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88話 赤い子の命は俺が護ります
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「…ここは。」
「ノエル…気がついたか。」
「ガーノス…それに君たちは…」
廃墟の研究施設を離れて数時間。
ベッドに寝かせていたノエルさんが目を覚ました。
ゆっくりと体を起こしたノエルさんは、まず自分の体に傷がないこと、
そして首に隷属の首輪がないことに気づき、驚いてベッドから飛び降りてガーノスさんに詰め寄った。
「ガーノス、これは一体どういうことだ?!傷もなければ、隷属の首輪もないぞ?!
あの男が私を解放したのか?!」
「いいや?そこにいるヨシヒロが、傷を治し、隷属の首輪も解除したんだよ。」
「え…?この青年が?嘘だろう?」
ノエルさんに詰め寄られたガーノスさんは、クイッと親指で俺の方を指し、すべて俺がやったと伝えた。
ノエルさんは信じられないといった様子で、俺とガーノスさんを交互に見つめていた。
そんなノエルさんに、ガーノスさんはため息交じりに話を続けた。
「嘘なわけあるか。こいつは王国御用達の冒険者だ。お前も見ただろう?
伝説の魔獣フェンリルに、ミノタウロス、スライム、使い魔の悪魔…
すべて、こいつの従魔だぞ。」
「じゅ、従魔?!フェンリルが従魔だと?!
フェンリルを従魔にできる人間などいるはずがない!
おい!君は一体何者なんだ?!
なぜフェンリルともあろうお方が、君のような子供の従魔に?!」
ガーノスさんが俺について話すと、ノエルさんは「そんなはずがない」と言い、今度は俺に詰め寄ってきた。
ノエルさんからすれば、俺のような年若い人間がなぜこれほどの力を持っているのか気になってしまうのも無理はない。
それが研究者としての好奇心なのか、力を欲する者としての問いなのかは分からないけれど。
そんな様子を見ていたロウキが、ヒョコヒョコと歩いてきて、前足でクイッと俺をノエルさんから引き離し、鋭い眼光でノエルさんを睨みつけながら言った。
「さっきからやかましい。我はヨシヒロに忠義を誓っておる。これまでのことなど知らぬ。
それに貴様、助けてもらっておいてその態度は何だ?まずは礼を言うのが筋ではないのか?」
「す…すみません…フェンリル様…」
ロウキは俺の前に立ち、ノエルさんに「まずは礼を言うべきだ」と告げた。
まるで人間のような感情に満ちたその言葉が、何だか嬉しかった。
すると、そんなロウキに続いてクロたちもノエルさんの元にやってきて、それぞれ言い始めた。
「主に助けてもらったんだろー?ちゃんと“ありがとう”って言わなきゃダメだろ!
あと、俺も頑張ったんだぞ!お前が助けてって言ったトカゲ、俺の分身なんだからな!」
「そうですよ、ノエルさん。私たちはあなたを救い出すのに必死でしたよ。」
「あるじ、まもった。ありがと、いって。」
「ヨシヒロ様のご活躍、見ておいてほしかったです!」
「こらこら!ノエルさんを困らせないの!
ロウキも、困らせないで!」
「なっ…我はお前のために…」
「分かってる。ありがとうな、ロウキ。」
「フンッ!」
俺の使い魔と従魔たちは、本当に心が優しいなぁ。
別に俺は何とも思っていないのに、俺を庇って向かってくれる。
それだけで、俺は最高に幸せな気分になる。
なんて思いながら、ロウキをなだめて落ち着かせた。
その様子を見ていたノエルさんは、少し羨ましそうな、そんな声で俺に言った。
「君は…魔物や魔獣たちに愛されているんだな。しかも悪魔まで…。
そんな人間、初めてだよ。」
「俺は、この子たちと出会えたからこそ、今こうして生きていられるんです。
この子たちは疎まれる存在かもしれませんが、俺にとっては大切な家族なんです。
だからこそ…魔物や魔獣を実験の道具に使うということが、俺にはどうしても許せません。
隷属の首輪で自由を奪われていたことは分かります。
でも…本来は本能だけで生きているワイバーンが、何て言ったか分かりますか?
