伝説の強戦士(チート)異世界を駆ける ***時を越えた愛***

藤原サクラ

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【狼の長 人狼(じんろう)】

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敵意を持っている者が、近づいてくることを感じたのは、探知魔法を張り巡らせていた「さつき」だった。

『竜馬、タイガー、素早い動きで、何かが数十匹、こちらに向かってくるわ』

「さつき」から注意喚起があってから数分後、竜馬たち前にウルフ(狼)が姿を現した。
 シベリアンハスキーなど狼種に近い大型犬より、一回りも二回りも大きい体を持ち、狼種を現す鋭い牙が口元から覗いていた。
その内のひと際、大きな一匹が竜馬たちの前に出て来て、道を塞ぐように立ちはだかった。
『ウオ~ン』と鳴いた後、体に変化が起きて、狼から全裸の人間に姿を変わった。
驚くことに目の前の狼は狼族を従えるといわれる人狼(獣人)だった。

「さつき」は人狼とはいえ、裸の男を見たのは初めてだったので、少し頬を赤めた。
そして、目のやり場に困って、手のひらで目隠しをしてしまう。
「さつき」は魔物を殺傷する時に楽しんでいるかのような「微笑」を浮かべ、冷酷そうな顔を持つが、この時の表情は初心(うぶ)な乙女の表情だった。
だが、そこは好奇心の旺盛な年頃の娘である。
『きゃ~』と言いながら、指の間から、もう一度、何かを確認をするために、覗いたかどうかは想像に任せることにしよう。

人狼は全裸の恰好で『面白い、虎が人間を乗せて、走るなんて初めてみたぜ!』
タイガーに向かって話掛けて来た。

『何の用だ?』

『俺たちは、この森の盗賊さ、どうだ、その可愛い子ちゃんと金目の物を置いて行くなら、虎のお前は逃がしてやってもいい、だが、人間の男と子供は、ハハハ、餌になるがな』
人狼は身勝手な取引を持ち掛けてきた。
タイガーは人狼が自分勝手な都合の良いことを言うので、呆れた顔で返答せず、無視をした。
その態度に人狼は機嫌を損ねたのか?
『後で後悔するなよ!』と吐き捨てる様な言葉を言って、『ウオ~ン』とまた鳴き、今度は人間の姿から狼の姿に戻った。
人狼は狼たちのボスだった様だ。
『ウオーン』という遠吠えに対し、あちらこちらから『ウオ~ン ウオ~ン』と呼応するように鳴き声がして、みるみるうちに数十匹の狼が集まった。
人間には『ウオ~ンとウオーン』は殆ど同じに聞こえるが、微妙な声のトーンの違いに意味があるようだ。
狼族は連携して、数で勝負する戦い方が得意としている。

『グルルー』うなり声をあげて数十匹で取り囲んだ。

タイガーは竜馬たちの戦いに邪魔にならないように、距離を取ると人狼は虎の姿をしたタイガーが強敵と判断したのか?力がありそうな数匹の狼を連れて取り囲んだ。
狼は自分より大きい獲物に対する時、仲間と力を補い合い、獲物を数匹で仕留めるという。
仲間との連携攻撃によって、今までに数々の強敵を倒して来た。
人狼はこの時、従来の連携による攻撃をすれば、例え相手が凶暴な虎であろうとも、必ず勝てると考えていたに違いない。
正面からの攻撃と隙を見て背後からの攻撃を仕掛けてきた。
狼と虎の力の差を知っての戦い方だった。
4~5回のぶつかり合いの後、人狼は虎の予想を超える強さを知って、考えが間違っていたことを悟った。
数回の衝突で、虎の鋭いかぎ爪により、2~3匹の手下が深手を負ったのだ。
人狼は手下の狼をやられたからか?いちだんと感情を現し殺気立った顔で タイガーを睨んできた。
タイガーは、そこで、人狼に声を掛けた。

『おい、狼よ!見たところ、お前と俺の周りにいたのが、お前たちの中で最強の様だが、何か勘違いしているようだ。子供を除き、俺は3人中で、最弱なんだぜ!』

『何?お前が最弱だと』狼は虎が言った言葉に狼狽した。
振り向いて、近くで戦っている筈の手下を気に留めるが遅かった。
既に手下の殆どの狼の気配が消え掛けていたのだ。
驚くことに、虎と戦っていたほんの少しの時間で、数十匹の狼が倒されていた。
倒れた手下の狼の近くには人間の男が、赤い闘気を纏い、血で染めた剣を持って赤鬼の様に立っていた。
手下の狼は声をあげる暇もなく、瞬殺されたのだ。
痛みも感じる暇は無かったかも知れない。

『あり得ない、狼が人間に簡単に殺されようとは・・・くそ~、俺たちは狼だ、人間なんかに負けるものか』人狼は助走を付け飛び上がり、竜馬に鋭い牙を立てようと襲い掛かった。
だが、牙は人間には届かず、そればかりか、鋭い痛みが右腕に走った。
赤いオーラを纏う剣の斬撃により、右腕を持っていかれたのだ。
痛みが追うようにやってきて、思わず『キャアアン』と悲鳴をあげた。
最早、いったん退却するしかなかった。
激痛に耐えながら生き残った数匹の狼を連れて退散した。
『俺を生かしたことを吠え面をかかせ、後悔させてやる。俺は満月の日、満天の月のパワーを貰って、不死身になる。だから、満月の夜ならば必ず倒せる筈だ』人狼は復讐を誓った。

タイガーは何故、兄貴(竜馬)は一撃で狼を倒さなかったのか?致命傷を与えることが出来た筈なのに・・・と疑問が頭に過った。
その時、魔法陣に乗り空中に浮かんで、子供と一緒に戦いを見ていた「さつき」から『竜馬、タイガー、急ぎましょう』と声が掛かったので、タイガーはそれ以上、考えるのを止めて、再び兄貴たちを乗せて再び走り出した。
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