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114話 捜索というのは本当に大変だと改めて知りました
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「ライトニングッ!主!そっち行ったっ!」
「ファ、ファイヤーボールッ!」
「…やれば出来るではないか。」
「はぁ…そりゃあ練習させられてましたからね?!少しは出来るようになったさ!」
森の中を進んでいくと、こちらに敵意むき出しの魔物たちが襲いかかってきた。
もちろん最初はクロたちが対応してくれていたけれど、ロウキに促されて、泣く泣く俺も魔法を使い、何とか魔物を倒すことができた。
今まで少しずつ練習させられていたことや、いろんな経験を積んでレベルが上がったこともあって、魔法の威力は以前よりも増していた。
その様子にロウキは満足そうだったけれど、俺は戦闘型じゃないんだよ!
出来れば一番後ろで隠れていたいんだけどね…。
「なんか、あんまり見たことない魔物が多いな。」
「この地に生息する魔物は外には出ないのであろう。
この森の中だけで生息し、繁殖し、独自の進化を遂げているのではないか?」
「あー、なるほどね。なんかここの魔物って凶暴なのばっかり!」
「まぁ、それが普通なのだ。お前の周りの魔物がおかしいだけなのだ。」
「んー…まぁ、そうね。それは認める。いい意味でね?」
この森に入ってから見かける魔物は、いつも見ている魔物と形が少し違う気がしていた。
ロウキに伝えると「独自の進化を遂げている場合がある」と言われ、納得した。
だから、見たことがあるような姿なのに、どこか違う。そんな違和感を覚えていたのか。
この森を出ていないということは、他の魔物との交流もなく、この森こそが彼らにとっての全てなのだろう。
だったら、むやみに討伐はしたくない。
だけど、襲われてしまえば倒すしかなくなるわけで…。
なんだかなぁ、と複雑な気持ちになっていた。
「…まただ…」
「主、皆死んじゃってるな。」
「そうだね…せめて手を合わせて冥福を祈ろう。今はどうすることも出来ないからさ。」
「はーい。」
森の中には魔物だけでなく、ロウキやルーナが言っていた通り、出られなくなり力尽きてしまった人たちの姿も多く見かけた。
そのほとんどは白骨化していて、最初はギョッとしたけれど、次第に驚きよりも悲しみが胸を満たしていった。
どんな想いでこの森に入り、何を成し遂げようとしたのか俺には分からない。
だけど、何もないのにわざわざこの場所に来るはずはない。
懸命にもがいた末に、大切な人が待つ家へ帰ることができなかったのは、どれほど無念だっただろう。
そんな人たちに、俺ができることは祈ることだけ。
だから、その人たちを見かけるたびに、静かに手を合わせていった。
なんだか、こう言ったら失礼かもしれないけど…
こんな薄暗い場所じゃ食欲も湧かなくなってしまう。
出来るだけ早く、明るい場所に出たい。
そう一人思いながら、クロの案内に従って湖を目指した―…
◇
「ここが湖か。うちの湖と同じくらい?」
「そうだな。我らの家の湖と、さほど大きさは変わらん。」
「主ー!ルミグミ美味しい!」
「あーあ。早速食べちゃってる。好きだねぇ、クロは本当に。」
森の中を歩き続けること数時間、ようやく目的の湖に到着した。
鑑定すると湖は“聖水”と記されていて、そのすぐ側には例のごとくルミグミがたくさん生えており、クロはすぐにかぶりつき始めた。
すると、頭の中にたくさんの声が響いてきたので、**Arca Magna(アルカ・マグナ)**を唱え、中で待機していた子たちを外へ出した。
「パッパー!」
「ヨシヒロ様!ここが目的地ですか?」
「ルミグミ、食べるー!」
ラピスたちにモモ、あっくん、シンゴを外に出すと、いつものようにはしゃぎ始めて、この場所が“迷いの樹海”だとは思えないほど、のどかな雰囲気になった。
……って、こんなことをしている場合じゃないからね!そう思いながら俺はクロと一緒に辺りを捜索。
結構な数の無残な冒険者の姿は見つけられたけれど、王国騎士の鎧を纏った人間を見つけることはできなかった。
「いないね、主。」
「そうだな…この場所には到着できなかったのか…?」
「あるじさま、そういえばコダマは言っていませんでしたか?