“眠らせてくれ、楽にしてくれ”って…どれだけ辛かったか…。
だから俺は、あなたの研究内容には賛同できません。
もし、違法ではない方法で交配された者に対する研究なら…俺も…」
「そうだね…。今回、私が行ったことがいかに愚かなことだったか、痛感してるよ。
君が言うように、自然交配した者たちだけを対象に研究していれば、こんな悲劇は起こらなかったかもしれな。やり方を間違えたのかもしれないってね…」
「…すみません。少し感情的になってしまいました。
あなたの研究心を否定するつもりはないんです。
何かに興味を抱き、自分で道を切り開くということは、とても素晴らしいことだと俺は思っていますから。」
「ありがとう…ヨシヒロ君。」
ノエルさんに「君は皆に愛されているんだね」と言われた時、感情が爆発してしまった。
ノエルさんには逆らう術がなかったことは分かっていたのに。
どうしても、あのワイバーンの声が忘れられなくて、感情的にノエルさんを責めてしまった。
けれどノエルさんは、そんな俺の言葉を素直に受け入れてくれて、
「やり方を間違えたのかもしれない」と肩を落とした。
だから慌てて、研究心を否定したいわけじゃないと伝えた。
その言葉を受けたノエルさんは、少し悲しそうに笑って「ありがとう」と呟いた。
「ノエル…何があったんだ。お前がこんな男にホイホイついて行くとは思えねぇ。
事情があったなら、聞かせてくれ。」
「ガーノス…私は―…」
俺たちのやり取りを黙って見ていたガーノスさん。
皆が落ち着いたところで、何があったのかを静かに訊ねた。
最初は口ごもっていたノエルさんだったけれど、やがてゆっくりと口を開いた。
「私の研究を、無条件で理解してくれた男だと思ったんだ…。
私がいた研究施設に、たまたまあの男が来ていてね。
私が遺伝子の話をしたら、目を輝かせて食いついてきた。
そして、“自分が資金を出すから、納得がいくまで研究を続けてみろ”って言ってくれた。
初めてだったの。私の考えを否定せずに、受け入れてくれたのは…。
だから私は、安易に信じてしまったんだ。あの男に裏の顔があるなんて、思いもしなかった。
それからしばらくは、何事もなく過ごしていたんだけど…
あの男は突然、“実際に融合体を作り出してみないか”と提案してきた。
“成功すれば、初の成功例として論文が書けるぞ”って。
でも、意図的に魔物同士を掛け合わせることは国の決まりに違反していたし、
命を身勝手に利用することはできないと、私は断ったの。
そしたら…このざまよ。
私が眠っている間に家に侵入されて、あっという間に隷属の首輪をはめられた。
さらに研究施設も奪われて、もうどこへも行けなくなった。
…私は、自分の研究がこんな風に利用される日が来るなんて、思いもしなかった。
そして今回のことで、いかに自分が命を粗末に扱っていたかが分かった。
弱肉強食の世界で、常に命は咲いたり散ったりしているけど…
私の行った実験は、最低だった…」
「話してくれてありがとな…。アーロン…いや、陛下には情状酌量を求めるからよ…。」
「ありがとう、ガーノス…。その気持ちだけで十分よ。
私はきちんと、自分の犯した罪と向き合って償うわ。
私が…私がすべて悪かったのよ。この事実は、変わらないわ。」
「ノエル…」
ノエルさんの口から語られたのは、
自分を認めてくれたと思った相手が、実は悪だったという。
きっとこの世界じゃなくても、どこにでも起こりうる出来事だと思った。
誰だって、自分がやってきたことを認められたら素直に嬉しいし、
もっと成果を出したいと思うだろう。
相手が裏で何かを企んでいるなんて、その時は全く思わない。
この手のことは、自己防衛するしかないけれどノエルさんは、純粋に嬉しかったんだよね。
自分が進んできた道を、誰かに認められたって。
その気持ちは、俺にだって少しくらいは分かる。
だからこそ、「私が悪かったのよ」と言って、微笑もうとするノエルさんの顔が、痛々しかった。
なんで、頑張る人が報われずに、利用されて泣く羽目になるんだろう…。
世界はいつだってそうだ。
頑張る人、正直な人がバカを見るって、そう言われる。
だから俺は、そんな人に手を差し伸べられる人間でありたい。
そう、強く思っていた―…。
◇
「ガーノスさん、ヨシヒロ様。ありがとうございます。
ここからは我々が引き継ぎます。」
「ああ…頼む。」
「承知しました。では、お二人にはこれから陛下へのご報告をお願いいたします。」
「分かった。」
「はい…」
5日かけて王都に戻った俺たちは、一度クロたちを転移ゲートで家に戻らせてから王城へと向かった。
アクアベアだけは俺の服を握ったまま眠っていて、どうしても離してくれなかったので、そのまま連れていくことにした。
王城の城門で待っていたルセウスさんとクロノスさんに、男とノエルさんを引き渡し、
俺たちは別の案内人に導かれて、アーロンさんが待つ王座の間へと向かった。
思えば、俺は今まで応接間や執務室にしか行ったことがなかった。
正式な謁見は初めてで、どうしていいのか分からない。
そう思いながら、ただ黙って案内人のあとをついていった。
そして、緊張したまま扉が開き、思わず唾を飲み込む。
玉座の間は、静寂の中にも張り詰めた空気が満ちていて、今まで感じたことのない重たい空間だった。
アーロンさんの玉座の周りには、王妃レイラさん、冷静な表情をした見知らぬ人物。
あの人は…もしかして“宰相”と呼ばれる人だろうか?漫画で読んだことがある。
それに、武装した騎士団長ルセウスさん、鋭い視線の魔法士のような人物もいた。
執事長ガロンさん、側近のベルさん、そしてアーロンさんの護衛担当クロノスさんも静かに控えていた。
会ったことのない人もいるけれど、今まで見てきた人たちとは思えないほど、雰囲気はガラリと違っていた。
俺はガーノスさんをこっそりと見ながら、深く最敬礼を捧げた。
アーロンさんの「面を上げよ」という言葉に従い、顔を上げる。
続けて、いつもとは違う重い声が響いた。
「報告を始めよう、ガーノス、ヨシヒロ。」
「はっ!
