッと消えていった。


「うわっ…!すごいっ…米俵だ…
いち、にー……え?20俵もある!
エマ?多くても10俵くらいじゃなかった?」

【この土地で作られた稲穂は、通常の2倍のお米が収穫できたようです。】

「凄すぎない?」

【ヨシヒロさんの魔法の精度が成長していたのと、この土地のおかげですね。
お疲れ様でした。20俵ありますので、半分をアーロン国王に献上すると良いでしょう。】

「そうだな。ありすぎてもアレだし、半分はアーロンさんに献上しに行くかな。」


光が消えたかと思えば、稲穂があった地面に大量の米俵が出現して、思わず目を見開いた。
駆け寄って数を数えると、最初に言われていたよりも10俵も多くて驚かされた。
どうやら、この土地の環境と俺の魔法が合わさって、2倍の収穫ができたようだった。
少しは俺も成長したってことなんだろうか?
なんて嬉しく思っていると、半分はアーロンさんに献上するといいとエマからアドバイスをもらった。
エマの言う通り、その方がアーロンさんも喜ぶだろうし、いいかもな。
そう思ったのと同時に、大きな入り口のアイテムボックスが欲しいと思い、エマに訊ねてみた。


「なぁ、エマ。鞄以外のアイテムボックスをそろそろ作りたいというか、生成したいというか。
これからロウキが獲物を捕まえてくる可能性もあるし、米俵とか大きいものを保管したいなって。」

【古代魔法のひとつに“Harvest Vault(ハーベスト・ヴォルト)”というものが存在します。
実りの保管庫。つまり、食物を保管できるアイテムボックスです。
空中に入り口が現れ、無限に保管できます。
空間の中の時間は動かず、保管した時のままなので、安心して長期保管できます。】

「え、それいいじゃん!その名前を言ったらいい?」

【はい。成功すれば、空間の入り口が空中に現れるでしょう。】

「よーし!・・・Harvest Vault!!
・・・・・・ダメか?」


ヴォンッ―


「おお!なんか出た!」

「主すげぇー!さっきもそうだけど、古代魔法を扱える人間なんていないよ?!」

「転生者とやらは恐ろしいものだな…」

「あるじさま、カッコいいです!」

「あるじ、てんさい!」

「ヨシヒロ様って、僕たちが思っている以上の存在だ…!」


手を伸ばしてハーベスト・ヴォルトと詠唱すると、少し間を置いて空間に大きな穴が現れた。
「何か出た」と言うと、ロウキたちは驚きの声をあげた。
古代魔法って、そんなにすごいのか。
俺的には「こういう魔法があるならもっと早く教えてよ!」って思っただけなんだけど…。

転生者特有の能力なんだろうなと思いつつ、米俵を運ぶために、ひとまず20俵すべてを空間に押し込めた。
この空間に入れておけば、腐らせる心配もないということだよな。
ありがたいなぁと思いつつ、早く白米を味わいたくて、うずうずしていた―…。









「・・・クレオ!」

「何を作っておるのだ?」

「これは全自動米炊き土鍋だよー。」

「全自動…?」

「そう!土鍋でお米を炊くのって火の管理が大変そうだからさ。
炊飯器っていう、日本のお米を炊く機械をイメージして、全自動で炊ける土鍋を生成しましたー!
ここにお米を入れて火をつけておけば、30分くらいで炊きあがるよ!」

「ほう…好き放題だな。」

「お米は絶対に失敗したくないからな!
なぁ、ロウキ!この土鍋を複製したいから、ラピスとシトリンとルドを呼んできてくれない?」

「はぁ…仕方のない奴だな。」


家に戻った俺は、皆を外で遊ばせて、厨房に来ていた。
炊飯器を生成したいけど、この世界じゃ使えないだろうから、火加減を自動調整してくれる土鍋を作ろうと「クレオ」を唱えた。
その様子を見ていたロウキに「何だ?」と聞かれ、
「自動でお米が炊ける土鍋だよ」と答えると、「好き放題だな」と鼻で笑われた。
でもこれは譲れない。
お米を美味しく食べるには、ちゃんとした道具が必要なんだ。
そう思いながら、この土鍋を強化・複製するために、ラピスたちを呼んでほしいとお願いした。
もう一つ作って、お米と一緒にアーロンさんに届ければ、すぐに食べてもらえるだろうから。


「ヨシヒロ様ー!ロウキ様から聞きました!僕たちにお任せください!」

「オイラたちの専門分野だから!」

「僕に任せて、ヨシヒロ様!」


ロウキがラピスたちを呼びに行くと、話を聞いた様子で「任せて!」と言いながら厨房にやってきたラピス、シトリン、ルドの3匹。
テーブルの上に置いてある土鍋を、まずはシトリンが強化。
すぐさまラピスが解析し、そのままルドに伝達。
あっという間に、もう一つ土鍋がポイッと出てきた。
時間にしてわずか2分。
天才的すぎるこの子たちの動きに、感動してしまう。


「…凄すぎるんだよね、君たち。」

「僕たちはいつでも、ヨシヒロ様のお役に立てるよう準備していますから!」

「いつでもオイラたちにお任せだよー!」

「予備でもう2つ複製しておくねー!」


ラピスたちの動きの良さに感心していると、ピョンピョンと跳ねながら、
その体をピカピカと光らせて喜んでいた。
そんな中、ルドは「予備を作るね」と言って、俺とアーロンさん用の土鍋を複製してくれた。
最高だね、この子たち!
そう思いながら、それぞれの頭を撫でてやると、さらに嬉しそうに笑ってくれた。


「さてと、じゃあお米炊いて、お昼ご飯に出してみるから!
今日はお米に合うお肉料理にしようねー!」

「お肉ー!ヨシヒロ様の作るお料理、大好きです!楽しみにしています!」

「ありがとう!それじゃあ、ご飯ができるまでは遊んでていいからねー。
ロウキに遊んでもらいな!」

「はーい!ロウキ様、行きましょう!」

「我は寝ようと…まぁ、良いか。ほれ、お前たち行くぞ。」

「子守よろしくなー。」


素敵な土鍋が出来上がったところで、昼食に向けて支度を始めることにした。
土鍋と一緒に、計量カップとお米を入れる米びつも生成していた俺は、
ひとまず必要な分だけお米を米びつに移動。
計量カップで6合分のお米を土鍋に出して水洗い。
ある程度洗ったところで、土鍋に引いてある6合の線まで水を注ぐ。
あとはいつものように火をつけて、弱火から中火にしておけば、
自動でお米が炊きあがるって仕組み。我ながら良いものを生成したなと思う。

お米が炊けるのを待っている間に、お肉とサラダとスープを作ろうかな。
そう思いながら冷蔵庫に向かった。
今までここで食事を作るのは楽しいなと思っていたけど、
お米が食べられる今日は、一番楽しいかもしれない。
皆も気に入ってくれると嬉しいな。
そう思いながら、昼食の準備に精を出していた―…。
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