“あの森の洞窟に閉じ込められている”と。」
「あ…確かに洞窟って言ってたな。ということは、どこかに洞窟があるってことか?」
「おそらくそうだと思います。」
「洞窟かぁ…」
騎士の姿が見えず悩んでいると、ユキがコダマの言葉を思い出した。
そのおかげで洞窟に何かがあるかもしれないと気づけたけれど、その洞窟を探すには、あとどれくらいかかるんだろうと思うと、ちょっと憂鬱だった。
「ヨシヒロ様ー!湖の中で何かが動いてます!」
「何?」
「噂に聞く巨大魚とやらか?」
「巨大魚…ええ…怖いんですけど…」
洞窟探しについて悩んでいた時、ラピスが湖の中で何かが動いたと騒ぎ始めた。
ロウキはその正体を「巨大魚か?」と興味津々の様子。前に来たときは見られなかったと言っていたしな。
だけど“巨大魚”と聞くだけで俺は恐怖でいっぱい。出てきてほしくないんだけど…。
そう願いながら湖を覗くと、ユラリと黒くて大きな影が湖の底から現れては消えていった。
もしあんなのが襲ってきたらどうしよう!絶対に怖い目に遭う!!
だから早くこの場から離れないと!
「ねぇ、違う場所探さない?洞窟なんてここには無いしさ!」
「ヨシヒロ、怖いのだな?本当にお前は怖がりだな。」
「しょうがないだろ!俺はこういうのに耐性がないんだってーの!」
「これだけの魔獣を連れておいて、何を今更…」
俺が怖がっているのを分かっているロウキは、ニヤニヤしながら「怖がりだな」と笑っていた。
そんなロウキに「魔物や魔獣に耐性がない」と訴えたけれど、この状況で言われてもなぁ…と呆れられた。
そして、湖の側で遊んでいる子たちを鼻で指しながら言った。
「ほれ、モモを見てみろ。アイツ今にも飛び込み…
ダアアアアッ!飛び込んだぁぁぁ!?」
「ギャアアアアアッ!!モモーーーッ!!」
ロウキは、モモが楽しそうに湖を見ていると言おうとしたんだろう。
だけど、その瞬間、モモは水面めがけて大ジャンプ。バッシャーーーンッ!と大きな水音を立てて、湖の中へ潜っていってしまった。
「モモモモッモモーーーッ!!!!」
突然のモモの行動に、その場にいた全員がモモの名前を叫んだ。
どうしようどうしよう!好奇心旺盛なモモだから、あの大きな影が気になっちゃったんだ!
かと言って俺は飛び込めないし…今世紀最大のピンチだよ!!
なんて思ってあたふたしていた、その時だった。
ドゴオオオオオオオオンッ!!
「えっ」
「雷?!」
「雷が落ちた!!」
「誰?!」
「父上ですか?!」
「我はまだ何もしておらんぞ?」
突然鳴り響いた雷鳴。空から降り注いだ雷が湖の中めがけて一直線に放たれた。
雷と言えばロウキか?なんて思ったけれど、彼は何もしていないと首を横に振った。
ということは、この場に俺たち以外に誰かいるってことか?!それはそれで怖いんですけど!
なんて焦りながら辺りを見回したけれど、誰もいない。
一体何が起きたんだよ…そう思いながらモモの行方を捜していると、水面から大きな黒い影が上がってくるのが見えた。
「で、出た!!巨大魚!!」
「あれー?でもあれ…」
巨大魚がさっきの雷で怒って出てきたんじゃないか?!
そう思わずにはいられなかった。
だけど、俺の予想とは違い、水面に顔を出したのは見たことのない巨大魚と、そのすぐ横で元気に笑うモモの姿だった。
ど、どういう事?!
「パッパ!モモちゃん、お魚とったよ!
雷でババババンッってやったら倒れちゃった!」
「ええ?!じゃあ、さっきの雷はモモがやったの?」
「そだよ!モモちゃんがやったの!」
「なんじゃそりゃ…」
状況が全く呑み込めない俺をよそに、モモは自分が雷で巨大魚を倒したと自慢げにしていた。
今までモモが魔法を使ったり魔物を倒したりする姿なんて一度も見たことがなかった俺は、理解が追いつかない。
モモは確かにキメラだけど…
ちょっと待って?キメラって、こんなに小さくても能力値こんな高いの?