違法な魔物改造を行っていたマルセル・ヴェルミス男爵、そして研究者ノエルを捕縛いたしました。
研究者ノエルは、ヴェルミス男爵の手により隷属の首輪をはめられ、拒めない状態で無理やり研究を続けさせられていたようです。
その結果、彼らは魔獣を非人道的な手法で改造し、新たな生物兵器を作り出していました…。
違法改造され暴れた生物兵器につきましては、横におりますヨシヒロの従魔、フェンリルが難なく討伐いたしました。
我々は、容疑者であるヴェルミス男爵と研究者ノエルを城門にて騎士団長ルセウス殿とクロノス殿にお引き渡しいたしました。」
ガーノスさんはとても言いづらそうに、あの男とノエルさんのことについても報告した。
その報告が終わると、ガーノスさんの肩の力が一気に抜けたのが分かった。
だけど、玉座の間は重苦しい沈黙に包まれていた。
そして、長い沈黙のあと、アーロンさんは深く息を吐きながら言った。
「…よくやった。辛い仕事をさせる結果となったな、ガーノス。」
「いえ…」
アーロンさんは、ガーノスさんとノエルさんがかつて一緒に冒険をした仲間だと知っているようで、
今回の件が辛い仕事になってしまったことを申し訳なさそうに語った。
そして、宰相らしき人物に視線を送り、その人が静かに一歩前へ出た。
「陛下。この件は王国の法律と安全保障に関わる重大な事案です。
ただちに特別査問委員会を立ち上げ、厳正に処罰する手筈を整えます。」
「ああ…。よろしく頼む。
ガーノス、ヨシヒロ。
此度の働き、国を揺るがす問題となる前に未然に防いでくれたこと、感謝する。」
「有難きお言葉…」
ガーノスさんは深く頭を下げ、その一言を絞り出した。
俺も慌てて頭を下げ、再び静かにアーロンさんの言葉を待った。
アーロンさんは、宰相らしき人物やルセウスさん、魔法士たちをちらりと見て、微かに頷いた。
これで今回の調査報告は完了し、あとは彼らに委ねられたということだろう。
初めて経験するこんな場面、一秒でも早く解放されたい一心で最敬礼をして、ようやく王座の間をあとにした。
重い扉が閉まった瞬間、体の力が一気に抜けて、思わずその場に座り込んでしまった。
そんな俺を見て、ガーノスさんはケラケラと笑っていたけれど、その目に元気はなかった。
どんな言葉をかけたらいいのか分からずにいると、案内役の人から「応接間でお待ちください」と言われ、俺たちは応接間へと向かった。
「ヨシヒロ様、緑茶でございます。」
「ありがとうございますネオさん。」
「もうじき皆さんこちらに来られます。今しばらくお待ちください。」
「はい…。
はぁー…疲れた…。もう二度と経験したくないですこういう正式なやつ。」
「はは、まぁ俺だってそうだよ。
そてにしてもヨシヒロ…よく隠せたな?アクアベア。」
「あはは、Arca Magna(アルカ・マグナ)で中に入れてました。
さすがにあの場に連れて行ったら、この子殺されるかもと思ったので…。
もういいか。…アルカ・マグナ!」
ドスンッ―
「スゥ…スゥ…」
応接間に案内され、お茶を出されたところで、ガーノスさんにアクアベアについて訊かれた。
俺は空間収納魔法で中に入れていたと説明した。
さすがに王座の間にあの子を連れて行ったら、処分されたり押収されたりするかもしれない。
そう思って、再び「アルカ・マグナ」と唱えてアクアベアを呼び戻すと、さっきと変わらず寝息を立てて眠ったままだった。
この子は、あの時の記憶を覚えているんだろうか?
