魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル

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123話 夢の会話を調べようと試みました

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彼女はどうして洞窟に居ると分かったんだろう?
そんな疑問を抱いた夜、夢を見た。

どこかは分からないけれど、この国ではなさそうだった。
王城で国王らしき人物が人々を罵倒している。そして、それを止めようとする見知らぬ誰か。
必死に国王を制止しようとしていたその人物が、こう言った。
「どうかお救い下さい。私はブルーメイドの…」と。

訳の分からない夢だった。ブルーメイドって何だ?
バタバタしていて疲れが出ていたのかもしれない。
だけど、妙にリアルに感じられたのも確かだった。
そのせいか少し目覚めが悪く感じられて、皆を起こさないようにそっと外へ出ると、まだ空には月が昇っていた。


「魔王様。眠れないのですか?」

「ミカゲー。どうしたんだ?中で皆と一緒に寝ていなかったのか?」

「私たちは番犬ですから。魔王様の領地を護るのが役目なのです。」


月明かりに照らされて現れたミカゲ。元の大きさに戻っているせいで一瞬驚かされた。
だけど、黒い毛並みに銀色がわずかに混じって見え、何だかとても幻想的だった。
外にいる理由を訊くと、番犬だからともっともらしいことを言い、誇らしげな表情を浮かべていた。


「はは、そういえばそうだったな?でも無理はするなよ?
眠たくなったらちゃんと皆と一緒に寝ていいんだからな?」

「魔王様…ありがとうございます。魔王様はお優しすぎますね。」

「前の魔王様とは全然違うな!俺は今の魔王様が好きだぜ!」

「ぼ、僕も今の魔王様が大好きですっ!」

「ははは、そりゃどーも!ありがとうな?」


番犬でいてくれるのはありがたい。
けれど俺からすれば、休める時はちゃんと休んでほしい。
そう話すと「優しすぎる」「大好きだ」と言ってくれて、思わず頬が緩んだ。
あっちの世界での生活はきっと過酷だったのだろう。
魔界という場所なら、弱肉強食で魔王は冷酷そうだ。
俺は皆が平和に暮らしてくれたらそれでいい。きっと真逆のタイプなんだろうな。


「魔王様、」

「ミカゲ、そのー…魔王様ってのはなぁ?別の呼び方ないかな?」

「魔王様と呼ばれるのはお嫌いですか…では、ご主人様とお呼びしますね。」

「んー…まぁ、それで決定だな!」


出会った時から早くやめさせたいと思っていた俺の呼び名。
ふと思い出して提案すると、すぐに呼び方を変えてくれて一安心した。
人前で「魔王様」なんて呼ばれたら困るからな。
これで大丈夫だろうと安堵していると、ルイが悲しそうな顔をして俺に言った。


「ご主人様、何かあったの?」

「え?あー、なんか変な夢見ちゃって。」

「変な夢?どんな夢を見たんだ?ご主人様!」

「知らないどこかの国で王様が皆を罵倒しててさ。それだけでも気分悪いじゃん。
だけど、罵倒されていた人が俺に向かって言うんだよね。
どうかお救い下さい。私はブルーメイドの…って。意味分かんなくない?」

「予知夢…?それともドリームヴォイスと呼ばれる能力で誰かがご主人様に助けを求めたのでしょうか?」

「ドリームヴォイス…?」


ルイに「何かあったの?」と聞かれ夢の話をすると、リツから初めて聞くスキルの名前が出てきて首を傾げた。
ドリームヴォイスって何だろう?夢に関するスキルっぽいけど…。


「ドリームヴォイスとは、自身の意思や情報を特定の相手の夢を通じて伝える能力です。
誰でも取得できるスキルではなく、持って生まれることの方が多いと聞きます。
あくまでも私たちがいた世界での話ですが…」

「へぇ、そんなスキルがあるのか。もし、そのスキルが発動されてたとしたら、俺に助けを求めたってことになるのかな?」

「そうだと思うぜ!ご主人様は有能だからな!きっと噂を聞きつけて助けを出したんじゃないかって思う!」

「そ、そうだと思う…僕も、そう思う!ご主人様は僕たちを救ってくれたから。
だから、それを知ってる誰かじゃないかなぁって。」

「うーん…そうなのかなぁ?だとしたら誰って感じだよね?」


ドリームヴォイスというスキルについて教えてもらった俺は、まさかとは思うけど「誰かが俺に助けを?」と考えずにはいられなかった。
まぁ、ないとは思うけどさ。

だけど、もし本当にそうだとしたら…?結構困るかもしれない。
だって、あの夢は絶対に王城での出来事。つまり国としての出来事の可能性が高い。
そうなると、助けを求めているのが王族で、悪者も王族という可能性もある。
俺が国の内情に口を出すなんて絶対にしたくないし、したくても出来ない。
つまり、俺には助けることが出来ない可能性の方が高いんだよな…。