いや、聞いてない。怖い、普通に怖い。
ロウキは怯える俺を横目に、「我らの能力を受け継いでいるのかもしれないな」と、やけに興味深そうに言った。
そういえば、モモって元はエッグビーストで、契約者の心に応じて姿も力も変化する危険度S級の魔獣だったんだっけ。
ってことは…俺だけじゃなくて、皆の想いも重なってるってこと?
それ、世界最強一直線では?こんなに可愛いのに?
やめて、そういうフラグ立てないでほしいんだけど!
怖い!怖すぎる!!
…でも、まあ、今はそれよりモモを乾かしてやらなきゃな。風邪ひかせたら可哀想だし。
「モモ、とりあえず上がっておいで?体を乾かそうね。」
「パッパ、お魚食べてくれる?」
「食べる食べる!だからほら、おいで!」
「はーい。」
よく分からない状況だけど、ひとまずモモの体を乾かしてやらないと。
そう思い、何とかモモを湖から上がらせ、生成したタオルでしっかりと体を拭いてやった。
そして巨大魚はというと、ミルが必死に水面から引き揚げてくれたので、ひとまず収納。
そもそも、あの魚が食べられるかどうかも分からないんだから、後でちゃんと鑑定してから調理しなくちゃ。
そう思っていると、モモが湖を指さしながら言った。
「パッパ、あのね。湖の中、穴が開いてたよ!」
「穴?」
「あそこ、穴があったの!」
「…洞窟ではないのか?」
「え?もしかして、コダマが言ってた洞窟って…湖の中ってこと?!
だったら無理じゃん!さすがに無理じゃん!」
「俺、溺れちゃうよ主。」
「俺だって溺れるというか、水中で息できないよ…」
モモの言葉に、俺たちは唖然とした。
まさか洞窟が湖の中に存在しているなんて、誰も思わないだろう…。
そうなると話は変わってくる。この中の誰も湖に潜って平気な奴はいない。
つまり、せっかくここまで来たというのに、これ以上は捜索できないのか…。
そう思うと、何だかやりきれない気持ちでいっぱいになった。
俺たちは勝手にやってきて、勝手に捜索していただけだけどさ…。
それでも、見つけてあげられないってのは辛いもんだな。
そう思いながら、その場にいた皆が同時に、大きなため息を吐き出した―…。
「ファ、ファイヤーボールッ!」
「…やれば出来るではないか。」
「はぁ…そりゃあ練習させられてましたからね?!少しは出来るようになったさ!」
森の中を進んでいくと、こちらに敵意むき出しの魔物たちが襲いかかってきた。
もちろん最初はクロたちが対応してくれていたけれど、ロウキに促されて、泣く泣く俺も魔法を使い、何とか魔物を倒すことができた。
今まで少しずつ練習させられていたことや、いろんな経験を積んでレベルが上がったこともあって、魔法の威力は以前よりも増していた。
その様子にロウキは満足そうだったけれど、俺は戦闘型じゃないんだよ!
出来れば一番後ろで隠れていたいんだけどね…。
「なんか、あんまり見たことない魔物が多いな。」
「この地に生息する魔物は外には出ないのであろう。
この森の中だけで生息し、繁殖し、独自の進化を遂げているのではないか?」
「あー、なるほどね。なんかここの魔物って凶暴なのばっかり!」
「まぁ、それが普通なのだ。お前の周りの魔物がおかしいだけなのだ。」
「んー…まぁ、そうね。それは認める。いい意味でね?」
この森に入ってから見かける魔物は、いつも見ている魔物と形が少し違う気がしていた。
ロウキに伝えると「独自の進化を遂げている場合がある」と言われ、納得した。
だから、見たことがあるような姿なのに、どこか違う。そんな違和感を覚えていたのか。
この森を出ていないということは、他の魔物との交流もなく、この森こそが彼らにとっての全てなのだろう。
だったら、むやみに討伐はしたくない。
だけど、襲われてしまえば倒すしかなくなるわけで…。
なんだかなぁ、と複雑な気持ちになっていた。
「…まただ…」
「主、皆死んじゃってるな。」
「そうだね…せめて手を合わせて冥福を祈ろう。今はどうすることも出来ないからさ。」
「はーい。」
森の中には魔物だけでなく、ロウキやルーナが言っていた通り、出られなくなり力尽きてしまった人たちの姿も多く見かけた。
