111 / 125
111話 心願樹が覚えたその言葉の意味が気になります
しおりを挟む
「ふふふっ…」
「会いたいよ…また来年…フゥ…」
「ねぇ、どうして?」
今日も朝からとても元気です、心願樹くん。
さすがに寝室には置けないから、正式な居場所が決まるまでは、地下の魔物管理室にいてもらおうと思って運んだんだけど、昨日もあれからずーっとお喋り。
悲しい言葉、嬉しい言葉、寂しい言葉…さまざまな想いを語り続けていた。
俺にとっては、ちょっとばかしキツイかなぁとも思っていたけど、
じぃっと見ていると、何だかおじいちゃんみたいで可愛くも思えてきて。
俺の脳みそは、完全に“何でもあり”になってきていた。
「パッパ!名前、つけないの?」
「え?この子に?いる?」
「いるー!パッパ、名前つけて!」
「名前ねぇ…」
シンゴを抱きかかえながら心願樹を眺めていた時、シンゴが「名前をつけて」とせがんできた。
木に名前?とも思ったけど、植物は名前をつけて可愛がると綺麗に咲く。なんて話もあったような気がする。
木だし、従魔契約にはならないだろうと思いながら、名前を考え始めた。
植物に名前をつけるのは初めてだなぁ…。
「なんか、フゥって言ってるから、フゥは?」
「やー!」
「んー…じゃあ、メメントとか?」
「メメント…うーん…」
「ジュキは?」
「じゅきぃー?」
どんな名前がいいのか分からない俺は、いろんな候補をシンゴに伝えてみたけど、イマイチ響かないらしい。
メメントはいいかなって思ったんだけど、ダメか。ジュキも可愛いと思ったんだけどなぁ。
そんなやり取りを続けること数分。
ふと、思い出した言葉があった。
「木霊…コダマは?」
「コダマ?なーに?」
「俺がいた世界で、樹木に宿る精霊のことを“コダマ”って呼ぶんだよ。」
「パッパの世界の精霊…シンゴ、コダマがいい!」
「本当?じゃあ、“コダマ”って呼びかけてあげてみて!」
「コダマー!今日から、コダマって言うんだよ!コダマー!」
そういえば、“コダマ”という言葉があったなぁと思い出して言ってみると、思いのほか気に入ってくれたシンゴ。
心願樹に呼びかけてもらうと、名前を呼んだ瞬間、頭の上に付いていた微かに光を帯びた数枚の葉っぱが小刻みに揺れ始めた。
これは…気に入ったのか?
「コダマァァァッ…
ねぇ、大好き…フゥ…」
「んんー…これは、大丈夫なのかな?」
「大丈夫だよ!シンゴ、お知らせ、してくる!」
「はいはい。分かったよ。じゃあ上がろうね。」
コダマという名前を気に入ってくれたのかは分からないけど、まぁ良しとしよう。
そう思いながら、「みんなに知らせたい!」というシンゴを抱えて1階へ戻った。
エントランスホールにいた皆、外で遊んでいた皆に、名前が“コダマ”になったと一生懸命伝えて回るシンゴ。
その様子を見ていると、可愛すぎてめちゃくちゃ癒されていた。
結局、俺の家族になってくれた子たちには、みんな名前をつけることになるんだなぁ。
まぁ、いいけどさ。
なんて思いながら今度、ちゃんと“コダマ”について調べてみようと思っていた―…。
◇
コダマと名前をつけてからというもの、皆がかわるがわる魔物管理室へ顔を出すようになった。
いちいち地下まで行かせるのは可哀想かと思い、日中は外で日向ぼっこさせることにして、誰でもすぐに話しかけられるようにした。
コダマは相変わらず誰とも意思疎通はできないけれど、名前を呼ばれると時折葉を揺らすようになり、
それがまるで返事をしているようにも思えていた。
ところで、コダマって大きくなるのかな?それとも一生このままなのかな?