ない方が幸せな気もする。
だけど、あの時交わした言葉、アクアベアとの会話だけは、俺は忘れたくないと思っていた。
ガチャ―
「ヨシヒロ、ガーノス。待たせたな。」
「アーロンさん! それに皆さんも。」
応接間に通されてしばらく経った頃、扉が開く音がして、アーロンさんと王座の間にいた人たちが中へと入ってきた。
王座の間で初めて見た二人もいる。この二人は…?
そう思っていると、彼らの方から挨拶をしてくれた。
「お初にお目にかかります、ヨシヒロ殿。
私はこのソウリアス王国にて国政を司っております、宰相ブラッド・レイエスでございます。」
「私は、国王アーロン陛下の弟、第三王子アトスでございます。
このソウリアス王国にて、騎士団魔導隊団長を拝命しております。」
「あ…は、はじめまして。ヨシヒロと申します。よろしくお願いいたします。」
宰相のレイエスさん、魔導隊団長のアトスさんに挨拶をされ、俺はその勢いに思わず声が固まってしまった。
これからもこういう場面があるのなら、公的な挨拶を覚えないとダメかもしれない。そう思っていた。
そんな中、アーロンさんは俺とガーノスさんの前に座り、目に留まったアクアベアについて問いかけた。
「ヨシヒロ…その赤い熊は?さっきはいなかったよな?
また新しい従魔か?」
「あの…実はこの子は―…」
アクアベアについて問われた俺は、何があったのかを詳しく話した。
話す途中、あの光景が蘇り、何とも言えない気持ちになって、ギュッとアクアベアを抱きしめた。
俺の話が終わるまで、アーロンさんを含め、皆さんは黙って耳を傾けてくれていた。
そして話が終わると、アーロンさんは席を立ち、眠るアクアベアの頭を優しく撫でてくれた。
「辛い思いをさせてすまなかったな、アクアベア…。
新しい人生を得られたのだ。ヨシヒロの元で幸せに暮らすが良い。」
「…グオ?」
「あ…起きた?大丈夫、怖くないよ。」
「グオッ!」
「おお?私に抱っこしてほしいのか?良いぞ。」
「ああ!すみません、アーロンさん…」
「気にするな、ヨシヒロ。」
アーロンさんに撫でられたことで目を覚ましたアクアベア。
「怖くないよ」と声をかけると、目の前にいたアーロンさんに手を伸ばした。
するとアーロンさんは目尻を下げながら、アクアベアをそっと抱き上げた。
意外と懐きやすいのか?なんて思いながら、その様子を見ていた。
「ヨシヒロ殿、この子は本当に危険はないのだな?
本来、魔獣は見境なく人や家畜を襲うものだが。」
「え?」
「突然すまない。我々は“魔獣=討伐対象”という認識なものでな。」
「えっと…アトス様…。
危険かどうかは、正直まだ分かりません。
ですが、本来アクアベアは弱き者を助けることができる魔獣だと聞いています。
俺が…いえ、私が必ず護ります。この子が人間に手出しをしないよう、監視も致します。
ですからどうか…どうか、生まれ変わったこの子の命だけは…お許しください…。」
「ヨシヒロ殿…」
アーロンさんとアクアベアの微笑ましい様子を見ていたところで、後ろから俺を呼ぶ声がして振り返った。
そこにいたのは、今日初めて会ったアーロンさんの弟、アトスさんだった。
慌てて立ち上がり質問を受けた俺は、アトスさんに「この子は自分が護る、監視もするから殺さないでほしい」と懇願した。
すると、そんな俺を見たアトスさんはポンッと肩を叩き、少しだけ微笑んで言った。
「兄上たちの言う通りなのだな。ヨシヒロ殿は本当に魔物や魔獣を愛し、大切にしている。
今の姿を見て、よく分かった。突然怖がらせてすまなかった。」
「いえ…私は命を護る責務がありますから…。
この子たちのおかげで、今の私があります。
だから私は、精いっぱい一緒にいてやりたいのです。」
「そうか…。ヨシヒロ殿を信じよう。なぁ、宰相殿。」
「そうですね、アトス様。どうなることかと思いましたが…
ヨシヒロ殿のそのお気持ち、我々は信じましょう。」
「ありがとう…ございます…」
アトスさんは俺のことを「信じる」と言ってくれて、
側にいた宰相のブラッドさんにも同意を得てくれた。
そのおかげで、何とかアクアベアは殺されることなく済み、俺はホッと胸をなでおろした。
この子は生まれ変わったんだ。
神の裁きを受けた子だけど、それでも俺が護ってみせる。
せっかく繋がった命だから。
もう誰にも、奪わせはしない。
改めて、そう誓いを立てた―…。
「ノエル…気がついたか。」
「ガーノス…それに君たちは…」
廃墟の研究施設を離れて数時間。
ベッドに寝かせていたノエルさんが目を覚ました。
ゆっくりと体を起こしたノエルさんは、まず自分の体に傷がないこと、
そして首に隷属の首輪がないことに気づき、驚いてベッドから飛び降りてガーノスさんに詰め寄った。
「ガーノス、これは一体どういうことだ?!傷もなければ、隷属の首輪もないぞ?!
あの男が私を解放したのか?!」
「いいや?そこにいるヨシヒロが、傷を治し、隷属の首輪も解除したんだよ。」
「え…?この青年が?嘘だろう?」
ノエルさんに詰め寄られたガーノスさんは、クイッと親指で俺の方を指し、すべて俺がやったと伝えた。
ノエルさんは信じられないといった様子で、俺とガーノスさんを交互に見つめていた。
そんなノエルさんに、ガーノスさんはため息交じりに話を続けた。
「嘘なわけあるか。こいつは王国御用達の冒険者だ。お前も見ただろう?
伝説の魔獣フェンリルに、ミノタウロス、スライム、使い魔の悪魔…
すべて、こいつの従魔だぞ。」
「じゅ、従魔?!フェンリルが従魔だと?!
フェンリルを従魔にできる人間などいるはずがない!
おい!君は一体何者なんだ?!
なぜフェンリルともあろうお方が、君のような子供の従魔に?!」
ガーノスさんが俺について話すと、ノエルさんは「そんなはずがない」と言い、今度は俺に詰め寄ってきた。
ノエルさんからすれば、俺のような年若い人間がなぜこれほどの力を持っているのか気になってしまうのも無理はない。
それが研究者としての好奇心なのか、力を欲する者としての問いなのかは分からないけれど。
そんな様子を見ていたロウキが、ヒョコヒョコと歩いてきて、前足でクイッと俺をノエルさんから引き離し、鋭い眼光でノエルさんを睨みつけながら言った。
「さっきからやかましい。我はヨシヒロに忠義を誓っておる。これまでのことなど知らぬ。
それに貴様、助けてもらっておいてその態度は何だ?まずは礼を言うのが筋ではないのか?」
「す…すみません…フェンリル様…」
ロウキは俺の前に立ち、ノエルさんに「まずは礼を言うべきだ」と告げた。
まるで人間のような感情に満ちたその言葉が、何だか嬉しかった。
すると、そんなロウキに続いてクロたちもノエルさんの元にやってきて、それぞれ言い始めた。
「主に助けてもらったんだろー?ちゃんと“ありがとう”って言わなきゃダメだろ!
あと、俺も頑張ったんだぞ!お前が助けてって言ったトカゲ、俺の分身なんだからな!」
「そうですよ、ノエルさん。私たちはあなたを救い出すのに必死でしたよ。」
「あるじ、まもった。ありがと、いって。」
「ヨシヒロ様のご活躍、見ておいてほしかったです!」
「こらこら!ノエルさんを困らせないの!
ロウキも、困らせないで!」
「なっ…我はお前のために…」
「分かってる。ありがとうな、ロウキ。」
「フンッ!」
俺の使い魔と従魔たちは、本当に心が優しいなぁ。
別に俺は何とも思っていないのに、俺を庇って向かってくれる。
それだけで、俺は最高に幸せな気分になる。
なんて思いながら、ロウキをなだめて落ち着かせた。
その様子を見ていたノエルさんは、少し羨ましそうな、そんな声で俺に言った。
「君は…魔物や魔獣たちに愛されているんだな。しかも悪魔まで…。
そんな人間、初めてだよ。」
「俺は、この子たちと出会えたからこそ、今こうして生きていられるんです。
この子たちは疎まれる存在かもしれませんが、俺にとっては大切な家族なんです。
だからこそ…魔物や魔獣を実験の道具に使うということが、俺にはどうしても許せません。
隷属の首輪で自由を奪われていたことは分かります。
でも…本来は本能だけで生きているワイバーンが、何て言ったか分かりますか?