そのほとんどは白骨化していて、最初はギョッとしたけれど、次第に驚きよりも悲しみが胸を満たしていった。
どんな想いでこの森に入り、何を成し遂げようとしたのか俺には分からない。
だけど、何もないのにわざわざこの場所に来るはずはない。
懸命にもがいた末に、大切な人が待つ家へ帰ることができなかったのは、どれほど無念だっただろう。
そんな人たちに、俺ができることは祈ることだけ。
だから、その人たちを見かけるたびに、静かに手を合わせていった。
なんだか、こう言ったら失礼かもしれないけど…
こんな薄暗い場所じゃ食欲も湧かなくなってしまう。
出来るだけ早く、明るい場所に出たい。
そう一人思いながら、クロの案内に従って湖を目指した―…
◇
「ここが湖か。うちの湖と同じくらい?」
「そうだな。我らの家の湖と、さほど大きさは変わらん。」
「主ー!ルミグミ美味しい!」
「あーあ。早速食べちゃってる。好きだねぇ、クロは本当に。」
森の中を歩き続けること数時間、ようやく目的の湖に到着した。
鑑定すると湖は“聖水”と記されていて、そのすぐ側には例のごとくルミグミがたくさん生えており、クロはすぐにかぶりつき始めた。
すると、頭の中にたくさんの声が響いてきたので、**Arca Magna(アルカ・マグナ)**を唱え、中で待機していた子たちを外へ出した。
「パッパー!」
「ヨシヒロ様!ここが目的地ですか?」
「ルミグミ、食べるー!」
ラピスたちにモモ、あっくん、シンゴを外に出すと、いつものようにはしゃぎ始めて、この場所が“迷いの樹海”だとは思えないほど、のどかな雰囲気になった。
……って、こんなことをしている場合じゃないからね!そう思いながら俺はクロと一緒に辺りを捜索。
結構な数の無残な冒険者の姿は見つけられたけれど、王国騎士の鎧を纏った人間を見つけることはできなかった。
「いないね、主。」
「そうだな…この場所には到着できなかったのか…?」
「あるじさま、そういえばコダマは言っていませんでしたか?
“あの森の洞窟に閉じ込められている”と。」
「あ…確かに洞窟って言ってたな。ということは、どこかに洞窟があるってことか?」
「おそらくそうだと思います。」
「洞窟かぁ…」
騎士の姿が見えず悩んでいると、ユキがコダマの言葉を思い出した。
そのおかげで洞窟に何かがあるかもしれないと気づけたけれど、その洞窟を探すには、あとどれくらいかかるんだろうと思うと、ちょっと憂鬱だった。
「ヨシヒロ様ー!湖の中で何かが動いてます!」
「何?」
「噂に聞く巨大魚とやらか?」
「巨大魚…ええ…怖いんですけど…」
洞窟探しについて悩んでいた時、ラピスが湖の中で何かが動いたと騒ぎ始めた。
ロウキはその正体を「巨大魚か?」と興味津々の様子。前に来たときは見られなかったと言っていたしな。
だけど“巨大魚”と聞くだけで俺は恐怖でいっぱい。出てきてほしくないんだけど…。
そう願いながら湖を覗くと、ユラリと黒くて大きな影が湖の底から現れては消えていった。
もしあんなのが襲ってきたらどうしよう!絶対に怖い目に遭う!!
だから早くこの場から離れないと!
「ねぇ、違う場所探さない?洞窟なんてここには無いしさ!」
「ヨシヒロ、怖いのだな?本当にお前は怖がりだな。」
「しょうがないだろ!俺はこういうのに耐性がないんだってーの!」
「これだけの魔獣を連れておいて、何を今更…」
俺が怖がっているのを分かっているロウキは、ニヤニヤしながら「怖がりだな」と笑っていた。
そんなロウキに「魔物や魔獣に耐性がない」と訴えたけれど、この状況で言われてもなぁ…と呆れられた。
そして、湖の側で遊んでいる子たちを鼻で指しながら言った。
「ほれ、モモを見てみろ。アイツ今にも飛び込み…
ダアアアアッ!飛び込んだぁぁぁ!?」
「ギャアアアアアッ!!モモーーーッ!!」
ロウキは、モモが楽しそうに湖を見ていると言おうとしたんだろう。
だけど、その瞬間、モモは水面めがけて大ジャンプ。バッシャーーーンッ!と大きな水音を立てて、湖の中へ潜っていってしまった。
「モモモモッモモーーーッ!!!!」
突然のモモの行動に、その場にいた全員がモモの名前を叫んだ。
どうしようどうしよう!好奇心旺盛なモモだから、あの大きな影が気になっちゃったんだ!