もし大きくなったら、家の隣に植えてやろうかな。そうしたら寂しくないもんな。
なんて、コダマの今後の成長を思いながら、いろいろと考えていた。
そんな時だった―
「ごめんなさい…」
「主、コダマが謝ってる。人間の悲しい感情?」
「そうだなぁ。“あの時はごめんね”みたいな感じなのかな?」
突然、謝罪の言葉を口にしたコダマ。
謝罪系の言葉はよく聞いていたから、特に気に留めなかった。
けれど、次に口にした言葉に、俺はギョッとした。
「あの森の…洞窟…閉じ込められ…」
「え?」
「あなたに…あなた一人に向かわ…て…ごめ…なさい…」
「今の…なに?」
「森…洞窟?閉じ込められてるって言ったよね?」
コダマの言葉を聞いた瞬間、何かよからぬ出来事があったとしか思えなかった。
森の洞窟に閉じ込められてる?一人で向かわせてごめん?
普通の発言じゃないだろ、それ…。
しかも、それを花冥祭の祈りの場で交わした言葉だとしたら、そういうことだよね。
そう思うと、聞いてはいけない言葉を聞いてしまったような気がして、俺は固まった。
すると、そんな俺の顔を覗き込んだロウキが、ニヤリと口角を上げて言った。
「ヨシヒロ、何を考えている?」
「え?べ、別に何も!俺は安心安全な異世界生活を送りたいだけだよ!」
「フン!そうはいかぬのが、この世界なのだ、ヨシヒロ。」
「ロウキ!俺はガーノスさんのところなんて行かないからな!」
「我らだけで行くからよいわ。ユキ、ミル、行くぞ。」
「はい!父上!」
「いいよ、ボス。ガーノスのところ、いこう。」
「ちょいちょいちょい!主を置いて従魔だけが事情を訊きに行くなんて、そんな話ある?!」
「お前が行かぬなら、我らが行くしかないだろうが。」
「何でだよ…!」
危ない匂いがするのは分かっているのに、ロウキはユキとミルを連れて、さっさと転移ゲートをくぐってしまった。
おかしくないか?!主を置いて調査に乗り出すなんて!
そもそも、俺たちは探偵でも何でもないんだけど!
そう叫んでも、誰も聞いちゃくれない。
「ヨシヒロ様。もし、この声の話が事実であれば、どこかで誰かが亡くなり、
その帰りを待つ人がいて、亡くなった人もこの地に還ることを望んでいる可能性がありますわ。
そんな声を聞き、想いを届けられるのは、ヨシヒロ様だけだと思いますの。」
「ルーナ…」
「ヨシヒロ様にとっては、とても面倒なことなのは分かっていますわ。
でも、ヨシヒロ様だからこそ、“追憶の欠片”はたくさんの言葉を届けてくれているのです。
コダマは、何でもかんでも口にするわけじゃありません。
ヨシヒロ様に愛情を持って接してもらい、魔力をもらうことで、ヨシヒロ様という存在を、コダマは強く信頼しているのです。
ヨシヒロ様だったら、自分の中にある声をきちんと聴き入れてくれる。
そう思って、声を届けているのです。」
「コダマが俺を…ね。」
「はい。ですから、どうかこの声を拾ってやってください。ヨシヒロ様。」
ロウキの好き勝手な行動に呆れていた俺だったけど、
静かに隣にやってきたルーナに、コダマが言葉を発する理由を教えられた。
そんな風に言われたら、もう動かないわけにはいかないじゃないか。
俺が解決できる案件じゃない気もするけど、俺もガーノスさんのところに行ってみるか。
そう思い直し、ルーナに家のことを任せて、クロと共に転移ゲートをくぐった。
「遅いぞ、ヨシヒロ。ガーノス呼んできてくれ。」
「はいはい。ちょっと待ってて。」
ゲートをくぐると、ガーノスさんはその場にいなかった。
ロウキに呼んでくるよう言われた俺は、とぼとぼと歩きながら表に出ると、偶然、クリスティーナさんのお母さんと出くわし、少しだけ話をした。
「あら、ヨシヒロ君。久しぶりだねぇ。元気にしてたかい?」
「あ、クリスティーナさんのお母さん!お久しぶりです!」
「今日はどうしたんだい?可愛いクロちゃんと一緒に。」
「主が困ってる人を助けるために、ガーノスに話を聞きに来たんだ!」
「おやおや、そうだったのかい。相変わらずヨシヒロ君は優しい子だねぇ。」
「主は世界一だからなー!
