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「帝都到着と赤髪の第2皇子」
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結局その後、ギルヴァントが私に手を出すことはなかった。
けれど、膝から降ろされることもなく、イザークさんの鋭い監視のもと、馬車は帝国へと進んでいった。
やがて視界に現れたのは、村とは比べものにならない巨大な城と、壮麗な城下町。
その光景に思わず声を失っていると、ギルヴァントが横目で私を見て、口元をゆるめた。
「いずれ、これは全て俺が受け継ぐ。お前のものでもある」
「……はぁ!? 何言ってるの! お妃様にはならないって言ったでしょ。それに私はいずれ帰るんだから!」
「ふん、そんなこと言えなくなるくらい、贅沢も愛情もたっぷり与えてやる。今夜は覚悟しておけ」
「な、なにそれ……!」
顔が熱くなる。――これ、貞操の危機じゃない!? なんとか逃げないと……!
そんなやりとりをしているうちに、馬車は城門前へ到着した。
扉が開かれると、整列した兵士たちが一斉に敬礼し、誰かが高らかに叫ぶ。
「第一皇子ギルヴァント殿下、おなーりー!」
次の瞬間、地響きのような歓声が巻き起こった。
あまりの熱狂ぶりに、私は思わず身を縮こませる。
すると、人混みをかき分けて現れたのは、赤髪短髪の大柄な男。
端正な顔立ちに、どこか余裕を感じさせる笑みを浮かべている。
「兄上! お迎えにあがりました!」
彼はそう言い、私に気づくと視線を上から下まで滑らせ、ニヤリと笑った。
「この女性が兄上が直々に迎えに行った方ですか? 今まで女性に冷たかった兄上が……珍しい。
しかし、これはハーレムの女たちが騒ぎますね。特にアレクサンドラ様が」
――ハーレム!? え、あのハーレム!?
心の中で動揺していると、ギルヴァントが冷たい声で言い放った。
「出迎えご苦労。お前には関係ない。父上のところに行く」
「ハハッ、兄上は相変わらず冷たいなぁ」
男は肩をすくめ、その場を離れた。
私は気になって、ギルヴァントの服の裾を引っ張る。
「あの人は……?」
「第2皇子のガラントだ。母親は違う。最近、父王が病に臥していてな。
俺がいない間、帝位を狙って妙な動きをしていたらしい。だが、俺が生きている限り、その夢は終わりだ」
険しい表情でそう言うギルヴァント。
やっぱり複雑な事情があるらしい。……できるだけ関わらないようにしよう。
そして――ハーレムなんて聞いたら、不安しかない。
……帰りたいよぉ~!
心の中で、私はそっと涙を流した。
けれど、膝から降ろされることもなく、イザークさんの鋭い監視のもと、馬車は帝国へと進んでいった。
やがて視界に現れたのは、村とは比べものにならない巨大な城と、壮麗な城下町。
その光景に思わず声を失っていると、ギルヴァントが横目で私を見て、口元をゆるめた。
「いずれ、これは全て俺が受け継ぐ。お前のものでもある」
「……はぁ!? 何言ってるの! お妃様にはならないって言ったでしょ。それに私はいずれ帰るんだから!」
「ふん、そんなこと言えなくなるくらい、贅沢も愛情もたっぷり与えてやる。今夜は覚悟しておけ」
「な、なにそれ……!」
顔が熱くなる。――これ、貞操の危機じゃない!? なんとか逃げないと……!
そんなやりとりをしているうちに、馬車は城門前へ到着した。
扉が開かれると、整列した兵士たちが一斉に敬礼し、誰かが高らかに叫ぶ。
「第一皇子ギルヴァント殿下、おなーりー!」
次の瞬間、地響きのような歓声が巻き起こった。
あまりの熱狂ぶりに、私は思わず身を縮こませる。
すると、人混みをかき分けて現れたのは、赤髪短髪の大柄な男。
端正な顔立ちに、どこか余裕を感じさせる笑みを浮かべている。
「兄上! お迎えにあがりました!」
彼はそう言い、私に気づくと視線を上から下まで滑らせ、ニヤリと笑った。
「この女性が兄上が直々に迎えに行った方ですか? 今まで女性に冷たかった兄上が……珍しい。
しかし、これはハーレムの女たちが騒ぎますね。特にアレクサンドラ様が」
――ハーレム!? え、あのハーレム!?
心の中で動揺していると、ギルヴァントが冷たい声で言い放った。
「出迎えご苦労。お前には関係ない。父上のところに行く」
「ハハッ、兄上は相変わらず冷たいなぁ」
男は肩をすくめ、その場を離れた。
私は気になって、ギルヴァントの服の裾を引っ張る。
「あの人は……?」
「第2皇子のガラントだ。母親は違う。最近、父王が病に臥していてな。
俺がいない間、帝位を狙って妙な動きをしていたらしい。だが、俺が生きている限り、その夢は終わりだ」
険しい表情でそう言うギルヴァント。
やっぱり複雑な事情があるらしい。……できるだけ関わらないようにしよう。
そして――ハーレムなんて聞いたら、不安しかない。
……帰りたいよぉ~!
心の中で、私はそっと涙を流した。
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