かと言って俺は飛び込めないし…今世紀最大のピンチだよ!!
なんて思ってあたふたしていた、その時だった。
ドゴオオオオオオオオンッ!!
「えっ」
「雷?!」
「雷が落ちた!!」
「誰?!」
「父上ですか?!」
「我はまだ何もしておらんぞ?」
突然鳴り響いた雷鳴。空から降り注いだ雷が湖の中めがけて一直線に放たれた。
雷と言えばロウキか?なんて思ったけれど、彼は何もしていないと首を横に振った。
ということは、この場に俺たち以外に誰かいるってことか?!それはそれで怖いんですけど!
なんて焦りながら辺りを見回したけれど、誰もいない。
一体何が起きたんだよ…そう思いながらモモの行方を捜していると、水面から大きな黒い影が上がってくるのが見えた。
「で、出た!!巨大魚!!」
「あれー?でもあれ…」
巨大魚がさっきの雷で怒って出てきたんじゃないか?!
そう思わずにはいられなかった。
だけど、俺の予想とは違い、水面に顔を出したのは見たことのない巨大魚と、そのすぐ横で元気に笑うモモの姿だった。
ど、どういう事?!
「パッパ!モモちゃん、お魚とったよ!
雷でババババンッってやったら倒れちゃった!」
「ええ?!じゃあ、さっきの雷はモモがやったの?」
「そだよ!モモちゃんがやったの!」
「なんじゃそりゃ…」
状況が全く呑み込めない俺をよそに、モモは自分が雷で巨大魚を倒したと自慢げにしていた。
今までモモが魔法を使ったり魔物を倒したりする姿なんて一度も見たことがなかった俺は、理解が追いつかない。
モモは確かにキメラだけど…
ちょっと待って?キメラって、こんなに小さくても能力値こんな高いの?
いや、聞いてない。怖い、普通に怖い。
ロウキは怯える俺を横目に、「我らの能力を受け継いでいるのかもしれないな」と、やけに興味深そうに言った。
そういえば、モモって元はエッグビーストで、契約者の心に応じて姿も力も変化する危険度S級の魔獣だったんだっけ。
ってことは…俺だけじゃなくて、皆の想いも重なってるってこと?
それ、世界最強一直線では?こんなに可愛いのに?
やめて、そういうフラグ立てないでほしいんだけど!
怖い!怖すぎる!!
…でも、まあ、今はそれよりモモを乾かしてやらなきゃな。風邪ひかせたら可哀想だし。
「モモ、とりあえず上がっておいで?体を乾かそうね。」
「パッパ、お魚食べてくれる?」
「食べる食べる!だからほら、おいで!」
「はーい。」
よく分からない状況だけど、ひとまずモモの体を乾かしてやらないと。
そう思い、何とかモモを湖から上がらせ、生成したタオルでしっかりと体を拭いてやった。
そして巨大魚はというと、ミルが必死に水面から引き揚げてくれたので、ひとまず収納。
そもそも、あの魚が食べられるかどうかも分からないんだから、後でちゃんと鑑定してから調理しなくちゃ。
そう思っていると、モモが湖を指さしながら言った。
「パッパ、あのね。湖の中、穴が開いてたよ!」
「穴?」
「あそこ、穴があったの!」
「…洞窟ではないのか?」
「え?もしかして、コダマが言ってた洞窟って…湖の中ってこと?!
だったら無理じゃん!さすがに無理じゃん!」
「俺、溺れちゃうよ主。」
「俺だって溺れるというか、水中で息できないよ…」
モモの言葉に、俺たちは唖然とした。
まさか洞窟が湖の中に存在しているなんて、誰も思わないだろう…。
そうなると話は変わってくる。この中の誰も湖に潜って平気な奴はいない。
つまり、せっかくここまで来たというのに、これ以上は捜索できないのか…。
そう思うと、何だかやりきれない気持ちでいっぱいになった。
俺たちは勝手にやってきて、勝手に捜索していただけだけどさ…。
それでも、見つけてあげられないってのは辛いもんだな。
そう思いながら、その場にいた皆が同時に、大きなため息を吐き出した―…。
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