「助けられる命には手を伸ばす」とは言ったけど…さすがに国とか規模がデカすぎる。
そう考えると胃が痛くなってきた俺は、「きっとただの夢だ」と無理やり思い込むことにしていた―…。









「ここで手がかり探してみるか。」


夢に出てきた言葉が気になっていた俺は、クロと二人で王都に来ていた。
いつもガーノスさんに頼りっぱなしだったこともあり、今日は自力で情報を得ようと王都にある王立図書館で調べてみることにした。
図書館というくらいだから何かしら情報はあるだろうと思ったけど、こういう施設とは無縁だった俺は少し緊張していた。
静かすぎるんだよなぁ…。


「クロは文字読めるよな?ブルーメイドっていう単語がある本を探してくれる?
俺は右側の棚を調べるから、クロは左側な?」

「え?ブルーメイド?」

「そう、ブルーメイド。聞いたことある単語?」

「あるよー!だって国の名前じゃん!ブルーメイドって。ブルーメイド王国。」

「えっ…そうなの?!」


図書館で早速その単語が載っている本を探そうとクロに伝えると、クロはポカンとしながら「国の名前だよ」と首を傾げた。
まさか国の名前だなんて思いもしなかったから、無知すぎてちょっと恥ずかしい。


「主は転生者だから、よその国のこと知らなくて当然だよ!
じゃあ、ブルーメイド王国に関する情報を探そうぜ!」

「そ、そうだな!じゃあ国関連の本棚に行こうか。」

「おー!」


俺が知らないことに対して笑いもせず「大丈夫だよ」と言ってくれるクロ。
本当に素晴らしい子だと思う。誰も悪魔の言葉だなんて思わないだろうなぁ。
そう感じながら、一緒に各国の情報が集まる本棚へと向かった。

その途中、大きなテーブルの上に広げられている新聞のようなものが目に入り、ふと足を止めた。
そこには衝撃的な見出しが大きな字で大々的に書かれていた。


【ブルーメイド王国 崩壊間近】

「崩壊って…なに?」


記事の見出しに書かれていた「崩壊間近」の文字。
意味が分からず、誰も読んでいなかったこともあり拝借して記事に目を通した。

そこには、ブルーメイド王国が各国から交流を断絶され、国益を出せずにいること。
さらに国民の半数以上が他国へ流出していることが書かれていた。
理由は、現国王サバストラが極端な「人間至上主義」を掲げていることにあるらしい。
人間の優位性を絶対視し、亜人はもちろん、思想に反する人間までも徹底的に罰し、最悪の場合は奴隷として酷使しているという。

その結果、声に出せない不安や不満を抱える国民が続出。
亜人に心を寄せる人々は次々と国を捨て、王都や地方の村落・町には空き家が目立つようになった。

さらに、ソウリアス王国やギルティス帝国、ウィンエバー王国は「悪影響しかない」と判断し、規制をかけて考えを改めるよう訴えたが、聞く耳を持たず、今では完全に交流を断絶。
獣人国家レインシャス王国に至っては、非道な行いが発覚した瞬間に交流を一切取りやめたという。

記事は最後に「国王が強硬姿勢を崩さない限り、この国の未来は閉ざされたままである」と強く訴えていた。


「主ー、ブルーメイド王国ヤバいんじゃない?」

「だ、だよね…。これ、やっぱり俺が関わっていい案件じゃないな。
よし。これは忘れて巨大魚について調べよ!」

「巨大魚ー!図鑑かな?魔術かな?主は図鑑探して!
俺は魔術関連の本、探してくるから!」

「分かった!じゃあ、見つけたらここに集合な!」


記事を最後まで読んだ俺たちは「関わってはいけない領域」だと判断。
すぐに調べる対象を巨大魚へと切り替え、それぞれ探しに出かけた。
ブルーメイド王国の件は一度忘れよう。
ただの夢の可能性の方が高いしな。

そう自分を納得させながら、巨大魚について載っていそうな図鑑を探していた―…。
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