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117話 魔物の正体が分かり泣きそうになりました
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「魔王様、お願いがございます。」
「無理です。」
「まだ話していません…どうか、お話だけでも…」
「ヨシヒロ、まぁ待て。良いぞ、話してみよ。」
「ありがとうございます。フェンリル殿…」
絶対に面倒ごとを押し付けられると分かっていた。
だから即座に「無理です」と言ったのに、それを無視してロウキは事情を訊ね始めた。
……結局、俺に決定権なんてないじゃん。
「実は、ここ1年ほど前から大型の魔獣がこの森を支配しているのです。
その魔獣は見境なく喰らい、破壊し、私たちの住処を奪おうとしているのです。
何人もの人間も喰われました…。
どうかお願いします。その魔獣を討伐していただけないでしょうか…?」
「ええ…」
「ふむ。具体的にはどのような魔獣なのだ?」
「あの魔獣はただの魔獣ではありません…。
おそらく悪魔獣《デーモンビースト》かと…」
「デーモンビースト?悪魔の獣ってこと?」
「はい。体は大きく、少なくとも三つ以上の頭を持つ、ケルベロス種の変異体ではないかと…。
濃い霧を纏い、凄まじい破壊力で獲物を食い尽くします。
広い森ですから、どこを寝床にしているかは分かりませんが…間違いなく、ケルベロスです…」
「ええ?!ケルベロスの変異種?!」
ロウキに促されて訊いた話は、この辺りに住み着いている魔物についてだった。
「デーモンビースト」と言われた時はピンとこなかったけど、「ケルベロス」と聞いた瞬間、思わず目を見開いた。
だけど「三つ以上の頭」と言われて、はてなマークが浮かんだ。ケルベロスって頭は三つだよな?
それ以上あるって、めっちゃ怖くない?!しかも寝床がどこかも分からないって…。
それを討伐して欲しいって、死にに行くようなものじゃないでしょうか?!
「ほう。ケルベロスか。我よりも大きかったのか?」
「フェンリル殿と同じくらいかと…」
「そうか…では、そうやすやすと隠れられまい。気配を辿って探してみるか。」
「えええええ」
「お前は我らに護られておるから大丈夫だろうが。」
「本当そう思う?」
「大丈夫だよ!主は俺たちが絶対に護るから!」
「んんー…分かった…皆を信じる…」
絶対に危険すぎる依頼だから断ってもいいと思っていた。
でも、そんなことをするわけがないのが俺の従魔たちなんだよな…。
ロウキやクロ、皆に「護られているから大丈夫だ」と説得され、仕方なく一緒にケルベロスを探すことになった。
「お前たちは足手まといとなる。この場で待機せよ。
我らが戻るまで余計な行動は慎むように。よいな?」
「御意。フェンリル殿に従います。」
「うむ。ではヨシヒロ、さっさと片付けて出かけるぞ。」
「ううう…分かったよー…」
ロウキがダークエルフたちに指示をすると、彼らはすっかりロウキに従う姿勢を見せていた。
やっぱりフェンリルって、そういう存在なのか?俺にはよく分からないけど…。
なんて思いながら、渋々後片付けをしてケルベロスを探す旅が始まってしまった。
そもそもケルベロスの気配を辿るって、どうやるつもりなんだよ?
見たこともないのに、気配も何も分かるはずないだろうに。
「よし。クロ、頼んだぞ。」
「任せろー!」
どうするのかと思っていると、ロウキはクロに合図を出した。
するとクロは前にやったように、自分の尻尾を手前に持ってきて、指先から血液を数滴ポタリと垂らし祈りを捧げた。
そして、炎の中から手のひらサイズのディアボロス・リザードが誕生した。今回は何匹も。
「相変わらず可愛いな…この子たちに探させるのか?クロ。」
「そうだよ!何てったって相手は悪魔獣だから。悪魔同士、気配が分かるんだ!」
「ああ、そっか。なるほどね!」
俺の疑問はすぐに解決された。
クロが生み出した何匹もの可愛い分身たちが四方八方へ散らばり、ケルベロス捜索を始めた。
俺たちは俺たちで、クロが感じ取る気配を頼りに進んでいく。
途中で飛び出す魔物や、力尽きた人の姿に泣きそうになりながら進んでいくと、ダークエルフの住処と思われる小さな村落に辿り着いた。
本当にここで暮らしていたんだな…。というか、ここにしか住めなかったってことなんだろう。
そう思いながら通り過ぎ、ただひたすら歩き続けた。
そうしている間に辺りはすっかり真っ暗になり、とてもじゃないけど捜索できる状態じゃない。
夜は夜行性の魔物が出るっていうし、いくら結界を張っているとはいえ…。
結界…っていうか、結界張ってたのに矢が刺さったよな?!