なんか、森の洞窟に誰か閉じ込められてるんだって!」
「森…?ああ、もしかして“迷いの樹海”のことかい?」
「迷いの樹海…?」
「ええ。足を踏み入れた者が方向感覚を失い、容易に抜け出せない広大な森でね。
迷宮のような、危険な森だから絶対に近づいちゃダメだよって、ティーナが昔教えてくれたんだよ。」
「ええ…もしかしてその森なのかな…コワッ…」
クロが今回の目的を軽く伝えると、クリスティーナさんのお母さんから“迷いの樹海”という、何とも恐ろしい名前の森の話を聞かされた。
絶対にそこじゃんか。そう思いながらため息を吐くと、彼女は優しく微笑んで言ってくれた。
「ヨシヒロ君なら、きっと大丈夫。だけど、気をつけて行くんだよ?
ヨシヒロ君たちに何かあったら、私たちも悲しいからね?」
「…はい!ありがとうございます!またお会いできた時に、どうだったかご報告しますね。」
「ふふっ。ありがとうね。じゃあ、またね。」
自分の母親ではないけれど、母親に“大丈夫だよ”って言ってもらえたような感覚だった。
親が恋しくなる年齢じゃないけど、やっぱりこんな風に心配してもらえるのは嬉しいな。
そう思いながら手を振って見送り、ガーノスさんの元へと向かった。
迷いの樹海かぁ…怖いところなんだろうな。
おばけとか出たらどうしよう…。
そんな不安を胸に抱えながら、俺は冒険者ギルドの扉に、ゆっくりと手を伸ばした―…。
「会いたいよ…また来年…フゥ…」
「ねぇ、どうして?」
今日も朝からとても元気です、心願樹くん。
さすがに寝室には置けないから、正式な居場所が決まるまでは、地下の魔物管理室にいてもらおうと思って運んだんだけど、昨日もあれからずーっとお喋り。
悲しい言葉、嬉しい言葉、寂しい言葉…さまざまな想いを語り続けていた。
俺にとっては、ちょっとばかしキツイかなぁとも思っていたけど、
じぃっと見ていると、何だかおじいちゃんみたいで可愛くも思えてきて。
俺の脳みそは、完全に“何でもあり”になってきていた。
「パッパ!名前、つけないの?」
「え?この子に?いる?」
「いるー!パッパ、名前つけて!」
「名前ねぇ…」
シンゴを抱きかかえながら心願樹を眺めていた時、シンゴが「名前をつけて」とせがんできた。
木に名前?とも思ったけど、植物は名前をつけて可愛がると綺麗に咲く。なんて話もあったような気がする。
木だし、従魔契約にはならないだろうと思いながら、名前を考え始めた。
植物に名前をつけるのは初めてだなぁ…。
「なんか、フゥって言ってるから、フゥは?」
「やー!」
「んー…じゃあ、メメントとか?」
「メメント…うーん…」
「ジュキは?」
「じゅきぃー?」
どんな名前がいいのか分からない俺は、いろんな候補をシンゴに伝えてみたけど、イマイチ響かないらしい。
メメントはいいかなって思ったんだけど、ダメか。ジュキも可愛いと思ったんだけどなぁ。
そんなやり取りを続けること数分。
ふと、思い出した言葉があった。
「木霊…コダマは?」
「コダマ?なーに?」
「俺がいた世界で、樹木に宿る精霊のことを“コダマ”って呼ぶんだよ。」
「パッパの世界の精霊…シンゴ、コダマがいい!」
「本当?じゃあ、“コダマ”って呼びかけてあげてみて!」
「コダマー!今日から、コダマって言うんだよ!コダマー!」
そういえば、“コダマ”という言葉があったなぁと思い出して言ってみると、思いのほか気に入ってくれたシンゴ。
心願樹に呼びかけてもらうと、名前を呼んだ瞬間、頭の上に付いていた微かに光を帯びた数枚の葉っぱが小刻みに揺れ始めた。
これは…気に入ったのか?