“眠らせてくれ、楽にしてくれ”って…どれだけ辛かったか…。
だから俺は、あなたの研究内容には賛同できません。
もし、違法ではない方法で交配された者に対する研究なら…俺も…」
「そうだね…。今回、私が行ったことがいかに愚かなことだったか、痛感してるよ。
君が言うように、自然交配した者たちだけを対象に研究していれば、こんな悲劇は起こらなかったかもしれな。やり方を間違えたのかもしれないってね…」
「…すみません。少し感情的になってしまいました。
あなたの研究心を否定するつもりはないんです。
何かに興味を抱き、自分で道を切り開くということは、とても素晴らしいことだと俺は思っていますから。」
「ありがとう…ヨシヒロ君。」
ノエルさんに「君は皆に愛されているんだね」と言われた時、感情が爆発してしまった。
ノエルさんには逆らう術がなかったことは分かっていたのに。
どうしても、あのワイバーンの声が忘れられなくて、感情的にノエルさんを責めてしまった。
けれどノエルさんは、そんな俺の言葉を素直に受け入れてくれて、
「やり方を間違えたのかもしれない」と肩を落とした。
だから慌てて、研究心を否定したいわけじゃないと伝えた。
その言葉を受けたノエルさんは、少し悲しそうに笑って「ありがとう」と呟いた。
「ノエル…何があったんだ。お前がこんな男にホイホイついて行くとは思えねぇ。
事情があったなら、聞かせてくれ。」
「ガーノス…私は―…」
俺たちのやり取りを黙って見ていたガーノスさん。
皆が落ち着いたところで、何があったのかを静かに訊ねた。
最初は口ごもっていたノエルさんだったけれど、やがてゆっくりと口を開いた。
「私の研究を、無条件で理解してくれた男だと思ったんだ…。
私がいた研究施設に、たまたまあの男が来ていてね。
私が遺伝子の話をしたら、目を輝かせて食いついてきた。
そして、“自分が資金を出すから、納得がいくまで研究を続けてみろ”って言ってくれた。
初めてだったの。私の考えを否定せずに、受け入れてくれたのは…。
だから私は、安易に信じてしまったんだ。あの男に裏の顔があるなんて、思いもしなかった。
それからしばらくは、何事もなく過ごしていたんだけど…
あの男は突然、“実際に融合体を作り出してみないか”と提案してきた。
“成功すれば、初の成功例として論文が書けるぞ”って。
でも、意図的に魔物同士を掛け合わせることは国の決まりに違反していたし、
命を身勝手に利用することはできないと、私は断ったの。
そしたら…このざまよ。
私が眠っている間に家に侵入されて、あっという間に隷属の首輪をはめられた。
さらに研究施設も奪われて、もうどこへも行けなくなった。
…私は、自分の研究がこんな風に利用される日が来るなんて、思いもしなかった。
そして今回のことで、いかに自分が命を粗末に扱っていたかが分かった。
弱肉強食の世界で、常に命は咲いたり散ったりしているけど…
私の行った実験は、最低だった…」
「話してくれてありがとな…。アーロン…いや、陛下には情状酌量を求めるからよ…。」
「ありがとう、ガーノス…。その気持ちだけで十分よ。
私はきちんと、自分の犯した罪と向き合って償うわ。
私が…私がすべて悪かったのよ。この事実は、変わらないわ。」
「ノエル…」
ノエルさんの口から語られたのは、
自分を認めてくれたと思った相手が、実は悪だったという。
きっとこの世界じゃなくても、どこにでも起こりうる出来事だと思った。
誰だって、自分がやってきたことを認められたら素直に嬉しいし、
もっと成果を出したいと思うだろう。
相手が裏で何かを企んでいるなんて、その時は全く思わない。
この手のことは、自己防衛するしかないけれどノエルさんは、純粋に嬉しかったんだよね。
自分が進んできた道を、誰かに認められたって。
その気持ちは、俺にだって少しくらいは分かる。
だからこそ、「私が悪かったのよ」と言って、微笑もうとするノエルさんの顔が、痛々しかった。
なんで、頑張る人が報われずに、利用されて泣く羽目になるんだろう…。
世界はいつだってそうだ。
頑張る人、正直な人がバカを見るって、そう言われる。
だから俺は、そんな人に手を差し伸べられる人間でありたい。
そう、強く思っていた―…。
◇
「ガーノスさん、ヨシヒロ様。ありがとうございます。
ここからは我々が引き継ぎます。」
「ああ…頼む。」
「承知しました。では、お二人にはこれから陛下へのご報告をお願いいたします。」
「分かった。」
「はい…」
5日かけて王都に戻った俺たちは、一度クロたちを転移ゲートで家に戻らせてから王城へと向かった。
アクアベアだけは俺の服を握ったまま眠っていて、どうしても離してくれなかったので、そのまま連れていくことにした。
王城の城門で待っていたルセウスさんとクロノスさんに、男とノエルさんを引き渡し、
俺たちは別の案内人に導かれて、アーロンさんが待つ王座の間へと向かった。
思えば、俺は今まで応接間や執務室にしか行ったことがなかった。
正式な謁見は初めてで、どうしていいのか分からない。
そう思いながら、ただ黙って案内人のあとをついていった。
そして、緊張したまま扉が開き、思わず唾を飲み込む。
玉座の間は、静寂の中にも張り詰めた空気が満ちていて、今まで感じたことのない重たい空間だった。
アーロンさんの玉座の周りには、王妃レイラさん、冷静な表情をした見知らぬ人物。
あの人は…もしかして“宰相”と呼ばれる人だろうか?漫画で読んだことがある。
それに、武装した騎士団長ルセウスさん、鋭い視線の魔法士のような人物もいた。
執事長ガロンさん、側近のベルさん、そしてアーロンさんの護衛担当クロノスさんも静かに控えていた。
会ったことのない人もいるけれど、今まで見てきた人たちとは思えないほど、雰囲気はガラリと違っていた。
俺はガーノスさんをこっそりと見ながら、深く最敬礼を捧げた。
アーロンさんの「面を上げよ」という言葉に従い、顔を上げる。
続けて、いつもとは違う重い声が響いた。
「報告を始めよう、ガーノス、ヨシヒロ。」
「はっ!