「なぁロウキ。俺たち結界張ってたのに、ダークエルフが放った矢が俺の前に飛んできたじゃん?
あれは何で?」
「エマ、教えてやれ。我も分からん。」
「エマは理由が分かる?」
【はい。お答えします。先ほどダークエルフが放った矢は普通の矢ではなく、反魔法の矢《アンチマジックアロー》と呼ばれる特殊な矢です。
矢の先には、結界に微細な穴を瞬間的に開ける呪詛がかけられています。
これらはダークエルフに伝わるとされる反魔法の術によって構成されます。
ただし量産は不可のため、万が一のためのとっておきの策といえるでしょう。
ちなみに、結界自体を破壊するわけではありませんので、矢が通過した直後に穴は塞がります。】
「へぇ。納得。でもすごいね、そんな呪文があるなんて。異世界だねぇ。」
矢が飛んできた時は本当に焦ったけど、一時的にでも結界を貫通する矢を作れるなんて凄いと同時に恐ろしくも感じた。
だって、下手したら俺死んじゃうってことじゃん…。
絶対にダークエルフの皆さまとは敵対しちゃいけないなと思った瞬間だった。
「それにしても暗くて怖すぎるけど、皆平気なの?!」
「特に怖いとかはないぞー。主は人間だからな。夜は苦手だもんなー。」
「何が出るか分かんないじゃん!怖いに決まってるよ!ちゃんと俺を護ってね!お願いします!」
「あはは、大丈夫だよー。」
捜索が続けば続くほど時間は過ぎていき、本当に暗くて怖い。
怖いから思わずロウキの背中に乗っていたあっくんを引き寄せ、抱きしめながら歩いていた。
夜は明るい場所で遊ぶもので、こんなに暗い場所を歩くもんじゃない…。
そう心の中でブツブツ言いながら、皆に囲まれながら捜索を続けていた。
その時だった―
「アオオオオオオオオオオンッ」
「ギャアアッ!!」
「やかましい!あれはただのフォレストウルフの遠吠えだ。」
「もうやだ…怖い!怖すぎる!」
突如として響いた遠吠え。
俺はてっきりケルベロスの遠吠えだと思って咄嗟に叫んだけど、フォレストウルフだと言われて少しホッとした。
良かった…。結構近くで聞こえたから、ケルベロスかと思っちゃったじゃん。
そう安堵したのも束の間、次の瞬間、再び恐怖に襲われた。
聞こえてきたのは「キャインッ!」という、犬が痛みに耐えかねた時や恐怖に怯えた時に発する苦痛の声。
きっと、さっき遠吠えしていたフォレストウルフだと感じた。
「えっ…な、なに今の苦しそうな叫び声…」
「…何者かに襲われたか…」
「えっ…」
「今のは…そうですね…」
「命の炎が一つ…消えましたわ…」
叫び声に動揺している俺とは対照的に、ロウキたちは冷静に「フォレストウルフが襲われた」と話していた。
ユキはともかく、ロウキたちはこれまで数々の修羅場をくぐってきているだろうから、こういう場面にも慣れているんだろう。
これくらいじゃ動揺しないんだな。そう妙に納得している自分がいた。
「主、俺の分身たちがケルベロスの気配を感じたみたい。あっち。」
「ひいぃっ!も、もう見つけたの?!この森かなり広いよ?!」
「ダークエルフが怖がってるくらいだから近くにいるだろうなって思ってたんだ。
やっぱりそうだった。あっちだよ、あっち。行こう主!」
「うううっ…怖いなぁ…可愛い犬でありますように…!」
「んなわけがあるか!バカ者!」
一人でドキドキしていた時、クロが「ケルベロスの気配を感じた」と言い、背筋がゾクッとした。
それも、そう遠くない距離らしい…。やっぱり、さっきのフォレストウルフがやられたのって…。
そう思うと足がすくんで動けなくなる。
だけど「行かなくちゃ」という気持ちもあって。
振るえる足を何とか動かし、ロウキたちに護られながら、クロの分身たちが示す方へと向かった―…
「無理です。」
「まだ話していません…どうか、お話だけでも…」
「ヨシヒロ、まぁ待て。良いぞ、話してみよ。」
「ありがとうございます。フェンリル殿…」
絶対に面倒ごとを押し付けられると分かっていた。
だから即座に「無理です」と言ったのに、それを無視してロウキは事情を訊ね始めた。