「コダマァァァッ…
ねぇ、大好き…フゥ…」
「んんー…これは、大丈夫なのかな?」
「大丈夫だよ!シンゴ、お知らせ、してくる!」
「はいはい。分かったよ。じゃあ上がろうね。」
コダマという名前を気に入ってくれたのかは分からないけど、まぁ良しとしよう。
そう思いながら、「みんなに知らせたい!」というシンゴを抱えて1階へ戻った。
エントランスホールにいた皆、外で遊んでいた皆に、名前が“コダマ”になったと一生懸命伝えて回るシンゴ。
その様子を見ていると、可愛すぎてめちゃくちゃ癒されていた。
結局、俺の家族になってくれた子たちには、みんな名前をつけることになるんだなぁ。
まぁ、いいけどさ。
なんて思いながら今度、ちゃんと“コダマ”について調べてみようと思っていた―…。
◇
コダマと名前をつけてからというもの、皆がかわるがわる魔物管理室へ顔を出すようになった。
いちいち地下まで行かせるのは可哀想かと思い、日中は外で日向ぼっこさせることにして、誰でもすぐに話しかけられるようにした。
コダマは相変わらず誰とも意思疎通はできないけれど、名前を呼ばれると時折葉を揺らすようになり、
それがまるで返事をしているようにも思えていた。
ところで、コダマって大きくなるのかな?それとも一生このままなのかな?
もし大きくなったら、家の隣に植えてやろうかな。そうしたら寂しくないもんな。
なんて、コダマの今後の成長を思いながら、いろいろと考えていた。
そんな時だった―
「ごめんなさい…」
「主、コダマが謝ってる。人間の悲しい感情?」
「そうだなぁ。“あの時はごめんね”みたいな感じなのかな?」
突然、謝罪の言葉を口にしたコダマ。
謝罪系の言葉はよく聞いていたから、特に気に留めなかった。
けれど、次に口にした言葉に、俺はギョッとした。
「あの森の…洞窟…閉じ込められ…」
「え?」
「あなたに…あなた一人に向かわ…て…ごめ…なさい…」
「今の…なに?」
「森…洞窟?閉じ込められてるって言ったよね?」
コダマの言葉を聞いた瞬間、何かよからぬ出来事があったとしか思えなかった。
森の洞窟に閉じ込められてる?一人で向かわせてごめん?
普通の発言じゃないだろ、それ…。
しかも、それを花冥祭の祈りの場で交わした言葉だとしたら、そういうことだよね。
そう思うと、聞いてはいけない言葉を聞いてしまったような気がして、俺は固まった。
すると、そんな俺の顔を覗き込んだロウキが、ニヤリと口角を上げて言った。
「ヨシヒロ、何を考えている?」
「え?べ、別に何も!俺は安心安全な異世界生活を送りたいだけだよ!」
「フン!そうはいかぬのが、この世界なのだ、ヨシヒロ。」
「ロウキ!俺はガーノスさんのところなんて行かないからな!」
「我らだけで行くからよいわ。ユキ、ミル、行くぞ。」
「はい!父上!」
「いいよ、ボス。ガーノスのところ、いこう。」
「ちょいちょいちょい!主を置いて従魔だけが事情を訊きに行くなんて、そんな話ある?!」
「お前が行かぬなら、我らが行くしかないだろうが。」
「何でだよ…!」
危ない匂いがするのは分かっているのに、ロウキはユキとミルを連れて、さっさと転移ゲートをくぐってしまった。
おかしくないか?!主を置いて調査に乗り出すなんて!
そもそも、俺たちは探偵でも何でもないんだけど!