違法な魔物改造を行っていたマルセル・ヴェルミス男爵、そして研究者ノエルを捕縛いたしました。
研究者ノエルは、ヴェルミス男爵の手により隷属の首輪をはめられ、拒めない状態で無理やり研究を続けさせられていたようです。
その結果、彼らは魔獣を非人道的な手法で改造し、新たな生物兵器を作り出していました…。
違法改造され暴れた生物兵器につきましては、横におりますヨシヒロの従魔、フェンリルが難なく討伐いたしました。
我々は、容疑者であるヴェルミス男爵と研究者ノエルを城門にて騎士団長ルセウス殿とクロノス殿にお引き渡しいたしました。」
ガーノスさんはとても言いづらそうに、あの男とノエルさんのことについても報告した。
その報告が終わると、ガーノスさんの肩の力が一気に抜けたのが分かった。
だけど、玉座の間は重苦しい沈黙に包まれていた。
そして、長い沈黙のあと、アーロンさんは深く息を吐きながら言った。
「…よくやった。辛い仕事をさせる結果となったな、ガーノス。」
「いえ…」
アーロンさんは、ガーノスさんとノエルさんがかつて一緒に冒険をした仲間だと知っているようで、
今回の件が辛い仕事になってしまったことを申し訳なさそうに語った。
そして、宰相らしき人物に視線を送り、その人が静かに一歩前へ出た。
「陛下。この件は王国の法律と安全保障に関わる重大な事案です。
ただちに特別査問委員会を立ち上げ、厳正に処罰する手筈を整えます。」
「ああ…。よろしく頼む。
ガーノス、ヨシヒロ。
此度の働き、国を揺るがす問題となる前に未然に防いでくれたこと、感謝する。」
「有難きお言葉…」
ガーノスさんは深く頭を下げ、その一言を絞り出した。
俺も慌てて頭を下げ、再び静かにアーロンさんの言葉を待った。
アーロンさんは、宰相らしき人物やルセウスさん、魔法士たちをちらりと見て、微かに頷いた。
これで今回の調査報告は完了し、あとは彼らに委ねられたということだろう。
初めて経験するこんな場面、一秒でも早く解放されたい一心で最敬礼をして、ようやく王座の間をあとにした。
重い扉が閉まった瞬間、体の力が一気に抜けて、思わずその場に座り込んでしまった。
そんな俺を見て、ガーノスさんはケラケラと笑っていたけれど、その目に元気はなかった。
どんな言葉をかけたらいいのか分からずにいると、案内役の人から「応接間でお待ちください」と言われ、俺たちは応接間へと向かった。
「ヨシヒロ様、緑茶でございます。」
「ありがとうございますネオさん。」
「もうじき皆さんこちらに来られます。今しばらくお待ちください。」
「はい…。
はぁー…疲れた…。もう二度と経験したくないですこういう正式なやつ。」
「はは、まぁ俺だってそうだよ。
そてにしてもヨシヒロ…よく隠せたな?アクアベア。」
「あはは、Arca Magna(アルカ・マグナ)で中に入れてました。
さすがにあの場に連れて行ったら、この子殺されるかもと思ったので…。
もういいか。…アルカ・マグナ!」
ドスンッ―
「スゥ…スゥ…」
応接間に案内され、お茶を出されたところで、ガーノスさんにアクアベアについて訊かれた。
俺は空間収納魔法で中に入れていたと説明した。
さすがに王座の間にあの子を連れて行ったら、処分されたり押収されたりするかもしれない。
そう思って、再び「アルカ・マグナ」と唱えてアクアベアを呼び戻すと、さっきと変わらず寝息を立てて眠ったままだった。
この子は、あの時の記憶を覚えているんだろうか?
ない方が幸せな気もする。
だけど、あの時交わした言葉、アクアベアとの会話だけは、俺は忘れたくないと思っていた。
ガチャ―
「ヨシヒロ、ガーノス。待たせたな。」
「アーロンさん! それに皆さんも。」
応接間に通されてしばらく経った頃、扉が開く音がして、アーロンさんと王座の間にいた人たちが中へと入ってきた。
王座の間で初めて見た二人もいる。この二人は…?
そう思っていると、彼らの方から挨拶をしてくれた。
「お初にお目にかかります、ヨシヒロ殿。
私はこのソウリアス王国にて国政を司っております、宰相ブラッド・レイエスでございます。」
「私は、国王アーロン陛下の弟、第三王子アトスでございます。
このソウリアス王国にて、騎士団魔導隊団長を拝命しております。」
「あ…は、はじめまして。ヨシヒロと申します。よろしくお願いいたします。」
宰相のレイエスさん、魔導隊団長のアトスさんに挨拶をされ、俺はその勢いに思わず声が固まってしまった。
これからもこういう場面があるのなら、公的な挨拶を覚えないとダメかもしれない。そう思っていた。
そんな中、アーロンさんは俺とガーノスさんの前に座り、目に留まったアクアベアについて問いかけた。
「ヨシヒロ…その赤い熊は?さっきはいなかったよな?
また新しい従魔か?」
「あの…実はこの子は―…」
アクアベアについて問われた俺は、何があったのかを詳しく話した。
話す途中、あの光景が蘇り、何とも言えない気持ちになって、ギュッとアクアベアを抱きしめた。
俺の話が終わるまで、アーロンさんを含め、皆さんは黙って耳を傾けてくれていた。
そして話が終わると、アーロンさんは席を立ち、眠るアクアベアの頭を優しく撫でてくれた。
「辛い思いをさせてすまなかったな、アクアベア…。
新しい人生を得られたのだ。ヨシヒロの元で幸せに暮らすが良い。」
「…グオ?」
「あ…起きた?大丈夫、怖くないよ。」
「グオッ!」
「おお?私に抱っこしてほしいのか?良いぞ。」
「ああ!すみません、アーロンさん…」
「気にするな、ヨシヒロ。」
アーロンさんに撫でられたことで目を覚ましたアクアベア。
「怖くないよ」と声をかけると、目の前にいたアーロンさんに手を伸ばした。
するとアーロンさんは目尻を下げながら、アクアベアをそっと抱き上げた。
意外と懐きやすいのか?なんて思いながら、その様子を見ていた。
「ヨシヒロ殿、この子は本当に危険はないのだな?
本来、魔獣は見境なく人や家畜を襲うものだが。」
「え?」
「突然すまない。我々は“魔獣=討伐対象”という認識なものでな。」
「えっと…アトス様…。
危険かどうかは、正直まだ分かりません。
ですが、本来アクアベアは弱き者を助けることができる魔獣だと聞いています。
俺が…いえ、私が必ず護ります。この子が人間に手出しをしないよう、監視も致します。
ですからどうか…どうか、生まれ変わったこの子の命だけは…お許しください…。」
「ヨシヒロ殿…」
アーロンさんとアクアベアの微笑ましい様子を見ていたところで、後ろから俺を呼ぶ声がして振り返った。
そこにいたのは、今日初めて会ったアーロンさんの弟、アトスさんだった。
慌てて立ち上がり質問を受けた俺は、アトスさんに「この子は自分が護る、監視もするから殺さないでほしい」と懇願した。
すると、そんな俺を見たアトスさんはポンッと肩を叩き、少しだけ微笑んで言った。
「兄上たちの言う通りなのだな。ヨシヒロ殿は本当に魔物や魔獣を愛し、大切にしている。
今の姿を見て、よく分かった。突然怖がらせてすまなかった。」
「いえ…私は命を護る責務がありますから…。
この子たちのおかげで、今の私があります。
だから私は、精いっぱい一緒にいてやりたいのです。」
「そうか…。ヨシヒロ殿を信じよう。なぁ、宰相殿。」
「そうですね、アトス様。どうなることかと思いましたが…
ヨシヒロ殿のそのお気持ち、我々は信じましょう。」
「ありがとう…ございます…」
アトスさんは俺のことを「信じる」と言ってくれて、
側にいた宰相のブラッドさんにも同意を得てくれた。
そのおかげで、何とかアクアベアは殺されることなく済み、俺はホッと胸をなでおろした。
この子は生まれ変わったんだ。
神の裁きを受けた子だけど、それでも俺が護ってみせる。
せっかく繋がった命だから。
もう誰にも、奪わせはしない。
改めて、そう誓いを立てた―…。
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