……結局、俺に決定権なんてないじゃん。
「実は、ここ1年ほど前から大型の魔獣がこの森を支配しているのです。
その魔獣は見境なく喰らい、破壊し、私たちの住処を奪おうとしているのです。
何人もの人間も喰われました…。
どうかお願いします。その魔獣を討伐していただけないでしょうか…?」
「ええ…」
「ふむ。具体的にはどのような魔獣なのだ?」
「あの魔獣はただの魔獣ではありません…。
おそらく悪魔獣《デーモンビースト》かと…」
「デーモンビースト?悪魔の獣ってこと?」
「はい。体は大きく、少なくとも三つ以上の頭を持つ、ケルベロス種の変異体ではないかと…。
濃い霧を纏い、凄まじい破壊力で獲物を食い尽くします。
広い森ですから、どこを寝床にしているかは分かりませんが…間違いなく、ケルベロスです…」
「ええ?!ケルベロスの変異種?!」
ロウキに促されて訊いた話は、この辺りに住み着いている魔物についてだった。
「デーモンビースト」と言われた時はピンとこなかったけど、「ケルベロス」と聞いた瞬間、思わず目を見開いた。
だけど「三つ以上の頭」と言われて、はてなマークが浮かんだ。ケルベロスって頭は三つだよな?
それ以上あるって、めっちゃ怖くない?!しかも寝床がどこかも分からないって…。
それを討伐して欲しいって、死にに行くようなものじゃないでしょうか?!
「ほう。ケルベロスか。我よりも大きかったのか?」
「フェンリル殿と同じくらいかと…」
「そうか…では、そうやすやすと隠れられまい。気配を辿って探してみるか。」
「えええええ」
「お前は我らに護られておるから大丈夫だろうが。」
「本当そう思う?」
「大丈夫だよ!主は俺たちが絶対に護るから!」
「んんー…分かった…皆を信じる…」
絶対に危険すぎる依頼だから断ってもいいと思っていた。
でも、そんなことをするわけがないのが俺の従魔たちなんだよな…。
ロウキやクロ、皆に「護られているから大丈夫だ」と説得され、仕方なく一緒にケルベロスを探すことになった。
「お前たちは足手まといとなる。この場で待機せよ。
我らが戻るまで余計な行動は慎むように。よいな?」
「御意。フェンリル殿に従います。」
「うむ。ではヨシヒロ、さっさと片付けて出かけるぞ。」
「ううう…分かったよー…」
ロウキがダークエルフたちに指示をすると、彼らはすっかりロウキに従う姿勢を見せていた。
やっぱりフェンリルって、そういう存在なのか?俺にはよく分からないけど…。
なんて思いながら、渋々後片付けをしてケルベロスを探す旅が始まってしまった。
そもそもケルベロスの気配を辿るって、どうやるつもりなんだよ?
見たこともないのに、気配も何も分かるはずないだろうに。
「よし。クロ、頼んだぞ。」
「任せろー!」
どうするのかと思っていると、ロウキはクロに合図を出した。
するとクロは前にやったように、自分の尻尾を手前に持ってきて、指先から血液を数滴ポタリと垂らし祈りを捧げた。
そして、炎の中から手のひらサイズのディアボロス・リザードが誕生した。今回は何匹も。
「相変わらず可愛いな…この子たちに探させるのか?クロ。」
「そうだよ!何てったって相手は悪魔獣だから。悪魔同士、気配が分かるんだ!」
「ああ、そっか。なるほどね!」
俺の疑問はすぐに解決された。
クロが生み出した何匹もの可愛い分身たちが四方八方へ散らばり、ケルベロス捜索を始めた。
俺たちは俺たちで、クロが感じ取る気配を頼りに進んでいく。
途中で飛び出す魔物や、力尽きた人の姿に泣きそうになりながら進んでいくと、ダークエルフの住処と思われる小さな村落に辿り着いた。
本当にここで暮らしていたんだな…。というか、ここにしか住めなかったってことなんだろう。
そう思いながら通り過ぎ、ただひたすら歩き続けた。
そうしている間に辺りはすっかり真っ暗になり、とてもじゃないけど捜索できる状態じゃない。
夜は夜行性の魔物が出るっていうし、いくら結界を張っているとはいえ…。
結界…っていうか、結界張ってたのに矢が刺さったよな?!
「なぁロウキ。俺たち結界張ってたのに、ダークエルフが放った矢が俺の前に飛んできたじゃん?
あれは何で?」
「エマ、教えてやれ。我も分からん。」
「エマは理由が分かる?」
【はい。お答えします。先ほどダークエルフが放った矢は普通の矢ではなく、反魔法の矢《アンチマジックアロー》と呼ばれる特殊な矢です。
矢の先には、結界に微細な穴を瞬間的に開ける呪詛がかけられています。
これらはダークエルフに伝わるとされる反魔法の術によって構成されます。
ただし量産は不可のため、万が一のためのとっておきの策といえるでしょう。
ちなみに、結界自体を破壊するわけではありませんので、矢が通過した直後に穴は塞がります。】
「へぇ。納得。でもすごいね、そんな呪文があるなんて。異世界だねぇ。」
矢が飛んできた時は本当に焦ったけど、一時的にでも結界を貫通する矢を作れるなんて凄いと同時に恐ろしくも感じた。
だって、下手したら俺死んじゃうってことじゃん…。
絶対にダークエルフの皆さまとは敵対しちゃいけないなと思った瞬間だった。
「それにしても暗くて怖すぎるけど、皆平気なの?!」
「特に怖いとかはないぞー。主は人間だからな。夜は苦手だもんなー。」
「何が出るか分かんないじゃん!怖いに決まってるよ!ちゃんと俺を護ってね!お願いします!」
「あはは、大丈夫だよー。」
捜索が続けば続くほど時間は過ぎていき、本当に暗くて怖い。
怖いから思わずロウキの背中に乗っていたあっくんを引き寄せ、抱きしめながら歩いていた。
夜は明るい場所で遊ぶもので、こんなに暗い場所を歩くもんじゃない…。
そう心の中でブツブツ言いながら、皆に囲まれながら捜索を続けていた。
その時だった―
「アオオオオオオオオオオンッ」
「ギャアアッ!!」
「やかましい!あれはただのフォレストウルフの遠吠えだ。」
「もうやだ…怖い!怖すぎる!」
突如として響いた遠吠え。
俺はてっきりケルベロスの遠吠えだと思って咄嗟に叫んだけど、フォレストウルフだと言われて少しホッとした。
良かった…。結構近くで聞こえたから、ケルベロスかと思っちゃったじゃん。
そう安堵したのも束の間、次の瞬間、再び恐怖に襲われた。
聞こえてきたのは「キャインッ!」という、犬が痛みに耐えかねた時や恐怖に怯えた時に発する苦痛の声。
きっと、さっき遠吠えしていたフォレストウルフだと感じた。
「えっ…な、なに今の苦しそうな叫び声…」
「…何者かに襲われたか…」
「えっ…」
「今のは…そうですね…」
「命の炎が一つ…消えましたわ…」
叫び声に動揺している俺とは対照的に、ロウキたちは冷静に「フォレストウルフが襲われた」と話していた。
ユキはともかく、ロウキたちはこれまで数々の修羅場をくぐってきているだろうから、こういう場面にも慣れているんだろう。
これくらいじゃ動揺しないんだな。そう妙に納得している自分がいた。
「主、俺の分身たちがケルベロスの気配を感じたみたい。あっち。」
「ひいぃっ!も、もう見つけたの?!この森かなり広いよ?!」
「ダークエルフが怖がってるくらいだから近くにいるだろうなって思ってたんだ。
やっぱりそうだった。あっちだよ、あっち。行こう主!」
「うううっ…怖いなぁ…可愛い犬でありますように…!」
「んなわけがあるか!バカ者!」
一人でドキドキしていた時、クロが「ケルベロスの気配を感じた」と言い、背筋がゾクッとした。
それも、そう遠くない距離らしい…。やっぱり、さっきのフォレストウルフがやられたのって…。
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【あらすじ】
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