そう叫んでも、誰も聞いちゃくれない。
「ヨシヒロ様。もし、この声の話が事実であれば、どこかで誰かが亡くなり、
その帰りを待つ人がいて、亡くなった人もこの地に還ることを望んでいる可能性がありますわ。
そんな声を聞き、想いを届けられるのは、ヨシヒロ様だけだと思いますの。」
「ルーナ…」
「ヨシヒロ様にとっては、とても面倒なことなのは分かっていますわ。
でも、ヨシヒロ様だからこそ、“追憶の欠片”はたくさんの言葉を届けてくれているのです。
コダマは、何でもかんでも口にするわけじゃありません。
ヨシヒロ様に愛情を持って接してもらい、魔力をもらうことで、ヨシヒロ様という存在を、コダマは強く信頼しているのです。
ヨシヒロ様だったら、自分の中にある声をきちんと聴き入れてくれる。
そう思って、声を届けているのです。」
「コダマが俺を…ね。」
「はい。ですから、どうかこの声を拾ってやってください。ヨシヒロ様。」
ロウキの好き勝手な行動に呆れていた俺だったけど、
静かに隣にやってきたルーナに、コダマが言葉を発する理由を教えられた。
そんな風に言われたら、もう動かないわけにはいかないじゃないか。
俺が解決できる案件じゃない気もするけど、俺もガーノスさんのところに行ってみるか。
そう思い直し、ルーナに家のことを任せて、クロと共に転移ゲートをくぐった。
「遅いぞ、ヨシヒロ。ガーノス呼んできてくれ。」
「はいはい。ちょっと待ってて。」
ゲートをくぐると、ガーノスさんはその場にいなかった。
ロウキに呼んでくるよう言われた俺は、とぼとぼと歩きながら表に出ると、偶然、クリスティーナさんのお母さんと出くわし、少しだけ話をした。
「あら、ヨシヒロ君。久しぶりだねぇ。元気にしてたかい?」
「あ、クリスティーナさんのお母さん!お久しぶりです!」
「今日はどうしたんだい?可愛いクロちゃんと一緒に。」
「主が困ってる人を助けるために、ガーノスに話を聞きに来たんだ!」
「おやおや、そうだったのかい。相変わらずヨシヒロ君は優しい子だねぇ。」
「主は世界一だからなー!
なんか、森の洞窟に誰か閉じ込められてるんだって!」
「森…?ああ、もしかして“迷いの樹海”のことかい?」
「迷いの樹海…?」
「ええ。足を踏み入れた者が方向感覚を失い、容易に抜け出せない広大な森でね。
迷宮のような、危険な森だから絶対に近づいちゃダメだよって、ティーナが昔教えてくれたんだよ。」
「ええ…もしかしてその森なのかな…コワッ…」
クロが今回の目的を軽く伝えると、クリスティーナさんのお母さんから“迷いの樹海”という、何とも恐ろしい名前の森の話を聞かされた。
絶対にそこじゃんか。そう思いながらため息を吐くと、彼女は優しく微笑んで言ってくれた。
「ヨシヒロ君なら、きっと大丈夫。だけど、気をつけて行くんだよ?
ヨシヒロ君たちに何かあったら、私たちも悲しいからね?」
「…はい!ありがとうございます!またお会いできた時に、どうだったかご報告しますね。」
「ふふっ。ありがとうね。じゃあ、またね。」
自分の母親ではないけれど、母親に“大丈夫だよ”って言ってもらえたような感覚だった。
親が恋しくなる年齢じゃないけど、やっぱりこんな風に心配してもらえるのは嬉しいな。
そう思いながら手を振って見送り、ガーノスさんの元へと向かった。
迷いの樹海かぁ…怖いところなんだろうな。
おばけとか出たらどうしよう…。
そんな不安を胸に抱えながら、俺は冒険者ギルドの扉に、ゆっくりと手を伸ばした―…。
35
あなたにおすすめの小説
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした。今さら戻れと言われても、もうスローライフ始めちゃったんで
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。
家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティ。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
そう言ってくれた彼らの言葉を信じて、
俺は毎日、必死でついていった。
何もできない“つもり”だった。
それでも、何かの役に立てたらと思い、
夜な夜なダンジョンに潜っては、レベル上げを繰り返す日々。
だけど、「何もしなくていい」と言われていたから、
俺は一番後ろで、ただ荷物を持っていた。
でも実際は、俺の放った“支援魔法”で仲間は強くなり、
俺の“探知魔法”で危険を避けていた。
気づかれないよう、こっそりと。
「役に立たない」と言われるのが怖かったから、
俺なりに、精一杯頑張っていた。
そしてある日、告げられた言葉。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
そうして俺は、静かに追放された。
もう誰にも必要とされなくてもいい。
俺は俺のままで、静かに暮らしていく。そう決めた。
……と思っていたら、ダンジョンの地下で古代竜の魂と出会って、
また少し、世界が騒がしくなってきたようです。
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~
うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」
探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。
探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼!
単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。
そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。
小さな彼女には秘密があった。
彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。
魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。
そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。
たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。
実は彼女は人間ではなく――その正体は。
チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる